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危険物施設の複数の変更工事はなぜ区分ごとに完成検査を受けられるのか|仮使用の承認を使った段階的な手続きを解説

危険物施設の複数の変更工事はなぜ区分ごとに完成検査を受けられるのかを解説するアイキャッチ画像

危険物施設のタンクや配管を一度にすべて工事すると、工事が終わるまで施設全体を使えなくなってしまいます。
実は、施設の中で工事をしていない部分だけを先に使えるようにする仮使用の承認という手続きがあります。
1つの許可工事を複数の区分に分け、区分ごとに完成検査と仮使用の承認を段階的に受けていく方法です。
消防法第11条第5項ただし書が定める仮使用の承認を使った、区分ごとの手続きの進め方を解説します。

施設の一部だけを変更する工事なのに、完成検査が終わるまで施設全体を止めないといけないのでしょうか。
他の部分は普通に使えているのに困っています。

工事に関係ない部分は、承認を受ければ完成検査の前でも使い続けられます。
区分の分け方から一緒に確認していきましょう。

変更許可と仮使用の承認って、同時に申請するものではないのですか。

同時に申請できる場合もありますが、区分を分けて段階的に進める場合は少し流れが違います。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 施設の位置・構造・設備を変更するときは変更の許可を受け、完成検査を受けなければ使用できないのが原則
  • 変更工事に係る部分以外の部分は、市町村長等の承認を受ければ完成検査の前でも仮に使用できる
  • 1つの施設内で変更工事を複数の区分に分ければ、区分ごとに許可・完成検査・仮使用の承認を段階的に進められる
  • 仮使用の承認を受けるには火災予防上の措置を記載した書類を添えて申請する必要がある
  • 変更の許可と仮使用の承認を同時に申請できる専用様式もあるが、区分を分けた段階的な進め方とは使い分けが必要

区分ごとに完成検査を受けられる仕組みを示す図解(区分を決める・区分ごとに許可・完成検査・仮使用の承認の4ステップ)

なぜ1つの変更工事を区分に分けて進められるのか

危険物施設の一部だけが変更工事で足場に囲まれている様子
大規模な危険物施設ほど、変更工事が終わるまで全体を止めてしまうと事業への影響が大きくなります。
そこで消防法は、変更工事をしていない部分だけを先に使い続けられる仕組みを用意しています。
消防法第十一条第五項 第一項の規定による許可を受けた者は、製造所、貯蔵所若しくは取扱所を設置したとき又は製造所、貯蔵所若しくは取扱所の位置、構造若しくは設備を変更したときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所につき市町村長等が行う完成検査を受け、これらが前条第四項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。ただし、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更する場合において、当該製造所、貯蔵所又は取扱所のうち当該変更の工事に係る部分以外の部分の全部又は一部について市町村長等の承認を受けたときは、完成検査を受ける前においても、仮に、当該承認を受けた部分を使用することができる
完成検査を受ける前でも、工事に関係ない部分は承認を受ければ使い続けられます
これが仮使用の承認と呼ばれる制度です。
1つの施設の中で変更工事を複数の区分に分ければ、この仮使用の承認を区分ごとに使いながら、許可・工事・完成検査を段階的に進めることができます。
工期が重なる工事でも、工期がずれる工事でも、考え方は同じです。

完成検査を待たずに使える部分があるとは知りませんでした。

はい、条件を満たす部分に限られます。
次はどの部分が対象になるかを見ていきましょう。

どんな部分なら仮使用の承認を受けられるのか

変更工事をしていない部分に仮使用の承認のマークが付く様子
仮使用の承認は、施設のどの部分にでも使えるわけではありません。
対象になるのは、あくまで変更工事に関係のない部分です。
危険物の規制に関する規則第五条の二(仮使用の承認の申請) 法第十一条第五項ただし書の製造所等の仮使用の承認を受けようとする者は、別記様式第七の申請書に変更の工事に際して講ずる火災予防上の措置について記載した書類を添えて同条第一項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める市町村長、都道府県知事又は総務大臣(以下「市町村長等」という。)に提出しなければならない。
申請には、火災予防上の措置を記載した書類を添える必要があります
対象になるのは、条文どおり変更の工事に係る部分以外の部分の全部または一部です。
工事中の部分そのものは、たとえ工事が一部完了していても仮使用の対象にはなりません。
どこまでを「工事に係る部分」とするかは、区分の切り方によって変わるため、事前の整理が重要になります。

