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新設地下配管の電気防食はなぜインスタントオフ電位で判定するのか|JSCE規格が求める絶縁確認と一括遮断配線を解説

新設地下配管の電気防食工事現場のイメージ

危険物施設の地下に埋める鋼製配管は、腐食を防ぐために電気防食という措置が義務付けられています。
これまでの防食効果の判定は国内の学会規格に基づいていましたが、国際規格(ISO)に整合させる形で判定方法を見直す必要が生じました。
令和7年8月、公益社団法人腐食防食学会は新設の地下配管に向けた新しい規格(JSCE S 2501:2025)を策定し、消防庁も同年12月の執務資料でその活用を認めました。
新設の地下配管では防食効果をどう判定し、どんな配線と確認試験が必要になるのかを解説します。

新設する危険物施設の地下配管に、新しい電気防食の規格を使ってよいか相談されました。

JSCE S 2501:2025という新しい規格で、消防庁も使ってよいと認めています。
まずは対象になる配管の条件を確認しましょう。

うちはこれから新しく埋設工事をする予定なんですが、それだけで対象になりますか。

埋設工事と電気防食工事を同時に行うことも必要です。
順番に見ていきますね。

この記事の結論
  • 新設危険物施設の鋼製地下配管の電気防食について、腐食防食学会が新しい規格(JSCE S 2501:2025)を策定し、消防庁の執務資料(消防危第260号)でその活用が認められた
  • 対象になるのは新設の鋼製地下配管に限られ、埋設後に別工程で防食工事を行う場合は既設向けの規格が適用される。
  • 防食効果はインスタントオフ電位(防食電流を遮断した直後の対地電位)の測定値で判定する。
  • ジョイントボックスで全ての陽極と防食対象配管を一括して遮断・接続できる配線にしなければならない
  • 防食対象配管と非防食対象物をつなぐ絶縁部は、埋め戻しの前後それぞれで絶縁性確認試験を行う必要がある。

新設なら電気防食の判定にインスタントオフ電位を使ってよい流れを示す図解

新設地下配管の電気防食はなぜ新しい判定方法ができたのか

地下配管の腐食部分と新しい規格の証書を示すイメージ
危険物施設の鋼製地下配管は、腐食を防ぐために塗覆装やコーティングに加えて電気防食が義務付けられています。
その効果をどう判定するかについて、令和7年に新しい規格ができました。
消防危第260号 別紙(公益社団法人腐食防食学会提供資料)「新設危険物施設の鋼製地下配管に適用する電気防食規格及びガイドライン(JSCE S 2501:2025)について」 腐食防食学会は(略)地下配管に適用する流電陽極方式電気防食の防食効果の判定についてもISO規格に整合した「防食対象物対地電位のインスタントオフ電位測定値に基づく方法」に変更する必要があると判断し、防食効果判定基準を変更した場合の適切な電気防食の具体的な実施方法の検討を行い、令和7年8月に「新設危険物施設の鋼製地下配管に適用する電気防食規格及びガイドライン(JSCE S 2501:2025)」を制定した
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第13条の4(配管の外面の防食措置) (略)地下の電気的腐食のおそれのある場所に設置する配管にあつては、告示で定めるところにより、塗覆装又はコーティング及び電気防食により(略)行うものとする
防食効果の判定方法が、国際規格(ISO)に合わせて見直されました
これまでの判定は、防食対象物の対地電位に防食電流と土壌抵抗の影響(IRドロップ)が混ざったままの数値で行われてきました。
ISO規格はこの影響を除いたインスタントオフ電位という測定値で判定する方法を採用しており、腐食防食学会は令和7年8月にこれに整合する新設配管向けの規格を制定しました。
消防庁も同年12月の執務資料(消防危第260号)で、現場からの照会に対して「差し支えない」と回答し、この規格に基づく運用を認めています。
まずはどんな配管が対象になるのかを、次に確認していきます。

