BLOG

建築設備の定期検査以外に建物の衛生環境にはどんな法定義務があるのか|廃棄物処理法から建築物衛生法まで解説

建物の衛生環境に関する法定義務を象徴する屋上設備の写真

建築設備の定期検査(12条点検)が対象にするのは、換気・排煙・非常用照明・給排水の4つの設備だけです。
しかし建物を維持するために所有者や占有者が負う法律上の義務は、この検査だけでは終わりません。
廃棄物の管理や下水道への排水、建物全体の衛生環境にも、それぞれ別の法律が維持管理の担当者を置くことを求めています。
建築設備の定期検査の対象外にある5つの法定義務を、根拠となる法律ごとに整理して解説します。

うちのビルはゴミ置き場や排水口の管理も、12条点検で一緒に見てもらえていますよね。

いいえ、廃棄物置き場や排水の水質管理は建築設備定期検査の対象には入っていません。
それぞれ別の法律が独自の管理を求めています

言われてみれば、排水の水質検査は別の業者さんに頼んでいる気がします。
建物全体の衛生環境も関係あるんですか。

はい、建物全体の衛生環境そのものが別の法律の対象になることもあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、土地や建物の占有者は敷地や建物の清潔を保つ努力義務を負います
  • 継続して有害な下水を流す事業場は下水道法に基づき除害施設の設置と水質測定を求められます
  • ばい煙や排出水を出す施設には大気汚染防止法・水質汚濁防止法により測定結果の記録・保存義務があります
  • 一定規模の特定工場では公害防止管理者と公害防止主任管理者の選任が義務づけられます
  • 多数の人が使う特定建築物では建築物衛生法に基づき建築物環境衛生管理技術者の選任が必要です

廃棄物処理法から建築物衛生法までの5つの法定義務を示す図解イラスト

廃棄物の処理及び清掃に関する法律は建物にどんな義務を課しているのか

廃棄物の清潔保持義務と技術管理者を示す図解イラスト
建物の清掃は日常業務のひとつに見えますが、実は法律で位置づけられた義務でもあります。
根拠になるのは廃棄物の処理及び清掃に関する法律です。
問1 建物の所有者や占有者には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律上どのような基本的な義務があるか。
答1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第5条第1項は、土地又は建物の占有者は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならないと定めている。また同条第3項は、建物の占有者に対し建物内を全般にわたって清潔にするため市町村長が定める計画に従い大掃除を実施しなければならないと定めている。
建物の清潔保持は個々の設備の点検とは別の義務です
建築設備定期検査が換気・排煙・非常用照明・給排水の機能を確認するのに対し、この規定は敷地や建物全体の衛生状態そのものを対象にしています。
市町村長が定める清掃計画に従った大掃除の実施は、努力義務ではなく実施義務として条文に書かれています。
さらに自らごみ処理施設や産業廃棄物処理施設を設置する事業者は、同法第21条に基づき技術管理者を置き、施設の維持管理に関する技術上の業務を担当させなければなりません。
建物の清掃を外部委託している場合でも、計画そのものを誰が作成し管理しているかは確認しておく価値があります。

うちのビルは清掃業者さんに任せているので、法律の話だとは思っていませんでした。

建物の清潔保持は廃棄物処理法第5条にも書かれている義務です。
清掃計画の有無も一度確認してみましょう

下水道に排水する建物には下水道法上どんな検査が必要なのか

下水道の除害施設と水質測定義務を示す図解イラスト
飲食店の厨房排水や工場排水を継続して流す建物には、排水そのものへの規制もあります。
根拠は下水道法です。
問2 公共下水道へ継続して排水する建物には、下水道法上どのような設備や検査が求められるか。
答2 下水道法第12条は、著しく公共下水道の施設の機能を妨げるおそれのある下水を継続して排除する者に対し、条例で下水による障害を除去するために必要な施設(除害施設)を設けることを定めることができるとしている。さらに同法第12条の12は、継続して政令で定める水質の下水を排除する者等に対し、当該下水の水質を測定し、その結果を記録しておかなければならないと定めている。
排水は流しっぱなしにできる設備ではありません
飲食店の厨房や工場排水など、公共下水道の機能を妨げるおそれのある排水を継続して出す建物は、条例で除害施設の設置を求められることがあります。
除害施設の有無にかかわらず、対象となる水質の下水を出す者は水質の測定と記録の保存を自ら行わなければなりません。
建築設備定期検査の給排水設備の検査は設備が正常に機能しているかを見るもので、この水質測定義務とは目的も根拠法も異なります。
テナントの入れ替えで厨房業態が増えたときは、除害施設の要否を改めて確認するとよいでしょう。

