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地区音響装置はなぜ壊れずに鳴り続ける構造が必要なのか|スピーカー方式の音圧基準と無線式の条件も解説

天井に設置された地区音響装置と自動火災報知設備の受信機

天井やロビーに付いている「地区音響装置」のベルやスピーカーが、いざというとき本当に鳴るのか考えたことはありませんか。
実はその構造や機能は、消防庁の告示によって細かく定められています。
スピーカー方式には音圧の追加基準があり、出荷前には複数の試験をクリアしなければなりません。
この記事では地区音響装置の基本構造・スピーカーの性能基準・出荷前の試験・無線式の条件を、告示の条文にそって整理します

うちのビルの地区音響装置、電池も無いし配線もむき出しじゃないので、そこまで丈夫に作らなくても良さそうな気がするんですけど。

そんなことはありません。
地区音響装置は防水性や耐食性まで含めた構造基準が告示で定められています。

じゃあスピーカーで声を流すタイプは、ベルよりも基準が厳しいんですか。

はい。
スピーカー方式には周波数ごとの音圧基準が別に追加されます。

この記事の結論
  • 地区音響装置の構造・機能は消防法施行規則第24条第5号ト・第5号の2ニに基づく消防庁告示が定めています。
  • 基本構造は確実な作動・耐久性・防食・不燃性の外箱など9つの要件で構成されています。
  • スピーカー方式は入力インピーダンスと周波数ごとの音圧が別基準で定められています。
  • 出荷前には電圧変動や耐熱性など8つの試験をクリアしなければなりません。
  • 無線式は小電力セキュリティシステムの無線設備であることなどが条件になります。

地区音響装置の基準を根拠・構造・性能・試験の4段階で示した図解

地区音響装置の構造や機能はなぜ告示で定められているのか

施行規則の委任を受けた地区音響装置の基準を示すイラスト
感知器が火災を検知しても、
音や声で建物内に知らせる地区音響装置が正しく作動しなければ避難行動にはつながりません。
地区音響装置の基準 第一(趣旨)
この告示は、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第5号ト及び第5号の2ニの規定に基づき、自動火災報知設備の地区音響装置の基準を定めるものとする。
基準の具体的な中身は、施行規則ではなく告示のほうに書かれています。
消防法施行規則第24条第5号トと第5号の2ニは「消防庁長官の定める基準に適合するものであること」としか定めておらず、
確実に作動する構造及び機能がどのようなものかまでは、条文を読むだけでは分かりません。
その具体的な基準を定めたのが、平成9年消防庁告示第9号「地区音響装置の基準」です。
次章からは、告示第三が定める構造及び機能の中身を順番に見ていきます。

施行規則を読んでも、基準の中身までは書いてないんですね。

はい。
具体的な数値や条件は告示のほうに定められています。

地区音響装置にはどんな基本要件が求められるのか

防水性能や耐食性を備えた地区音響装置の内部構造を示すイラスト
告示第三は、地区音響装置そのものの
構造や機能について、9つの基本要件を挙げています。
地区音響装置の基準 第三(構造及び機能)
地区音響装置の構造及び機能は、次に定めるところによる。
(1)確実に作動すること。
(2)耐久性を有すること。
(3)ほこり又は湿気により機能に異常が生じないこと。
(4)腐食により機能に異常が生じるおそれがある部分には、防食のための措置が講じられていること。
(5)主要部の外箱の材料は、不燃性又は難燃性のものとすること。
9つの要件はどれも、長期間設置されたままでも機能を保つための基準です。
確実な作動・耐久性に加え、ほこりや湿気で異常が生じないこと、腐食のおそれがある部分の防食措置、外箱を不燃性又は難燃性の材料にすることが定められています。
このほか、配線には十分な電流容量と的確な接続が求められ、誤接続のおそれがある部分には防止措置、部品は機能に異常が出ないように取り付け、充電部は人が容易に触れられないよう保護することとされています。
外から見えるのはベルやスピーカーの外観だけですが、内部にはこれだけの要件が積み重なっています。

見た目は普通のベルなのに、要件はけっこう多いんですね。

はい。
特に防食措置と誤接続防止は経年劣化に直結する要件です。

スピーカー方式を選ぶときは何が追加で問われるのか

スピーカー型の地区音響装置と音圧の周波数特性を示すイラスト
音声でも知らせるスピーカー方式には、
ベルにはない周波数ごとの基準が追加されます。
地区音響装置の基準 第五(スピーカーの機能)
スピーカーの音声による警報を発する地区音響装置にあっては、当該スピーカーの機能は、第三によるほか、次に定めるところによる。
(1)周波数が300ヘルツ以上8キロヘルツ以下の範囲における入力インピーダンスは、定格インピーダンスの80パーセント以上であること。
(2)周波数が300ヘルツ以上8キロヘルツ以下の範囲において、定格入力電力の正弦波を入力した場合、スピーカーの中心から1メートル離れた点での音圧は、周波数が300ヘルツ以上2キロヘルツ未満の範囲にあっては公称音圧以上、周波数が2キロヘルツ以上8キロヘルツ以下の範囲にあっては公称音圧から20デシベルを減じた音圧以上であること。
スピーカーは、音の高さによって音圧が下がってよい範囲まで決められています。
対象となる周波数は300ヘルツから8キロヘルツまで、入力インピーダンスは定格の80パーセント以上を確保しなければなりません。
音圧は300ヘルツ以上2キロヘルツ未満では公称音圧以上が必要ですが、2キロヘルツ以上8キロヘルツ以下の高い音域に限っては、公称音圧から20デシベルまで下がることが認められています。
これは人の耳が音の高さによって感じ方が変わる性質を踏まえた基準と考えられ、周波数帯ごとに聞こえ方をそろえる工夫といえます。

