工場や倉庫の敷地に池や井戸、貯水槽があると、思わぬ形で消防水利の話が持ち上がることがあります。
消防が使う水利には、市町村や水道事業者が設置する公設のものだけでなく、私有の水利もあるためです。
消防法は、私有の池や井戸を消防水利として使えるようにする制度をあらかじめ用意しています。
この記事では消防法第21条が定める指定消防水利の仕組みと、管理者が知っておくべき注意点を解説します。
うちの敷地にある調整池が、消防車に使われるかもしれないって聞いたんですけど。
はい、私有の水利でも所有者の承諾があれば消防水利に指定されることがあります。
指定されたら何か対応が必要になるんですか。
標識が立ちますし、水利を埋め立てたり撤去したりする前には届出が必要になりますよ。
- 私有の池・井戸・水そう等は所有者等の承諾を得て消防水利に指定できる
- 指定された水利には消防車が容易に接近できる場所に標識を掲げなければならない
- 水利を変更・撤去する前には所轄消防長又は消防署長への事前届出が必要になる
- 指定水利の標識付近5メートル以内は駐車禁止の場所になる
- 標識が道路に接していない場合は標識の掲示義務が生じない例外がある
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目次
敷地内の池や井戸も消防水利に指定されることがあるのか

消防法は、私有の池や井戸を消防水利として使えるようにする制度を用意しています。
対象になるのは池、泉水、井戸、水そうといった具体的な水利に加え、その他消防の用に供し得る水利全般です。
指定するのは所轄の消防長又は消防署長で、指定された水利は常時使用可能な状態に置かれます。
これは市町村や水道事業者が設置する公設の水利施設とは別の枠組みで、私有のまま指定される点が特徴です。
自社の敷地に池や古い井戸がある場合、この制度の対象になりうることをまず押さえておきましょう。
うちにも古い井戸があるんですが、あれも対象になるんでしょうか。
井戸や水そうも対象に含まれます。
所有者の承諾があれば指定されますよ。
指定を受けた水利にはどんな標識が掲げられるのか

そのために消防法と施行規則は、標識の掲示について具体的なルールを定めています。
設置するのは消防機関側の義務で、施設の所有者が自分で用意する必要はありません。
ただし道路に接していない水利は例外として、標識の掲示義務そのものが生じません。
標識の様式は総務省令の別表で定められており、全国で統一された形になっています。
敷地内に見慣れない標識が立っていたら、指定消防水利の可能性を疑ってみてください。
標識ってどんな見た目なんですか。
総務省令の様式に沿った標識が立てられます。
消防車が近づきやすい場所が選ばれますよ。
指定された水利を変更したり撤去したりしてよいのか

埋め立てや撤去を考えるときは、事前に踏むべき手続きがあります。
対象になるのは水利そのものを変更する場合だけでなく、撤去や使用不能の状態に置く場合も含まれます。
届出先は所轄の消防長又は消防署長で、工事に着手する前に済ませておく必要があります。
指定を受けていることを知らずに埋め立て工事を進めてしまうと、この届出義務を果たせなくなります。
敷地内の水利に手を加える計画があるときは、まず指定の有無を確認しましょう。
埋め立て工事の予定があるんですが、勝手に進めても大丈夫でしょうか。
いいえ、工事の前に届出が必要です。
所轄の消防長又は消防署長へ相談してください。
標識の近くに車を止めてはいけないのはなぜか

道路交通法は、その機能を守るために駐車を制限しています。
これは指定消防水利に限らず、消火栓や防火水槽の吸水口周辺にも共通するルールです。
違反すると道路交通法上の駐車違反として取り締まりの対象になります。
敷地の出入口付近に標識があると、来客や従業員の車が知らずに止めてしまうことがあります。
標識付近の駐車禁止は、社内の駐車ルールにも反映しておくと安心です。
標識の近くには車を止めない方がいいんですね。
そうです。
標識の位置から5メートル以内は駐車禁止の場所になっています。
指定水利がある事業所は明日から何をすればよいか

自社の敷地に水利設備がある場合は、次の点をチェックしておきましょう。
- 敷地内の池・井戸・貯水槽等が指定消防水利になっていないか、所轄の消防署に確認する
- 標識が立っている場合はその位置から5メートル以内を駐車禁止エリアとして扱う
- 水利の埋め立てや撤去を計画するときは着手前に必ず届出を行う
- 標識や水利の状態に異常があれば速やかに消防署へ連絡する
指定を受けているかどうかで、駐車や工事の際に注意すべき義務が変わってきます。
特に埋め立てや撤去を伴う計画がある事業所は、着手前の届出を忘れずに行いましょう。
標識の維持や周辺の整理に協力することも、水利を良好な状態に保つために欠かせません。
分からない点があれば、まず所轄の消防署に相談することをおすすめします。
うちの敷地に指定水利があるか、まず確認してみます。
それが安心への近道です。
心当たりがあれば所轄の消防署に確認してください。
よくある質問
まとめ
指定水利があってもなくても、消防計画に一言書いておこうと思います。
それは良い心がけです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第21条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則第34条の2(e-Gov法令検索)
- 道路交通法第45条第1項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





