共同住宅の住戸と住戸を区切る壁について「共住区画」という基準があるのをご存じでしょうか。
これは消防法施行令第8条が定める「開口部のない耐火構造の区画」の考え方を、共同住宅向けに緩和した特例です。
とはいえ何でも自由になるわけではなく、構造のグレードや外壁の突き出しなど、確認すべき要件が残っています。
要件を1つずつ理解し、図面のどこを見ればよいかを押さえておきましょう。
うちのマンション、住戸と住戸の間の壁について消防から何か言われたことがあるんですが、令8区画と関係ありますか。
関係あります。共住区画という特例で、令8区画の考え方を共同住宅向けに緩和したものです。
緩和されているなら、あまり気にしなくてもよいということでしょうか。
いいえ、緩和されるのは構造のグレードだけです。外壁の突き出しなど、別に確認すべき点が残っています。
- 共住区画は消防法施行令第8条の考え方を共同住宅の住戸間に適用した特例です
- 構造のグレードは建築基準法施行令第107条相当でよく、令8区画より緩やかです
- 外壁には突き出しを設けるか、開口部を0.9メートル以上離す必要があります
- 共住区画があっても消火器や避難器具は既存不遡及の対象外です
- 消防法施行令第32条の特例とは別の制度で、要件に該当しなければ適用されません
▼

目次
共住区画とはどんな仕組みなのか

ただし一定の区画で仕切られていれば、その部分を別の防火対象物とみなせる場合があります。
一 開口部のない耐火構造(建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造をいう。)の床又は壁
「共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(昭和50年5月1日消防安49号ほかの消防庁通知)により、各住戸等間の区画を令8条の「開口部のない耐火構造の床又は壁」とみなす取扱いが示されました。
共同住宅は住戸ごとに壁で仕切られているのが通常の姿なので、この特例があることで各住戸を1つの単位として設備の設置基準を考えやすくなります。
ただし読み替えるだけで基準そのものがなくなるわけではなく、次の項目で見る構造要件を満たす必要があります。
うちの建物、住戸ごとに壁で仕切られているだけですが、それで共住区画になるんでしょうか。
壁があるだけでは足りません。構造や耐火性能の要件を満たして初めて共住区画として扱われます。
どんな共同住宅が対象になるのか

まず対象となる用途そのものの位置づけを押さえておく必要があります。
特例の名称にある「共同住宅等」は、令別表第一(五)項ロの寄宿舎や下宿も含む考え方です。
共同住宅は、令別表第一の中でも「特定防火対象物」に該当しない用途とされているため、既存の建物には別の配慮も働きます(この点は後の項目で扱います)。
まずは対象となる用途を確認したうえで、次に構造の要件を見ていきましょう。
うちは分譲マンションですが、これも共同住宅にあたりますか。
はい、分譲・賃貸を問わず共同住宅にあたります。次は壁の構造要件を見ていきましょう。
共住区画にはどんな構造が求められるのか

どちらも数値で基準が示されているので、図面で確認しやすい項目です。
鉄筋コンクリート造など堅牢な構造で、階数に応じて1時間から3時間の熱に耐える性能を持たせれば、共住区画としての構造要件を満たします。
これに加えて外壁側にも住戸間の延焼を防ぐための措置が求められ、ひさしや袖壁などの突き出しを設けるか、上下・左右の開口部を0.9メートル以上離すことが必要とされています。
突き出しを設けず開口部も離せない場合は、その開口部に防火戸を設けることになります。
うちのマンションは開口部同士の間隔がぎりぎりのようなんですが、大丈夫でしょうか。
0.9メートルに届かなければ、ひさしなどの突き出しか防火戸で補う必要があります。図面で採寸してみましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

既存の建物には別の制度も重なっているため、混同しないよう整理しておきます。
共同住宅は特定防火対象物に該当しないため、建設当時の基準に適合していれば現行基準への合わせ込みは不要とされています。
ただし消火器や避難器具など一部の設備は既存不遡及の対象から除かれており、常に現行基準が適用される点に注意が必要です。
また、共住区画は消防法施行令第32条の特例とは別の制度なので、「区画があるから設備を減らせる」と自己判断せず、要件を個別に確認することが欠かせません。
共住区画があれば、古いマンションの設備もそのままで問題ないということでしょうか。
消火器や避難器具は対象外です。既存不遡及の範囲を一緒に確認しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、確認の順番を整理しておきます。
- 対象の建物が令別表第一(五)項ロの共同住宅にあたるかを確認する
- 住戸間の壁・床が耐火構造で必要な時間の性能を満たしているかを図面で確認する
- 外壁にひさしや袖壁があるか、なければ開口部の間隔が0.9メートル以上あるかを採寸する
- 開口部が上下に重なる場合は防火戸が設けられているかを確認する
- 消火器や避難器具など既存不遡及の対象外の設備を別途洗い出す
まずは図面から確認していけばよいということですね。
はい、その順番で見ていけば迷わず判断できます。
よくある質問
まとめ
共住区画の考え方がよくわかりました。
図面を見直してみます。
判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第8条
- 消防法施行令別表第一(五)項ロ
- 消防法第17条の2の5
- 建築基準法施行令第107条第1号
- 「共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(昭和50年5月1日消防安49号、昭和61年12月5日消防予170号、平成7年10月5日消防予220号)消防庁通知
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





