地下街や高齢者施設のオーナーから「浸水対策も自衛消防組織でまとめて済ませられますよね」と聞かれることがあります。
たしかに消防法の自衛消防組織は火災や地震のときに活躍する組織で、頼れる存在です。
ところが水防法が求める自衛水防組織は、これとは別の制度として運用されています。
制度の別と担当窓口の違いを知らないまま届出を進めると、あとから出し直しになります。
うちの地下街、浸水対策も自衛消防組織でまとめて済ませられますよね。
それが実は別の組織として扱われています。
順番に見ていきましょう。
え、消防計画とは別に作らないといけないんですか。
はい、届出先も水防担当の窓口になります。
- 地下街等・要配慮者利用施設・大規模工場等は、地域防災計画に指定されると避難確保・浸水防止計画の作成が義務付けられます。
- 地下街等の自衛水防組織の設置は義務ですが、要配慮者利用施設は努力義務にとどまります。
- 自衛水防組織は水防法にもとづく組織で、消防法第八条の二の五の自衛消防組織とは別の組織として扱われます。
- 避難確保・浸水防止計画は消防計画とは別の計画で、市町村の水防担当部局へ提出します。
- 自衛水防組織の編成には、既存の自衛消防組織の構成員を活用することもできます。
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目次
地下街の浸水対策はなぜ自衛消防組織と混同されやすいのか

どちらも「自衛」の名がつく組織で、しかも同じ建物の防災担当者が動かすことが多いため、現場では混同が起きやすいところです。
消防庁の事務連絡は、水防法にもとづく自衛水防組織と、消防法第八条の二の五にもとづく自衛消防組織は「基本的に別の組織」だとはっきり書いています。
現場の人員を兼務させることは認められていますが、それは組織の看板を1つにしてよいという意味ではありません。
このあと、対象になる建物の範囲と、通知が具体的に何を求めているのかを順番に見ていきます。
自衛消防隊のメンバーがそのまま水防の担当も兼ねるのは問題ないんですか。
兼務は認められています。
ただし届出は別々に必要です。
どんな建物のどんな組織が対象になるのか

このときの改正で範囲が広がり、対象が増えています。
地下街等(地下街や地下駐車場など不特定多数が利用する地下施設)は最も義務が重く、避難確保・浸水防止計画の作成と自衛水防組織の設置が義務です。
要配慮者利用施設(社会福祉施設・学校・医療施設など)は避難確保計画の作成は義務ですが、自衛水防組織の設置は努力義務にとどまります。
大規模工場等はこの改正で新たに加わった区分で、浸水の防止に絞った措置が求められます。
自分の建物がどの区分に当たるかは、市町村の地域防災計画への記載の有無でしか確認できません。
うちは高齢者施設なので、自衛水防組織は努力義務止まりなんですね。
計画の作成だけは義務ですので、そこは外せません。
通知は自衛水防組織と自衛消防組織の関係に何を求めているのか

条文でも、それぞれの根拠がはっきり分かれています。
自衛消防組織は消防法第八条の二の五にもとづき、火災や地震などの災害時の初期活動を担う組織です。
自衛水防組織は水防法にもとづき、洪水や高潮などの浸水時の避難誘導や浸水防止活動を担う組織です。
根拠法が異なるため、たとえ人員が重なっても、設置根拠と届出先は組織ごとに別のまま残ります。
次は、この違いを実務でどこまで意識すればよいかを見ていきます。
根拠になる法律から違うんですね。
はい、そこが火山法の避難確保計画との違いです。
実務で見落としやすいのはどこか

消防計画の延長で処理しようとすると、どちらも抜けやすいところです。
避難確保・浸水防止計画は市町村の水防担当部局が受け付ける前提の計画であり、消防署に消防計画を出しても代わりにはなりません。
訓練も同じ考え方で、消防訓練とは別に、洪水時等の避難誘導や浸水防止のための訓練を実施し、その結果を市町村長へ報告する義務があります。
「義務」と「努力義務」の差も見落としやすく、地下街等は自衛水防組織を置かないこと自体が是正指示の対象になり得ますが、要配慮者利用施設はまず計画の作成状況が問われます。
提出先・訓練記録・義務の重さの3点を、消防計画のチェックとは別枠で確認しておく必要があります。
消防訓練とまとめてやってしまいがちです。
まとめて実施しても、記録は別々に残してください。
明日からなにを確認すればよいのか

そこから先の手順は、通知が求める流れに沿えば迷いません。
まず、自分の建物が市町村地域防災計画に地下街等・要配慮者利用施設・大規模工場等のいずれかとして記載されているかを窓口で確認します。
記載があれば、避難確保・浸水防止計画(要配慮者利用施設は避難確保計画)を作成し、市町村の水防担当部局へ報告します。
続いて自衛水防組織を編成し、構成員などを市町村長へ届け出ます。既存の自衛消防組織の人員を活用してもかまいません。
最後に、避難確保・浸水防止のための訓練を実施し、その結果を記録・報告する体制を整えます。
まずは市町村に確認するところからですね。
そこが分かれば、あとの手順はこの記事のとおりです。
よくある質問
まとめ
火事のことしか考えていませんでしたが、水防も別に見ないといけないんですね。
まずは地域防災計画への記載の有無からで大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「水防法及び河川法の一部改正する法律」の一部施行に伴う自衛水防組織と自衛消防組織との関連等について(消防庁予防課・事務連絡・平成25年8月1日)
- 水防法及び河川法の一部を改正する法律の一部施行について(国土交通省水管理・国土保全局長・平成25年7月11日付国水政第30号)
- 水防法(昭和24年法律第193号)第十五条・第十五条の二・第十五条の三・第十五条の四
- 消防法(昭和23年法律第186号)第八条の二の五
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





