新築工事中の建物にも防火管理者を定める義務が生まれることがありますが、その義務がいつ終わるのかは意外と見落とされがちです。
建物の外観が仕上がり竣工検査を終えれば、義務も自然に消えると考えていないでしょうか。
実は消防庁の通知は、義務の終わりを工事の完成ではなく別の一点で区切っています。
この記事では消防安第43号をもとに、防火管理を義務づける期間の始まりと終わり、仮使用部分がある場合の扱いを整理します。
うちの現場はもうすぐ外観が仕上がるんですが、防火管理の義務っていつまで続くんでしょうか。
実は完成したから終わりではありません。
区切りになる一点があります。
一部の階だけ先に仮使用の承認を受けて入居が始まる予定なんですが、その部分も対象になりますか。
なります。
仮使用中の扱いも含めて順番に見ていきましょう。
- 防火管理の義務は規模要件を満たした時点から発注者への引渡しまで続く一続きの期間である
- 起点になるのは階数・延べ面積・地階面積の規模区分と外壁及び床又は屋根の要件がそろった時点
- 義務の対象であり続ける条件は建築物内部で電気工事等の工事が行われていること
- 終期は工事の完成ではなく発注者への引渡しであり、内部工事が続く限り義務は消えない
- 仮使用の承認を受けた部分も、引渡しまでの期間内なら防火管理の対象に含まれる
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目次
防火管理を義務づける期間はどこからどこまでなのか

通知はこの二つを一つの文でまとめて区切っています。
起点は次章で見る規模要件のいずれかに達した時、終点は発注者に引き渡されるときです。
ただし、ただ時間が経てば終わるのではなく、その間ずっと建築物内部で工事が行われていることが条件として付いています。
電気工事や設備工事、内装仕上工事のように内部の工事が続いている限り、外観がどれだけ仕上がっていても期間は続いているという読み方になります。
始まりと終わりが同じ通知の一文に書かれているとは知りませんでした。
次は起点になる規模要件を確認しましょう。
入口の条件を先に押さえておきます。
期間の起点になる規模要件とは何か

まずはどんな建築物が対象になるのかを確認します。
- 地階を除く階数が11以上で、かつ延べ面積の合計が1万平方メートル以上である建築物
- 延べ面積が5万平方メートル以上である建築物
- 地階の床面積の合計が5,000平方メートル以上である建築物
そのうえで消防法施行規則は、外壁及び床又は屋根を有する部分がこの規模に達し、かつ電気工事等の工事中であることを重ねて求めています。
つまり基礎工事や骨組みだけの段階ではまだ入口に立っておらず、外壁と床がそろって内部に工事が入る段階で初めて期間が動き出すということです。
この入口を過ぎたあとの話が、次章からの「いつまで続くのか」になります。
規模要件はあくまで入口の話で、期間そのものは別にあるんですね。
そのとおりです。
入口を過ぎたあとの終わり方を見ていきましょう。
義務が終わるのは工事の完成ではなくなぜ引渡しなのか

通知が指しているのは、もっと具体的な一点です。
- 工事の完成度や竣工検査の合否そのものではなく、発注者に引き渡されるという一点が終期になる
- 引渡し前に内部で電気工事や内装仕上工事等が続いていれば、そのあいだ義務は続く
建物の外観や主要な設備が仕上がっていても、まだ発注者に引き渡されておらず、かつ内部で電気工事や内装仕上工事等が続いているなら、その工事現場は引き続き義務の対象です。
逆にいえば、内部の工事がすべて終わって発注者への引渡しが済んだ時点で、この通知に基づく義務は外れることになります。
「もうほとんど出来上がっているから大丈夫」と防火管理を緩めるのではなく、引渡しの日がいつになるかで判断してください。
見た目が完成していても、内装工事が残っていれば義務は続くということですね。
はい、引渡しの日が基準です。
次は一部だけ先に使い始める場合を見ましょう。
仮使用の承認を受けた部分があると義務期間はどう変わるのか

その場合の扱いも、通知にはっきり書かれています。
建築基準法第七条の六第一項第一号に基づき仮使用の承認を受けて先に人が入居したり営業を始めたりしても、それは全体の引渡しが済んだこととは違います。
建物全体が発注者に引き渡されるまでの期間内であれば、仮使用部分を含めて防火管理の対象であり続けます。
「一部はもう使われているから対象外」という考え方は誤りで、工事中の部分と仮使用中の部分をあわせて一つの防火対象物として管理する必要があります。
仮使用が始まった部分だけ別扱いになるわけではないんですね。
そのとおりです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。
明日から工程表の何を確認すればよいのか

順番に四つ確認してください。
- 設計図面で階数・延べ面積・地階の床面積を確認し、規模要件に当たるか判定する
- 工程表で外壁及び床又は屋根が要件を満たす時期と、電気工事等が始まる時期を確認する
- 発注者への引渡し予定日を、管理権原者・防火管理者・所轄消防署の間で共有する
- 仮使用の承認申請がある場合は、その部分も含めて消防計画に反映する
規模要件に当たると分かった時点で、防火管理者の選任と消防計画の準備を始めます。
そのあとは引渡し予定日を関係者で共有しておけば、いつまで管理を続ければよいかで迷うことがなくなります。
仮使用の予定がある工事では、その部分を消防計画から漏らさないことが特に大切です。
まずは工程表に引渡し予定日を書き込むところから始めます。
それが一番確実です。
仮使用の予定もあわせて書き込んでおきましょう。
よくある質問
まとめ
引渡しの日を軸に考えればいいんですね。
すっきりしました。
規模要件は入口に過ぎず、引渡しまでが義務の本体です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 新築の工事中の建築物等に係る防火管理及び防火管理者の業務の外部委託等に係る運用について(平成16年3月26日 消防安第43号)
- 消防法施行令第一条の二第三項第二号(新築の工事中の建築物等の範囲)
- 消防法施行規則第一条の二(工事中の防火対象物における防火管理)
- 建築基準法第七条の六第一項第一号(仮使用の承認)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





