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ハロゲン化物消火剤はなぜ薬剤ごとに充てん比や蓄圧値が違うのか|ハロン代替薬剤の基準数値も解説

ハロン代替薬剤の充てん比と蓄圧値は薬剤ごとに違うのかを示すアイキャッチ画像

ハロン消火剤はオゾン層への影響から新しい設置が控えられ、代わりにHFC-227eaやHFC-23といった代替薬剤が使われるようになりました。
どちらの薬剤も、貯蔵容器に詰められる量や加圧の圧力は消防法施行規則が薬剤ごとに数値で決めています。
ハロン2402・ハロン1211・ハロン1301と、代替薬剤とで、この数値はそろっているわけではありません。
この記事ではハロゲン化物消火剤の充てん比と蓄圧値が薬剤ごとにどう違うのか、条文の数値を整理します。

点検の記録に充てん比という欄があって、意味が分かりませんでした。

容器に薬剤をどれだけ詰めるかを表す数値です。
薬剤の種類ごとに順番に見ていきましょう。

薬剤が違えば数値も違うのか気になります。

薬剤ごとに範囲が決められています。
まずハロゲン化物消火設備そのものから確認します。

この記事の結論
  • ハロゲン化物消火設備の消火剤はハロン2402・ハロン1211・ハロン1301とHFC-23・HFC-227ea・もう一つの代替薬剤の6種類で、移動式に使えるのはハロンの3種類だけです
  • 貯蔵容器の充てん比はハロン2402が加圧式0.51以上0.67以下・蓄圧式0.67以上2.75以下、ハロン1211が0.7以上1.4以下と薬剤ごとに範囲が違います
  • ハロン1301とHFC-227eaは充てん比0.9以上1.6以下という同じ範囲が定められています
  • 蓄圧式の容器は20度で、ハロン1211を貯蔵するものは1.1メガパスカルまたは2.5メガパスカルとなるように加圧されます
  • 容器の見やすい箇所には充てん消火剤量や消火剤の種類などを表示することが義務付けられています

ハロゲン化物消火剤は薬剤の種類・充てん比・蓄圧値・銘板の表示を順に確認することを示した図解

ハロゲン化物消火設備はどんな消火剤を使う設備なのか

貯蔵容器が配管で制御盤につながっている機械室のイメージ
ハロゲン化物消火設備は、気体の消火剤を放射して消火する設備です。
使ってよい消火剤の種類は、消防法施行規則が名前で指定しています。
消防法施行規則第二十条第四項第二号 ハロゲン化物消火設備に使用する消火剤は、ハロン二四〇二、ハロン一二一一、ハロン一三〇一、HFC―二三、HFC―二二七ea又はFK―五―一―一二とすること
使える消火剤は6種類に決められています。
古くからのハロン2402・ハロン1211・ハロン1301と、オゾン層への影響が小さい代替薬剤のHFC-23・HFC-227ea、もう一つの代替薬剤の合計6種類です。
ただし全部の薬剤がどの設置方式にも使えるわけではありません。
移動式のハロゲン化物消火設備に使える消火剤はハロン2402・ハロン1211・ハロン1301の3種類だけで、代替薬剤は全域放出方式や局所放出方式でのみ使われます。
自分の建物のタンクにどの薬剤が入っているかは、銘板を見れば確認できます。

持ち運べる移動式には新しい薬剤が使えないんですね。

条文どおりに区分されています。
次は充てん比という数値そのものを見てみましょう。

貯蔵容器の充てん比とはなにを表す数値なのか

容器の内部に液体消火剤が半分ほど満たされ上部に空間が残っている断面のイメージ
充てん比とは、容器の内容積に対して薬剤をどれだけの重さ詰め込むかを表す数値です。
数値が大きいほど、同じ容器でも詰め込める薬剤の量は少なくなります。
消防法施行規則第二十条第四項第三号 貯蔵容器等の充てん比は、ハロン二四〇二のうち加圧式の貯蔵容器等に貯蔵するものにあつては〇・五一以上〇・六七以下、蓄圧式の貯蔵容器等に貯蔵するものにあつては〇・六七以上二・七五以下、ハロン一二一一にあつては〇・七以上一・四以下、ハロン一三〇一及びHFC―二二七eaにあつては〇・九以上一・六以下、HFC―二三にあつては一・二以上一・五以下、FK―五―一―一二にあつては〇・七以上一・六以下であること。
充てん比には下限と上限の両方があります。
下限を割り込むほど薬剤を詰めれば容器の耐圧に無理がかかり、上限を超えて薄めれば同じ容器で放射できる量が減ってしまいます。
だから薬剤ごとに安全に詰め込める範囲が数値で決められているわけです。
同じハロン2402でも、加圧式と蓄圧式では貯蔵の仕組みが違うため、充てん比の範囲も別に定められています。
点検の記録にある充てん比の数値は、この範囲に収まっているかを見るためのものです。

詰め込みすぎも、詰め込みが少なすぎても駄目なんですね。

その範囲が薬剤ごとに決まっています。
実際の数値を並べて比べてみましょう。

薬剤の種類によって充てん比はどう違うのか

大きさの異なる3本の貯蔵容器が並び内部の薬剤の量がそれぞれ違うイメージ
同じ条文の中でも、薬剤の名前ごとに範囲の数値は分けて書かれています。
並べてみると、薬剤どうしの関係が見えてきます。
薬剤の種類充てん比の範囲
ハロン2402(加圧式)0.51以上0.67以下
ハロン2402(蓄圧式)0.67以上2.75以下
ハロン12110.7以上1.4以下
ハロン1301・HFC-227ea0.9以上1.6以下
HFC-231.2以上1.5以下
ハロン1301と代替薬剤のHFC-227eaは、まったく同じ範囲が定められています。
同じ設置方式で使われることが多い薬剤どうしは、範囲もそろえられている様子がうかがえます。
一方で加圧式のハロン2402だけは0.51以上0.67以下と、他の薬剤より低い範囲です。
薬剤の性質によって安全に詰め込める割合が異なるため、この条文では薬剤名を並べて範囲を書き分けるという形になっています。
点検の記録に載っている数値がどの薬剤の範囲と対応しているか、この表と照らし合わせておくと見落としが減ります。

