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自動火災報知設備の受信機はなぜ内蔵の電池を持つのか|非常電源とは別に定められた予備電源の基準を解説

壁掛けの受信機パネルと中継器に内蔵された密閉型蓄電池

自動火災報知設備の受信機や中継器には、実は本体の中に小さな電池が入っていることをご存知でしょうか。
これは予備電源と呼ばれ、建物全体を支える非常電源とは別の枠組みで基準が定められています。
交換のときに見た目だけで選んでしまうと、規格に合わない蓄電池を取り付けてしまう恐れがあります。
今回は受信機・中継器に内蔵される予備電源の基準を解説します。

受信機の中の電池が古くなったので交換したいと相談を受けたんです。

それは非常電源ではなく、受信機に内蔵された予備電源ですね。

非常電源と何が違うのか、正直よくわかっていません。

予備電源は機器そのものが持つ電池で、交換のときは専用の基準を満たす必要があるんですよ。

この記事の結論
  • 予備電源は、火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備の受信機や中継器に使う密閉型蓄電池です
  • 根拠は消防法施行令第37条が定める検定対象機械器具等の規定です
  • 中継器用受信機用で、周囲温度の基準がまったく違います
  • 主電源が止まると自動的に予備電源へ切り替わる装置が必須です
  • 交換時は種別・型式番号・定格電圧値などの表示を確認します

受信機と中継器の予備電源は密閉型蓄電池で周囲温度の基準が異なる図解

予備電源の交換はなぜ品質確認の基準が必要になったのか

虫眼鏡で見た目のよく似た二つの密閉型蓄電池を見比べる技術者
見た目では規格に適合しているかどうかを判断できない、というのがこの基準が生まれた出発点です。
受信機や中継器の予備電源も、点検を経てはじめて基準の必要性が意識されました。
予備電源の基準について(通知)(昭和54年7月14日 消防予第135号 消防庁予防救急課長、改正 昭和56年10月14日消防予第248号・平成25年3月第123号) 消防法施行令(以下「令」という。)第30条の規定により、消防用設備等のうち令第37条の消防用機械器具等に該当するものは、当該消防用機械器具等について定められた技術上の規格に適合するものでなければならないこととされている。したがつて、自動火災報知設備の受信機等の予備電源についても点検した結果、機能等に不良箇所があるものについては、補修、交換等の整備を行う必要があるが、交換すべき予備電源が前記技術上の規格に適合しているかどうか外観から判断することはできない
消防法施行令第37条 法第21条の2第1項の政令で定める消防の用に供する機械器具等は、次に掲げるものとする。 五 火災報知設備又はガス漏れ火災警報設備に使用する中継器 六 火災報知設備又はガス漏れ火災警報設備に使用する受信機
受信機や中継器は、消防法施行令第37条が定める検定対象機械器具等の一部です。
点検で予備電源に不良が見つかっても、交換用の蓄電池が同じ規格を満たしているかは、外から眺めただけではわかりません。
そこで消防庁は昭和54年、予備電源そのものの構造・機能・試験方法を定めた基準を新たに設けました。
以後この基準が、受信機・中継器の内蔵電池を交換するときの拠りどころになっています。

外から見ただけでは規格に合っているかわからない、というのは意外でした。

だからこそ、基準という形で品質を確かめる仕組みが必要になったんです。

どの機器の密閉型蓄電池が対象になるのか

壁掛けの受信機と小型の中継器それぞれに内蔵された密閉型蓄電池
対象になるのは、建物全体の非常電源ではありません。
機器そのものに内蔵される、もっと小さな電池が対象です。
予備電源の基準(別添1) (用語の意義)1 この基準において、用語の意義は次に定めるところによる。(1)予備電源とは、火災報知設備及びガス漏れ火災警報設備の中継器又は受信機に使用される密閉型蓄電池をいう。(2)中継器用予備電源とは、中継器に使用されるものをいう。(3)受信機用予備電源とは、受信機に使用されるものをいう。
対象になるのは自動火災報知設備とガス漏れ火災警報設備、この二つの受信機と中継器です。
同じ「予備電源」という言葉でも、中継器用受信機用は別の区分として扱われます。
自家発電設備や蓄電池設備が担う非常電源とは異なり、機器そのものが単独で持つ電源という位置づけです。
まずはこの二区分を押さえておくと、このあとの基準が理解しやすくなります。

非常電源とは別に、機器ごとの電池があるということですね。

はい、受信機用と中継器用で分けて考える必要があります。

予備電源の基準は何を求めているのか

自動切替装置と放電試験装置につながれた密閉型蓄電池
基準が求めているのは、電池そのものの性能だけではありません。
交換後にトラブルを起こさないための仕組みも、あわせて求められています。
予備電源の基準(別添1) (一般構造及び性能)2 (8)口出線は、色分けするとともに、誤接続防止のための措置を講ずること。(機能試験)3 予備電源は、充電を行つた後一定の割合の許容放電電流で端子電圧が1Vになるまで完全放電する試験を7回繰り返し行つた場合、構造又は機能に異常を生じないものであること
受信機に係る技術上の規格を定める省令第4条 八 予備電源 イ 密閉型蓄電池であること。 ロ 主電源が停止したときは主電源から予備電源に、主電源が復旧したときは予備電源から主電源に自動的に切り替える装置を設けること
停電時に自動で電源を切り替える装置は、今の省令にもそのまま受け継がれています。
充電後に端子電圧が1Vになるまで完全放電する試験を7回繰り返しても、異常が出ないことも求められます。
誤接続を防ぐための口出線の色分けなど、施工段階のミスを防ぐ工夫も基準に含まれています。
細かく見える項目のひとつひとつが、交換後のトラブルを防ぐための備えになっています。