工事している部分そのものは、やっぱり仮使用できないんですね。

そのとおりです。
だからこそ、次は許可から完成検査までの順番を確認しましょう。

許可と完成検査と仮使用の承認はどんな順番で進むのか

変更許可の書類と完成検査で使う検査器具
区分ごとに手続きを進めるといっても、根拠になる条文は1つの区分ずつに繰り返し当てはまります。
まず、変更許可がどんな場合に必要かを確認します。
消防法第十一条第一項(抜粋) 製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、(略)許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする
区分ごとに変更許可を受け、その区分の工事が終わったら完成検査を受けます
実務の流れはおおむね次のとおりです。
最初に区分ごとの変更許可を受け、工事が終わった区分から順に完成検査を受けて完成検査済証の交付を受けます。
まだ工事に入っていない区分や工事が終わっていない区分については、その都度、仮使用の承認を受けて使い続けます。
区分の数だけこの流れを繰り返すことになります。

区分ごとに許可番号も別々になるということでしょうか。

はい、区分ごとの申請になるので許可の単位も分かれます。
次は見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

変更工事中の部分の入口に立入禁止のマークが付く様子
区分を分けて進める方法は便利ですが、誤解しやすい点もあります。
とくに「同時に申請できる様式がある」ことと混同しやすいので注意が必要です。
危険物の規制に関する規則第五条の三(変更の許可及び仮使用の承認の同時申請) 法第十一条第一項後段の規定による製造所等の位置、構造又は設備の変更の許可及び同条第五項ただし書の製造所等の仮使用の承認を同時に申請しようとする者は、第五条第一項及び前条の規定にかかわらず、別記様式第七の二又は第七の三の申請書によつて行うことができる
同時申請の専用様式は、あくまで1回の申請で済ませたい場合の選択肢です
区分を分けて段階的に完成検査を受けていく進め方では、区分ごとに別々のタイミングで許可や承認を受けることになるため、この専用様式をそのまま使えるとは限りません。
また、仮使用が認められるのは変更工事に係る部分以外だけという原則を忘れて、工事中の区分まで仮使用できると思い込んでしまう例もあります。
区分の境界と、それぞれの手続きの単位を図面上で一致させておくことが欠かせません。

同時申請の様式があるなら、区分を分けなくてもよい気がしてきました。

工期がまとまっているなら同時申請、工期がずれるなら区分を分けるなど、状況に応じた使い分けが必要です。
最後に確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

工事区分の図面とチェックリストを確認する机上の様子
複数の変更工事を計画するときは、着工前に確認しておきたいことがあります。
区分を決めてから工事に入ると、途中での見直しが難しくなります。
  • 施設内の変更工事を、どの範囲でいくつの区分に分けるか図面上で明確にする
  • 区分ごとの工期が重なるのか、ずれるのかを整理する
  • 仮使用の承認申請には、区分ごとに火災予防上の措置を記載した書類を添える準備をする
区分の分け方は、着工前に所轄の消防機関へ相談しておくのが確実です
区分の切り方によって、どこまでが仮使用の対象になるかが変わってきます。
完成検査済証が交付される順番も区分ごとに異なるため、社内の稼働計画ともあわせて整理しておきましょう。
図面と工程表をそろえたうえで相談すれば、手戻りを防ぎやすくなります。

次の工事では、区分の図面を先に消防署へ見てもらいます。

それが一番の近道です。
区分を決める前のご相談をお勧めします。

よくある質問

Q区分を分ければどんな工事でも仮使用の承認を受けられますか?
Aいいえ、対象になるのは変更工事に係る部分以外の部分だけです。工事中の部分そのものは仮使用できません。
Q変更許可と仮使用の承認は必ず別々に申請するのですか?
A必ずではありません。別記様式第七の二又は第七の三を使えば同時に申請できる場合もあります。
Q仮使用の承認の申請には何を添える必要がありますか?
A変更の工事に際して講ずる火災予防上の措置について記載した書類を添えて申請します。
Q区分の分け方は誰が決めるのですか?
A申請者側が工事計画に応じて区分を検討し、市町村長等と事前に相談しながら整理するのが一般的です。

まとめ

位置・構造・設備を変更するときは変更の許可を受け、完成検査を経なければ使用できないのが原則
変更工事に係る部分以外は、承認を受ければ完成検査の前でも仮に使用できる
仮使用の承認には火災予防上の措置を記載した書類を添えて申請する
1つの施設内の変更工事を複数の区分に分ければ、区分ごとに許可・完成検査・仮使用の承認を段階的に進められる
工事中の部分そのものは仮使用の対象にならない
変更許可と仮使用の承認を同時に申請できる専用様式もあるが、段階的な進め方とは使い分けが必要
区分の分け方は、着工前に所轄の消防機関へ相談しておくのが確実

区分を分けて進める道があると分かって安心しました!

区分の切り方次第で進め方が変わりますので、お早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第11条第1項
  • 消防法第11条第5項
  • 危険物の規制に関する規則第5条の2
  • 危険物の規制に関する規則第5条の3

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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