判定方法まで規格で決まっているとは知りませんでした。

対象になる配管の条件も細かく決まっています。
次に確認していきましょう。

どんな配管のどんな工事が対象になるのか

新設工事の配管と既設の配管を対比するイメージ
対象になるのは新設の配管だけで、既設の配管には別の規格が適用されます。
新設かどうかの判断は工事のやり方で決まります。
消防危第260号 別紙 ⑴ 本規格及びガイドラインにおける新設とは,施設設置埋設工事と同時に電気防食装置の設置工事を行うケースを指しており、配管埋設直後であっても、配管埋設後に電気防食の施工を行う場合は、新設危険物施設の電気防食に該当しない。この場合は、「既設地下タンク・配管の電気防食規格及びガイドライン」に基づき電気防食の施工を行わなければならない。⑵防食対象配管に接続される非防食対象配管、あるいは近接する非防食対象物(略)とを、同時に設置埋設工事を行い、両者の間を電気的に絶縁できる場合を本規格及びガイドラインの対象とし、絶縁できない場合は、「既設地下タンク・配管の電気防食規格及びガイドライン」に基づき電気防食の施工を行わなければならない
新設に当たるかどうかは、埋設工事と防食工事を同時に行ったかどうかで決まります
配管を埋めた直後であっても、電気防食の施工を別の工程として後から行った場合は新設扱いにならず、既設向けの規格(JSCE S1901:2019)に基づいて施工しなければなりません。
また、近くにある非防食対象物(地下貯蔵タンクや配管サポート金具など)と防食対象配管を電気的に絶縁できる場合に限って新設規格の対象となり、絶縁できない場合はやはり既設向けの規格によります。
「新設」という言葉だけで判断せず、工事のやり方まで確認することが必要です。

埋めたばかりの配管ならどれも新設だと思っていました。

工事の同時性が条件になります。
次は規格が求める中身を見ていきます。

規格は防食効果をどうやって判定するよう求めているのか

ジョイントボックスと電位測定器で防食効果を判定するイメージ
判定に使う測定方法と配線には、それぞれ細かい要件があります。
規格の中身を確認していきます。
消防危第260号 別紙 防食対象配管の防食状態を判定する防食対象配管の対地電位測定は(略)対地電位測定器のプラス側をジョイントボックスの防食対象配管用端子に接続し、マイナス側を照合電極に接続して行う。対地電位の測定はサンプリング間隔0.35秒以下で対地電位を連続測定可能な電位測定器で測定を行う。(略)電気防食による防食電流を遮断した0.3〜0.7秒後の対地電位をインスタントオフ電位と呼ぶ。(略)インスタントオフ電位測定のための防食電流の遮断は、設置した全数の陽極と、全数の防食対象配管との接続を同時に一括して遮断できなければならない
測定器の性能と配線の両方に条件があります
測定器はサンプリング間隔0.35秒以下で対地電位を連続測定できるものを使い、防食電流を遮断した0.3〜0.7秒後の値をインスタントオフ電位として読み取ります。
配線のほうは、陽極と防食対象配管を直接つながず、すべてのケーブルをジョイントボックスに集め、内部のスイッチで全数を一括して遮断・接続できるようにしておかなければなりません。
この一括遮断ができる配線でなければ、そもそも正しくインスタントオフ電位を測定できません。