高い音は、多少小さくてもいいということですか。

そうです。
20デシベルまでの差は基準の範囲内として認められています。

製品はどんな試験をクリアして出荷されているのか

試験機器につながれた地区音響装置と耐熱試験を示すイラスト
日常点検では見えない部分ですが、
地区音響装置は出荷前に複数の試験をクリアしています。
地区音響装置の基準 第六(試験)
地区音響装置は、次の各号に掲げる試験を行った場合において、当該各号に適合するものでなければならない。
(1)電圧変動試験(定格電圧の80パーセントの電圧で音響又は音声による警報を発し、かつ、定格電圧の80パーセントから110パーセントまでの範囲で電圧を変動させる試験をいう。)を行った場合、機能に異常が生じないこと。
(略)
(4)連続鳴動試験(定格電圧又は定格出力で8時間連続して鳴動させる試験をいう。)を行った場合、構造及び機能に異常を生じないこと。
(略)
(6)耐熱性試験(温度80度の気流中に地区音響装置を30分間投入する試験をいう。)を行った場合、構造及び機能に異常を生じないこと。
(7)絶縁抵抗試験(充電部と非充電部との間の絶縁抵抗値を直流500ボルトの絶縁抵抗計で測定する試験をいう。)を行った場合、絶縁抵抗値が5メガオーム以上であること。
試験は電気的な安定性と物理的な耐久性の両方をカバーしています。
電圧変動試験・消費電流測定試験・音圧特性試験・連続鳴動試験(8時間)・周囲温度試験・耐熱性試験・絶縁抵抗試験・絶縁耐力試験の8種類が定められています。
連続鳴動試験は定格電圧又は定格出力で8時間鳴らし続け、耐熱性試験は80度の気流中に30分間投入するというもので、いずれも構造及び機能に異常が生じないことが条件です。
絶縁抵抗試験では5メガオーム以上の値が求められ、これらはすべて型式試験の段階でクリアされたうえで市場に出ています。
現場の点検で確認できるのは外観や作動状況までで、試験結果そのものはメーカーの試験成績書で確認することになります。

点検のときに、この試験結果を見せてもらうことってできるんですか。

はい。
試験成績書を保管しているメーカーであれば確認できます。

無線式を採用するときは何を確認すればよいのか

無線式の地区音響装置と受信機の間の電波通信を示すイラスト
配線を省略できる無線式にも、
専用の技術基準が別に定められています。
地区音響装置の基準 第三(構造及び機能)
(略)
(11)受信機との間の信号を無線により発信し、又は受信する地区音響装置(無線式地区音響装置)にあっては、次に定めるところによること。
(1)無線設備は、無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)第49条の17に規定する小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備であること。
(2)電源に電池を用いる場合にあっては、電池の交換が容易にでき、かつ、電池の電圧が地区音響装置を有効に作動できる電圧の下限値となったとき、その旨を受信機に自動的に発信すること。
無線式は「電波」と「電池」の2点が独自の基準になっています。
使用できる無線設備は、無線設備規則が定める小電力セキュリティシステムの無線局に限られ、他の用途の無線機器を流用することはできません。
電池を電源とする場合は交換が容易にできる構造であることに加え、電圧が作動可能な下限値まで下がったときに、その旨を自動的に受信機へ発信する機能が必須です。
この電圧低下の自動通知があるからこそ、無線式でも電池切れによる機能停止に気づける仕組みになっています。
採用を検討する際は、この2つの条件を満たした製品かどうかをまず確認しましょう。

無線式だと、電池が切れても気づかないまま、ということもあるんですか。

いいえ。
電圧が下がると自動的に受信機へ通知される仕組みになっています。

よくある質問

Q地区音響装置の構造基準は誰が確認するものですか?
A型式試験の段階でメーカーが確認するものですが、設置後の外観点検は日常点検の範囲でも行えます。
Qスピーカー方式とベル方式はどちらを選んでも良いのですか?
A建物の用途や設置場所によって適否が変わるため、設計段階で消防設備士と相談して選定するのが一般的です。
Q試験に適合しない製品が市場に出回ることはありますか?
A型式試験に適合しないものは流通しない仕組みですが、経年劣化への対応として法定点検での作動確認が別途必要です。
Q無線式は電池切れ以外にも注意する点がありますか?
A電波が確実に届く位置に設置されているかどうかも重要で、設置時の電波確認を怠らないようにしてください。

まとめ

地区音響装置の構造・機能は消防法施行規則第24条第5号ト・第5号の2ニに基づく消防庁告示が定めています。
基本構造は確実な作動や耐久性など9つの要件で構成されています。
外箱は不燃性又は難燃性、配線には十分な電流容量と誤接続防止の措置が必要です。
スピーカー方式は入力インピーダンス80パーセント以上など独自の基準があります。
高い音域では公称音圧から20デシベルまでの低下が認められています。
出荷前には8種類の試験をクリアしなければなりません。
無線式は小電力セキュリティシステムの無線設備であることなどが条件です。

構造・スピーカー・試験・無線式まで確認すれば、もう安心して見られます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 地区音響装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第9号、最終改正:平成20年12月消防庁告示第26号)第三・第五・第六
  • 消防法施行規則第24条第5号ト・第5号の2ニ
  • 総務省消防庁

※本記事は公表されている法令および消防庁告示に基づく一般的な解説です。個別の製品が基準に適合しているかどうかはメーカーの試験成績書で確認してください。設置や交換を計画する際は、必ず所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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