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小規模テナント部分の防火管理者はなぜ乙種でよいのか|甲種防火対象物の中の特例と収容人員基準を解説

小規模テナントの防火管理者は乙種で足りるのかを示すアイキャッチ画像

大きなオフィスビルやテナントビルには、建物全体の規模に応じて甲種防火管理者を選任しなければならない場合があります。
しかし、そのビルの中にある一つ一つのテナント区画が、すべて同じ基準で判断されるわけではありません。
消防法施行令第3条第3項には、面積や収容人員が小さい部分に限って、乙種防火管理者でもよいとする特例が定められています。
この記事では、その特例が使える条件と、実務で見落としやすい注意点を解説します。

同じビルの中でも小さいテナント区画なのに、甲種防火管理者が必要だと言われました。
ビル全体の規模で決まるものなのでしょうか。

いいえ、区画の広さと収容人員によっては、乙種の資格でも防火管理者になれる特例があります。
これは甲種防火対象物の中の一部分にだけ認められた仕組みです。

特例が使えるかどうかは、どうやって判断すればよいのですか。

用途の区分と収容人員の人数で、3段階の基準が決まっています。
次の項目で具体的な数字を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 甲種防火対象物の中でも、管理権原が分かれている小規模な部分には乙種防火管理者でよい特例があります
  • 特例が使えるかどうかは、用途の区分収容人員で決まります
  • 自力避難が困難な方が入所する施設等を含む部分は、もっとも厳しい収容人員10人未満に限られます
  • 乙種資格があっても、その部分で管理的又は監督的な地位にあることが必要です
  • 選任後は所定の様式で選任(解任)届出書を消防長等に届け出なければなりません

小規模テナントの防火管理者を用途区分・収容人員・地位と資格・選任届の4手順で示した図解

甲種防火対象物の中の小さなテナントにも甲種防火管理者が必要なのか

大きなオフィスビルの中の一区画を点線で示した図と、独立した小さな店舗区画
甲種防火対象物というと、建物全体が一つの基準で管理されているイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、その中の一部分だけを切り出して考える規定もあります。
消防法施行令第3条第3項 甲種防火対象物でその管理について権原が分かれているものの管理について権原を有する者がその権原に属する防火対象物の部分で総務省令で定めるものに係る防火管理者を定める場合における第一項(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の適用については、法第八条第一項の政令で定める資格を有する者は、第一項第一号に掲げる者のほか、同項第二号イに掲げる者とすることができる。
甲種防火対象物であっても、管理権原が分かれた小規模な部分に限っては乙種防火管理者でよいとされています。
条文が指す「第一項第二号イに掲げる者」とは、乙種防火管理講習の課程を修了した者のことです。
この特例が使えるのは、テナントごとに管理権原が独立している複合ビルなどに限られます。
どの部分が対象になるかは、総務省令で定めるもの、つまり消防法施行規則の規定で具体的に決まっています。
次の見出しでは、その総務省令が定める範囲を確認します。

うちのビルも管理権原が分かれています。
これも対象になるんでしょうか。

それは範囲によります。
次の項目で基準を一緒に見ていきましょう。

どんな部分なら乙種防火管理者で足りるのか

床面積を測る巻き尺の乗った図面と、小さな店舗の入口
特例が使えるかどうかは、部分ごとの収容人員で線引きされています。
基準は用途によって3段階に分かれます。
消防法施行規則第2条の2の2 令第三条第三項の総務省令で定める防火対象物の部分は、前条第一項第二号イからハまでに掲げるものとする。 同令第2条の2第1項第2号ロ 防火対象物の部分で令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ若しくはニ、(九)項イ、(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)の用途に供されるもののうち、当該防火対象物の部分を一の防火対象物とみなして第一条の三第一項及び第二項の規定を適用した場合における収容人員が三十人未満のもの
基準になる人数は、用途によって10人・30人・50人の3段階に分かれています。
自力での避難が難しい方が入所する施設等(別表第一(6)項ロなど)を含む部分は、もっとも厳しい収容人員10人未満に限られます。
事務所や店舗など一般的な特定用途の部分は収容人員30人未満、共同住宅や工場など非特定用途の部分は収容人員50人未満が基準です。
ここでいう収容人員は、そのテナント部分だけを一つの防火対象物とみなして数え直した人数である点に注意してください。
次の見出しでは、なぜこの人数が用途ごとに違うのかを見ていきます。

