敷地の片隅にそびえる煙突や、屋上の広告塔、境界に沿ったコンクリートの擁壁——これらは「建築物」ではなく「工作物」として扱われます。
工作物には建築基準法が及ばないと思われがちですが、実は一定の規模を超えると建築物と同じように確認申請や検査が必要になります。
知らずに増築や改修を進めると、工事が違反状態のまま完了してしまうこともあります。
本記事では建築基準法第八十八条が定める工作物への準用のしくみを、政令が指定する具体的な規模とあわせて解説します。
うちの工場には屋上に大きい貯水槽と煙突が立っているんですけど、確認申請を出した記憶がないんです。
それは工作物としての確認申請が必要な規模かもしれません。
建築基準法第八十八条で、煙突や擁壁のような工作物にも建築物と同じ規定が準用されるんです。
うちにある擁壁は結構古いんですけど、それも対象になるんですか。
高さ2メートルを超える擁壁は対象になります。
建てた当時は基準に入っていなくても、増改築で規模を超えれば新たに確認が必要になりますよ。
- 煙突・広告塔・擁壁などの工作物にも、規模により建築基準法が準用される。
- 高さや規模の基準は建築基準法施行令第百三十八条が構造物ごとに定めている。
- 基準を超える工作物には確認申請と完了検査が義務付けられる。
- 増改築で規模基準を超えると、既存の工作物でも新たに確認が必要になる。
- 該当するかどうかは特定行政庁や指定確認検査機関に確認するのが確実。
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目次
なぜ煙突や擁壁のような工作物にも確認申請がいるのか

煙突や擁壁のように屋根や壁で囲まれていない構造物も、暮らしの安全に直結するからです。
第八十八条は、煙突や広告塔、高架水槽、擁壁のような、建築物には当たらない構造物のうち政令で指定するものについて、確認申請や検査など建築物に関する多くの規定を準用すると定めています。
つまり「建物ではないから関係ない」とは言えず、規模が一定を超えれば手続きが必要になるということです。
どのくらいの規模から対象になるかは、政令が構造物の種類ごとに具体的な高さで区切っています。
次の項で、その基準を確認します。
工作物は建築物じゃないから、うちには関係ないと思ってました。
工作物でも規模が基準を超えれば確認申請の対象になります。
次はどんな工作物が対象になるかを見てみましょう。
どんな工作物が対象になるのか

自分の敷地にある構造物がこの基準に当てはまるかどうかを、まず確認しましょう。
高さ6メートルを超える煙突、15メートルを超える鉄筋コンクリート造や鉄骨の柱、4メートルを超える広告塔や装飾塔、8メートルを超える高架水槽やサイロ、2メートルを超える擁壁の五つです。
いずれも高さだけで判定されるので、用途地域や構造の種類は関係ありません。
自社の敷地を見渡して、これらの高さに近い構造物がないか一つずつ測ってみることが第一歩です。
複数の設備が組み合わさっている場合は、それぞれを個別に判定します。
うちの煙突、結構高い気がするんですが、6メートルってどれくらいですか。
2階建ての屋根より少し高いくらいのイメージです。
正確な高さは実際に測ってみるのが確実ですよ。
対象になるとなにを求められるのか

建築物と同じように、着工前と完成後のそれぞれで手続きが必要になります。
第八十八条第一項は、確認申請を定める第六条や、完了検査を定める第七条をはじめ、建築物に適用される多くの規定を工作物にも準用しています。
つまり、工事に着手する前に確認申請書を提出して確認済証の交付を受け、工事が完了したら検査を申請して検査済証の交付を受ける、という流れは建築物とほぼ同じです。
維持管理についても、安全上重要なものは定期の報告や点検が求められる場合があります。
「工作物だから簡易でよい」という思い込みは禁物です。
確認申請って、建物を建てるときだけの話だと思ってました。
擁壁や煙突を作り直すときも同じ手続きが必要になります。
次は見落としやすいポイントを見てみましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

「前からあるものだから大丈夫」という判断が、思わぬ落とし穴になります。
第六条第一項のかっこ書きは、増築後に規模基準を満たすことになる場合も確認申請の対象に含めています。
この考え方は工作物にもそのまま準用されるため、たとえば高さ1.5メートルの擁壁に1メートルの擁壁を積み増して2メートルを超えれば、その時点で確認申請が必要になります。
「前からある工作物への追加だから確認は不要」という判断は誤りで、完成後の規模で判定される点に注意が必要です。
古い擁壁や煙突を改修する予定があるときは、着工前に高さを測り直しておくことをすすめます。
うちの擁壁、去年少し積み増した気がするんですけど、大丈夫でしょうか。
積み増した後の高さが2メートルを超えていないか、まず測ってみましょう。
超えている場合は、特定行政庁に相談することをおすすめします。
明日からなにを確認すればよいか

高さが基準に近いものは、実測して記録に残しておくと安心です。 敷地内の煙突・広告塔・高架水槽・擁壁・柱を一つずつ測ることから始めます。
いずれかが基準の高さを超えていれば、増改築の予定がなくても現状を記録しておきましょう。
増改築の予定があれば、着工前に特定行政庁や指定確認検査機関へ相談します。
すでに建っている工作物については、確認済証・検査済証の有無もあわせて確認しておくと安心です。
分かりました、まず敷地を一周して工作物の高さを確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
気になる工作物があれば、写真を撮って記録しておくとあとで役立ちますよ。
よくある質問
まとめ
うちの煙突や擁壁も一度測ってみます!
対象かどうかがよく分かりました!
分かりやすくご説明できて安心しました。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第八十八条(工作物への準用)
- 建築基準法施行令第百三十八条(工作物の指定等)
- 建築基準法第六条・第七条(建築物の建築等に関する申請及び確認・完了検査)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





