特別養護老人ホームなどに併設された「ショートステイ」の部屋を、防火対象物の区分としてどう扱えばよいか迷っていませんか。
老人福祉法上の「老人短期入所事業」を行う施設は、消防法施行令の別表第一で(6)項ロという区分に位置づけられています。
同じ老人福祉法の三事業でも、小規模多機能型居宅介護事業だけは利用者の要介護度によって区分が変わることがあります。
この記事では老人短期入所事業とグループホームがなぜ要介護度を問わず(6)項ロになるのか、条文の根拠から解説します。
うちは特養に併設してショートステイの部屋を運営しているのですが、防火対象物の区分はどう考えればいいのでしょうか。
老人短期入所事業を行う施設は、老人福祉法第5条の2第4項に規定された事業です。
この事業は利用者の要介護度にかかわらず、消防法施行令の別表第一(6)項ロに区分されます。
それなら安心ですね。
でも同じ老人福祉法の事業でも、扱いが変わるものがあると聞きました。
はい、小規模多機能型居宅介護事業の宿泊部分だけは扱いが変わることがあります。
避難が困難な要介護者を主として泊めるかどうかで区分が決まるので、今日は条文で一緒に確認しましょう。
- 老人短期入所事業を行う施設は、利用者の要介護度にかかわらず消防法施行令別表第一(6)項ロに区分されます
- 根拠は老人福祉法第5条の2第4項に規定する老人短期入所事業と、施行令別表第一(6)項ロ(1)の条文そのものです
- 認知症対応型老人共同生活援助事業(グループホーム)も同じく要介護度の限定なしで(6)項ロになります
- 一方、小規模多機能型居宅介護事業の宿泊部分は避難が困難な要介護者を主として泊めるかどうかで区分が変わります
- 同じ建物でも行っている事業の種類によって(6)項ロと(6)項ハが混在することがあるため、消防用設備等の設置基準は事業ごとに確認する必要があります
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目次
老人短期入所事業とはどのような事業を指すのか

まずは老人福祉法が定める中身を確認します。
運営の場所は特別養護老人ホームなど厚生労働省令で定める施設に限られ、単独の建物として独立しているとは限りません。
実際には特別養護老人ホームや介護老人保健施設の一角に、ショートステイ専用の居室を設けて運営している例が多く見られます。
この「事業として何を行っているか」という切り口が、次に説明する(6)項ロの判定にそのまま直結します。
まずは自分の施設がこの事業を行っているかどうかを確認しましょう。
うちは特養の一角でショートステイの部屋を運営しています。
これも老人短期入所事業に当たりますか。
特別養護老人ホームなど厚生労働省令で定める施設で短期間入所させ養護しているなら、まさに老人短期入所事業に当たります。
なぜ老人短期入所事業を行う施設は要介護度を問わず(6)項ロになるのか

ところが老人短期入所事業には、この限定が付いていません。
「避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る」という条件が付いているのはこの2つで、老人短期入所事業を行う施設にはこの括弧がありません。
つまり老人短期入所事業は、入居者の要介護度を問わず、事業そのものが(6)項ロに列挙されていると読めます。
利用者の要介護度を個別に調べて判定する手間がかからないぶん、区分そのものは明快です。
この違いは条文の括弧の有無を実際に見比べないと気づきにくいところです。
有料老人ホームは要介護度で区分が変わると聞きましたが、うちのショートステイも同じように調べる必要がありますか。
いいえ、条文では老人短期入所事業に要介護度の限定が付いていません。
事業を行っている事実だけで(6)項ロと判断できます。
認知症対応型老人共同生活援助事業も同じ扱いになるのか

老人短期入所事業と同じ考え方が使えるか確認します。
老人福祉法第5条の2第6項は、入居者が共同生活を営む住居で介護その他の日常生活上の援助を行う事業と定義しています。
条文の並びを見る限り、老人短期入所事業とグループホームは同じ扱いを受けていることがわかります。
グループホームは過去の重大な火災を契機にスプリンクラー設置基準そのものが強化された経緯もあり、区分だけでなく設備基準の面でも注意が必要な用途です。
建物の中にこの2つの事業が両方入っている場合も、どちらも(6)項ロとして扱われます。
グループホームも要介護度を調べなくていいということですね。
そのとおりです。
認知症対応型老人共同生活援助事業も老人短期入所事業と同じく、事業の種類だけで(6)項ロと判断できます。
小規模多機能型居宅介護事業の宿泊部分はなぜ判定が変わることがあるのか

通いと泊まりを組み合わせるこの事業の、宿泊部分を見ていきます。
「避難が困難な要介護者を主として宿泊させるものに限る」という限定があるため、宿泊部分の利用者の要介護度を実際に確認しないと(6)項ロかどうか決まりません。
この限定に当てはまらない小規模多機能型居宅介護事業を行う施設は、(6)項ハの老人デイサービス事業等に類するものとして扱われます。
同じ「老人福祉法の三事業」という括りでも、条文の括弧の有無で判定の手順がまったく違う点に注意が必要です。
通いと泊まりを組み合わせる事業だからこそ、宿泊部分の実態を個別に確認する必要があります。
うちの施設は小規模多機能型居宅介護もやっているのですが、さっきの2つとは違う考え方をするのですね。
そうです。
小規模多機能型居宅介護事業の宿泊部分は、要介護度を主として泊めているかどうかを個別に確認してはじめて区分が決まります。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に確認の手順を整理します。 今日から確認すべきことは、自分の施設がどの事業にあたるかを整理することです。
老人短期入所事業とグループホームは、事業を行っている事実だけで(6)項ロと判断できます。
小規模多機能型居宅介護事業だけは、宿泊部分の利用者の要介護度を個別に確認する必要があります。
建物の中で複数の事業を運営している場合は、区分が混在していないか事業ごとに見直しましょう。
迷ったときは所轄消防署に相談するのが確実です。
- 自分の施設が老人福祉法上のどの事業(老人短期入所事業・小規模多機能型居宅介護事業・認知症対応型老人共同生活援助事業)にあたるかを整理する
- 小規模多機能型居宅介護事業を行っている場合は、宿泊部分の利用者が避難が困難な要介護者を主としているかを確認する
- 建物の中に複数の事業が混在していないか、事業ごとに用途区分を確認する
- 区分が変わる可能性がある場合は、所轄消防署に消防用設備等の設置基準を相談する
事業ごとに区分を整理すれば、うちの施設の消防用設備等もはっきりしそうです。
事業の種類を基準に整理すれば、区分の見落としを防げます。
迷ったときはいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
事業ごとに整理すれば、うちの施設の区分もはっきりしました。
ありがとうございます!
区分の見直しは消防用設備等の不足を防ぐ第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令別表第一(6)項ロ・ハ
- 老人福祉法第5条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





