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移動式の不活性ガス消火設備のホースはなぜ20メートル必要なのか|放射量試験と耐圧気密試験の基準を解説

移動式ホースはなぜ20メートル必要なのかという記事のアイキャッチ画像

移動式の不活性ガス消火設備や粉末消火設備に付いているホースが、なぜどれも似た長さや太さに見えるのか気になったことはありませんか。
消防法施行規則は、移動式のホースやノズル開閉弁の細かな仕様を消防庁長官が定める基準に委ねています。
その中身を定めているのが昭和51年消防庁告示第2号です。
この記事では移動式ホース等の構造要件と3つの試験、表示事項の中身を解説します。

移動式の消火設備のホースを更新する見積りが来たのですが、基準がよく分かりません。

移動式のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールは、消防庁長官が定める基準に適合するものと決められています。
施行規則が告示に委任している構造です。

その基準はどこで確認すればよいのですか。

昭和51年消防庁告示第2号が構造と試験の中身を定めています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 移動式の不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のホース等は、消防庁長官が定める基準に適合するものでなければなりません。(消防法施行規則第19条第6項第6号ほか)
  • ホースは引出し・格納が容易で、全長20メートル以上、ノズル開閉弁は一動作で開閉できる構造が必要です。
  • 放射量試験・耐圧試験・気密試験の3つに合格しなければ基準を満たしません。
  • ノズル保持部分の断熱被覆にはハロン2402使用設備と粉末消火設備は対象外という例外があります。
  • 表示事項は消火設備の種類によって求められる号数が異なります。

移動式ホース等の基準を施行規則の委任から構造確認耐圧気密試験表示確認までの4ステップで示した図解

移動式のホース等はなぜ消防庁長官が定める基準に従うのか

規則書の横に移動式の不活性ガス消火設備の貯蔵容器とホースリールを並べた図
貯蔵容器や配管の基準は条文に数字が書かれていますが、ホースまわりの基準は少し違う場所にあります。
まず委任の構造を押さえておきましょう。
消防法施行規則第十九条第六項 移動式の不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、(略)次のとおりとする。(略)六 ホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールは、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
ホース等の基準は条文そのものではなく、消防庁長官が定める告示に委ねられています。
この委任は移動式の二酸化炭素消火設備だけでなく、移動式のハロゲン化物消火設備(施行規則第20条第5項第3号)と移動式の粉末消火設備(第21条第5項第3号)にも同じ形で置かれています。
その委任を受けて定められているのが移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準(昭和51年消防庁告示第2号)です。
つまり3つの消火設備の移動式ホース等は、それぞれ別の条文の委任を経て、同じ1本の告示にまとめて基準を持っています。
点検や更新の見積りを確認するときは、まずこの告示が根拠になっていることを押さえてください。

粉末消火設備でも同じ告示を見ればよいのですか。

はい、同じ1本の告示が3つの消火設備をまとめて扱います。
設備の種類ごとに数値が分かれる部分だけ注意します。

ホースの長さと開閉弁にはどんな基準があるのか

巻かれたホースとノズル開閉弁の横にメジャーを伸ばした図
告示第二には、ホース等の構造・材質・性能が並んでいます。
その中でも実務でまず確認したいのが長さと開閉の動作です。
移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準 第二(構造、材質及び性能) 移動式のホース等の構造、材質及び性能は、次に定めるところによる。(略)五 ホースの全長は、ノズル部分の長さを含めて二十メートル以上であること。(略)七 ノズル開閉弁は、一動作で容易に、かつ、確実に開閉できるものであること。
ホースの全長はノズル部分を含めて20メートル以上と決められています。
この長さの基準は不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のいずれでも共通です。
ノズル開閉弁は一動作で容易かつ確実に開閉できる構造でなければならず、複数の操作を要するものは認められません。
このほかホース等は分解や取りはずしが容易にできない構造とし、錆で機能に著しい影響が出るおそれのある部分には防錆処理を施すことも定められています。
ホースの材質は使用する消火剤に侵されないものであることも、あわせて確認すべき項目です。

ホースが短いだけでも基準違反になるということですか。

はい、20メートル未満は長さの要件を満たしません。
更新時は型式番号ごとの全長を必ず確認します。

放射量試験や耐圧・気密試験はどうやって行うのか

ノズルから消火剤を放射する様子と圧力計付きの試験容器を並べた図
構造の基準を満たすだけでは足りず、実際に3つの試験に合格する必要があります。
ここが更新や点検の見積りで見落とされやすい部分です。
移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準 第三(耐圧試験) ホース、ノズル開閉弁及びホースリールは、組みたてられた状態で、最高使用圧力(略)の一・五倍の水圧力を二分間加えた場合において、各部分に異常を生じないものであること。
耐圧試験は最高使用圧力の1.5倍の水圧力を2分間加えて異常が無いことを確認します。
このほかに放射量試験があり、温度20度で消火剤の種別ごとに定められた放射量(二酸化炭素は毎分60キログラム、ハロン2402は45キログラム、ハロン1211は40キログラム、ハロン1301は35キログラム、粉末は種別ごとに18〜45キログラム)以上を放射しても機能に異常を生じないことを確かめます。
さらに気密試験では、最高使用圧力の窒素ガス圧力または空気圧を2分間加え、各部分から漏れが無いことを確認します。
3つの試験はいずれも組み立てられた状態、つまりホース・ノズル開閉弁・ホースリールを一体にした状態で行う点も見落とさないでください。

