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強風下の火災はなぜ自分の家も飛び火の対象になるのか|大船渡市林野火災を踏まえた消防庁の備えを解説

強風下の火災はどこまで自分の家に関係するのかというタイトルと丘陵に近い住宅街の写真

2025年2月に岩手県大船渡市で、3月に愛媛県今治市で、いずれも強風のなかで林野火災が起き、飛び火によって離れた住宅にまで延焼が広がりました。
これを受けて消防庁は「飛び火警戒要領の見直し等について」という通知を出し、各消防本部に対応の見直しを求めています。
飛び火は消防機関だけの問題ではなく、警戒範囲に入った建物の側にもできる備えがあります。
この記事では、通知が示す飛び火の性質と、建物側が確認しておきたい弱点や備えを解説します。

うちは山のふもとにある施設なんですけど、林野火災のニュースを見て少し不安になりました。

消防庁も令和7年に飛び火警戒の通知を見直したばかりですよ。

建物のどこを見ておけばいいんでしょうか。

火の粉が入り込みやすい場所が決まっているので、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 飛び火警戒の見直しは大船渡市と今治市の林野火災を受けて令和7年に消防庁が通知したものです
  • 風速が強いほど飛び火は遠くまで届き、15m/秒以上では2,200mに達するとされています
  • 火の粉が着火しやすいのは瓦屋根・軒裏・外壁の隙間・窓等の開口部・パラペットの裏側などです
  • 消防機関からの呼びかけがあったら窓や換気口を閉め燃えやすい物を屋内に入れます
  • 予防散水は含水率50パーセント以上を保てるかどうかで着火率が大きく変わります

強風下の飛び火警戒でなにをすればよいかを気象確認・弱点確認・屋内収容・予防散水の四つの手順で示した図解

飛び火警戒はなぜ見直されることになったのか

森の茂る丘と住宅が並び丘から住宅へ弧を描く矢印が火の粉の飛来を示す様子
強風のなかで起きた二つの林野火災が、飛び火の脅威をあらためて示しました。
消防庁はこれを受けて警戒の考え方そのものを見直しています。
消防消第463号(令和7年10月29日) 飛び火警戒要領の見直し等について(通知) 消防庁では、令和7年2月26日に発生した大船渡市林野火災を受け、「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」を開催し(略)本報告書では、大船渡市林野火災において、飛び火による広範囲の延焼が見られ、同時多発的に住家への被害が発生したことから、これらへの対策について勘案し飛び火警戒要領を見直すことが重要であると提言されています。
火元から離れていても油断できません。
大船渡市の林野火災では最大瞬間風速18.1m/秒の強風で樹冠火が生じ、火の粉を含む濃煙が流れて田浜地区などで飛び火が同時多発しました。
今治市の林野火災でも、出火から数日かけて山林を越え市街地の近くまで延焼が拡大しています。
この通知は消防組織法第37条にもとづく消防庁長官から消防機関への助言として出されており、各消防本部は次期の林野火災シーズンに備えて警戒要領の見直しや策定を進めることとされています。
自分の建物が山や林に近いかどうかを、まず思い浮かべてみてください。

火元から離れていれば安心だと思っていました。

風が強いと数キロ先まで火の粉が飛ぶこともあります。
次はどこまでが警戒の対象になるかを見ましょう。

強風下ではどの建物が警戒の対象になるのか

小さな一戸建てと高層のマンションが並び奥に丘陵の森が見える様子
対象になる範囲は建物の規模ではなく、風向きと風速で決まります。
自分の建物までの距離を数字で確かめておきましょう。
飛び火の多くは10度~30度の範囲に多く飛散し、風速に応じた飛び火距離は表1のとおりとなる。(略)風速5~7.5m/秒 400m / 風速7.5~10m/秒 600m / 風速10~15m/秒 1,100m / 風速15m/秒~ 2,200m (略)火点を頂点に、頂角を30度、高さを風速に応じた飛び火距離とする二等辺三角形を作図することで、警戒範囲を設定することができる。
警戒範囲は建物の大きさで区切られていません。
火点から風下に向けて頂角30度の扇形を描き、その中に入るかどうかで警戒範囲が決まるため、小さな住宅でも大きな施設でも扱いは同じです。
強風の目安は各地の消防本部が示している例では「強風注意報等が発表された際や、通常よりも強い風が継続するなど注意の必要な気象条件」とされ、地域によっては局地風で風向きに特徴が出ることもあります。
自分の建物が火点から風下側の扇形に入っているかどうかを、周辺の地形とあわせて確認しておくと落ち着いて備えられます。

風速15m/秒を超えると2キロ以上も飛ぶことがあるんですね。

そのとおりです。
だからこそ呼びかけを受けたときの行動を決めておきましょう。

消防機関から呼びかけがあったら何をすればよいのか

住宅の窓を両手で閉める人物と物干し竿から洗濯物を取り込む人物
火災が起きたときの初動は、実は建物の関係者にも義務として定められています。
そのうえで飛び火に備えた具体的な行動が示されています。
消防法第25条第1項 火災が発生したときは、当該消防対象物の関係者その他総務省令で定める者は、消防隊が火災の現場に到着するまで消火若しくは延焼の防止又は人命の救助を行わなければならない
住民への広報は、車載マイク又は携帯拡声器を利用し、次の点に留意して実施する。ア 窓、換気口等、火の粉の入りやすい開口部を閉鎖させる。イ 洗濯物、路地の雑品等着火しやすいものは、屋内に収容させる。ウ 水バケツ等の消火器具(用具)を準備させ、自宅周辺を警戒させる。(略)オ 水損のおそれがない物品や屋根等に予備注水をさせる。
呼びかけの内容はあらかじめ知っておくと動きが早くなります。
消防法第25条第1項は、消防隊が現場に着くまでの延焼防止を建物の関係者にも求めており、飛び火が飛来する可能性があるエリアでも同じ考え方が働きます。
消防機関から呼びかけがあったら、窓や換気口を閉める、洗濯物など燃えやすい物を屋内に入れる、水バケツや消火器を準備する、道路上に家財を出さない、という順番で動くと迷いません。
すでに周辺住民が避難している地域では消防機関自身が見回りますが、避難していない地域では住民に監視と自主的な予防散水への協力が求められる点も押さえておきましょう。

