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震災で危険物施設が壊れたら消防の承認なしになにができるのか|代替機器の使用と予防規程の記載事項を解説

震災で危険物施設が壊れたらどこまで対応できるかを解説する記事のアイキャッチ画像

大きな地震で近くの給油取扱所が被災すると、ドラム缶を使った手動での給油や、非常用発電機への燃料補給など、平常時とは違う対応が必要になる場面があります。
こうした震災時の対応は、そのすべてに消防の承認や許可が要るわけではありません。
どこまでが手続きなしで済み、どこからが変更許可や仮貯蔵・仮取扱いの承認を要するのか、線引きを知らずにいると現場が混乱します。
震災時に施設内でどこまで動けるかは、平常時にどう備えておくかで決まります

地震でうちの給油取扱所が壊れたら、ドラム缶で給油しても消防に許可を取り直さないといけないんでしょうか。

震災時の臨時対応には、承認を要しないものと要するものの線引きがあります。
順番に見ていきましょう。

非常用発電機を手動で動かすときも、消防への確認が要るのか知りたいです。

代替機器の使用と、許可外の設備を使う場合とで扱いが分かれます。

この記事の結論
  • 震災で危険物施設が被災しても、消防法第十条第一項の許可制度そのものは変わりません
  • 代替機器の使用や非常用電源への燃料補給など、施設の許可内容に収まる臨時対応は承認や許可を要しません
  • 許可外の危険物や全く異なる設備を使う場合は、変更許可や仮貯蔵・仮取扱いの承認が必要になります
  • 予防規程には災害その他の非常の場合に取るべき措置をあらかじめ定めておかなければなりません
  • 平常時に許可内容と予防規程を見直しておくことが震災時の迅速な対応につながります

震災時の危険物施設は承認なしでどこまで対応できるかを示した図解

震災で危険物施設が壊れたら消防の手続きはどう変わるのか

震災で被災した給油取扱所と近くに止まった消防車を示したイメージ
東日本大震災では、給油取扱所などの危険物施設が被害を受け、平常時とは異なる危険物の取扱いが数多く行われました。
このとき土台になっているのは、震災の前から変わらない消防法の許可制度です。
(消防法第十条第一項)指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない
震災の有無で許可の仕組み自体は変わりません
危険物は許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所以外で貯蔵したり取り扱ったりできない、という原則が土台にあります。
ただし書きが用意している唯一の抜け道は、所轄消防長等の承認を受けて十日以内だけ仮に貯蔵・取扱いをする方法です。
東日本大震災ではこの仮貯蔵・仮取扱いの承認が数多く行われ、その実態を踏まえて震災時特有の運用が消防庁から示されました。
まず押さえておきたいのは、震災時だからといって許可なしに何でもできるわけではないという前提です。

震災のときは特別扱いで、何をしても大丈夫になるわけじゃないんですね。

そうです。
特別なのは対応の速さで、許可の考え方そのものは変わりません。

どんな臨時対応なら消防の承認や許可なしに行えるのか

非常用発電機にドラム缶から手動で燃料を補給する様子を示したイメージ
震災でライフラインが止まると、非常用発電機に手動で燃料を補給するといった対応が必要になります。
こうした対応のすべてに、消防への申請が必要になるわけではありません。
(危険物の規制に関する規則第六十条の二第一項第十一号)予防規程に定めなければならない事項として、災害その他の非常の場合に取るべき措置に関すること
あらかじめ想定していた範囲内の対応は承認を要しません
消防庁が示した震災時のガイドラインでは、設備が故障した場合に備えて予め準備された代替機器の使用や、停電時の非常用電源や手動機器の活用は、消防法第十条第一項ただし書きの仮貯蔵・仮取扱いの承認を必ずしも要しないと整理されました。
これらは、もともと危険物施設としての許可の範囲内で行われる対応だからです。
もっとも、承認を要しないからといって何の準備もいらないわけではありません。このあとで見る予防規程への位置づけが、この対応の前提になっています。
自分の施設に非常用発電機や手動ポンプが用意されているなら、その使い方が許可内容に収まっているかを一度確かめておいてください。

承認が要らないなら、あらかじめ何も決めておかなくてもいいんですか。

いえ、承認が要らないぶん、予防規程への記載が求められます。
次で説明します。

許可外の危険物や別の設備を使うときはどうなるのか

許可された貯蔵設備と許可されていない仮設の設備を対比したイメージ
一方で、震災時の対応がすべて承認なしで済むわけではありません。
どこからが手続きの対象になるのか、境目を確かめておきます。
(消防法第十一条第一項)製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、…当該各号に定める者の許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする
許可の範囲を超える対応には変更許可が必要です
消防庁のガイドラインは、危険物施設の許可外危険物の貯蔵・取扱いや、利用方法が全く異なる設備等の利用については、消防法第十一条第一項の変更許可、または消防法第十条第一項ただし書きの仮貯蔵・仮取扱いの承認が必要になると整理しています。
つまり、許可を受けた設備の使い方の範囲内なら承認は要らず、その範囲を外れれば通常の手続きが必要になる、という一本の線があるということです。
仮設のタンクを新たに持ち込んだり、想定していない危険物を貯蔵したりする場合は、この線を越えていないかをまず疑ってください。
判断に迷うときは、所轄の消防署に事前に確認しておくのが確実です。

