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連結送水管の放水量はなぜ屋内消火栓と同じ式で下限が無いのか|0.6メガパスカルと計算式の意味を解説

連結送水管の放水試験と非常電源の基準を解説するアイキャッチ画像

連結送水管は、消防隊が現場でホースをつないで放水するための設備です。
ふだんは建物の外壁に赤い送水口が付いているだけで、住んでいる人が操作することはほとんどありません。
工事が終わったときには、実際に放水して圧力と流量を確かめる試験まで用意されています。
今回は連結送水管の放水試験の合否基準と、屋内消火栓と同じ計算式なのに放水量の下限が無い理由を解説します。

屋内消火栓と同じ式を使うなら、連結送水管にも放水量の下限があるはずですよね。

実は放水量の下限という基準は書かれていないんです。
まずは試験の全体像から見ていきましょう。

えっ、そうなんですか。
圧力の基準はちゃんとあるんですよね。

はい、放水圧力には明確な合格基準があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 連結送水管も外観試験・機能試験・総合試験の3区分で合否が判定されます
  • 送水口は地盤面から、放水口は床面から、それぞれ0.5メートル以上1メートル以下の高さに設けます
  • 放水試験の合格基準は、ノズル先端の放水圧力0.6メガパスカル以上であることです
  • 放水量はQ=0.653D²√10Pという式で算出できますが、屋内消火栓と違い下限値は明記されていません
  • 非常電源は、延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物では専用受電設備が使えません

連結送水管の放水試験で送水口の高さ確認から非常電源の切替試験まで確かめる流れを示した図解

連結送水管はなぜ工事が終わっても試験を受けるのか

送水口の前でチェックリストを確認しているイメージ
連結送水管は消防隊がホースをつなぐまで動かない設備なので、日常の点検だけでは性能を確かめにくいという特徴があります。
工事が完了した直後には、消防庁が定める試験基準に沿った検査が行われます。
連結送水管の設置に係る工事が完了した場合における試験は、次表に掲げる試験区分及び項目に応じた試験方法及び合否の判定基準によること。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第21 連結送水管)
試験は外観試験・機能試験・総合試験の3区分に分かれています。
外観試験では送水口や放水口の設置状況を目視で確認し、機能試験では加圧送水装置やポンプの動作を個別に確かめます。
最後の総合試験で、実際にノズルから放水して初めて設備全体の性能が確かめられます。
消防隊が使う場面を想定した試験だからこそ、実際に水を出す段階まで用意されていると考えられます。

自分たちでは滅多に触らない設備なのに、試験はしっかりあるんですね。

消防隊が使う設備だからこそ念入りに確かめます。
次は送水口の位置から見てみましょう。

送水口や放水口はどんな高さに設ける決まりか

送水口の高さをメジャーで測っているイメージ
送水口は消防ポンプ自動車をつなぐための口、放水口は消防隊員がホースを伸ばすための口で、それぞれ設ける高さが決められています。
まずは送水口と放水口、それぞれの設置基準を見ていきます。
送水口の設置高さは、地盤面からの高さが0.5メートル以上1メートル以下で、かつ、送水に支障のない位置に設けてあること。放水口の設置高さは、床面からの高さが0.5メートル以上1.0メートル以下の位置に設けてあること。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第21 連結送水管 ア 外観試験)
送水口も放水口も、高さの範囲そのものは同じ数値です。
送水口は地盤面から0.5メートル以上1メートル以下の高さに、消防ポンプ自動車が近づいて接続できる位置に設けます。
放水口は床面から0.5メートル以上1.0メートル以下の高さに、消防隊員がホースを接続しやすい位置に設けます。
基準面が地盤面か床面かの違いだけで、人が無理なく手を伸ばせる高さという考え方は共通していると考えられます。

送水口と放水口で高さの範囲が同じとは知りませんでした。

人が無理なく手を伸ばせる高さという考え方は共通しています。
次は実際の放水試験を見てみましょう。

放水試験は何を測って合格とするのか

ノズルから放水し圧力計で放水圧力を確認しているイメージ
送水口や放水口の位置が確認できたら、次はいよいよ実際に放水します。
このとき見るのは、水の勢いを示す放水圧力と、水の量を示す放水量の2つです。
放水圧力が最も低くなると予想される箇所で、ノズルの先端における放水圧力及び放水量を測定する。それぞれのノズル先端における放水圧力が0.6メガパスカル(消防長又は消防署長が指定する場合は、指定圧力とする。)以上であること。なお、放水量は、次式により算出することができる。Q=0.653D²√10P(Q:放水量、D:ノズル口径、P:放水圧力)(消防庁「消防用設備等の試験基準」第21 連結送水管 ウ 総合試験)
合格基準として明記されているのは放水圧力だけです。
ノズル先端における放水圧力が0.6メガパスカル以上であることが合否の基準とされています。
放水量はQ=0.653D²√10Pという式で算出できるとされていますが、この式はあくまで「算出することができる」という参考の位置づけです。
圧力さえ基準を満たせば、放水量そのものの数値を細かく問われるわけではないと考えられます。