ハロンと代替薬剤で範囲が同じものもあるんですね。

薬剤の性質で範囲が決まります。
次は蓄圧式の圧力そのものを見てみましょう。

蓄圧式の容器はどれだけの圧力で加圧されているのか

貯蔵容器に窒素ガス容器がバルブでつながれ圧力計が表示されているイメージ
蓄圧式の容器は、消火剤だけでなく窒素ガスも一緒に詰めて圧力をかけています。
この圧力にも薬剤ごとに決まった数値があります。
消防法施行規則第二十条第四項第五号 蓄圧式の貯蔵容器等は、温度二十度において、ハロン一二一一を貯蔵するものにあつては一・一メガパスカル又は二・五メガパスカル、ハロン一三〇一、HFC―二二七ea又はFK―五―一―一二を貯蔵するものにあつては二・五メガパスカル又は四・二メガパスカルとなるように窒素ガスで加圧したものであること。
蓄圧値は薬剤ごとに二択で決められています。
ハロン1211は1.1メガパスカルまたは2.5メガパスカル、ハロン1301や代替薬剤は2.5メガパスカルまたは4.2メガパスカルのどちらかにそろえて加圧します。
どちらの値を選ぶかは製造者の設計によるもので、容器ごとに固定されています。
基準となる温度は20度と決められており、気温が変わっても容器の中の圧力は温度換算して確認します。
点検で圧力計の値を読むときは、まず銘板に書かれた設計圧力がどちらの数値かを確かめておくと話が早くなります。

圧力が二択になっているとは知りませんでした。

容器ごとに設計が決まっています。
最後に容器の表示そのものを見てみましょう。

点検や検査では容器のどこを確認すればよいのか

貯蔵容器の側面にある銘板を大きな拡大鏡で確認しているイメージ
充てん比や蓄圧値は、点検のたびに計算し直すものではありません。
容器そのものに、すでに必要な情報が表示されています。
消防法施行規則第二十条第四項第四号 貯蔵容器等は、第十九条第五項第六号の規定の例によるほか、次のイからハまでに定めるところによる。ハその見やすい箇所に、充てん消火剤量、消火剤の種類、最高使用圧力(加圧式のものに限る。)、製造年及び製造者名を表示すること
確認すべき情報は容器の銘板にまとまっています。
表示されるのは、充てん消火剤量・消火剤の種類・製造年・製造者名の4項目で、加圧式であれば最高使用圧力も加わります。
どの薬剤がどの範囲で詰められているかは、この銘板の記載とここまでの表を照らし合わせれば確認できます。
容器を新しく入れ替えたときや、点検業者が変わったときは、この銘板の写真を消防計画の資料に残しておくと後で見返しやすくなります。
数値そのものを自分で測り直す必要はなく、まずは銘板を見ることから始めれば足ります。

まずは銘板を見ればよいと分かって安心しました。

銘板の記載がいちばんの手がかりです。
最後によくある質問を見てみましょう。

よくある質問

Qハロン2402やハロン1301はもう新しく設置できないのですか?
A消防法施行規則は現在もハロン2402・ハロン1211・ハロン1301を使用できる消火剤として挙げています。ただしオゾン層保護の観点から新規生産は制限されており、既存のハロンを再利用するハロンバンクの仕組みが別に設けられています。
QHFC-227eaはハロンの代わりに使われる薬剤ですか?
Aはい。HFC-23・HFC-227eaともにハロゲン化物消火設備で使用が認められた消火剤で、充てん比の範囲はハロン1301と同じ値が定められています。
Q充てん比の数値が違うと何が変わるのですか?
A充てん比が大きいほど、同じ容器に詰め込める薬剤の重さは少なくなります。同じ量の薬剤を確保するには、その分だけ容器の本数や容積を増やす必要があります。
Q蓄圧値が二択になっているのはなぜですか?
A条文には理由までは書かれていませんが、容器の耐圧設計や放射性能に応じて製造者がどちらかの圧力を選べるようにするためと考えられます。選んだ値は容器の銘板に固定して表示されます。

まとめ

ハロゲン化物消火設備の消火剤はハロン2402・ハロン1211・ハロン1301とHFC-23・HFC-227ea・もう一つの代替薬剤の6種類である
移動式のハロゲン化物消火設備に使えるのはハロン2402・ハロン1211・ハロン1301の3種類だけである
充てん比はハロン2402が加圧式0.51以上0.67以下・蓄圧式0.67以上2.75以下と薬剤・方式ごとに範囲が違う
ハロン1301とHFC-227eaの充てん比は0.9以上1.6以下という同じ範囲である
蓄圧式容器は20度でハロン1211が1.1メガパスカルまたは2.5メガパスカル、ハロン1301等は2.5メガパスカルまたは4.2メガパスカルに加圧される
どちらの蓄圧値を選ぶかは製造者の設計によって決まる
容器の見やすい箇所には充てん消火剤量・消火剤の種類・製造年・製造者名を表示することが義務付けられている

まずは銘板を見ればよいと分かって安心しました!
次の点検で確認してみます。

薬剤の種類・充てん比・蓄圧値の3つを銘板で確かめれば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第二十条第四項第二号・第三号・第四号・第五号

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の設備の点検・整備は消防設備士等の資格者にご確認ください。

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