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配電盤の中の配線用機器はなぜキャビネット次第で基準が変わるのか|断熱性能が高いと緩和される耐熱試験を解説

非常電源専用受電設備の配電盤が設置された電気室の内観

消防用設備等の非常電源には、屋内消火栓設備の非常電源専用受電設備として配電盤や分電盤が使われます。
この配電盤の中には非常電源専用の開閉器や過電流保護器などの配線用機器が収められ、火災時にも一定時間電源を守れるよう耐熱試験に合格したものを使う決まりです。
令和5年の告示改正で、この配線用機器の耐熱試験の基準に新しい緩和の考え方が加わりました。
キャビネットの断熱性能が優れていれば、中の配線用機器は緩い基準で足りることになったのです。

配電盤のキャビネットが変わると、中の部品の基準も変わるんですか。

はい、断熱性能次第で緩和されるんです。
順番に確認していきましょう。

うちの配電盤がその緩和を受けられるか気になります。

キャビネットの耐火試験の結果次第で決まりますよ。
まずは見直しの経緯から見ていきますね。

この記事の結論
  • 屋内消火栓設備の低圧式非常電源専用受電設備の第1種配電盤等について、令和5年の告示改正でキャビネットの断熱性能に応じた緩和規定が加わりました。
  • 緩和の条件は、キャビネットの耐火試験で別図第三に示すB点の温度が105度以下になることです。
  • 条件を満たすと、中の配線用機器等の耐熱試験の温度が105度プラスマイナス10.5度に緩和されます。
  • 加熱曲線も標準加熱曲線Bの8分の1に緩和され、通常より軽い試験で足ります。
  • 基本の合格ライン(B点280度以下)を満たしただけでは緩和されず、105度以下という高い断熱性能が別途必要です。

配電盤のキャビネットの断熱性能が高いと配線用機器の耐熱基準が緩和される仕組みを示す図解

配線用機器の耐熱基準はなぜ見直されることになったのか

配電盤のキャビネットを見直す様子を示すイラスト
非常電源専用受電設備の配電盤には、内部の配線用機器にも耐熱試験の基準が課されています。
令和5年の改正で、この基準の考え方に見直しが入りました。
「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について(通知)」(令和5年5月31日消防予第306号・消防庁次長) 第四 第1種配電盤等の配線用機器等に係る耐熱基準の見直しに関する事項 屋内消火栓設備の低圧式の非常電源専用受電設備の第1種配電盤等について、キャビネットが一定の基準を満たしていることを条件に配線用機器等の耐熱基準を緩和するほか、所要の規定の整理を行うこととしたこと(改正告示9号による改正後の配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号)第3から第5まで関係)。
配電盤本体だけでなく、中の配線用機器にも同じだけの断熱性能を求める必要はない、という考え方です。
これまでの基準では、キャビネットの断熱性能にかかわらず、中に収める配線用機器等には一律に高い耐熱試験の基準が課されていました。
しかし断熱性能に優れたキャビネットであれば、火災時でも内部の温度はそこまで上がりません。
令和5年5月31日の消防予第306号による改正で、この一律の基準が見直され、キャビネットの性能に応じた段階的な基準に改められました。
根拠となる配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号)も、同時に令和5年消防庁告示第9号で改正されています。

一律の基準だと、逆に不合理なこともあったんですね。

はい、断熱性能の差を反映していなかったんです。

どの配電盤の配線用機器が対象になるのか

屋内消火栓のホースリールと配電盤がつながる仕組みを示すイラスト
今回の緩和が関わるのは、屋内消火栓設備の非常電源専用受電設備に使う配電盤・分電盤です。
まずどの設備が対象になるのかを確認します。
消防法施行規則第12条第1項第4号イ(ホ) 低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤又は分電盤は、消防庁長官が定める基準に適合する第1種配電盤又は第1種分電盤を用いること。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場所に設ける場合には、第1種配電盤又は第1種分電盤以外の配電盤又は分電盤を、次の(3)に掲げる場所に設ける場合には、消防庁長官が定める基準に適合する第2種配電盤又は第2種分電盤を用いることができる。
対象は、屋内消火栓設備で使う低圧受電の非常電源専用受電設備の第1種配電盤等に限られます。
高圧・特別高圧で受電するキュービクル式非常電源専用受電設備や、屋内消火栓設備以外の消防用設備等に使う配電盤は、この改正の対象になりません。
また第2種配電盤等は、もともと不燃区画された変電設備室等の限られた場所にしか置けないため、今回の緩和規定の対象にもなっていません。
第1種配電盤等だからこそ、キャビネットの性能次第で基準を選べる余地が生まれた、という関係です。
自分の建物の配電盤がどの区分に当たるかは、キャビネットの表示や設備図面で確認できます。

うちの屋内消火栓の配電盤も対象になりそうです。

第1種配電盤等であれば対象になりますよ。

キャビネットの断熱性能がよいと機器の基準はどう変わるのか

壁の厚みが異なる2つの配電盤キャビネットと内部の機器の大きさを比較したイラスト
キャビネットの断熱性能が高いほど、中の配線用機器に求められる基準は軽くなります。
実際にどれくらい変わるのかを見ていきます。
配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号、令和5年5月31日消防庁告示第9号改正)第四 一 (二) ロ 加熱方法は、配線用機器等を収納した厚さ一・五ミリメートルの鋼板製の箱を別図第五に示す位置に取り付け、日本産業規格A一三〇四(建築構造部分の耐火試験方法)に定める標準加熱曲線Bの三分の一の加熱曲線((一)ニの試験結果において、別図第三に示すB点の温度が百五度以下であるものにあつては、標準加熱曲線Bの八分の一の加熱曲線)に準じて三十分間加熱すること。
キャビネットの耐火試験でB点の温度が105度以下という高い断熱性能を示せば、中の機器の試験はぐっと軽くなります。
通常、配線用機器等は280度プラスマイナス28度の温度で、標準加熱曲線Bの3分の1という加熱曲線に耐える必要があります。
しかしキャビネット自体の耐火試験でB点の温度が105度以下だったときは、中の配線用機器等は105度プラスマイナス10.5度、加熱曲線も8分の1へと緩和されます。
この105度以下という数字は、実は第2種配電盤等のキャビネットに求められる合格ラインと同じ水準です。
つまり第1種のキャビネットであっても、第2種並みに断熱性能が高ければ、中の機器は第2種相当の緩い基準でよい、という設計になっています。

