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危険物施設の完成検査はなぜ現地に来なくても終わることがあるのか|認定事業所が使う自主検査結果の活用を解説

認定事業所が自主検査結果を活用して完成検査を終える仕組みを示したアイキャッチ画像

危険物施設の変更工事は、工事が終わるたびに市町村長等の職員が現地へ来て完成検査を受けるのが原則です。
ところが石油コンビナート等特別防災区域の一部の事業所では、職員が現地に来なくても検査が終わることがあります。
鍵になるのは「認定事業所」という制度と、事業所自身が行う自主検査の結果です。
なぜ現地の立会いなしで完成検査が成立するのかを整理します

うちは石油コンビナートの事業所なんですが、工事のたびに検査員さんに来てもらうの、正直大変で。

それなら「認定事業所」という制度が使えるかもしれません。
まずは制度の中身を確認しましょう。

現地に来なくても検査が終わるなんてことがあるんですか。

はい、条件を満たせば自主検査の結果を使って完成検査を終えられます。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成11年3月17日の消防危第22号で「認定事業所」制度が作られた
  • 認定を受けられるのは工事管理を含む保安の優れた体制を持つと市町村長等が認めた事業所に限られる
  • 認定事業所が行う一定の変更工事は、自主検査結果を活用して現地に赴かず完成検査等を終えられる
  • 保安距離の変更や容量1,000キロリットル以上のタンク本体の工事などは対象外
  • 認定の有効期間は5年間で、続けるには市町村長等への更新申請が必要

認定事業所が自主検査結果を活用して完成検査を終える仕組みを示した図解

認定事業所の制度はなぜ作られたのか

保安体制の実績を積んだ石油コンビナートの事業所と自主検査の記録を確認する担当者
すべての事業所が対象というわけではありません。
まず、この制度がどんな背景で作られたのかを見てみましょう。
近年の危険物施設を有する事業所における自主保安の進展状況及び市町村長等における危険物規制に係る事務の簡素化、省力化等の必要性の観点から、「規制緩和推進計画の再改訂について」(平成9年3月28日閣議決定)において、一定の要件を満たす危険物の製造・貯蔵施設等の変更工事に伴う完成検査又は完成検査前検査(以下「完成検査等」という。)に関し、自主的な検査を適切に行うことができると認められる者について所要の検討を行うこととされたところである。(危険物施設の変更工事に係る完成検査等について 平成11年3月17日 消防危第22号)
第一項の規定による許可を受けた者は、製造所、貯蔵所若しくは取扱所を設置したとき又は製造所、貯蔵所若しくは取扱所の位置、構造若しくは設備を変更したときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所につき市町村長等が行う完成検査を受け、これらが前条第四項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。(消防法第11条第5項)
指導ではなく規制緩和の一環として生まれた制度です
本来、変更工事のたびに市町村長等の職員が現地へ赴いて完成検査を行うのが原則ですが、事業所側の自主保安が進んだことを背景に、平成9年の閣議決定で検査の簡素化が検討課題になりました。
これを受けて消防庁が安全性を損なわない範囲で制度設計を進め、平成11年に「認定事業所における自主検査結果の活用」という形で実を結びました。
規制を緩めたのではなく、実績のある事業所に限って検査の方法を変えた、という点がポイントです。

検査そのものが要らなくなるってことですか。

いいえ、検査自体は無くなりません
方法が現地立会いから自主検査結果の活用に変わるだけです。

どんな事業所が認定事業所になれるのか

石油コンビナート等特別防災区域の事業所ゲートに掲げられた認定を示す標章
どの事業所でも申請できるわけではありません。
対象になる区域と、認定を妨げる事情を確認します。
石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第2条第2号に規定する石油コンビナート等特別防災区域内等の事業所のうち、市町村長等が、工事管理を含む保安のための優れた体制を有することが実績からも明らかであると認める事業所(以下「認定事業所」という。)については、当該事業所が行う危険物施設の特定の変更工事に係る完成検査等について、当該市町村長等は当該事業所の自主検査結果を活用して、現地に赴かずに完成検査等を実施して差し支えないものであること。(危険物施設の変更工事に係る完成検査等について 平成11年3月17日 消防危第22号)
対象は石油コンビナート等特別防災区域内等の事業所に限られます
そのうえで、市町村長等が工事管理を含む優れた保安体制を持つと認めた事業所だけが認定事業所になれます。
危険物施設の使用開始から2年に満たない事業所や、死者1名以上・重傷者2名以上の事故から2年を経過していない事業所は申請できません。
市町村長等の命令を受けて改善措置を講じてから2年を経過していない事業所も同様に対象外です。

うちは特別防災区域の外なんですが、対象になりますか。

対象は区域内等の事業所に限られるので、区域外の施設だけを持つ事業所は対象になりません。

認定事業所になると検査はどう変わるのか

自主検査結果の書類を確認する担当者と窓越しに見える貯蔵タンク
認定を受けても、すべての工事が対象になるわけではありません。
対象になる工事の範囲を確認します。
現地に赴かずに、自主検査結果を活用して完成検査等を実施して差し支えないのは、認定事業所が実施する次の変更工事とすること。次の①~⑥に係る変更工事(ただし、a保安距離又は保有空地に変更を伴うもの、b容量1,000キロリットル以上のタンク本体の工事(特定屋外貯蔵タンクのタンク本体の工事を除く。)、c製造プロセスに著しい変更をもたらすもの等市町村長等が変更許可に際して特に指示するものに該当するものを除く。)。①建築物及び工作物 ②タンク(タンク本体、付属設備、防油堤等) ③危険物取扱機器、配管等 ④消火設備(略) ⑤警報設備(略) ⑥その他(電気設備、制御設備、標識・掲示板等)。(危険物施設の変更工事に係る完成検査等について 平成11年3月17日 消防危第22号)
対象になるのは建築物やタンクなど6つの区分の工事です
建築物や工作物、タンク本体や付属設備、危険物取扱機器・配管、消火設備、警報設備、電気設備や標識・掲示板まで幅広く対象になります。
ただし保安距離や保有空地の変更を伴う工事、容量1,000キロリットル以上のタンク本体の工事は除かれ、これらは従来どおり現地検査が必要です。
容量1,000キロリットル未満のタンクの水張試験を要する完成検査前検査も、同じ枠組みで自主検査結果を活用できます。