うちの施設なら、どこまでが範囲内でどこからが範囲外か、正直わかりません。

震災の前に消防署へ相談しておくと、その線引きを事前に共有できます

承認が不要でも予防規程に書いておかなければならないこととは

予防規程の書類に地震対応の項目を書き込む様子を示したイメージ
承認が要らない対応だからこそ、事前に決めておくべきことがあります。
その受け皿になっているのが予防規程です。
(消防法第十四条の二第一項)政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の火災を予防するため、総務省令で定める事項について予防規程を定め、市町村長等の認可を受けなければならない
震災時の対応は事前に規程へ書き込んでおくものです
消防庁のガイドラインは、代替機器等に関する位置・構造・設備を許可内容にあらかじめ内包させるとともに、発災時の緊急対応・施設の応急点検・臨時的な貯蔵取扱いの手順・従業員教育や訓練を予防規程及びそれに基づくマニュアルに位置づけておくことを求めています。
予防規程を定めなければならない危険物施設は、規則第六十条の二第一項第十一号の「災害その他の非常の場合に取るべき措置」として、この内容を書き込む義務があります。
承認が要らないという判断は、この事前の記載があることが前提になっているということです。
自分の施設の予防規程を開いて、震災時の代替機器や非常用電源の使い方が具体的に書かれているかを確認してください。

予防規程を作ったときのままで、震災対応の書き込みが無いかもしれません。

更新のタイミングで、代替機器や非常用電源の使い方を書き足しておきましょう

明日から何を確認すればよいのか

管理権原者が許可申請書類と予防規程を並べて確認する様子を示したイメージ
震災時にあわてないための備えは、平常時の書類の見直しから始まります。
最後に、明日からできる具体的な確認事項を整理します。
(危険物の規制に関する規則第一条の六)法第十条第一項ただし書の危険物の仮貯蔵又は仮取扱いの承認を受けようとする者は、別記様式第一の二の申請書を所轄消防長又は消防署長に提出しなければならない
平常時に整えておく書類は三つです
一つ目は許可内容そのものです。代替機器や非常用発電機の位置・構造・設備が、変更許可申請や危険物製造所等工事届出書によって許可内容に含まれているかを確認します。
二つ目は予防規程です。震災時の緊急対応・応急点検・臨時的な貯蔵取扱いの手順が具体的に書き込まれているかを見直します。
三つ目は仮貯蔵・仮取扱いの承認申請書の存在です。許可の範囲を外れる対応が必要になった場合に備えて、申請の窓口と提出方法を所轄消防署と事前に確認しておきます。
この三つを震災前に整えておけば、実際に施設が被災したときの初動が変わります。

許可内容・予防規程・申請書の窓口、三つとも今のうちに確認しておきます

その三つが揃っていれば、震災が来ても慌てず動けます

よくある質問

Q震災時の危険物施設の対応は、平常時の仮貯蔵・仮取扱いの承認と同じものですか?
A平常時の承認は危険物施設以外の場所での臨時的な貯蔵・取扱いを想定した制度です。震災時のガイドラインは、既存の危険物施設内で承認を要しない範囲を整理したもので、対象が異なります。
Q非常用発電機に燃料を補給するだけでも消防への連絡は必要ですか?
A代替機器の使用が許可内容に収まっている場合は承認や許可は不要とされています。ただし、その対応が予防規程に位置づけられていることが前提です。
Q予防規程に震災対応を書いていない場合、震災時にどうなりますか?
A承認不要の対応は、事前に予防規程へ位置づけられていることが前提です。書かれていなければ、通常の仮貯蔵・仮取扱いの承認手続きから確認する必要があります。
Q指定数量未満の危険物を震災時に臨時で貯蔵する場合も承認が必要ですか?
A指定数量未満であれば、消防法第十条第一項ただし書きの承認は不要です。ただし、火災予防条例が定める貯蔵・取扱いの基準は別途適用されます。

まとめ

震災で危険物施設が被災しても消防法第十条第一項の許可制度そのものは変わりません
代替機器の使用や非常用電源への燃料補給など、許可内容に収まる臨時対応は承認や許可を要しません
承認が不要になる根拠は、消防庁が示した震災時のガイドラインの整理にあります
許可外の危険物や全く異なる設備を使う場合は変更許可が必要になります
許可の範囲を外れる対応には仮貯蔵・仮取扱いの承認申請が要ります
予防規程には災害その他の非常の場合に取るべき措置をあらかじめ定めておかなければなりません
平常時に許可内容と予防規程を見直しておくことが震災時の迅速な対応につながります

うちの施設の許可内容と予防規程を、今週中に見直します

平常時の書類の整理が、震災時の対応を決めます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十条第一項
  • 消防法第十一条第一項
  • 消防法第十四条の二第一項
  • 危険物の規制に関する規則第一条の六
  • 危険物の規制に関する規則第六十条の二第一項第十一号
  • 震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きについて(平成25年10月3日消防災第364号・消防危第171号)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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