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BCPで地震後に建物へ戻ってよいのか|再入館と業務再開前の安全確認を解説

地震後の建物入口で天井と出入口を点検する施設管理者の写真

大きな地震のあと、外へ避難した従業員から「忘れ物を取りに戻っていいですか」と聞かれたら、誰が止めますか。
外壁が崩れていなくても、余震、天井の落下、柱や壁の損傷、消防用設備等の不具合が残っていることがあります。
入口を開ける前に、建物全体、危険箇所、消防・避難設備を分けて確認することが大切です。
再入館は見た目や個人判断で決めず、事前に定めた安全確認と権限者の判断で決めます。

外から見て大丈夫なら、戻ってもええんですか。

外観だけでは決めません

誰が再入館を決めるんですか。

確認者と判断者を先に決めます。

この記事の結論
  • 地震後の再入館は建物の安全確認後に判断します。
  • 建物全体だけでなく立入不可の場所も分けて管理します。
  • 外周、構造躯体、落下物の順で確認します。
  • 消防用設備等と避難経路も確認し、火災への備えを保ちます。
  • 迷う損傷があれば再入館させず、建築の専門家へ確認します。

地震後の退避から建物の外周と構造躯体と落下物と消防用設備等の確認を経て再入館を判断する流れのアイソメ図

地震後に建物へ戻ってよいのか

地震後の事業所入口で立入禁止の表示を出して再入館を止める施設管理者のアイソメ図
避難が終わっても、安全確認が終わったわけではありません。
余震で被害が広がるおそれを考え、入口で人の動きを止めてから確認します。
内閣府の「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」は、建物の安全を確認した上で、建物内での待機や建物からの退避を判断する流れを示しています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、初動で建物・設備の被害を確認し、従業員や顧客の安全確保を前提に業務の継続・再開へ移る考え方を示しています。
再入館の判断は、忘れ物や早期再開より人命安全を優先します。
外観に大きな変化がなくても、天井材、照明、ガラス、設備配管が損傷している場合があります。
まず建物の出入口を管理し、避難した人が個別に戻らないよう周知します。
管理者は地震の規模、建物の揺れ、火災やガス臭、周辺建物の状態を集約します。
一見して傾きや崩壊のおそれがあれば、建物全体を使用不可として近づけません。
危険が見当たらない場合も、事前に用意したカルテとチェックシートに沿って確認を続けます。
その場で判断できない損傷を見つけたときは、立入を止めたまま専門家へ連絡します。
再入館を許可する人、入口を管理する人、点検する人を分けておくと混乱を防げます。

忘れ物だけでも勝手に戻ったらアカンのですね。

入口で止める運用が必要です。

どの建物と設備を確認するのか

事業所の外周と柱と天井と消火器と誘導灯を確認する担当者のアイソメ図
対象は建物本体だけではありません。
人が再び滞在するために必要な消防用設備等と避難施設も確認します。
内閣府の緊急点検指針は、全ての建物を対象とし、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造で異なるカルテとチェックシートを使う考え方を示しています。
消防庁の防火・防災管理講習基準は、消防用設備等、防火・避難施設、防災管理上必要な構造・設備について、組織的な点検体制を確立する必要性を示しています。
建物の構造安全と、火災時に人を守る設備の機能を別々に確認します。
構造面では建物の傾き、柱、梁、耐力壁、窓枠、周辺地盤、隣接建物を見ます。
落下物では天井、照明、ガラス、外壁、看板、棚の状態を確認します。
消防・避難面では消火器、自動火災報知設備、屋内消火栓、スプリンクラー、誘導灯を確認します。
さらに防火戸、防火シャッター、階段、廊下、避難口に閉鎖や通行の支障がないかを見ます。
停電や断水で設備が使えない場合は、その状態を「異常なし」と混同しません。
テナントビルでは共用部と専有部の確認範囲、報告先、再入館判断者を管理会社と事前に分担します。
建物を使えても一部の部屋へ入れないことがあるため、場所単位で記録します。
確認区分主な確認対象
建物と周辺傾き・地盤・隣接建物・柱・壁
落下物天井・照明・ガラス・外壁・棚
消防・避難警報・消火・誘導灯・防火戸・避難経路

柱だけ見ても足りへんのですね。

消防と避難の機能も見ます。

再入館の判断はどの順番で行うのか

施設管理者が建物の外周から柱と壁と天井を順番に点検するアイソメ図
点検者が最初から建物内へ入ると、確認する人自身が危険にさらされます。
外側から内側へ進み、危険を見つけた時点で止める流れにします。
内閣府の緊急点検指針は、第1次チェックで外部から一見して危険かを確認し、第2次チェックで周辺・構造躯体と落下物を調べる流れを示しています。
同指針は、建物が危険なら全体を使用不可とし、落下物の危険がある場所は立入不可にして、それ以外の場所を使用する考え方を示しています。
外から一見して危険か、余震で危険が増すか、落下物があるかの順で確認します。
最初に火災、煙、ガス臭、漏電、危険物の漏えい、建物の傾きや大きな崩壊を確認します。
危険があれば立入禁止範囲を広く取り、消防機関や管理会社などへ連絡します。
次に周辺地盤、隣接建物、柱、壁、梁、窓枠の変形や損傷を確認します。
その後、天井や照明などの落下物を見て、立入不可の部屋を区分します。
最後に消防用設備等、避難経路、ライフラインの状態を確認し、業務を行える範囲を決めます。
点検結果は「全体使用不可」「一部立入不可」「立入可」のように判断と範囲を一緒に記録します。
再入館を許可する場合も、入る人数と目的を絞り、余震時の退避方法を周知します。

