蓄電池設備は非常電源の代表的な選択肢の一つですが、充電装置そのものの保護構造まで正確に押さえている方は多くありません。
消防法施行規則は蓄電池設備の細かな構造・性能を消防庁長官が定める告示に委ねており、充電装置には入力側の保護から絶縁性能、温度上昇の上限まで独自の基準があります。
この記事では蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三に定められた充電装置の保護構造と性能基準を、条文に沿って解説します。
遮断器・絶縁性能・温度上昇値の3つのポイントを押さえれば、点検報告書の数字も正しく読めるようになります。
うちも非常電源に蓄電池設備を使っていますが、充電装置にそんなに細かい基準があるとは知りませんでした。
点検のときは何を見ればよいのでしょうか。
充電装置は常用電源と蓄電池をつなぐ要なので、遮断器・絶縁性能・温度上昇値の三つが基準の柱です。
順番に見ていきましょう。
遮断器が何か所も出てくると聞いて、正直ちょっと複雑そうだと感じました。
条文どおりに教えてもらえると助かります。
はい、役割ごとに整理すればそれほど難しくありません。
告示の条文を一つずつ確認していきましょう。
- 充電装置の構造基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ハの委任を受けた蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三にあります。
- 入力側には過電流遮断器と配線用遮断機(又は開閉器)の両方を設けます。
- 充電装置の回路事故に備え独立した過電流遮断器で蓄電池と放電回路を保護します。
- 絶縁性能は電気設備に関する技術基準を定める省令第5条の規定による水準に従います。
- 温度上昇値は測定箇所と耐熱クラスごとに上限が個別に決まっています。
▼

目次
蓄電池設備の充電装置はなぜ告示に基準を委ねているのか

条文の先には、告示という形でさらに詳しい基準が続いています。
規則第12条第1項第4号ハは、自家発電設備の規定(イ)の一部と非常電源専用受電設備の規定(ロ)の一部を準用したうえで、(イ)から(ニ)まで独自の要件を定めています。
その(ニ)が「消防庁長官が定める基準に適合するものであること」という告示への委任で、この告示が蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)です。
告示第二は蓄電池設備の構造及び性能を一(全体)・二(蓄電池)・三(充電装置)・四(逆変換装置)・五(直交変換装置)・六(キュービクル式)の各号に分けて定めており、今回はこのうち充電装置(第二・三)の保護構造に絞って見ていきます。
規則の本文だけでなく告示まで見ないといけないのですね。
正直そこまで追ったことはありませんでした。
はい告示第二・三が充電装置の中身です。
次は入力側の保護構造から見ていきます。
充電装置の入力側にはどんな保護装置が必要なのか

告示は入口側と内部側、それぞれに別の保護を求めています。
(三)は充電装置の入力側、つまり常用電源から電気が入ってくる手前の話で、過電流遮断器に加えて配線用遮断機又は開閉器を設けることを求めています。
過電流遮断器だけでなく開閉可能な遮断機・開閉器も併せて設けるのは、点検や修理のときに安全に電気を切り離せるようにするためと考えられます。
(四)は充電装置の回路内部で事故が起きた場合の話で、蓄電池や放電回路の機能に影響が及ばないよう、別に過電流遮断器を設けることを求めています。
過電流遮断器が二か所に出てきますが、同じものを二つ付けるということですか。
役割が違うなら教えてほしいです。
はい入口用と内部用で役割が違います。
次は絶縁性能の基準です。
充電装置の絶縁性能はどの基準で確かめるのか

ここでは消防独自ではなく、電気設備側の基準がそのまま使われます。
蓄電池設備は消防用設備ですが、絶縁性能については消防庁が独自の数値を定めるのではなく、経済産業省の電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第5条の規定をそのまま適用する仕組みです。
これは充電装置が扱う電圧・電流が一般の電気設備と共通するためと考えられ、消防用と電気用で別々の絶縁基準を作らずに済ませています。
点検の実務では、電気設備側の絶縁抵抗測定の考え方をそのまま蓄電池設備の充電装置にも当てはめて確認することになります。
消防の設備なのに、経済産業省の基準を見ないといけないのですね。
条文をどちらで探せばよいのか迷いそうです。
そうなんです絶縁性能だけは電気設備の技術基準を準用します。
次は温度上昇値の落とし穴です。
充電装置の温度上昇はどこまで許されるのか

問題はどこまでの温度上昇なら許されるかで、告示は測定箇所ごとに上限を分けています。
告示の表はトランス・整流体(サイリスタ・トランジスタ・整流ダイオード等)・直交変換装置・端子部分という測定箇所ごとに、耐熱クラス(A・E・B・F・H)に応じた温度上昇値の上限を分けて定めています。
同じトランスでも、直交変換装置を有する蓄電池設備に設けるものは、その他の蓄電池設備に設けるものより上限がやや低く設定されています。
測定方法も一律ではなく、通常は温度計法、直交変換装置を有する蓄電池設備のトランスだけは抵抗法という、対象ごとに異なる方法が指定されています。
点検表に温度上昇値と書いてあるのを見た覚えはありますが、正直どこまでが正常か分かっていませんでした。
測定箇所ごとに基準が違うとは知りませんでした。
はい耐熱クラスと測定箇所で上限値が変わります。
最後は点検で確認すべき手順です。
充電装置の基準を点検のときはどう確認すればよいのか

五つの視点を持っておくと、点検報告書の数字だけでなく現場の構造まで見えてきます。
- 入力側に過電流遮断器と配線用遮断機(又は開閉器)の両方があるかを確認する
- 充電装置の回路側にも独立した過電流遮断器があり、蓄電池や放電回路を保護しているかを見る
- 絶縁性能が電気設備に関する技術基準を定める省令第5条の水準を満たしているかを確認する
- 点検報告書の温度上昇値が、測定箇所と耐熱クラスに応じた表の上限内に収まっているかを見る
- 直交変換装置を有する蓄電池設備では、トランスの測定方法が抵抗法になっているかを確認する
充電装置を交換・増設するときも、遮断器と絶縁性能と温度上昇値の三点を忘れずに見直してください。
点検のたびにこの四つを見ればよいのですね。
次回の点検から意識してみます。
はい遮断器と絶縁性能と温度上昇値を毎回見てください。
数字の意味が分かれば点検報告書も読みやすくなります。
よくある質問
まとめ
遮断器・絶縁性能・温度上昇値、それぞれの役割の違いがよく分かりました!
充電装置の点検や更新でお困りの際はご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ハ
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 三(三)(四)(七)(八)
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第5条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





