海外の工場で組み立てられた液体危険物タンクが、そのまま日本国内の製造所や一般取扱所に運び込まれることがあります。
到着したタンクは周辺の配管や機器と一体になった「ユニット」の状態で輸入されるため、国内で改めて水張試験や水圧試験を行うことが難しくなります。
この場合に市町村長等がどのように検査を進めるのか、消防法令には具体的な取扱いが示されています。
海外の検査機関が作成した検査報告書を活用して、水張検査・水圧検査を実施できる仕組みを解説します。
海外から仕入れたタンクを据え付けたいのですが、そのままでは水張検査を受けられないと言われました。
ユニットのまま運ばれてきたので、タンクだけ取り外すのも大変で困っています。
海外で行われた水張試験や水圧試験の結果を、検査報告書として活用できる場合があります。
タンクを傷めずに国内の検査基準を満たせる仕組みです。
報告書さえあれば、どの海外の会社が検査したものでも大丈夫なのでしょうか。
いいえ、技術的な能力と経理的基礎を持つ機関に限られています。
条件を一緒に確認していきましょう。
- 指定数量以上の液体危険物タンクが、周辺機器と一体化した状態で輸入される事例が増えている
- ユニットから取り外すと試験の実施が困難なタンクが対象になる
- 海外の公正かつ中立な検査機関が作成した検査報告書を、市町村長等の水張検査・水圧検査に活用できる
- 検査機関は技術的能力と経理的基礎を有するものに限られる
- 報告書には検査結果・方法・手順・検査責任者等が明確にされている必要がある
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目次
なぜ海外製のタンクは水張検査を行いにくいのか

海外で製作されたタンクも、同じ検査を受ける対象になります。
指定数量以上の液体危険物タンクを持つ製造所や一般取扱所は、タンク本体の工事の段階で、水張試験または水圧試験を含む検査を受けなければなりません。
国内で組み立てる場合は、タンク単体の状態で試験を行えます。
ところが海外から輸入されるタンクは、配管や周辺機器と一体化した「ユニット」の状態で届くことが増えており、その場合に試験をどう実施するかが問題になります。
完成検査の前に、もう一段階検査があるんですね。
知りませんでした。
はい、タンク本体だけを対象にした検査です。
次は対象になるタンクの条件を見ていきましょう。
どんなタンクがこの取扱いの対象になるのか

政令が定める工事の区分と、実際にユニットから取り外せるかどうかがポイントです。
実務では、附属設備を取り付ける前のタンク本体の工程が対象になり、製造所または一般取扱所のユニットに組み込まれた状態で輸入され、組み上げた後にタンクだけを取り外すと試験の実施が困難なものが想定されています。
組み上げの際に塗装を剥がすなどの処理を行えばタンク単体で試験できますが、それでは損傷を与えて安全性を損なうおそれがあります。
だからこそ、輸入前の段階で試験を済ませておく方法が必要になります。
うちのタンクも、周りの配管ごと届いたので当てはまりそうです。
その場合は、輸入前に行われた試験の結果を活用できないか確認する価値があります。
市町村長等はどうやって検査を行うのか

基準そのものが変わるわけではありません。
総務省消防庁の通知(平成十三年三月二十三日消防危第三十五号)では、海外の公正かつ中立な検査機関が実施した試験がこの基準と同等以上であることが確認できる場合、その検査報告書を活用して市町村長等が水張検査または水圧検査を実施して差し支えないとされています。
報告書には、漏れや変形が生じなかったことが検査機関によって確認されている必要があります。
タンクを分解し直す必要がなくなる分、施工上の安全性も保ちやすくなります。
報告書さえ提出すれば、市町村の検査そのものは受けなくてよいのですか。
いいえ、市町村長等が報告書の内容を確認したうえで検査を実施する形です。
省略できるのは分解や再試験の手間だけです。
どんな検査機関でもよいわけではないのか

確認すべき条件がいくつか定められています。
- 製造所または一般取扱所のユニットに組み込まれた状態(周辺機器が接続され、塗装等の処理が施され、その状態では水張試験または水圧試験の実施が困難なもの)で輸入されるタンクであること
- 試験を行った検査機関が、技術的能力および経理的基礎を有するものであること
- 漏れまたは変形しないものであることが、検査結果・方法・手順・検査状況・検査責任者等を明確にした検査報告書で確認できること
消防庁の通知では、ロイズ・レジスターやビューロ・ベリタスなど、公正かつ中立な検査機関の例が示されています。
例示された機関以外であっても、同等の技術的能力と経理的基礎を備えていれば対象になり得ますが、その確認は市町村長等が行います。
自己判断で「海外の検査済みだから大丈夫」と決めつけないことが大切です。
取引先が指定した機関が、この条件に合うか分かりません。
その場合は輸入計画の段階で所轄の消防機関に相談しておくと安心です。
明日から何を確認すればよいのか

検査報告書が届いてからでは間に合わないこともあります。
- タンクが製造所または一般取扱所のユニットに組み込まれた状態で輸入されるかどうか
- 試験を行う予定の検査機関が、技術的能力と経理的基礎を備えているといえるか
- 検査報告書に検査結果・方法・手順・検査状況・検査責任者が明記される予定か
完成検査前検査の申請時期は工事の工程ごとに定められており、タンク本体の工事に合わせて申請する必要があります。
報告書の様式や記載内容について、事前にすり合わせておけば、輸入後の手戻りを防げます。
海外の取引先とやり取りする前に、この段階を一度社内で共有しておきましょう。
次にタンクを輸入するときは、先に消防署へ相談してみます。
それが一番の近道です。
工事の工程を決める前に確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
ユニットのまま輸入しても、あきらめずに相談してみます!
輸入計画の早い段階でご相談いただくのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第11条の2第1項
- 消防法施行令第11条第1項第4号
- 危険物の規制に関する政令第8条の2
- 平成13年3月23日消防危第35号(総務省消防庁通知)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