いきなり中へ入って点検したら危ないんですね。

外側から順番に確認します。

見た目に異常がなくても戻れないのはなぜか

外観は無事な事業所の内部で天井材と照明が落下しかけている様子のアイソメ図
外壁に大きな亀裂がなくても、安全とは限りません。
平常時との違いを知っていないと、小さな異常を見落とします。
内閣府の緊急点検指針は、平常時のひび割れや建物のゆがみを写真等で記録し、地震による損傷と区別できるようにすることを示しています。
同指針は、天井に平常時と異なる歪み、隙間、破損、ずれがある場合、その天井がある部屋を使用不可と判断する考え方を示しています。
建物全体が立入可でも、危険な部屋や動線は使用しません。
高い天井、吹き抜け、ガラス面、重量物の棚付近は落下や転倒の危険があります。
柱や壁の亀裂だけでなく、建具のゆがみ、窓枠の変形、扉の開閉不良も記録します。
床の水濡れ、焦げた臭い、設備の異音は、配管や電気設備の損傷を疑う手掛かりです。
誘導灯が消えている、火災報知設備に異常表示がある、防火戸が閉まらない場合は、火災時の安全性が低下しています。
その状態で通常人数を戻すのではなく、立入制限、部分休業、代替拠点を検討します。
点検者が判断に迷う亀裂や変形を見つけた場合は、専門家の確認まで保留します。
施設管理者の点検は緊急・応急的な確認であり、専門家の確認に置き換わるものではありません。

建物全部かゼロかで決めなくてもええんですね。

場所ごとに区分できます。

明日から再入館手順をどう確認するのか

平面図と建物カルテを持って再入館の点検ルートを訓練する施設管理者のアイソメ図
災害時に初めてチェックシートを開いても、確認場所へたどり着けません。
平常時に建物の特徴を記録し、点検ルートを歩いておきます。
内閣府の緊急点検指針は、確認者と判断者を決め、竣工図等を用意し、建築の専門家とカルテを作り、年に1回程度の更新と訓練を行うことが望ましいとしています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、初動対応が落ち着いた後にBCPへ移行し、現拠点の復旧可能性や復旧可能時間を見積もり、業務の継続・再開策を実施する流れを示しています。
カルテ、チェックシート、点検ルート、判断権限を一組で準備します。
まず建物の構造種別、竣工図、増改築図面、設備一覧、緊急連絡先をそろえます。
次に建築の専門家と相談し、柱、壁、梁、天井など確認すべき場所を図面へ示します。
平常時の亀裂やゆがみは写真で残し、撮影位置と日付を記録します。
確認者、再入館の判断者、入口管理者、連絡担当者とそれぞれの代理者を決めます。
訓練では外周から点検ルートを歩き、途中で危険を見つけた場合の中止基準を試します。
消防用設備等の異常時は、保守業者と所轄消防署への連絡、代替措置、使用範囲を確認します。
点検結果をBCPの現拠点継続・部分休業・代替拠点の判断へつなげます。
最後に訓練記録を残し、建物や担当者が変わったらカルテと連絡網を更新します。
  1. 建物図面と設備一覧をそろえる
  2. 専門家と確認箇所を決める
  3. 平常時の状態を写真で残す
  4. 確認者と判断者と代理者を決める
  5. 外周からの点検ルートを訓練する

平常時の写真から用意します。

平常時との差が分かります。

よくある質問

Q外観に異常がなければすぐ再入館できますか?
A外観だけでは判断しません。周辺、構造躯体、天井等の落下物、消防用設備等、避難経路を確認し、権限者が判断します。
Q施設管理者だけで安全を確定できますか?
A施設管理者の確認は緊急・応急的なものです。損傷がある、判断に迷う、余震の危険が高い場合は立入を止め、建築の専門家へ確認します。
Q一部の部屋だけ使わない判断もできますか?
Aできます。落下物などの危険がある場所を立入不可として区画し、安全が確認できた場所だけを使う場合は、境界と動線を明示します。
Q建物が使えれば業務をすぐ再開できますか?
A建物の立入可と業務再開は別の判断です。消防用設備等、ライフライン、要員、取引先への影響を確認し、BCPで再開範囲と優先業務を決めます。

まとめ

地震後の再入館は安全確認後に判断します。
入口で個別の再入館を止めます。
外周から内側へ順番に確認します。
危険箇所は立入不可の範囲を明示します。
消防用設備等と避難経路も確認します。
迷う損傷は専門家へ確認します。
再入館と業務再開を別に判断します。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

※本記事は公表されている内閣府・消防庁の資料に基づく一般的な解説です。施設管理者による確認は被災直後の緊急・応急的な判断であり、建築の専門家による確認に置き換わるものではありません。建物の構造、損傷、消防用設備等の状態、余震、地域の被害によって必要な対応は異なります。実際の再入館と業務再開は、建物所有者、管理会社、建築の専門家、設備保守業者、消防機関等へご確認ください。

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