テナントに飲食店が入ったとき、下水道の届出が必要だと言われたことがあります。

それはこの除害施設の話だと思われます。
水質の測定結果も記録に残しておく必要があります

大気汚染防止法と水質汚濁防止法は何を測定させているのか

大気汚染防止法と水質汚濁防止法の測定義務を示す図解イラスト
自家発電設備や冷却塔を持つ建物は、大気や水への影響も法律の対象になります。
根拠になるのは大気汚染防止法と水質汚濁防止法です。
問3 ばい煙を発生させる施設や排出水を出す施設には、大気汚染防止法・水質汚濁防止法上どんな義務があるか。
答3 大気汚染防止法第16条は、ばい煙排出者に対し当該ばい煙発生施設に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し、その結果を記録し、これを保存しなければならないと定めている。水質汚濁防止法第14条第1項も同様に、排出水を排出する者に対し当該排出水の汚染状態を測定し、その結果を記録し、これを保存しなければならないと定めている。
測定して終わりではなく記録の保存まで義務です
自家発電設備のボイラーや冷却塔など、施設の種類によってはばい煙発生施設に該当し、大気汚染防止法の測定義務がかかることがあります。
排出水についても同様で、水質汚濁防止法上の特定施設に当たる場合は排出水の汚染状態を測定し記録を保存しなければなりません。
建築設備定期検査には含まれない測定項目なので、自社の設備がどちらかの対象施設に当たるかは設置時の届出内容を確認するのが確実です。
記録の保存期間や様式は環境省令で定められているため、様式まで含めて専門業者に確認しておくと安心です。

うちの建物にも、ばい煙を出す施設があるのか正直分かりません。

自家発電設備やボイラーが該当することがあります。
設置時の届出書類を確認してみましょう

特定工場ではなぜ公害防止管理者を置かなければならないのか

特定工場における公害防止管理者の選任を示す図解イラスト
ばい煙や排出水の測定を実際に担当させる責任者を選ぶ義務も、別の法律にあります。
根拠は特定工場における公害防止組織の整備に関する法律です。
問4 一定規模の工場には、公害防止に関してどのような管理者の選任が義務づけられているか。
答4 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律第4条は、特定事業者に対し主務省令で定めるところにより公害防止管理者を選任しなければならないと定めている。さらに同法第5条は、特定工場が政令で定める要件に該当するときは公害防止主任管理者を選任しなければならないと定めている。
管理者は資格を持つ人でなければ選任できません
ばい煙発生施設や汚水等排出施設を持つ特定工場に該当すると、この法律に基づく選任義務が生じます。
公害防止管理者は法定の資格を持つ者から選任しなければならず、公害防止主任管理者はさらに上位の資格者を充てる必要があります。
オフィスビルであっても自家用の大型ボイラーや冷却設備を持つ建物は特定工場に該当する場合があるため、規模の基準は個別に確認が必要です。
選任を怠ると法律上の義務違反になるため、設備更新のタイミングで該当性を見直すことをおすすめします。

