スプリンクラー設備や屋内消火栓設備の工事は、消防設備士でなければ行なえません。
ところが同じ設備の中でも、電源や水源、配管の部分だけは資格が無くても工事できます。
条文だけを読んでもこの線引きはピンと来にくいのですが、実は昭和41年の消防設備士制度創設時の通達に理由が書かれています。
今回は「消防法施行令の一部を改正する政令等の施行について」という通達をもとに、なぜ電源・水源・配管が独占業務から外れているのか、その線引きの中身を解説します。
スプリンクラーの電源の配線だけは電気屋さんに頼んでいいと言われたんですが、本当ですか。
はい、電源・水源・配管の部分は消防設備士でなくても工事できることになっているんです。
じゃあ配管も全部対象外なんですね。
そこがポイントで、配管そのものと弁や送水口とでは扱いが違うんです。
- 消防設備士でなければ行えない工事はスプリンクラー設備ほか10種類の消防用設備等の設置工事として指定された
- スプリンクラー設備・水噴霧消火設備は水源・電源・配管の部分を、その他の設備は電源の部分を独占業務から除外
- 根拠条文は消防法施行令第36条の2第1項のただし書
- 除外は消防設備士の関与を禁止する趣旨ではなく独占業務にしないという意味
- 水源・配管はそれ自体のみを指し、弁や送水口、吸水口は独占業務に含まれる
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目次
消防設備士でなければ行えない工事の範囲はなぜ通達で示されたのか

昭和40年の消防法改正で新しく創設された制度です。
制度そのものは前年の消防法改正で作られましたが、どの工事に資格が必要になるかという具体的な線引きは政令に委ねられていました。
昭和41年10月1日の施行を控え、都道府県の消防主管部長あてにこの通達が発せられ、線引きの中身が示されました。
次の章で、実際にどの設備が対象になったのかを見ていきましょう。
消防設備士って昔から当たり前にある資格だと思っていました。
いいえ、昭和41年10月にできたばかりの、消防法の中では比較的新しい制度なんですよ。
どの設備の工事に消防設備士の資格が必要になったのか

通達には具体的な種類が示されています。
具体的にはスプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備・不燃性ガス消火設備・蒸発性液体消火設備・粉末消火設備・自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備・金属製避難はしご・救助袋・緩降機の11種類です。
実は屋内消火栓設備と屋外消火栓設備はこの時点ではまだ対象に入っていません。半年後の同年10月の改正で追加され、現在の令第36条の2第1項は次のとおりです。
対象は当初の11種類から、ガス漏れ火災警報設備も含めて数を増やしてきました。
次の章では、この条文のかっこ書きが意味する「電源・水源・配管の除外」を詳しく見ていきます。
屋内消火栓が最初は対象外だったなんて意外です。
はい、対象は制度が始まってからも段階的に広がってきた歴史があるんです。
電源と水源と配管はなぜ対象から除かれるのか

条文にはただし書があります。
たとえば貯水槽そのものや配管の敷設は対象外ですが、開放弁・制御弁・接手・送水口・吸水口の設置工事は消防設備士でなければ行なえません。
電源についても、単なる建物の配線ではなく幹線から受信機や加圧送水装置の電動機に到る配線までは含むと定義されており、線引きは思ったより細かいことが分かります。
では、この除外はどこまで広く読んでよいのでしょうか。次の章で確認します。
送水口や吸水口は配管の一部だと思っていました。
通達上は配管そのものと区別されていて、送水口や吸水口は独占業務に含まれるんです。
除外は消防設備士の関与を禁じる意味なのか

通達はその誤解をはっきり否定しています。
電源・水源・配管の工事を消防設備士でない業者が行なってもよいというだけで、消防設備士自身がその部分を担当することは何ら妨げられません。
同じ考え方は整備にも及び、消防設備士でなければ行なえない整備の範囲でも水源・電源・配管の部分の除外は工事の場合と同様に扱われています。
つまり除外規定は「誰の資格でも工事できる部分がある」という業務範囲の線引きであって、消防設備士を締め出す規定ではないということです。
消防設備士さんに電源や配管まで頼んでも問題ないんですね。
もちろんです。
むしろ一括で任せたほうが工事全体の整合性は取りやすいです。
明日からなにを確認すればよいのか

契約の前に確認しておくと、あとから資格の有無でもめずに済みます。
発注する設備が令第36条の2第1項各号のどれに当たるかを確認し、その上で工事範囲のうち水源・電源・配管それ自体と、それ以外の弁・ヘッド・送水口等の部分を業者ごとに切り分けて発注書に書いておくと、あとで揉めません。
一つの工事を元請と下請でまたぐ場合でも、消防用設備等の工事全体の指導監督は1人の消防設備士が担うのが実務上の扱いです。
迷ったときは、対象範囲を広めに消防設備士へ一括発注するのが確実です。
発注書の時点で範囲を分けておけばいいんですね。
そのとおりです。
迷ったときはご相談いただければ範囲の整理からお手伝いします。
よくある質問
まとめ
今度の発注書は工事範囲をきちんと分けて書いてみます!
工事範囲の切り分けや発注のご相談でしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令の一部を改正する政令等の施行について(昭和41年5月6日 自消乙予発第7号 消防庁次長)
- 消防法第17条の5
- 消防法施行令第36条の2第1項・第2項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





