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消防水利は建物から何メートル以内に必要か|用途地域と風速で変わる距離基準と例外を解説

消防水利は建物から何メートル以内に必要かのアイキャッチ

建物の近くにどれだけ消防水利があるかは、法令で決められた基準にもとづいて配置されています。
消火栓や防火水そうが遠すぎると、火災が起きたときの初動対応に大きな差が出ます。
距離の基準は用途地域や風速によって変わり、条件を満たせば水利を減らせる例外もあります。
この記事では、消防水利の種類から距離の基準、維持管理の義務までを告示の条文にもとづいて整理します。

うちの近くにある消火栓、なんとなくで置かれてるわけじゃないんですよね。
ちゃんと基準があるのか気になります。

はい、消防水利の基準という告示で細かく決まっています。
建物からの距離も数値で定められていますよ。

うちの建物の場合、どれくらいの距離なら安心なんでしょうか。

用途地域と風速で数値が変わります。
まずは消防水利にどんな種類があるかから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防水利には消火栓や防火水そうなど9種類があり、市町村または消防長・消防署長が設置・指定します。
  • 消防水利は常時貯水量40立方メートル以上などの給水能力を満たす必要があります。
  • 防火対象物から消防水利までの距離は、用途地域と風速に応じて100メートルから120メートル以内と定められています。
  • 大容量の水利があれば、周囲140メートル以内の他の水利を省略できる例外があります。
  • 消防水利は常時使用できるように管理する義務があり、巡回点検と記録が求められます。

消防水利までの距離の基準を示す4ステップの図解

消防水利にはどんな種類があるのか

消火栓と防火水そうとプールなど複数の消防水利のイラスト
火災が起きたとき、消防隊が水を確保できる場所は法令上「消防水利」と呼ばれます。
街なかでよく見る消火栓のほかにも、法令が定める水利の種類は複数あります。
消防水利の基準(昭和39年消防庁告示第7号)第二条 この基準において、消防水利とは、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二十条第二項に規定する消防に必要な水利施設及び同法第二十一条第一項の規定により消防水利として指定されたものをいう。2 前項の消防水利を例示すれば、次のとおりである。一 消火栓 二 私設消火栓 三 防火水そう 四 プール 五 河川、溝等 六 濠、池等 七 海、湖 八 井戸 九 下水道
消防水利は行政が設置するものと、私有の水利を借りるものの2つに分かれます。
消火栓や防火水そうなど市町村の消防に必要な水利施設は、市町村が設置・維持・管理します(水道の消火栓は水道管理者が担当します)。
一方、池や井戸、プールなど民間が所有する水利は、消防長又は消防署長が所有者の承諾を得て消防水利に指定できます。
指定を受けた水利は、常時使用できる状態に置くことが義務づけられます。
自社の敷地内にプールや古い井戸がある場合、消防水利に指定されている可能性があります。

うちの駐車場の下に古い防火水そうがあるんですが、あれも消防水利なんでしょうか。

指定を受けていれば立派な消防水利です。
次は水利としてどれだけの能力が必要かを見てみましょう。

消防水利はどれだけの給水能力が必要なのか

消防ポンプ車が水利から取水する様子と配管の口径を示すイラスト
消防水利は「そこにあればよい」わけではなく、必要な水量を出せることが条件です。
消火栓と、それ以外の水利とでは求められる基準が少し異なります。
消防水利の基準 第三条 消防水利は、常時貯水量が四十立方メートル以上又は取水可能水量が毎分一立方メートル以上で、かつ、連続四十分以上の給水能力を有するものでなければならない。2 消火栓は、呼称六十五の口径を有するもので、直径百五十ミリメートル以上の管に取り付けられていなければならない。ただし、管網の一辺が百八十メートル以下となるように配管されている場合は、管網の管の直径を七十五ミリメートル以上とすることができる。4 私設消火栓の水源は、五個の私設消火栓を同時に開弁したとき、第一項に規定する給水能力を有するものでなければならない。
給水能力の基準は貯水量か取水量のどちらかを満たせば足ります。
常時貯水量40立方メートル以上、または取水可能水量が毎分1立方メートル以上かつ連続40分以上のいずれかを満たす必要があります。
消火栓は口径65の管に接続し、直径150ミリメートル以上の配管が原則ですが、管網の一辺が180メートル以下なら75ミリメートル以上に緩和されます。
敷地内に私設消火栓を設ける場合は、5栓を同時に開いてもこの給水能力を満たす水源が必要です。
私設消火栓を計画するときは、水源の容量が同時使用を前提にしているかを確認しておくと安心です。