圧力だけ確かめれば、量のほうは気にしなくていいんですか。

はい、試験基準の書き方としてはそうなっています。
ここが屋内消火栓との違いにつながります。

なぜ屋内消火栓と同じ式なのに放水量の下限が無いのか

屋内消火栓と連結送水管の送水口を並べて比較しているイメージ
実は屋内消火栓設備の放水試験にも、同じ形の計算式が使われています。
2つの設備の試験基準を並べてみると、違いがはっきり見えてきます。
ノズル先端における放水圧力が1号消火栓にあっては0.17メガパスカル以上0.7メガパスカル以下において、放水量は毎分130リットル以上であること。なお、放水量は、次式により算出することができる。Q=KD²√10P(K:1号消火栓の場合はK=0.653)(消防庁「消防用設備等の試験基準」第2 屋内消火栓設備 ウ 総合試験)
屋内消火栓の1号消火栓も、連結送水管と同じK=0.653という定数を使います。
違うのは、屋内消火栓の試験基準には毎分130リットル以上という放水量の下限が明記されている点です。
屋内消火栓は建物のポンプだけで送水を完結させる設備なので、ポンプの性能そのものを流量で保証する必要があるためだと考えられます。
一方の連結送水管は、建物の加圧送水装置に加えて消防隊が消防ポンプ自動車を送水口につないで送水することを前提にした設備で、建物側だけで流量を保証する構造にはなっていません。

消防車がつながることが前提だから、建物側の流量までは決めていないんですね。

同じ式でも役割が違うことがよく分かりますね。
最後に非常電源についても見ておきましょう。

非常電源はどんな種類まで認められているのか

発電機と蓄電池設備を並べたイメージ
加圧送水装置は停電中も動かせなければ意味がありません。
そのための非常電源にも、細かい種類の決まりがあります。
非常電源は、その容量を連結送水管の加圧送水装置を有効に2時間以上作動できる容量とするほか、第12条第1項第4号の規定の例により設けること。(消防法施行規則第31条第7号)非常電源は、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備によるものとし、特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものにあっては、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備によるものとする。(消防法施行規則第12条第1項第4号)
非常電源は原則4種類ですが、建物の規模で選べる種類が変わります。
容量は連結送水管の加圧送水装置を2時間以上作動できることが求められます。
種類は非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4つですが、延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物では専用受電設備を選べません。
外部からの受電に頼らない自前の電源だけで備える必要がある、という趣旨だと考えられます。

大きな建物ほど、電源の選び方も厳しくなるんですね。

自分の建物の延べ面積と用途を確認しておきましょう。
これで検査の全体像がつながりましたね。

よくある質問

Q連結送水管の放水量は毎分何リットルあれば合格ですか?
A試験基準に具体的な下限リットル数の記載はありません。合格基準として明記されているのは放水圧力0.6メガパスカル以上という数値だけで、放水量は式で算出できる参考の数値という位置づけです。
QK値の0.653はどこから来る数字ですか?
A屋内消火栓の1号消火栓の放水量計算式と同じ定数です。ノズルの形状や口径から放水量を求める式に使われる係数で、連結送水管の試験基準にもそのまま採用されています。
Q送水口と放水口の設置高さはどちらも同じですか?
Aはい、どちらも0.5メートル以上1メートル以下という同じ範囲です。送水口は地盤面から、放水口は床面からという基準面が違うだけです。
Q非常電源が専用受電設備を使えないのはどんな建物ですか?
A特定防火対象物で延べ面積1,000平方メートル以上の建物です。この場合は自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかで備える必要があります。

まとめ

連結送水管は外観試験・機能試験・総合試験の3区分で検査される
送水口は地盤面から0.5メートル以上1メートル以下の高さに設ける
放水口は床面から0.5メートル以上1.0メートル以下の高さに設ける
放水試験の合格基準はノズル先端で放水圧力0.6メガパスカル以上であること
放水量はQ=0.653D²√10Pという式で算出できる
屋内消火栓と同じ式・同じK値でも連結送水管には放水量の下限が明記されていない
非常電源は延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物では専用受電設備を使えない

放水量の下限が無い理由がよく分かりました。
今度の検査のときに確認してみます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第29条(連結送水管に関する基準)
  • 消防法施行規則第31条(連結送水管に関する基準の細目)
  • 消防法施行規則第12条第1項第4号(非常電源の種別)
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」第21 連結送水管 外観試験・総合試験
  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」第2 屋内消火栓設備 総合試験(比較参照)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。個別の判定や試験結果報告書の作成は、点検資格者や所轄消防署にご確認ください。

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