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大規模倉庫の防火管理はなぜ複数事業者の調整が必要になったのか|令和7年ガイドラインが示す5つの対策を解説

大規模倉庫の防火管理はなぜ複数事業者の調整が必要になったのか|令和7年ガイドラインが示す5つの対策を解説

大規模な倉庫では、テナントの入れ替わりや自動化設備の導入で、現場が数年前とはすっかり様変わりしていませんか。
消防庁は令和7年3月、そうした変化を踏まえ、大規模倉庫の防火管理をソフト面から見直すガイドラインをまとめました。
対象になるのは、消防法施行令別表第一(14)項の倉庫のうち、床面積の合計が10,000平方メートル以上のものです。
消防庁は、複数の事業者が同じ倉庫で働く時代に合わせて、5つの柱で対策を求めています。

うちの倉庫も最近、テナントの入れ替わりが増えました。

実はそれが消防庁の新しい注目点なんです

複数の会社が同じ倉庫で働いていると、管理が難しくて。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は令和7年3月、「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」を新たにとりまとめました。
  • 対象は、床面積の合計が10,000平方メートル以上の倉庫(消防法施行令別表第一(14)項)です。
  • ガイドラインは平時の火災予防・覚知と情報共有・初期消火延焼防止・避難安全・消防活動支援の5つの柱で対策を示しています。
  • 複数の事業者がテナント利用するマルチテナント型の倉庫では、防災センター等が各部署・各テナントを統括する体制づくりが求められています。
  • レイアウト変更やテナントの入居・変更が生じる場合は、事前に消防機関へ相談・届出することが必要です。

大規模倉庫の変化と防火管理の流れを示す図解

大規模倉庫の防火管理はなぜソフト面が課題になったのか

大規模な倉庫の建物とベルトコンベアの荷物を並べた図
埼玉県三芳町の倉庫火災をきっかけに、防火シャッターなどハード面の対策は先に進みました。
一方で、近年の倉庫の変化はソフト面の対策を新たに必要としています。
近年では、人手不足やインターネット通販の拡大などの社会的背景により、物流効率化等を目的として、倉庫の大規模化や物流関連の諸業務の一体化が進み、これに伴い倉庫内で働く従業員数が増加し、福利厚生施設等を併設する倉庫も見られるようになってきました。また、倉庫内をブロック分けして、複数の事業者がテナント利用するマルチテナント型の倉庫や、ロボット技術の導入により仕分け作業等の自動化を進める倉庫など、様々な特徴を持つ倉庫が増えてきています。(「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドラインについて」令和7年3月28日付け消防予第134号)
倉庫の大規模化と働き方の多様化が、新しいガイドラインを必要にしました。
平成29年の三芳町の火災では、防火シャッターが機能せず延焼が拡大しました。
令和2年の宮城県岩沼市、令和3年の大阪市此花区でも大規模倉庫の火災が続きました。
消防庁は「令和6年度予防行政のあり方に関する検討会」で改めて検討を行い、今回のガイドラインをとりまとめました。
働く人が増え、事業者が複数になった倉庫では、設備だけでなく管理の仕組みそのものを見直す必要があります。

うちの倉庫にもテナントが増えてきました。

それならこのガイドラインが役立ちます

どんな倉庫がこのガイドラインの対象になるのか

複数のテナントが入った倉庫の建物とものさしを並べた図
対象になるかどうかは、用途区分と延べ床面積で決まります。
マルチテナント型かどうかは条件になりません。
本ガイドラインは、消防法第8条第1項の防火対象物のうち、消令別表第1(14)項に掲げる倉庫(同表(16)項に掲げる複合用途防火対象物のうち、当該用途に供される部分が存するものを含む。)で、倉庫の用途に供する部分の床面積の合計が10,000㎡以上となるものを対象とします。(前掲通知 別添「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」3「対象とする防火対象物」)
(十四) 倉庫(消防法施行令別表第一)
対象は、床面積の合計が10,000㎡以上の倉庫((14)項)です。
同じ建物の中に複合用途があっても、倉庫部分が対象になれば含まれます((16)項)。
複数の事業者が入るマルチテナント型の倉庫も、面積基準を満たせば対象です。
規模に満たない倉庫でも、火災リスクがあれば参考にするよう促されています。
まずは自分の倉庫の床面積の合計を確認しましょう。