うちは飲食店なので特定用途になりますね。
収容人員30人未満なら対象になりますか。

はい、その基準に当てはまれば対象です。
ただし他にも条件があるので次で確認しましょう。

なぜ用途によって基準人数が違うのか

福祉施設を示す小さな建物と、その隣にある一般的な事務所ビル
10人・30人・50人という数字は、思いつきで決められたわけではありません。
用途ごとの避難のしやすさが基準になっています。
消防法施行令別表第一(六)項ロ(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、(略)避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。(略)その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの
自力での避難が難しい方が多く利用する施設ほど、少ない人数の段階で防火管理の基準が厳しくなります。
別表第一(6)項ロは、避難が困難な要介護者等を主に入所させる施設を指し、収容人員10人未満という他より低い基準が設定されています。
一方、事務所・店舗・劇場など通常の避難行動がとれる人が主な利用者の特定用途は収容人員30人未満、共同住宅・工場・倉庫などの非特定用途は収容人員50人未満と、段階的に緩やかになります。
用途によって基準が変わるのは、火災時に自力で避難できるかどうかという避難の困難さを反映しているためです。
自分のテナントがどの区分に当たるかは、まず令別表第一のどの項に該当するかを確認するところから始まります。

福祉施設が入っていると基準が厳しくなるんですね。

はい。
避難のしやすさで段階が変わります。

実務で見落としやすいのはどこか

一段だけ高くなった組織図の箱と、その隣に積まれた書類
乙種防火管理者を選べる特例が使えても、それだけでは終わりません。
見落としやすい点が2つあります。
消防法施行令第3条第1項 法第八条第一項の政令で定める資格を有する者は、次の各号に掲げる防火対象物の区分に応じ、当該各号に定める者で、当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあるものとする。
特例が使えても、選ばれる人がその部分で管理的又は監督的な地位にあることは変わらず必要です。
乙種防火管理講習を修了しているだけでは足りず、管理的又は監督的な地位にある従業員などを選ぶ必要があります。
もう一つの見落としが収容人員の数え方で、ビル全体の人数ではなくその部分だけを一つの防火対象物とみなして算定し直した人数で判定します。
選任(解任)届出書の様式には甲種・乙種の区分を記載する欄があるため、届出のときにどちらの資格で選任したかを明確にしておく必要があります。
特例はあくまで資格の要件を緩めるものであり、防火管理者としての責務そのものが軽くなるわけではありません。

乙種の資格さえあれば誰でもよいわけではないんですね。

はい。
地位の要件は別に満たす必要があります。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ手と、印鑑の押された届出書類
特例が使えるかどうかは、次の手順で確認できます。
順番に整理していきましょう。
消防法施行規則第1条の3第1項 令第一条の二第三項に規定する収容人員の算定方法は、別表第一の各項に掲げる防火対象物の区分に応じ、それぞれ同表に定めるところによる。
まず自分のテナント部分が令別表第一のどの項に当たるかを確認してください。
次に、その部分だけを一つの防火対象物とみなし、消防法施行規則第1条の3の算定方法で収容人員を数え直します。
用途と人数の組み合わせが10人・30人・50人のいずれかの基準を下回っていれば、乙種防火管理者を選任できる可能性があります。
選任する担当者が管理的又は監督的な地位にあることを確認したうえで、選任(解任)届出書を消防長等に提出してください。
判断に迷う場合は、自己判断で進めず所轄の消防署に確認するのが確実です。

まずは令別表第一のどの項に当たるか確認してみます。

それが最初の一歩です。
迷ったら遠慮なく相談してください。

よくある質問

Q甲種防火対象物の中の部分であれば、必ず乙種防火管理者でよいのですか?
Aいいえ。用途の区分と収容人員が基準を下回る部分に限られ、さらにその部分で管理的又は監督的な地位にあることも必要です。
Q収容人員はビル全体の人数で判断するのですか?
Aいいえ。対象となる部分だけを一つの防火対象物とみなして数え直した収容人員で判断します。
Q福祉施設が入っている建物はなぜ基準が厳しいのですか?
A自力での避難が困難な要介護者等が主に利用する用途のため、収容人員10人未満という他より低い基準が設定されています。
Q乙種防火管理者を選任したら、届出の方法は通常と違いますか?
A様式そのものは通常の選任(解任)届出書と同じですが、甲種・乙種のどちらで選任したかを様式内の区分欄に記載する必要があります。

まとめ

甲種防火対象物の中でも、管理権原が分かれた小規模な部分には乙種防火管理者でよい特例があります
根拠は消防法施行令第3条第3項消防法施行規則第2条の2の2です
基準となる収容人員は用途によって10人・30人・50人の3段階に分かれます
自力避難が困難な方が入所する施設等(別表第一(6)項ロなど)を含む部分は収容人員10人未満ともっとも厳しくなります
収容人員はビル全体ではなく、その部分だけを一つの防火対象物とみなして算定し直します
乙種資格があっても管理的又は監督的な地位にあることが必要です
選任後は選任(解任)届出書で甲種・乙種の区分を明記して届け出なければなりません

分かりました!自分のテナントがどの区分か確認してみます!

確認して分からない点があれば相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第8条第1項
  • 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第3条・別表第一
  • 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第2条の2・第2条の2の2・第1条の3

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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