7回も完全放電させる試験があるとは知りませんでした。

繰り返し試験に耐える耐久性まで、あらかじめ確かめられているんですよ。

中継器用と受信機用はどこが違うのか

寒暖差の大きい機械室の中継器と室内の受信機で異なる温度計の目盛り
見分けにくいのは、同じ密閉型蓄電池でも周囲温度の基準がまったく違う点です。
置き場所が違えば、求められる耐性も変わってきます。
予備電源の基準(別添1) (一般構造及び性能)2 (10)中継器用予備電源にあつては零下10度から50度まで、受信機用予備電源にあつては零度から40度までの範囲の周囲温度において機能に異常を生じないものであること
中継器に係る技術上の規格を定める省令第8条(周囲温度試験) 中継器は、周囲の温度が零下十度以上五十度以下の場合、機能に異常を生じないものでなければならない。受信機に係る技術上の規格を定める省令第15条(周囲温度試験) 受信機は、周囲の温度が零度以上四十度以下の場合、機能に異常を生じないものでなければならない。
中継器用の予備電源だけを受信機に流用すると、想定より狭い温度範囲でしか動作が保証されません。
中継器は機械室や配管シャフトなど、温度変化の大きい場所に設置されることが多いため、範囲が広く取られています。
一方の受信機は、防災センター等の室内に置かれる前提のため、範囲がやや狭く定められています。
交換部品を選ぶときは、置き場所ではなく機器の種類そのもので予備電源を選ぶ必要があります。

置き場所じゃなくて機器の種類で選ぶ、というのが意外な落とし穴ですね。

見た目が同じ電池でも、取り違えると温度基準を満たせなくなるんです。

交換のときに何を確認すればよいのか

密閉型蓄電池の表示ラベルを確認しながらメモを取る点検員
最後は、実際に交換する現場で確認すべき手順です。
表示を見比べることが、いちばんの確認方法になります。
予備電源の基準(別添1) (表示)5 予備電源には、次に掲げる事項を見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。(1)「予備電源」の表示 (2)種別、型式及び型式番号 (3)製造年及び製造月又はロット記号 (4)製造者名又は商標 (5)定格電圧値、許容放電電流 (6)使用する場合の注意事項
見やすい箇所にある「予備電源」の表示・種別・型式番号は、交換前に必ず照合すべき項目です。
まず古い予備電源を外す前に、中継器用受信機用かを本体の表示で確認してください。
定格電圧値や許容放電電流が合っていないものを取り付けると、機能試験の想定を外れてしまいます。
迷ったときは自己判断で装着せず、消防設備士や納入業者に型式の確認を依頼するのが確実です。

つまり交換前に表示を見比べればいいんですね。

そのとおりです、表示さえ確認すれば取り違えは防げます。

よくある質問

Q予備電源と非常電源は同じものですか?
Aいいえ、予備電源は受信機・中継器に内蔵される密閉型蓄電池で、建物全体を支える非常電源とは別の基準で定められています。
Q予備電源はどの機器にも同じものが使えますか?
Aいいえ、中継器用と受信機用で周囲温度の基準が異なるため、機器の種類に合ったものを選ぶ必要があります。
Q交換用の予備電源を選ぶときに確認すべきことは何ですか?
A本体表示にある種別・型式番号・定格電圧値などを、交換前に必ず照合してください。
Qこの基準は今も有効ですか?
Aはい、密閉型蓄電池・自動切替装置・周囲温度の基準は、現行の受信機・中継器の規格省令にそのまま受け継がれています。

まとめ

予備電源は、火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備の受信機や中継器に使う密閉型蓄電池です
根拠は消防法施行令第37条が定める検定対象機械器具等の規定です
中継器用受信機用で、周囲温度の基準がまったく違います
主電源が止まると自動的に予備電源へ切り替わる装置が必須です
充電後に端子電圧が1Vになるまで完全放電する試験を7回繰り返しても異常がないことが求められます
交換時は種別・型式番号・定格電圧値などの表示を必ず確認します
現行の受信機・中継器の規格省令にも同じ枠組みが引き継がれています

これで予備電源を交換するときの確認すべき順番がはっきりしました!

お役に立てて何よりです、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 予備電源の基準について(通知)(昭和54年7月14日 消防予第135号 消防庁予防救急課長、改正 昭和56年10月14日消防予第248号・平成25年3月第123号)
  • 消防法施行令第30条・第37条
  • 受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)第4条・第15条
  • 中継器に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第18号)第5条・第8条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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