甲種消防設備士が消防用設備等の工事に着手する日の10日前までに、着工届を消防長又は消防署長へ提出しなければならないことは広く知られています。
しかし届出日の起算点になる「工事に着手する日」そのものは、実は消防用設備等の種類ごとに異なる基準日として消防庁の通知で細かく定められています。
消火設備・警報設備・避難器具・パッケージ型設備で基準日の考え方はそれぞれ違い、令和5年の通知改正ではさらに対象設備が広がりました。
この記事では基準日の考え方と令和5年改正の内容を、消防庁の通知に基づいて解説します。
今度、うちのビルでスプリンクラーの増設工事をするんです。
着工の10日前という数え方がよく分からなくて。
実はその10日前の起算日は、設備の種類ごとに基準日という考え方で決まっているんです。
え、スプリンクラーなら工事に着手した日をそのまま数えればいいと思っていました。
消火設備は配管の接続工事や加圧送水装置の設置工事の日が基準になります。
令和5年の通知改正も含めて詳しく見ていきましょう。
- 着工届は工事に着手する日ではなく基準日という設備ごとの起算点から10日前までに提出します
- 消火設備の基準日は配管の接続工事又は加圧送水装置等の設置工事を行おうとする日です
- 警報設備の基準日は受信機の設置工事の日で、受信機工事を伴わない場合は感知器又は検知器設置の日になります
- 避難器具の基準日は取付金具の設置工事の日、パッケージ型消火設備は格納箱の取り付け工事の日です
- 令和5年の通知改正で旧285号通知は廃止され、対象設備が住宅用の自動火災報知設備等まで広がりました
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目次
工事に着手する日の10日前とはどの工事の日を指すのか

ただしこの「着手しようとする日」自体は、条文にも施行規則にも具体的な定義が書かれていません。
「工事に着手しようとする日」をどの作業の日と見るかは、消防庁の通知が消防用設備等の種類ごとに個別の基準日として定めています。
このため同じ「10日前ルール」でも、消火設備と警報設備では実際に数え始める作業日が違います。
自分の工事が何を基準日とするのかを知らないまま逆算すると、届出日を誤るおそれがあります。
次の見出しから、設備の種類ごとの基準日を順番に確認していきます。
条文には書いていないんですね。
てっきり法律に全部書いてあるのかと思っていました。
期限の日数は法律、起算点の中身は通知が担当しているんです。
消火設備と警報設備の基準日はどう決まるのか

どちらも「設備の心臓部にあたる工事の日」を基準にしています。
スプリンクラー設備や屋内消火栓設備などの消火設備は、各種ヘッドやノズルを直接取り付ける配管を除いた配管の接続工事、または加圧送水装置等の設置工事を行おうとする日が基準日です。
自動火災報知設備などの警報設備は、受信機の設置工事を行おうとする日が基準日で、受信機の工事を伴わない場合は感知器又は検知器の設置を行おうとする日になります。
つまりヘッドだけを増設する工事や、末端の感知器だけを増設する工事では、その取り付け日ではなく配管や受信機側の工事日から逆算する必要がある場合があります。
自分の工事にどの作業が含まれているかを、まず洗い出してください。
うちの工事は受信機の設置を伴わない感知器だけの増設なんですが、それでも基準日は決まっているんですか。
はい、その場合は感知器の設置工事を行う日そのものが基準日になります。
避難器具とパッケージ型設備の基準日はどう決まるのか

どちらも設備を建物に固定する工事の日が基準です。
金属製避難はしごや緩降機などの避難器具は、取付金具の設置に係る工事を行おうとする日が基準日です。
パッケージ型消火設備は格納箱の取り付け工事の日、パッケージ型自動消火設備は放出口を直接取り付ける部分を除いた放出導管の接続工事の日が基準日になります。
どちらも、器具本体を搬入した日や試運転の日ではなく、建物側に固定する工事の日で数える点に注意が必要です。
パッケージ型設備を検討している場合は、格納箱や放出導管の据え付け予定日を先に業者と確認しておくと逆算しやすくなります。
避難はしごが届いた日を基準に数えていました。
搬入日ではなく、取付金具を固定する工事の日で数えるのが正しい起点です。
令和5年の通知改正で基準日の対象設備はどう広がったのか

古い通知のまま覚えていると対象設備の数を見誤ります。
それまで基準日を定めていた平成5年消防予第285号の通知は廃止され、令和5年の新しい通知に一本化されています。
新しい基準日の一覧は、消火設備・警報設備・避難器具に加えて、共同住宅用スプリンクラー設備・特定駐車場用泡消火設備・共同住宅用自動火災報知設備・住戸用自動火災報知設備・特定小規模施設用自動火災報知設備・複合型居住施設用自動火災報知設備まで、あわせて8区分に広がりました。
このうち共同住宅用スプリンクラー設備と特定駐車場用泡消火設備は消火設備と同じ配管接続工事等の日、残る自動火災報知設備の4種は警報設備と同じ受信機設置工事の日を基準日とする扱いです。
共同住宅や小規模施設の工事を扱う場合は、この令和5年の一覧に沿って基準日を確認してください。
古い通知の番号で調べても出てこないわけですね。
そうなんです、令和5年消防予第196号が現行の根拠になります。
基準日を勘違いしないために何を確認すればよいのか

基準日の判断そのものは業者任せにせず、発注者側も一緒に押さえておくと安心です。
- 工事内容が消火設備・警報設備・避難器具・パッケージ型設備のどれに当たるかを最初に確認する
- その設備区分の基準日(配管接続、受信機設置、取付金具、格納箱等の工事日)を業者に確認する
- 基準日から10日前までに着工届が提出できるよう、逆算して工程を組む
- 共同住宅・駐車場・小規模施設向けの設備は令和5年の一覧で基準日が定まっているか確認する
基準日を実際より後ろの作業日だと思い込むと、届出が10日前に間に合わなくなるおそれがあります。
逆に基準日を早い時期の作業だと思い込むと、必要以上に前倒しでスケジュールを組んでしまいます。
発注段階で甲種消防設備士に「この工事の基準日はどの作業になるか」を具体的に聞いておくのが確実です。
着工予定日が決まったら、基準日から10日前までに届出が済む日程かを必ず確認してください。
発注のときに、その一言を業者さんに聞いておけばいいんですね。
その一言があるだけで、着工直前の慌ただしさがかなり減ります。
よくある質問
まとめ
基準日さえ間違えなければ、届出のタイミングで慌てずに済みそうです!
基準日の確認でお悩みでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 設置届及び着工届の添付図書等に関する運用について(令和5年3月30日付け消防予第196号・消防危第68号)
- 消防用設備等の着工届に係る運用について(平成5年10月26日付け消防予第285号・消防危第81号、令和5年4月1日付けで廃止)
- 消防法第17条の14(着工届)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