放送を聞いてから考えるのでは遅いということですね。

手順を覚えておけば数分の差になります。
次は建物のどこが弱点かを見てみましょう。

火の粉はどこから建物に入り込むのか

屋根瓦と軒先の隙間の拡大図に小さな火の粉が漂う様子
火の粉が入り込みやすい場所は、実はある程度決まっています。
屋根材によっても危険度が変わります。
飛散した火の粉により着火しやすい箇所は、瓦屋根、軒裏、下見板(横板張りで、下の板の上端に上の板の下端を重ねたもの。)の外壁、窓等の開口部、パラペット(建物の屋上やバルコニーなどの外周部に設けられた低い手すり壁のこと。)の裏側、物干し場若しくは建物周囲の燃えやすい物件等である。特にわら屋根やかやぶき屋根、塩化ビニールの屋根は容易に着火する。
弱点は屋根と隙間に集中しています。
瓦の隙間や軒裏、板を重ねた外壁の継ぎ目、窓やパラペットの裏側は、いずれも火の粉がとどまりやすい形をしています。
物干し場や建物周囲に置いた燃えやすい物も、火の粉を受け止める役目をしてしまいます。
わら屋根・かやぶき屋根・塩化ビニールの屋根は特に着火しやすいとされているので、該当する建物は優先して点検しておきたい場所です。
点検のときは、これらの箇所に燃えやすい落ち葉やごみがたまっていないかもあわせて見ておきましょう。

軒裏なんて、ふだんはまず見ない場所です。

だからこそ強風の予報が出たときにまとめて見ておくと安心です。
最後に具体的な手順を確認しましょう。

明日から何を確認しておけばよいのか

住宅のそばでホースを持ち屋根と外壁に水をかける人物
備えは点検・準備・散水の三段階に分けると動きやすくなります。
散水は量とタイミングにも根拠があります。
枯れ葉に対して散水後、さまざまな大きさの火の粉(3~15mmの赤熱させた木炭)を散布し、10m/秒の風速を10分間与えて、着火に至るかを検証した。(略)含水率50%以上を保てば、予防散水効果が著しく高まり、着火しても燃え止まりやすい。(略)まったく散水しない場合(含水率0%)は、実験に用いたどの大きさの火の粉でもすべて着火、全焼した。含水率50%を保つためには、1日3回(散水間隔:8時間)の散水で4L/㎡、1日2回(散水間隔:12時間)の散水で6L/㎡の散水量が必要となる。
消防法施行規則第3条第1項第1号リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること
散水は「かければよい」だけではありません。
含水率50パーセントを下回ると着火率が急に上がるため、強風の予報が出た段階で1日2〜3回のペースであらかじめ散水しておくと効果が続きます。
点検ではひとつ前の見出しで見た屋根・軒裏・外壁の継ぎ目・開口部・パラペット裏・物干し場をひととおり確認し、燃えやすい物を片付けます。
防火管理者を置く建物では、これらの対応を消防計画の「その他の災害への対応」に一言加えておくと、いざというとき担当者が迷いません。
準備としては水バケツや消火器の位置を確認し、ホースが届く範囲を実際に確かめておくと安心です。

散水は何度もやればいいわけじゃないんですね。

間隔をあけて含水率を保つのがコツです。
まずは自分の建物の弱点を一度確認してみてください。

よくある質問

Q飛び火の警戒対象は建物の規模で変わりますか?
A変わりません。火点からの風下側の扇形に入るかどうかで決まるため、小規模な住宅も大規模な施設も同じ考え方で警戒範囲に入ります。
Q予防散水は火災が起きてから行うものですか?
A強風の予報が出た段階で行うほうが効果的です。含水率50パーセント以上を保つよう間隔をあけて散水することが求められています。
Q屋根の材質による違いはありますか?
Aあります。わら屋根・かやぶき屋根・塩化ビニールの屋根は容易に着火するとされているので、優先して点検しておきたい対象です。
Q消防機関からの呼びかけがなければ何もしなくてよいですか?
A呼びかけを待たずに備えておくほうが安心です。窓や換気口の点検、燃えやすい物の片付けは平時からできる備えです。

まとめ

飛び火警戒の見直しは大船渡市と今治市の林野火災を受けて令和7年に通知されました
警戒範囲は火点からの風下側の扇形で決まり、建物の規模は問われません
風速15m/秒以上では飛び火が2,200m先まで届くとされています
消防法第25条第1項は消防隊到着までの延焼防止を建物の関係者にも求めています
火の粉が着火しやすいのは瓦屋根・軒裏・外壁の隙間・窓等の開口部・パラペット裏側です
予防散水は含水率50パーセント以上を保つよう間隔をあけて行うと効果が続きます
防火管理者を置く建物では消防計画に一言加えておくと担当者が迷いません

屋根や軒裏をいちど確認してみます!

点検の結果、不安な箇所があれば相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「飛び火警戒要領の見直し等について」(消防消第463号・令和7年10月29日)
  • 「強風下における消防対策について」(消防消第290号・平成29年12月22日)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第25条第1項
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号リ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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