給水設備の定期検査では、給水ポンプの運転音や配管の振動に異常がないかを確認します。
この異常のひとつに、水栓を閉めた瞬間や給水ポンプが止まった直後に、配管を叩くような音が響く現象があります。
一般にウォーターハンマーと呼ばれるこの現象は、判定基準では「エアチャンバー等の措置の有無」という形でしか現れませんが、背景には水柱分離と呼ばれる物理現象があります。
この記事では、ウォーターハンマーがなぜ起こるのかという仕組みから、エアチャンバーによる防止措置まで整理します。
ポンプが止まった後に「ゴンッ」という音がするのが気になっていました。
その現象はウォーターハンマーと呼ばれ、水柱分離という現象が関係しています。
今回はその仕組みを詳しく見ていきましょう。
配管の中で何が起きているのか、想像もつきません。
揚水管の配置や逆止弁の動きが関係しています。
エアチャンバーという防止措置もあわせて解説します。
- ウォーターハンマーは、判定基準では昭和50年建設省告示第1597号のエアチャンバー等の措置の有無という形で検査します
- 配管内で起こる水柱分離という現象が、打撃音や振動の主な原因のひとつです
- ポンプ停止後の逆流時に逆止弁が急閉することも、ウォーターハンマーの引き金になります
- 防止措置にはエアチャンバーや水撃防止器の設置が有効です
- 加圧給水方式では自動エア抜き弁の目詰まりもウォーターハンマーの原因になります
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目次
そもそもウォーターハンマーとはどんな現象なのか

定期検査ではこの現象そのものを、エアチャンバー等の措置があるかという形で確認します。
給水管の構造はウォーターハンマーが生ずるおそれのある部分に、エアチャンバー等の防止措置が講じられているかを見るだけの、比較的シンプルな項目です。
ただしこの現象は「エアチャンバーの有無」だけを覚えていても、実際に何が起きているのかまでは見えてきません。
配管が叩かれるような音や振動は、給水ポンプの検査事項(5)運転の状況が定める「定格水圧がない」「異常な音」という判定にもつながる現象です。
次の項目からは、この現象がどんな仕組みで起こるのかを順番に見ていきます。
目視で確認するだけなら、そんなに難しくなさそうですね。
見た目の確認は簡単ですが、なぜ必要なのかを知っておくと説明にも説得力が出ますよ。
水柱分離はどんな仕組みで起こるのか

この数値が乱れる背景には、配管の配置に由来する物理現象が関係しています。
揚水管が屋上などで長く横引きされている場合、ポンプ停止直後も配管内の水は慣性でしばらく先へ進もうとします。
その結果、横引き部分の高い位置で水が引き離されて負圧が生じ、水の一部が一時的に蒸発します。
この蒸発した水が再び液体に戻る瞬間、周囲の水が勢いよく衝突し、配管を叩くような音や振動として現れます。
横引き部分の位置が低いほど、水柱分離は起こりにくくなります。
配管の高さで、こんな違いが出るんですね。
はい、配管ルートの設計段階から関係している現象なんです。
ポンプ停止後の逆流と逆止弁の急閉はどう関係するのか

この逆流のタイミングが、もうひとつの引き金になります。
ポンプが停止すると配管内の水はいったん先へ進もうとしたのち、しばらくしてから逆流が始まります。
この逆流の最中に逆止弁が急激に閉じると、流れてきた水の勢いを弁がせき止める形になり、大きな衝撃が生じます。
支持構造部やアンカーボルトに緩みや劣化があると、この衝撃で配管がずれたり損傷したりするおそれもあります。
検査ではポンプ停止時の配管の振動もあわせて確認し、取付け状況の点検につなげます。
弁が閉じるタイミングまで見ているんですね。
はい、止まる瞬間こそが一番負荷のかかる場面なんです。
エアチャンバー等の防止措置はどんな告示にもとづくのか

その根拠となるのが、昭和50年建設省告示第1597号です。
水柱分離や逆止弁の急閉で生じた圧力変化を、空気の圧縮・膨張で吸収し、衝撃を和らげます。
同号は「エアチャンバーを設ける等」と定めており、水撃防止器など同等の効果を持つ機器での代替も認めています。
なお同号ロは、給水立て主管からの主要な分岐管について、分岐点に近接した操作しやすい部分への止水弁の設置もあわせて求めています。
検査では、これらの措置が設置されているか、経年で機能を失っていないかを目視で確認します。
空気の層でクッションを作るなんて、意外な仕組みですね。
そうなんです。
見た目は地味ですが配管を守る大事な部品なんですよ。
加圧給水方式ではなぜ自動エア抜き弁の点検が欠かせないのか

加圧給水方式で使われる自動エア抜き弁です。
加圧給水方式は、圧力タンク等に取り込んだ空気の圧力で水を送り出す方式で、タンク内には自動エア抜き弁が組み込まれています。
この弁にごみや異物が詰まると正常に作動しなくなり、エアチャンバーと同じようにウォーターハンマーを引き起こします。
検査では、弁の周辺に異物が付着していないか、開閉が円滑に行われるかをあわせて確認します。
エアチャンバーだけでなく、給水方式に応じた部品まで見ておくことが、実務での見落とし防止につながります。
同じウォーターハンマーでも、方式によって見るところが違うんですね。
はい。
建物の給水方式を確認してから、点検すべき部品を絞り込みましょう。
よくある質問
まとめ
ウォーターハンマーの仕組みが分かって、点検のときの説明にも自信が持てそうです!
エアチャンバーや自動エア抜き弁の点検は、建築設備検査員にお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項(定期検査報告義務)
- 建築基準法施行令第129条の2の4(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
- 昭和50年建設省告示第1597号(建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件)第1第一号
- 平成12年建設省告示第1388号(建築設備の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める件)第1・第2
- 平成20年国土交通省告示第285号 別記第四号(給水設備及び排水設備の検査結果表)
※本記事は建築基準法・同施行令・関係告示等に基づき、一般的な検査要領を解説したものです。実際の配管配置や設備の状態によって判定は異なります。個別の判断は建築設備検査員や所轄の特定行政庁にご確認ください。