うちは複数のテナントが入っていますが、それでも対象になりますか。

はい。
マルチテナント型でも対象に含まれます

ガイドラインは具体的に何を求めているのか

防災センターの管理画面と複数の倉庫区画を線でつないだ図
求められる対策は、大きく5つの柱に整理されています。
柱の中でも、管理権原者が複数いる倉庫特有の対応が新しく加わりました。
防災センター等との連携体制を構築し、各部署や各テナントを統括して管理する体制を構築しましょう。(前掲別添 5⑵「火災の覚知と情報共有」)
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め(略)当該防火対象物について消防計画の作成(略)その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない(消防法第8条第1項)
柱は「平時の火災予防」「火災の覚知と情報共有」「初期消火・延焼拡大防止」「避難安全」「消防活動支援」の5つです。
特に管理権原者が複数いる倉庫では、防災センター等が窓口となって各テナントを一つにまとめる体制が要になります。
リチウムイオン電池を使う機器や自動化されたマテハン機器など、新しい火災リスクへの言及も盛り込まれました。
訓練や教育も、この統括体制を前提に組み立てる必要があります。
チェックリスト形式で消防計画に落とし込むことが求められています。

柱が5つもあると、うちのテナントとどう分担すればいいのか迷います。

まずは防災センターを窓口にする体制から整えましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

自動倉庫のラックと防犯カメラを並べた図
見落としの多くは、テナントの入れ替わりやレイアウト変更のタイミングで起こります。
人が立ち入らないエリアの管理にも注意が必要です。
避難経路や消防用設備等に係るレイアウト変更、テナントの入居・変更が生じる場合は、事前に消防機関に相談のうえ、必要に応じて届出を行い、検査を受けるとともに、その情報を所有者や防災センター等と共有しましょう。(前掲別添 5⑴「平時の火災予防」)
一番の見落としは、テナントの入れ替わりを消防機関に届け出ないまま済ませてしまうことです。
避難経路や消防用設備等に関わるレイアウト変更も、同じように届出が必要です。
大型のマテハン機器が並ぶエリアは人が立ち入らないため、火災の発見が遅れる可能性があります。
巡回や監視カメラで早期発見の体制を補う必要があります。
所有者と防災センター等への情報共有も忘れずに行いましょう。

テナントが変わったとき、消防署への連絡までは考えていませんでした。

レイアウト変更のたびに相談する習慣をつけてください。

明日からなにを確認すればよいのか

多言語の避難誘導サインと訓練のチェックリストを並べた図
まず確かめてほしいのは、自分の倉庫がこのガイドラインの対象になるかどうかです。
そこから先は、5つの柱に沿って一つずつ点検していきます。
次の対策を講じるなど、従業員の属性に応じた計画やルールをあらかじめ定めておきましょう。避難方向を示す明示物の多言語化、避難誘導に係る放送の多言語化、防火安全対策に係る教育ツールの多言語化。(前掲別添 5⑷「避難安全」)
最初に、倉庫の床面積の合計が10,000㎡以上になっているかを確認しましょう。
該当すれば、防災センター等を窓口にした統括管理の体制があるかを点検します。
外国人労働者やアルバイトが多い職場では、避難表示や訓練の多言語化も検討してください。
レイアウト変更やテナントの入退去が決まったら、早めに消防機関へ相談しましょう。
判断に迷ったときは、専門家に一度現場を見てもらうのが近道です。

今日中に、うちの倉庫の床面積とテナント数を確認してみます。

はい。
その一つの確認が大きな違いになります。

よくある質問

Q床面積10,000㎡未満の倉庫は対象になりませんか?
Aこのガイドラインの対象は床面積の合計が10,000㎡以上の倉庫ですが、それに満たない倉庫でも、テナントの混在や自動化など同じ火災リスクがあれば参考にすることが望ましいとされています。
Qマルチテナント型の倉庫では、誰が防火管理者になりますか?
A管理権原者ごとにそれぞれ防火管理者を選任したうえで、防災センター等が窓口となって各テナントを統括する体制を整えることが求められます。
Q自動化されたマテハン機器のあるエリアは点検しなくてよいですか?
Aいいえ。人が立ち入らないエリアほど火災の発見が遅れやすいため、巡回や監視カメラによる早期発見の体制を別途講じる必要があります。
Qこのガイドラインに従わないと罰則がありますか?
A本ガイドラインは消防組織法第37条に基づく助言として発出されたもので、ガイドライン自体に罰則はありません。ただし、消防法第8条に基づく防火管理上の義務は別途存在します。

まとめ

消防庁は令和7年3月、「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドライン」(消防予第134号)を発出しました。
対象は、床面積の合計が10,000㎡以上の倉庫(消防法施行令別表第一(14)項)です。
柱は平時の火災予防・覚知と情報共有・初期消火延焼防止・避難安全・消防活動支援の5つです。
マルチテナント型の倉庫では、防災センター等が各テナントを統括する体制づくりが求められています。
リチウムイオン電池や自動化されたマテハン機器など、新しい火災リスクへの言及も盛り込まれました。
レイアウト変更やテナントの入居・変更が生じる場合は、事前に消防機関へ相談・届出が必要です。
外国人労働者が多い職場では、避難表示や訓練の多言語化も検討課題になります。

まずはテナントの届出から、今日中に見直します!

判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「大規模倉庫における効果的な防火管理に関するガイドラインについて」(令和7年3月28日付け消防予第134号 消防庁予防課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(14)項・(16)項
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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