同じ第1種なのに、中の機器の基準が変わることがあるんですね。

はい、キャビネットの断熱性能次第で変わるんです。

実務で見落としやすいのはどこか

配電盤に温度計と試験結果の書類が並ぶイラスト
この緩和は、すべての第1種配電盤等に自動であてはまるわけではありません。
見落としやすい条件を確認します。
配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号)第四 一 (一) ニ 試験結果の判定は、別図第三に示すB点の温度が二百八十度以下であること。
第1種配電盤等としての合格ライン(280度以下)を満たしただけでは、配線用機器の基準は緩和されません。
第1種配電盤等のキャビネットとして合格するための基準は、B点の温度が280度以下であることです。
しかし配線用機器等の基準を緩和してもらうには、それよりずっと厳しい105度以下という結果が別途必要になります。
「第1種配電盤等として合格しているから緩和も受けられる」と思い込むと、実際には緩和の対象外だったという食い違いが起こります。
改正告示は公布の日である令和5年5月31日から施行されており、経過措置は設けられていません。

うちのキャビネットは合格ラインぎりぎりみたいです。

それだと緩和の対象外になるので確認が必要です。

明日からなにを確認すればよいのか

作業着姿の担当者が配電盤のキャビネットを点検するイラスト
緩和を受けられるかどうかは、キャビネットの表示や試験成績書を見なければ分かりません。
確認する手順を押さえておきます。
配電盤及び分電盤の基準(昭和56年消防庁告示第10号)第六 一 キヤビネットには、次に掲げる事項がその見やすい箇所に容易に消えないように表示されていること。(一)第一種配電盤若しくは第二種配電盤又は第一種分電盤若しくは第二種分電盤の別(二)専用配電盤若しくは共用配電盤又は専用分電盤若しくは共用分電盤の別(四)製造者名又は商標(五)製造年(六)型式(七)製造番号
まずキャビネットの表示を確認し、そのうえで断熱性能を裏付ける試験成績書があるかを製造者に確認します。
キャビネットには第1種・第2種の別や製造者名、型式などの表示があるので、まず現地で確認してください。
そのうえで耐火試験の成績書を製造者や施工業者に確認し、B点の温度が105度以下という結果が出ているかを確かめます。
既存の配電盤を更新するときは、緩和後の基準に対応した配線用機器等が使われているかもあわせて点検業者に確認してもらいましょう。
新設・更新のどちらでも、キャビネットと中の機器の組み合わせで基準に適合しているかを見る視点を忘れないでください。

表示と成績書の両方を見ればいいんですね。

はい、点検業者にもあわせて確認してもらうと確実です。

よくある質問

Q第2種配電盤等の配線用機器にも、今回の緩和は適用されるのか?
A今回の告示第四で緩和が明記されているのは第1種配電盤等の配線用機器等です。第2種配電盤等の配線用機器等は、もともと120度プラスマイナス12度・加熱曲線8分の1という基準が別に定められています。
Q高圧受電のキュービクル式非常電源専用受電設備にも、この緩和は関係するのか?
Aこの改正が対象にしているのは低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤・分電盤です。高圧・特別高圧のキュービクル式非常電源専用受電設備は、別の基準で扱われます。
Q既存の第1種配電盤等を、緩和後の配線用機器等に交換すればよいのか?
A交換する前に、キャビネット側の耐火試験の結果でB点の温度が105度以下であることを確認する必要があります。キャビネットが基準を満たしていなければ、配線用機器等だけを緩和後のものに交換しても基準には適合しません。
Q改正告示第9号はいつから施行されているのか?
A改正告示第9号は令和5年5月31日の公布の日から施行されており、経過措置は設けられていません。

まとめ

屋内消火栓設備の低圧式非常電源専用受電設備の第1種配電盤等について、令和5年の告示改正で配線用機器等の耐熱基準に緩和規定が加わりました。
緩和の条件は、キャビネットの耐火試験で別図第三に示すB点の温度が105度以下になることです。
条件を満たすと、配線用機器等の耐熱試験の温度が105度プラスマイナス10.5度に緩和されます。
加熱方法も標準加熱曲線Bの8分の1の加熱曲線に緩和されます。
第1種配電盤等としての合格ライン(B点280度以下)を満たすだけでは、この緩和は受けられません。
105度以下という基準は、第2種配電盤等のキャビネットの合格ラインと同じ水準です。
改正告示第9号は令和5年5月31日の公布の日から施行され、経過措置はありません。

配線用機器の緩和の条件がよく分かりました。
キャビネットの成績書を確認します!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 配電盤及び分電盤の基準(昭和56年12月22日消防庁告示第10号、令和5年5月31日消防庁告示第9号改正)第四・第六
  • 「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について(通知)」(令和5年5月31日消防予第306号・消防庁次長)
  • 消防法施行規則第12条第1項第4号イ(非常電源専用受電設備の設置基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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