公害防止管理者なんて、工場だけの話だと思っていました。

規模によってはオフィスビルでも対象になり得ます。
設備の規模を一度確認しておきましょう

建築物衛生法(ビル管理法)は特定建築物にどんな管理を求めているのか

建築物衛生法の環境衛生管理基準と管理技術者を示す図解イラスト
多数の人が使うビルには、換気や給排水の管理そのものを求める法律もあります。
根拠は建築物における衛生的環境の確保に関する法律、通称ビル管理法です。
問5 多数の人が使用する建築物には、建築物における衛生的環境の確保に関する法律上どんな管理基準があるか。
答5 建築物における衛生的環境の確保に関する法律第4条第1項は、特定建築物の維持管理について権原を有する者に対し、政令で定める建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をしなければならないと定めている。同条第2項はこの基準について空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置を定めるものとしている。さらに同法第6条は、特定建築物所有者等に対し建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならないと定めている。
空気と水の管理は建築設備定期検査と重なって見えます
建築物衛生法(通称ビル管理法)が定める管理基準には空気環境の調整や給水・排水の管理が含まれ、建築設備定期検査の換気設備・給排水設備と対象が重なって見えます。
ただし建築設備定期検査は設備の機能そのものを検査するのに対し、この法律は延べ面積等の要件を満たす特定建築物の維持管理を継続的に行う体制を求めるもので、根拠法も義務の性質も別物です。
特定建築物に該当する所有者等は建築物環境衛生管理技術者免状を持つ者を選任し、維持管理が基準どおり行われるよう監督させなければなりません。
自社の建物が特定建築物に該当するかどうかは、延べ面積や用途を政令の要件と照らし合わせて確認しましょう。

換気や給排水の管理は、12条点検で全部見てもらっていると思っていました。

建築物衛生法は特定建築物の維持管理そのものを求める別の法律です。
延べ面積などの要件を確認しておきましょう

よくある質問

Q廃棄物処理法の清潔保持義務を守らないと罰則があるのか?
A第5条自体に直接の罰則はありませんが、建物の維持管理の基本になる義務として位置づけられています。放置すると近隣とのトラブルや行政指導につながるおそれがあります。
Q下水道法の水質測定義務を怠るとどうなるのか?
A対象になる下水を継続して排除している場合、水質の測定・記録・保存を怠ると下水道法上の義務違反になります。除害施設の設置を怠った場合も条例違反として是正を求められることがあります。
Qオフィスビルでも公害防止管理者が必要になることはあるのか?
A特定工場に該当する規模のばい煙発生施設や汚水等排出施設を自家用に持つ建物であれば、業種を問わず選任義務が生じ得ます。
Q建築物衛生法の特定建築物に該当するかはどこで確認できるのか?
A延べ面積や用途は同法施行令で定められています。該当するかどうかは建築物環境衛生管理技術者や所轄の保健所に確認するのが確実です。

まとめ

建築設備定期検査は換気・排煙・非常用照明・給排水の4設備が対象で、それ以外の衛生・環境管理義務は別の法律に基づきます
廃棄物の処理及び清掃に関する法律は建物の占有者に敷地・建物の清潔保持を求めます
自ら廃棄物処理施設を設置する事業者には技術管理者の選任義務があります
継続して排水する建物は下水道法に基づき除害施設の設置と水質測定を求められることがあります
ばい煙・排出水を出す施設には大気汚染防止法・水質汚濁防止法上の測定・記録・保存義務があります
特定工場に該当する規模の設備を持つと公害防止管理者・公害防止主任管理者の選任が必要です
多数の人が使う特定建築物は建築物衛生法(ビル管理法)に基づき建築物環境衛生管理技術者の選任が必要です

衛生・環境の法律にも建物の管理義務があったんですね
一度、自社の設備がどれに当てはまるか整理してみます!

該当する義務は建物の用途や規模によって変わるので、専門家に確認するのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第5条(清潔の保持等)・第21条(技術管理者)
  • 下水道法第12条(除害施設の設置等)・第12条の12(水質の測定義務等)
  • 大気汚染防止法第16条(ばい煙量等の測定)
  • 水質汚濁防止法第14条(排出水の汚染状態の測定等)
  • 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律第4条(公害防止管理者の選任)・第5条(公害防止主任管理者の選任)
  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律第4条(建築物環境衛生管理基準)・第6条(建築物環境衛生管理技術者の選任)

※本記事は廃棄物処理法・下水道法・大気汚染防止法・水質汚濁防止法・特定工場における公害防止組織の整備に関する法律・建築物における衛生的環境の確保に関する法律の現行条文に基づく一般的な解説です。実際に適用される基準や該当性は建物の用途・規模・排水や排出の内容によって異なります。個別の判断は各分野の専門業者、または所轄の行政機関にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
建物の衛生環境に関する法定義務を象徴する屋上設備の写真
建築設備の定期検査(12条点検)が対象にするのは、換気・排煙・非常用照明・給排水の4つの設備だけです。 しかし建物を維持するために所有者や占有者が負う法律上の義務は、この検査だけでは終わりません。 廃棄物の管理や下水道へ...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →