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地下街の建築設備定期検査は一般の建物と何が違うのか|換気・排煙・非常用照明・排水設備の22のチェックポイントを解説

地下街の非常用照明の床面照度を照度計で測定する女性検査員

地下街の店舗やオフィスに入居していると、通常の建築設備定期検査とは別の基準で検査を受けていることに気づかないまま報告時期を迎えるケースが少なくありません。
地下街は窓が無く自然排煙や自然採光に頼れないため、東京都は換気・排煙・非常用照明・排水の各設備に地下街専用の検査基準を定めています。
この基準は東京都建築基準法施行細則にもとづき東京都知事が別に定める告示によるもので、一般の建築物の検査結果表とは別枠で運用されています。
本記事では、地下街に設ける機械換気設備・排煙設備・非常用の照明設備・非常用の排水設備について、東京都独自の判定基準を5つの視点に整理して解説します。

うちのテナントは地下街に入っているんですが、定期検査で何を見られるのか一般のビルと同じなのかよく分かっていません。

地下街は換気・排煙・非常用照明・排水の4設備について、東京都独自の検査基準が使われます。
順番に見ていきましょう。

普通のビルとは違う基準があるなんて知りませんでした。

はい、東京都知事が別に定める告示にもとづいて、地下街だからこそ求められる項目が上乗せされています。
次から詳しく解説しますね。

この記事の結論
  • 地下街に設ける換気設備・排煙設備・非常用の照明設備・非常用の排水設備は、建築基準法施行令第128条の3にもとづく地下街特有の技術基準の対象です。
  • 検査の項目・方法・判定基準は東京都知事が別に定めており、一般の建築設備の検査結果表とは異なる枠組みで運用されます
  • 機械換気設備は床面積が1,000平方メートルを超えるかどうかで第一種・第二種の区分が変わります。
  • 排煙口は一の開放で自動的に作動を開始し、防煙区画ごとに定められた排出能力を満たさなければなりません。
  • 非常用の照明設備は地下道の床面で10ルクス以上の照度を30分間確保できることが判定基準です

地下街の建築設備検査で東京都独自に上乗せされる基準を示すインフォグラフィック

地下街の機械換気設備はどこを確認するのか

地下街の給気口と排気口の前を点検する検査員
地下街は窓や外壁が無いため、新鮮な外気を機械で送り込むことが唯一の換気手段になります。
検査ではまず、換気の方式そのものが構えの規模に見合っているかどうかを確認します。
換気設備/機械換気設備 検査事項 換気方式等について、どのような場合に是正が必要と判定されるか。
判定基準 東京都建築安全条例第73条の12第1項各号の規定に適合しないこと。(検査方法:目視により確認する。)
地下街の換気は、構えの床面積によって設けるべき方式が変わります。
給気又は排気の対象となる床面積の合計が1,000平方メートルを超える場合は第一種換気設備、それ以下なら第一種又は第二種換気設備を設けることが求められます。
換気量は給気口の同一断面内から5箇所の風速を測定し算出したうえで、機械換気設備が床面積1平方メートルごとに毎時30立方メートル以上の新鮮外気を供給できるかを確認します。
停電時に予備電源で作動するかどうかもあわせて検査され、給気口・排気口の前に物品が置かれ換気の妨げとなっていないかも判定基準に含まれます。
調理室や附属する蓄電池室には専用の排気設備を設けることも、東京都建築安全条例第73条の14で別途求められています。

うちの店舗、換気口の前に段ボールを積み上げてしまっているかもしれません。

それは換気の妨げとなる物品とみなされてしまいます。
検査までに周囲を片付けておきましょう。

地下街の排煙設備で手動開放装置と防煙区画はどう確認するのか

地下街の排煙口にある手動開放装置を操作する検査員
排煙口は火災時に人の手で開けられることも想定されており、誰でも迷わず操作できることが前提になります。
検査ではまず、その手動開放装置が正しい位置に設けられ、確実に作動するかどうかを確認します。
排煙設備/機械排煙設備の排煙口の外観 検査事項 手動開放装置の設置状況について、どのような場合に是正が必要と判定されるか。
判定基準 周囲に障害物があり操作できないこと。(検査方法:目視により確認する。)
手動開放装置は、誰の手も届く位置に障害物なく設けられていなければなりません。
操作する部分は壁に設ける場合床面から0.8mから1.5m、天井から吊り下げる場合はおおむね1.8mの高さに設けることが基準です。
装置を操作すると排煙口が連動して開放すること、開放後は常時閉鎖状態を保持し気流で不意に閉じたり著しい振動が生じたりしないことも確認します。
排煙風道が防煙壁など防煙区画を貫通する部分は、すき間をモルタルその他の不燃材料で埋めているかどうかもあわせて見るポイントです。

排煙口のレバーの前に、看板を置いてしまっていました。

それだと障害物があり操作できないと判定されてしまいます。
火災時にすぐ手が届く状態にしておいてください。

地下街の排煙設備の性能・予備電源・配線はどう判定するのか

風速計で排煙風量を測定する検査員
排煙口は開くだけでなく、実際にどれだけの煙を排出できるかという能力そのものが問われます。
あわせて、停電時に確実に電気が届くかどうかも検査の対象です。
排煙設備/機械排煙設備の排煙口の性能 検査事項 排煙口の排煙風量は、どのような方法で測定し算出するか。
検査方法 排煙口の対角線上の5点において風速計を用いて1点につき30秒以上継続して風速を測定し、Q=60AVmの式により排煙風量を算出する。
排煙口は、一箇所を開けるだけで自動的に作動を始めなければなりません。
排煙口の一の開放により排煙機が自動的に作動を開始し、防煙区画1つあたり1秒間に5立方メートル以上(1台の排煙機が2以上の防煙区画を受け持つ場合は10立方メートル以上)の排出能力を持つことが求められます。
予備電源についても、常用電源が断たれた際に自動的に切り替えられることと、実際に作動することの両方を確認します。
配線は他の電気回路と接続しないこと、途中に一般の人が容易に電源を遮断できる開閉器を設けないこと、そして耐熱処理された電線を地下道の主要構造部に埋設していることまで、目視と回路計でチェックします。

排煙口を開けたらすぐに煙を吸い出してくれるということですか。

そのとおりです。
防煙区画ごとに決められた風量を確実に出せるかまで、実測して確認します。

地下街の非常用照明設備はどこを確認するのか

地下道の床面照度を照度計で測定する検査員
地下街の地下道は窓が無いため、停電すればまったくの暗闇になってしまいます。
そのため非常用の照明設備には、一般の建築物よりも踏み込んだ基準が設けられています。
非常用の照明設備/照度 検査事項 照度の状況について、どのような場合に是正が必要と判定されるか。
判定基準 昭和44年建設省告示第1730号第1第一号の規定に適合しないこと。(検査方法:最も暗い部分の床面のうち水平床面で低照度測定用照度計により測定する。)
地下道の床面は、最も暗い場所でも一定の明るさを確保しなければなりません。
判定基準となるのは10ルクス以上の照度で、最も暗い部分の水平床面を低照度測定用の照度計で実測して確認します。
換気口と同じように、照明の妨げとなる物品が放置されていないかも判定基準に含まれます。
予備電源は常用電源が断たれると自動で切り替わり、30分間継続して照度を確保できることが判定基準で、作動状況と点灯時間の両方を確認します。
配線も排煙設備と同じく、他の回路と接続しないこと、容易に遮断できる開閉器を設けないこと、耐熱処理された電線を使うことまでチェックされます。

10ルクスって、実際どれくらいの明るさなんでしょうか。

非常灯だけで足元がぼんやり見える程度の明るさです。
停電時に避難できる最低限の照度として定められています。

地下街の非常用排水設備の予備電源と配線はなぜ排煙・照明と同じ基準なのか

非常用排水設備の予備電源盤と配線を確認する検査員
排水設備は目立たない存在ですが、浸水時にポンプが止まれば地下街全体が水没しかねません。
だからこそ排水設備の電気系統も、排煙・照明とまったく同じ枠組みで検査されています。
非常用の排水設備/予備電源 検査事項 予備電源への切替え及び作動状況について、どのような場合に是正が必要と判定されるか。
判定基準 昭和44年建設省告示第1730号第1第二号の規定に適合しないこと。(検査方法:予備電源への切替え及び作動状況を確認する。)
排煙・照明・排水の3系統は、いずれも同じ考え方で電気系統を確認します。
排水設備も常用電源が断たれた場合に自動的に予備電源へ切り替わり作動することが判定基準で、配線も他の回路と接続しないこと、容易に遮断できる開閉器を設けないことが求められます。
これら3系統に共通する基準がすべて同じ昭和44年建設省告示第1730号にもとづくのは、地下街には窓が無く自然排煙も自然採光もできないためです。
火災や浸水で停電しても、排煙・照明・排水のどれか一つでも止まれば避難の生命線が断たれてしまうからこそ、東京都はこの3設備をまとめて同じ水準で検査するよう定めています。

排水設備まで排煙と同じ基準だなんて、正直つながりが見えていませんでした。

地下街では電気が止まった瞬間がいちばん危険なんです。
だからこそ3つの設備をまとめて確認する意味があります。

よくある質問

Q地下街の建築設備定期検査は、一般の建築物の検査と何が違うのですか?
A検査の項目・方法・判定基準が東京都知事が別に定める告示にもとづいており、一般の建築物の検査結果表とは別の枠組みで運用される点が違います。
Q機械換気設備は、どんなときに第一種換気設備が必要になりますか?
A給気又は排気の対象となる床面積の合計が1,000平方メートルを超える場合に、第一種換気設備が必要になります。
Q排煙口の排出能力はどれくらい必要ですか?
A防煙区画1つあたり1秒間に5立方メートル以上(1台の排煙機が2以上の防煙区画を受け持つ場合は10立方メートル以上)の排出能力が必要です。
Q非常用の照明設備は、地下道の床面でどれくらいの照度が必要ですか?
A最も暗い部分の水平床面で10ルクス以上の照度を、予備電源によって30分間継続して確保できることが必要です。

まとめ

地下街に設ける換気設備・排煙設備・非常用の照明設備・非常用の排水設備は、建築基準法施行令第128条の3にもとづく地下街特有の技術基準の対象です。
検査の項目・方法・判定基準は東京都知事が別に定めており、一般の建築設備の検査結果表とは異なる枠組みで運用されます
機械換気設備は床面積が1,000平方メートルを超えるかどうかで第一種・第二種の区分が変わります。
排煙口は周囲に障害物がなく誰でも操作できる位置に手動開放装置を設けなければなりません。
排煙口は一の開放で自動的に作動を開始し、防煙区画ごとに定められた排出能力を満たす必要があります
非常用の照明設備は地下道の床面で10ルクス以上の照度を30分間確保できることが判定基準です。
排煙・照明・排水の3系統は同じ告示にもとづく予備電源と配線の基準を共有しており、停電時の機能維持が地下街の避難を支えています。

地下街だからこそ求められる基準があるとよく分かりました!
次の検査までに換気口まわりを見直しておきます。

それは安心です。
お困りの際は㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第12条・第35条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第128条の3(e-Gov法令検索)
  • 東京都建築基準法施行細則第12条・第13条
  • 東京都建築安全条例第73条の12〜第73条の14
  • 昭和44年建設省告示第1730号
  • 東京都告示第444号 別表(地下街に設ける建築設備の検査項目・判定基準)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。地下街の検査基準は東京都独自の運用であり、他の道府県では取り扱いが異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。

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