うちの工場、敷地内に私設消火栓を増やす計画があるんですが、水源はどう考えればいいですか。

5栓同時に使っても足りる水源かどうかがポイントです。
次は建物からの距離の基準を見ていきましょう。

防火対象物から消防水利までの距離はどう決まるのか

建物と消火栓の間の距離を示すイラスト
消防水利は近ければ近いほど安心ですが、法令では上限となる距離が数値で決まっています。
市街地かどうか、用途地域と風速によって数値が変わります。
消防水利の基準 第四条 消防水利は、市街地(消防力の整備指針(平成十二年消防庁告示第一号)第二条第一号に規定する市街地をいう。)又は準市街地(同条第二号に規定する準市街地をいう。)の防火対象物から一の消防水利に至る距離が、別表に掲げる数値以下となるように設けなければならない。2 市街地又は準市街地以外の地域で、これに準ずる地域の消防水利は、当該地域内の防火対象物から一の消防水利に至る距離が、百四十メートル以下となるように設けなければならない。
距離の基準は用途地域ごとに100メートルから120メートルの幅で決まります。
近隣商業地域・商業地域・工業地域・工業専用地域は、年間平均風速が毎秒4メートル未満なら100メートル、4メートル以上なら80メートルが上限です。
それ以外の用途地域や、用途地域が定められていない地域は、風速が毎秒4メートル未満なら120メートル、4メートル以上なら100メートルです。
市街地・準市街地に当たらない地域は、この表を使わず一律140メートル以下という基準になります。
用途地域年間平均風速が毎秒4メートル未満年間平均風速が毎秒4メートル以上
近隣商業地域・商業地域・工業地域・工業専用地域100メートル80メートル
その他の用途地域及び用途地域の定められていない地域120メートル100メートル
自社の建物がどの用途地域に当たるかは、都市計画法上の区分にもとづいて市区町村の都市計画課で確認できます。

近隣商業地域だと、思ったより短い距離で水利が必要になるんですね。

はい、風速が速い地域ほど厳しくなります。
次は距離の基準に例外があるかを見てみましょう。

距離の基準を減らせる例外や外せない配慮義務はあるのか

耐震性を備えた消防水利と地割れを示すイラスト
距離の基準には、条件を満たせば水利を間引ける例外があります。
ただし、水利の種類や設置の考え方には外せない配慮義務も定められています。
消防水利の基準 第五条 消防水利が、指定水量(第三条第一項に定める数量をいう。)の十倍以上の能力があり、かつ、取水のため同時に五台以上の消防ポンプ自動車が部署できるときは、当該水利の取水点から百四十メートル以内の部分には、その他の水利を設けないことができる。第四条3 前二項の規定に基づき配置する消防水利は、消火栓のみに偏することのないように考慮しなければならない。4 第一項及び第二項の規定に基づき消防水利を配置するに当たっては、大規模な地震が発生した場合の火災に備え、耐震性を有するものを、地域の実情に応じて、計画的に配置するものとする。
大容量の水利が1つあれば、周りの水利を間引ける例外があります。
指定水量の10倍以上の能力があり、同時に5台以上の消防ポンプ自動車が取水できる水利は、取水点から140メートル以内に他の水利を設けなくてよいとされています。
一方で、水利の配置は消火栓だけに偏らないよう考慮する義務があり、防火水そうやプールなど複数の水利を組み合わせることが求められます。
大規模地震の発生に備え、耐震性を持つ水利を地域の実情に応じて計画的に配置することも基準に明記されています。
例外や配慮義務の運用は消防機関の判断によるため、自社の水利計画で疑問があれば所轄消防署に確認するのが確実です。