耐圧試験と気密試験は同じことをしているのかと思っていました。

水圧か窒素ガスまたは空気圧かの違いです。
目的も強度の確認と漏れの確認で分かれています。

断熱被覆や表示事項に例外はあるのか

断熱材で覆われたノズル保持部分と覆われていないノズル保持部分を並べた図
ここまでの基準にはいくつか例外が用意されています。
知らずに全設備へ同じ仕様を当てはめると、かえって条件を読み違えます。
移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準 第二 八 ノズルの保持部分については、熱の不良導体で造り、又は断熱材で被覆すること。ただし、移動式のハロゲン化物消火設備でハロン二四〇二を使用するもの及び移動式の粉末消火設備にあつては、この限りでない。
ノズルの保持部分は熱の不良導体で造るか断熱材で被覆するのが原則です。
ただしハロン2402を使用する移動式のハロゲン化物消火設備移動式の粉末消火設備は、この被覆義務の対象から除かれています。
表示事項にも同じような違いがあります。第五が定める表示事項は全部で6項目ありますが、移動式の不活性ガス消火設備は第一号から第四号までに限られ、ハロン1211またはハロン1301を使用する移動式のハロゲン化物消火設備は第一号から第五号までに限られます。
それ以外の設備、つまり粉末消火設備や他のハロゲン化物消火設備は6項目すべての表示が必要です。
見積りやカタログを見るときは、対象の消火設備がどの号まで表示を義務づけられているかを先に確認してください。

粉末消火設備は断熱材が要らないのですか。

告示第二の八のただし書きで対象外とされています。
消火剤の性質による違いなので思い込みで足さないでください。

表示のどの項目を確認すればよいのか

ホース等の銘板とチェックリスト・虫眼鏡を並べた図
最後に、現場で確認する表示事項を整理します。
表示はホース等が基準に適合していることを見た目で確かめる手がかりです。
移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準 第五(表示) 移動式のホース等には、次の各号(移動式の不活性ガス消火設備に係るものにあつては、第一号から第四号まで、移動式のハロゲン化物消火設備のうちハロン一二一一又はハロン一三〇一を使用するものにあつては、第一号から第五号までに限る。)に掲げる事項を見やすい箇所に、容易に消えないように表示すること。一 製造者名又は商標 二 製造年 三 最高使用圧力 四 型式番号 五 消火剤の種別 六 加圧式用又は蓄圧式用の別
表示は製造者名・製造年・最高使用圧力・型式番号・消火剤の種別・加圧式用又は蓄圧式用の別の6項目です。
点検や更新のときは、まずホースやノズル開閉弁本体に容易に消えない表示があるかを確認してください。
表示が消えかけている、または前の項目で見た号数より少ない場合は、メーカーに型式番号を照会して基準適合を裏づける資料を取り寄せる必要があります。
平成11年の改正時には経過措置も置かれており、改正前から存在する防火対象物の設備で耐圧試験・気密試験の規定に適合しないものは、なお従前の例によるとされています。
古い設備を見かけたときは、経過措置の対象かどうかも含めてメーカーまたは所轄消防署に確認してください。

表示が薄くて読めないホースを見たことがあります。

それは要確認のサインです。
型式番号からメーカー資料を取り寄せましょう。

よくある質問

Qホースの長さはどの消火設備でも20メートルなのですか?
Aはい。移動式の不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のいずれも、ノズル部分の長さを含めて20メートル以上と定められています。長さの基準は消火設備の種類にかかわらず共通です。
Q放射量試験の基準値は消火剤によって違うのですか?
Aはい。二酸化炭素・ハロン2402・ハロン1211・ハロン1301・粉末各種で放射量の基準値がそれぞれ異なります。温度20度で試験し、基準値以上を放射しても異常が無いことを確認します。
Q耐圧試験と気密試験はどちらも同じ2分間なのですか?
Aはい。耐圧試験は最高使用圧力の1.5倍の水圧力、気密試験は最高使用圧力の窒素ガス圧力又は空気圧を、いずれも2分間加えて確認します。
Q表示事項はどの消火設備も同じ6項目なのですか?
Aいいえ。移動式の不活性ガス消火設備は第一号から第四号まで、ハロン1211・1301を使うハロゲン化物消火設備は第一号から第五号までに限られ、粉末消火設備等はすべての号の表示が必要です。

まとめ

移動式のホース等は消防庁長官が定める基準(昭和51年消防庁告示第2号)に適合するものでなければなりません
対象は移動式の不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の3つです
ホースの全長は20メートル以上、ノズル開閉弁は一動作で開閉できる構造が必要です
放射量試験・耐圧試験・気密試験の3つに合格する必要があります
ノズル保持部分の断熱被覆はハロン2402使用設備と粉末消火設備が対象外です
表示事項の号数は消火設備の種類によって異なります
表示が薄い設備は型式番号からメーカー資料を取り寄せて確認します

今日のうちにホースの表示を確認します!

ホース等の基準は告示の試験データと表示で確認できます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 移動式の不活性ガス消火設備等のホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールの基準(昭和51年2月25日消防庁告示第2号、最終改正:平成13年3月30日消防庁告示第13号)
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第19条第6項第6号・第20条第5項第3号・第21条第5項第3号

※本記事は公表されている法令および消防庁告示に基づく一般的な解説です。個別の設備が基準に適合しているかどうかはメーカー資料と所轄消防署の確認によります。点検や更新を計画する際は、必ず所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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