陽極ごとに個別で遮断するのではだめなんですね。

全数を同時に遮断できる配線が条件です。
次は見落としやすい落とし穴を見ておきましょう。

実務で見落としやすい絶縁部の落とし穴はどこか

絶縁部の絶縁が維持されていない配管継手のイメージ
実際に施工された配管を調査した結果、絶縁部の不備が繰り返し見つかっています。
どこでつまずきやすいのかを確認します。
消防危第260号 別紙 「新設地下配管の電気防食規格及びガイドライン」の検討に際して、これまでに施工された鋼製地下配管の流電陽極方式電気防食装置を各種調査した結果、絶縁部に関して、絶縁構造が当該危険物施設の設置環境にマッチしないために絶縁が維持されていないケースや、絶縁性の確認試験が実施されていない等の問題が散見された。この絶縁を行わないと、あるいは絶縁が維持されないと、電気防食装置の陽極から供給される防食電流が非防食対象物に流入するため、電気防食の防食性能が確保できなくなる問題や、陽極発生電流の増大による陽極の早期消耗が起こり、電気防食装置の設計寿命を確保できなくなる問題が生じる
絶縁部は「施工して終わり」ではなく、周囲の環境に合った構造にする必要があります
絶縁部は屋外に露出する箇所とボックス内に収納される箇所があり、それぞれ日光や風雨、結露などの条件が異なるため、周囲条件に合った絶縁構造を選ばないと絶縁が維持されません。
絶縁が崩れると、防食電流が非防食対象物へ流れ込み防食性能が確保できなくなるだけでなく、陽極の消耗が早まり装置の設計寿命そのものが縮む問題も生じます。
規格ができる前は、この絶縁性を確認する試験自体が行われていない現場も少なくありませんでした。

絶縁部の確認試験って、これまでは義務ではなかったんですか。

今回の規格で試験の方法まで示されました。
最後に明日からの確認事項をまとめます。

明日から新設工事で何を確認すればよいのか

埋め戻しの前後で絶縁性確認試験を行うイメージ
最後に、埋め戻しの前後それぞれで確認すべき試験を整理します。
消防危第260号 別紙 「新設地下配管の電気防食規格及びガイドライン」の検討においては、防食対象配管の土壌埋戻し前で絶縁施工後の絶縁部の絶縁性確認試験の方法及び絶縁性の判定基準並びに防食対象配管の土壌埋戻し後の絶縁部の絶縁性確認試験の方法及び絶縁性の判定基準、各々について検討を行い、規格及びガイドラインとして示した。各工程ごとに、本規格及びガイドラインに基づいて絶縁施工及び絶縁性確認試験を行い絶縁性の確保を図る必要がある。
絶縁性確認試験は、埋め戻しの前と後の2回に分けて行います
まず埋め戻し前の段階で絶縁施工後の絶縁性を確認し、次に埋め戻し後にもあらためて絶縁性を確認します。
それぞれの試験方法と判定基準は規格・ガイドラインに具体的に示されているため、施工業者に丸投げにせず、発注者側もその内容を把握しておくことが望まれます。
新設工事を計画する段階から、この新しい規格に沿った施工と試験を工程表に組み込んでおいてください。

次の新設工事では、この規格をあらかじめ確認しておきます。

それが一番の近道です。
迷ったときは所轄消防署にも相談してみてください。

よくある質問

Q既設の地下配管にもこの新しい規格を使えますか?
Aいいえ。この規格は新設の配管が対象です。既設の配管には別の規格(JSCE S1901:2019)が適用されます。
Qインスタントオフ電位はなぜ普通の対地電位と違うのですか?
A防食電流を遮断した直後の値のため、IRドロップという誤差要因を含まない、より正確な判定ができます。
Q陽極ごとに遮断スイッチを分けてはいけませんか?
A分けてはいけません。すべての陽極と配管を同時に一括遮断できる配線がジョイントボックスに求められます。
Q絶縁性確認試験は1回だけで十分ですか?
Aいいえ。埋め戻し前埋め戻し後のそれぞれで実施する必要があります。

まとめ

新設危険物施設の鋼製地下配管の電気防食に、腐食防食学会の新しい規格(JSCE S 2501:2025)が使えるようになった
消防庁は消防危第260号の執務資料でこの規格の活用を認めた
対象は埋設工事と防食工事を同時に行った新設配管に限られる
防食効果はインスタントオフ電位の測定値で判定する
ジョイントボックスで全数の陽極と配管を一括遮断・一括接続できる配線にする
絶縁部は周囲環境に合った構造にしないと絶縁が維持されない
絶縁性確認試験は埋め戻しの前後それぞれで実施する

電気防食の新しい判定方法が、これでよく分かりました!

㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和7年12月25日 消防危第260号 消防庁危険物保安室長)別紙「新設危険物施設の鋼製地下配管に適用する電気防食規格及びガイドライン(JSCE S 2501:2025)について」
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第13条の4

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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