水利が1つ大きければ、周りは全部省略していいってことですか。

いいえ、同時に5台以上のポンプ車が使える能力が条件です。
次は水利を維持するための義務を見ていきましょう。

消防水利を維持するために何が求められるのか

消火栓の点検とカレンダーで維持管理を示すイラスト
消防水利は設けて終わりではなく、常に使える状態を保つことが基準そのものに定められています。
立地の要件と維持管理の義務を確認しておきましょう。
消防水利の基準 第六条 消防水利は、次の各号に適合するものでなければならない。一 地盤面からの落差が四・五メートル以下であること。二 取水部分の水深が〇・五メートル以上であること。三 消防ポンプ自動車が容易に部署できること。四 吸管投入孔のある場合は、その一辺が〇・六メートル以上又は直径が〇・六メートル以上であること。第七条 消防水利は、常時使用しうるように管理されていなければならない。
水利は取水しやすい立地であることも基準の条件です。
地盤面からの落差が4.5メートル以下、取水部分の水深が0.5メートル以上であることなど、消防ポンプ自動車が実際に取水できる構造が求められます。
そのうえで消防水利は常時使用しうるように管理されていなければならず、実務では巡回監視による点検、異常が疑われる場合の機能点検、点検記録の管理が求められています。
自社の敷地内に指定された消防水利がある場合、所有者・管理者として通路をふさがない、水利標識を隠さないといった協力が実務上重要になります。
まずは自社の建物の周りにどの消防水利が指定されているかを、所轄消防署に確認するところから始めましょう。

うちの敷地にある指定消火栓、前に物を置いてしまっていたかもしれません。

水利の前に物を置かないことも大切な協力です。
気づいたときにすぐ片付けておきましょう。

よくある質問

Q消防水利までの距離が基準を超えている建物はどうなりますか?
A基準は市町村が水利を配置するときの目安であり、既存の建物に直接の是正義務を課すものではありません。ただし距離が離れていることは、防火管理や自衛消防の計画を考えるうえで重要な情報になります。
Q私有地の池や井戸が消防水利に指定されたら使用料はもらえますか?
A消防水利の基準や消防法第21条に使用料の定めはなく、所有者の承諾にもとづく無償の指定が前提です。指定を受けるかどうかも所有者の意思によります。
Q私設消火栓は建物のオーナーが独自に設置してもよいですか?
Aはい、設置自体は可能ですが、5栓同時開弁時の給水能力など基準に適合させる必要があります。設置前に所轄消防署へ相談するのが確実です。
Q消防水利の標識を建物のオーナーが移動させてもよいですか?
Aいいえ、指定された消防水利の標識は消防長又は消防署長が掲げるもので、所有者が勝手に撤去や移動はできません。撤去や使用不能にする場合は事前の届出が必要です。

まとめ

消防水利には消火栓や防火水そうなど複数の種類があり、市町村が設置するものと、所有者の承諾を得て指定するものに分かれます。
消防水利は常時貯水量40立方メートル以上などの給水能力を満たす必要があります。
防火対象物から消防水利までの距離は、用途地域と風速に応じて100メートルから120メートル以内と定められています。
市街地・準市街地以外の地域は一律140メートル以下という基準になります。
大容量の水利があれば、周囲140メートル以内の他の水利を省略できる例外があります。
水利の配置は消火栓だけに偏らないことや耐震性への配慮も基準に明記されています。
消防水利は常時使用できるように管理する義務があり、標識の移動や水利の撤去も所有者が勝手に行うことはできません。

消防水利の距離にもちゃんと根拠があるんですね。
少し安心しました。

㈱防災屋でもご相談を承っております
まずは自社の周りにある消防水利を確認するところから始めてみてください。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第20条・第21条
  • 総務省消防庁「消防水利の基準」(昭和39年12月10日消防庁告示第7号、最終改正 令和5年12月25日消防庁告示第19号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の告示に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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