消防用設備等の増設や取替えをするたびに、着工届や設置届の書類をそろえるのは大変です。
実は工事の内容と数によっては、消防機関への届出や検査の一部を省略できる仕組みが用意されています。
令和5年に運用が見直され、設備の種類ごとに「軽微な工事」とみなされる範囲が数量で細かく決められました。
どの工事がどこまで省略できるのかを、消防用設備等に係る届出等に関する運用について(令和5年消防予第196号・消防危第68号)にそって解説します。
スプリンクラーのヘッドを何個か増やす工事をするんですが。
そのたびに消防署への届出は必要になるんでしょうか。
実は工事の内容と数によっては、届出や検査の一部を省略できる仕組みがあるんです。
それは知りませんでした。
うちの工事も対象になるのか知りたいです。
消防用設備等の種類ごとに数の基準が決まっているので、順番に確認していきましょう。
- 令和5年3月30日付け消防予第196号・消防危第68号により、消防用設備等の届出や検査の一部を省略できる運用が整理されました。
- 省略できるのは増設・移設・取替えの3区分だけで、新設・改造は対象外です。
- 軽微な工事の範囲は設備の種類ごとに数量で決まり、スプリンクラーヘッドは5個以下、自動火災報知設備の感知器は10個以下が目安です。
- 軽微な工事であっても設置届の提出そのものは省略できません。
- 避難器具の増設は範囲表で「該当なし」とされ、数にかかわらず軽微な工事になりません。
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目次
消防用設備等の届出はなぜ工事の内容で扱いが変わるのか

背景には、消防庁が設けた検討委員会での議論があります。
消防用設備等の手続きは、法第17条の14に基づく着工届と、法第17条の3の2に基づく設置届・消防検査の2本立てで成り立っています。
これまではどちらも一律に必要とされていましたが、実際の工事には設備の性能にほとんど影響しない小さな変更も含まれていました。
そこで消防庁の検討委員会が実務上の負担を精査し、書類の重複を整理したうえで運用を見直しました。
このあと、実際にどの工事がどこまで省略の対象になるのかを順番に見ていきます。
検討委員会というものがあったんですね。
もっと現場任せで決まっているのかと思っていました。
国の検討結果を踏まえて、全国共通のルールとして整理されたんですよ。
増設・移設・取替えのうちどれが軽微な工事の対象になるのか

このうち省略の余地があるのは一部の区分だけです。
新設と改造は必ず着工届・設置届・消防検査のすべてが必要です。
補修と撤去はもともと届出そのものが不要とされています。
省略の余地があるのは増設・移設・取替えの3つで、この区分だけが後述する数量基準の対象になります。
自分の建物の工事がこの3区分のどれに当たるかを、まず確認しておくことが最初の一歩です。
うちは古いヘッドを同じ種類の新しいものに交換するだけなんですが、これは取替えになるんですか。
はい、それは取替えに当たります。
数の基準を満たせば着工届を省略できますよ。
消防用設備等の種類ごとに軽微な工事の数量基準はどう違うのか

代表的な設備の基準を見てみましょう。
屋内消火栓設備は消火栓箱2基以下、スプリンクラー設備はヘッド5個以下が増設の目安です。
自動火災報知設備は感知器10個以下、ガス漏れ火災警報設備は検知器5個以下と、設備によって数字が異なります。
数を超える増設や、加圧送水装置・受信機など設備の心臓部にあたる機器の取替えは、この範囲に含まれません。
自分の工事が該当するかどうかは、区分だけでなくこの数字とセットで確認する必要があります。
感知器を10個増やす工事だと、ぎりぎり軽微な工事になるんですね。
そうです、ちょうど10個までが基準です。
1個でも超えると通常の届出が必要になります。
避難器具はなぜ軽微な工事の対象にならないのか

避難器具です。
範囲表の増設欄は「該当なし」とされており、金属製避難はしご・救助袋・緩降機を何台増やしても、必ず通常の着工届・設置届・消防検査の対象になります。
移設と取替えは対象になりますが、条件は「同一階」「設置時と同じ施工方法」に限られ、他の設備より狭い範囲です。
避難器具は最終的な避難経路を支える設備なので、性能への影響を数量だけで線引きすることになじまないためと考えられます。
「避難器具も他の設備と同じように扱える」と思い込まないことが、見落としを防ぐいちばんのポイントです。
緩降機を1台増やすだけなら、届出はいらないと思っていました。
そこが落とし穴です。
避難器具の増設は数にかかわらず必ず届出が必要になります。
判断に迷ったらまず何を確認すればよいのか

そのときの動き方も通知に示されています。
工事を担当する甲種消防設備士に、その工事が軽微な工事に該当するかどうかを事前に相談・協議するのが基本の流れです。
軽微な工事であっても、試験結果報告書や図面など維持台帳に残す書類は変わらず必要になります。
着工届を省略できても設置届は省略できないという原則も、あわせて覚えておく必要があります。
迷ったときほど、工事の前に甲種消防設備士へ確認する一手間が結果的に近道になります。
つまり、迷ったら業者さん任せにせず、こちらからも一声かけるのが大事なんですね。
その通りです。
事前の一言が、あとの手戻りを防いでくれます。
よくある質問
まとめ
数の基準さえ知っていれば、工事のたびに慌てずに済みそうです!
判断に迷う工事があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防用設備等に係る届出等に関する運用について(令和5年3月30日付け消防予第196号・消防危第68号)
- 消防法第17条の14(着工届)
- 消防法第17条の3の2(設置届及び消防検査)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





