「異常現象が起きたのは把握しているが、通報は落ち着いてからでいい」——その判断が、法律に基づく報告や立入検査を招くことがあります。
消防庁の調査では、特定事業所の異常現象の通報は発見から1時間以上、時には数時間を要した例が相次いでいました。
しかも通報の対象は陸上の危険物施設だけでなく、岸壁に係留された船舶からの油の漏洩にも及びます。
通報が遅れれば、消防機関はその原因究明と改善策の報告、必要なら立入検査まで求めることができます。
うちは陸の施設だけ気を付けていれば大丈夫ですよね。
いいえ、船舶からの油の漏洩も通報の対象になります。
まずは通達が出された経緯を見ていきましょう。
通報が少し遅れたくらいで、そんなに大ごとになるんですか。
実は「遅れの原因」まで報告を求められることがあります。
順番に見ていきましょう。
- 消防庁は平成4年6月9日の通知(消防特第107号)で、異常現象の通報体制の充実を求めました
- 異常現象の通報は発見から1時間以上、時には数時間を要した例が相次いでいました
- 対象は石油コンビナート等特別防災区域内の特定事業所で、通報範囲は船舶係留施設からの油の漏洩にも及びます
- 通達が求めるのは、体制点検・教育徹底・範囲周知・改善措置の4点です
- 通報の遅れが続く場合、石災法第39条の報告徴収・第40条の立入検査に進むことがあります
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目次
特定事業所の異常現象通報はなぜ発見から1時間以上遅れたのか

ところが実際には、発見から通報までに長い時間がかかっている例が目立っていました。
背景には、石油コンビナート等災害防止法第23条が定める異常現象の通報義務があります。
特定事業所は出火や漏洩を発見したら、直ちに消防署等へ通報しなければなりません。
しかし実際には、夜間・休日や防災管理者が不在の時間帯に通報が遅れる例が目立っていました。
「昼間ならすぐ通報できる」という前提だけでは、体制として不十分だったのです。
うちは昼間ならすぐ通報できる体制がありますが、それで十分ですよね。
夜間・休日こそ体制を点検する必要があります。
次は、どこまでが通報の対象になるのか見ていきましょう。
通報の対象になるのはどの施設のどの現象なのか

しかし実際の範囲は、それだけにとどまりません。
特別防災区域内の岸壁に着けた船舶からの油の漏洩も、陸上の施設と同じ扱いになります。
「船は別の法律の話」と切り分けてしまうと、通報すべき現象を見落とすことになりかねません。
特定事業所は、自社の施設だけでなく係留施設や船舶周辺まで含めて異常現象を監視する必要があります。
範囲を狭く捉えていないか、社内規程を確認しておきましょう。
船から油が漏れても、うちの施設の話じゃないから関係ないと思っていました。
船舶係留施設からの漏洩も通報範囲です。
次は、通達が具体的に何を求めているか見ていきましょう。
通達はどんな体制の整備を求めているのか

体制と教育の見直しで着手できる項目です。
まず、昼間より人員が少ない夜間・休日・防災管理者の不在時でも、直ちに通報できる体制になっているかを点検します。
次に、従業員等への防災教育・訓練を徹底し、異常現象発生時の対応を周知します。
そのうえで、船舶係留施設からの漏洩まで含めた通報範囲の周知も欠かせません。
体制・教育・範囲の3つがそろって、初めて「直ちに通報する」が実現します。
夜間は当直の人数が少ないので、そこまで手が回っていないかもしれません。
夜間・休日の体制こそ点検が必要です。
次は、見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。
通報が遅れるとどんな確認を受けるのか

通達は、その差を埋めるための仕組みまで用意しています。
通報が遅い状態が続いたり、同一事業所で災害が繰り返されたりすると、単なる口頭指導では済みません。
行政は報告徴収という形で、遅れの原因と改善策の提出を求めることができます。
それでも改善が見えなければ、立入検査によって防災体制の実態そのものを確認します。
「体制は作ってある」で終わらせず、実際に機能しているかを自ら点検しておくことが重要です。
体制表は作ってありますが、実際に機能するかまでは試したことがありません。
作って終わりにしないことが大切です。
最後に、明日から確認すべきことを整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

実際に機能するかどうかまで確認して、初めて体制と言えます。
まず、夜間・休日・防災管理者不在時でも直ちに通報できる連絡網になっているかを確かめます。
次に、船舶係留施設からの漏洩も通報対象に含めて社内規程を見直します。
そのうえで、従業員・委託先まで防災教育が実際に届いているかを確認します。
体制表を眺めるだけでなく、実際に電話をかけてみるところまでやっておくと安心です。
まずは夜間の連絡網が本当につながるか、試してみます。
実際に確認するところまでやってみてください。
船舶からの漏洩も対象に入れて見直しましょう。
よくある質問
まとめ
夜間休日の連絡網を早速確認します!
船舶からの漏洩も忘れず伝えます!
実際につながるかまで確かめてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「特定事業所における異常現象の通報体制の充実について」(平成4年6月9日付け消防特第107号 消防庁特殊災害室長通知)
- 「特定事業所における防災体制の充実について」(昭和59年2月3日付け消防地第28号 消防庁地域防災課長通知)
- 「異常現象の範囲について」(昭和59年7月13日付け消防地第158号通知)
- 石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第23条・第39条・第40条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





