南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、大規模地震の発生が懸念されています。
屋外に大量の危険物を貯蔵するタンクも、早期の耐震安全性の確保が求められるようになりました。
ところが、耐震基準に満たないタンクは即座に使用できなくなると誤解している担当者は少なくありません。
この記事では、基準に適合するまでの間にタンクをどう安全に運用するかを解説します
うちの準特定屋外貯蔵タンク、古い設計で今の耐震基準を満たしていないかもしれません。
すぐに使えなくなるんでしょうか。
基準に満たなくても、液面管理という暫定対応が用意されています。
具体的にはどうやって基準に満たないと分かるんでしょうか。
まずは3つの要件で耐震安全性を確認・評価します。
今日はその中身を見ていきましょう。
- 耐震基準に適合しない準特定屋外貯蔵タンクは、側板の応力と隅角部の保有水平耐力という3つの要件で耐震安全性を確認・評価します。
- 3要件のいずれかを満たさない場合は、液面高さを下げる液面管理によって基準に適合するまでの間の耐震安全性を確保できます。
- 液面高さを10%下げると、圧縮応力や隅角部の安全率はおよそ20〜30%改善します。
- 液面管理はあくまで基準に適合するまでの暫定対策で、恒久的な耐震改修に置き換わるものではありません。
- 対象は準特定屋外貯蔵タンクで、判断に迷ったら所轄消防署への確認が確実です。
▼
目次
なぜ屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策が通知されたのか

屋外タンク貯蔵所も、早期の耐震安全性の確保が求められるようになりました。
消防庁は「東日本大震災を踏まえた危険物施設の地震・津波対策の推進について」(平成24年1月31日付け消防危第28号)等で、地震対策の推進をお願いしてきました。
これを受け、危険物保安技術協会に屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策に係る検討会が設置され、所有者等が自主的に取り組むべき事項の提言が取りまとめられました。
これをもとに消防庁が発した通知が「屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策等の推進について」(平成25年11月20日付け消防危第197号)です。
まずはどのタンクが対象になるかを確認しましょう。
うちのタンクも500キロリットルは超えているので、対象になりそうです。
対象かどうかは貯蔵量で決まります。
次に確認方法を見ていきましょう。
耐震安全性はどの3要件で確認するのか

確認する項目は決まった3つの要件です。
個々のタンク本体が貯蔵し、または取り扱う危険物の最大容量、つまり最高液面高さの状態でこの3要件を確認・評価します。
確認に使う板厚は、「準特定屋外タンク貯蔵所に係る技術基準等に関する運用について」(平成11年3月30日付け消防危第27号)で示された方法をもとに求めます。
評価の結果、いずれか1つでも要件を満たさなければ、耐震安全性が確保されていないと判断します。
基準を満たさないと分かったあとの対応を次に見ていきましょう。
うちは古い設計なので、隅角部の保有水平耐力が心配です。
3要件のうちどれか1つでも不足すれば対象になります。
基準を満たさない場合はどう対応すればよいのか

液面の高さを管理する方法です。
- 貯蔵する危険物の量を減らして液面高さを下げると、耐震安全性を向上させられます。
- 液面を下げれば、側板に生じる円周方向引張応力と軸方向圧縮応力はともに小さくなります。
検討会のケーススタディでは、液面高さを10%下げると圧縮応力や隅角部の安全率がおよそ20〜30%改善するという結果が示されています。
3要件のいずれかを満たさない場合は、すべての要件を満たすように液面高さを調整する液面管理を検討します。
液面を下げるだけで対応できるなら、すぐにできそうです。
すべての要件を満たす液面高さまで調整することが条件です。
液面管理はいつまでの対策なのか

位置づけを取り違えると、対応が止まったままになります。 液面管理は、耐震基準に適合するまでの間の暫定的な対策です。
検討会の提言も、液面管理を恒久的な解決策として位置づけてはいません。
貯蔵量を制限したままでは事業活動に影響が出るため、並行して恒久的な耐震改修を計画する必要があります。
また対象になるのは準特定屋外貯蔵タンクで、危険物の最大数量が1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクは別の基準で扱われる点にも注意してください。
液面管理を始めたあとも、評価をやり直さずに放置しないことが重要です。
うちのタンクは1000キロリットルを超えているので、話が違うということですね。
特定屋外貯蔵タンクは対象が異なるので確認が必要です。
明日からなにを確認すればよいか

最後に手順を整理します。
- 自社の準特定屋外貯蔵タンクが、貯蔵する危険物の最大数量500キロリットル以上1000キロリットル未満に該当するかを確認します。
- 該当する場合は、側板の応力と隅角部の保有水平耐力の3要件を最高液面高さの条件で確認・評価します。
液面管理を実施する場合も、恒久的な耐震改修の計画を並行して進めることが求められます。
評価や対策の実施状況は、所轄消防本部と協議しながら進めましょう。
判断に迷う項目があれば、早めに所轄消防署へ相談することをおすすめします。
まずは自社タンクの貯蔵量から確認してみます。
3要件の評価から一緒に進めましょう。
よくある質問
まとめ
貯蔵量の確認からやってみます!
3要件の評価からお手伝いします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第11条
- 危険物の規制に関する規則第20条の4の2
- 消防庁「屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策等の推進について」(平成25年11月20日付け消防危第197号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