自動火災報知設備を増設する工事も対象になりますか。

警戒区域を広げる増設は対象外です。
区域を広げない工事に限られます。

認定を受けても現地検査が必要なのはどんなときか

小さなタンクと大きなタンクを見比べ大きい方を現地で点検する担当者
「認定を受ければ検査が一切来ない」と思い込むと実務でつまずきます。
市町村長等の裁量が残っている部分を押さえておきましょう。
市町村長等は、認定事業所の希望により、変更工事の一部のみについて、自主検査結果を活用して完成検査等を行うこともできるものであること。市町村長等は、認定事業所において行われる変更工事であっても、必要があると認める場合には、現地に赴き完成検査等を実施することができるものであること。市町村長等は、認定事業所が認定の申請を受理することができる事業所の要件に適合しなくなったとき等に該当すると認めるときは、認定を取り消すことができるものであること。(危険物施設の変更工事に係る完成検査等について 平成11年3月17日 消防危第22号)
認定は検査が来なくなる保証ではありません
市町村長等は必要と判断すれば現地検査を行う権限を保持しており、認定事業所側も工事の一部だけ自主検査結果を使う選び方ができます。
死者1名以上の事故を起こしたり、市町村長等の命令を受けて改善措置を講じたりすると、その日から2年間は認定を受けられません。
認定を受けた後に保安体制を変えたのに市町村長等へ届け出ていないと、それだけで認定の取消事由になります。

一度認定を受けたら、あとは何も気にしなくていいんですか。

いいえ、事故や命令を受ければ取り消されることもあるので、認定後も体制の維持が必要です。

認定事業所になるにはなにをすればよいのか

認定申請書類を市役所窓口へ提出する担当者
最後に、実際の手続きの流れを確認します。
危険物保安技術協会の事前審査も活用できます。
市町村長等は、事業所が審査項目(事業所等の保安体制、自主検査体制、事業所の保安実績)について、審査基準に適合している場合には、当該事業所を認定事業所と認めるものであること。認定の有効期間は5年間とすること。認定事業所が認定の有効期間の経過後も継続して認定を受けようとするときは、市町村長等に認定の更新の申請を行うものであること。危険物保安技術協会では、事前審査委員会を設けて当該認定に係る事前審査を行うこととしていること。認定を受けようとする事業所が認定申請時に事前審査の結果を添付した場合には、市町村長等は、当該事前審査の結果を活用し、当該認定に係る審査事務の迅速化及び簡素・合理化を図ることができること。(危険物施設の変更工事に係る完成検査等について 平成11年3月17日 消防危第22号)
申請の窓口は市町村長等です
審査されるのは、本社と事業所それぞれの保安体制、自主検査の体制、そして事故や立入検査での指摘状況といった保安実績です。
審査を早く終えたいなら、危険物保安技術協会の事前審査を先に受け、その結果を申請時に添付する方法があります。
認定の有効期間は5年間なので、更新の申請時期を見落とさないよう管理しておくと安心です。

申請するときに新しく書類を作らないといけませんか。

既存の資料を活用してよいとされているので、現地調査で確認できる規程やマニュアルがあれば新規作成は不要です。

よくある質問

Q認定事業所以外の事業所でも自主検査結果を活用できるのか?
Aできません。対象は石油コンビナート等特別防災区域内等の事業所のうち、市町村長等が優れた保安体制を認めた認定事業所に限られます。
Q認定を受ければどんな変更工事でも現地検査なしで済むのか?
Aいいえ。保安距離や保有空地の変更を伴う工事、容量1,000キロリットル以上のタンク本体の工事などは対象から除かれます。
Q認定を受けたあとに事故を起こしたらどうなるのか?
A死者1名以上等の重大な事故を起こすと、その日から2年間は新たな認定を受けられず、既存の認定も取り消されることがあります。
Q認定の有効期間はどれくらいか?
A5年間です。継続するには、有効期間の経過後に市町村長等へ更新の申請を行う必要があります。

まとめ

認定事業所制度は平成11年の消防危第22号で作られた
背景には自主保安の進展と規制緩和推進計画(平成9年閣議決定)がある
対象は石油コンビナート等特別防災区域内等の優れた保安体制を持つ事業所に限られる
対象になるのは建築物・タンク・機器・消火設備など6区分の変更工事
保安距離の変更や容量1,000キロリットル以上のタンク本体の工事は対象外
市町村長等は必要と判断すればいつでも現地検査を行える
認定の有効期間は5年間で、更新の申請が必要

認定事業所の仕組み、すっきりわかりました!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「危険物施設の変更工事に係る完成検査等について」(平成11年3月17日 消防危第22号 消防庁危険物規制課長/改正 平成20年1月 消防危第16号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第4項・第11条第2項・第5項・第12条の3
  • 石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第2条第2号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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