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避難用タラップはなぜ一動作で架設できなければならないのか|けあげと踊場の基準も解説

避難用タラップはなぜ1動作で架設できるのか

避難用タラップは、はしごより緩やかに降りられる折り畳み式の避難器具です。
使用時以外は下端を持ち上げておく半固定式のものが多く、いざというとき1動作で架設できることが条件になっています。
踏面の寸法やけあげの高さ、踊場を設ける位置まで、条文には具体的な数値が定められています。
今回は避難用タラップの構造・材質及び強度の基準を、根拠条文から確認します。

うちのビルにも避難用タラップがあるんですが。
使わないときは折りたたんでおくタイプなんです。

それはおそらく半固定式ですね。
使用時以外は下端を持ち上げておき、使うときは1動作で容易に架設できる構造が条件になっています。

知りませんでした。
ほかにも決まっている寸法があるんですか。

踏面の寸法やけあげの高さまで数値で決まっています。
1つずつ条文で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 避難用タラップは施行規則第27条第1項第9号の設置方法と、同項第11号が委任する避難器具の基準の構造・材質・強度という二重の基準がある
  • 半固定式のものは1動作で容易に架設できる構造であることが条件で、有効幅は50センチメートル以上60センチメートル以下
  • 踏面の寸法は20センチメートル以上けあげの寸法は30センチメートル以下と決まっている
  • 高さが4メートルを超えるものは4メートルごとに踏幅1.2メートル以上の踊場を設ける
  • 積載荷重は踏板部分が0.65キロニュートン、踊場の床面1平方メートルにつき3.3キロニュートン

避難用タラップの構造材質強度の基準を示す図解

避難用タラップの基準はどこで決まっているのか

避難器具の基準を定めた告示と避難用タラップを示すイラスト
避難用タラップは、避難橋と並んで建物に堅固に取り付ける避難器具です。
だからこそ、取り付け方と器具そのものの強さを別々の条文で押さえておく必要があります。
消防法施行規則第27条第1項 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。
第九号 避難橋及び避難用タラップは、次のイ及びロに定めるところにより設けること。
イ 避難橋及び避難用タラップは、防火対象物の柱、床、はりその他構造上堅固な部分又は堅固に補強された部分に取り付けること。
ロ 避難橋及び避難用タラップは、一端をボルト締め、溶接その他の方法で堅固に取り付けること。
第十一号 避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること
設置と強度は別の条文で決まっています。
第九号は「どこにどう取り付けるか」という設置の基準で、建物側の堅固な部分にボルト締めや溶接で固定することを求めています。
一方、第十一号は「器具そのものが十分な強度を持っているか」を、消防庁長官が定める基準=避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第七に委任しています。
この告示の第七には、避難用タラップの構造・材質・強度・表示のすべてが定められています。
つまり避難用タラップは「取り付け方」と「器具の中身」の両方が揃って初めて基準に適合します。

ボルト締めか溶接で固定すればそれで終わりだと思っていました。
タラップ自体にも別の基準があるんですね。

そうなんです。
次は半固定式の架設のしかたを見てみましょう。

半固定式の避難用タラップはどう架設するのか

半固定式タラップの収納状態と架設状態を比較するイラスト
避難用タラップには、使わないときは下端を持ち上げておく半固定式のものがあります。
いざというときにすぐ使えるよう、架設の動作数と有効幅にも基準があります。
避難器具の基準 第七 避難用タラップの構造、材質及び強度
一 避難用タラップの構造は、次に定めるところによる。
(一)避難用タラップは、安全、確実かつ容易に使用される構造のものであること。
(二)避難用タラップは、踏板、手すり等により構成されるものであること。
(三)半固定式のもの(使用時以外は、タラップの下端を持ち上げておくものをいう。)は、1動作で容易に架設できる構造のものであること
(四)避難用タラップの手すり間の有効幅は、50センチメートル以上60センチメートル以下であること
(五)踏面には、滑り止めの措置を講じたものであること。
半固定式は1動作で架設できることが条件です。
半固定式とは、使用時以外はタラップの下端を持ち上げて収納しておく方式のことで、使うときは1動作で容易に架設できる構造でなければなりません。
複数の操作を要するものや、下端を持ち上げる以外にも手間がかかるものは基準を満たしません。
手すり間の有効幅は50センチメートル以上60センチメートル以下と幅の範囲が決まっており、狭すぎても広すぎても認められません。
踏面には滑り止めの措置も必須で、雨天時や靴底が濡れた状態でも安全に降りられることが前提です。

1動作で使えるようにしておくのが条件なんですね。
幅にも上限と下限があるとは知りませんでした。

はい、狭すぎても広すぎても駄目です。
次は踏面とけあげの寸法を見てみましょう。

踏面とけあげの寸法はどこまで決まっているのか

避難用タラップの踏面とけあげの寸法を示すイラスト
避難用タラップを実際に昇り降りするときに体で感じるのは、踏面の広さとけあげの高さです。
この2つには、それぞれ具体的な下限と上限の数値があります。
避難器具の基準 第七 一
(六)踏面の寸法(回りタラップ又はらせんタラップの部分における踏面の寸法は、タラップの有効幅の中心(有効幅が60センチメートルを超える場合にあつては、踏面の狭い方の端から30センチメートルの位置)における寸法をいう。)は、20センチメートル以上であること
(七)けあげの寸法は、30センチメートル以下であること
(八)踊場は、次により設けること。イ 避難用タラップの高さが4メートルを超えるものにあつては、高さ4メートルごとに踊場を設けること。
踏面は20センチメートル以上、けあげは30センチメートル以下です。
踏面の寸法は20センチメートル以上と決められており、これより狭いと足の置き場が不安定になります。
回りタラップやらせんタラップのように踏面の形が一定でないものは、有効幅の中心(有効幅が60センチメートルを超える場合は狭い方の端から30センチメートルの位置)で測ります。
一段の高さにあたるけあげの寸法は30センチメートル以下と定められ、急な段差での昇降を防いでいます。
高さが4メートルを超えるタラップには、4メートルごとに踊場を設ける必要があり、この点は次のセクションで詳しく確認します。

踏面が狭いと足元が不安定になるのはよく分かります。
けあげも30センチメートルまでなんですね。

そうです。
続いて踊場と手すりの基準を見ていきましょう。

高さのある避難用タラップに踊場は必要か

避難用タラップの踊場と手すりの基準を示すイラスト
高さのある避難用タラップを一気に降りるのは、体力的にも心理的にも負担になります。
そのため踊場と手すりのそれぞれに、具体的な寸法基準があります。
避難器具の基準 第七
一(八)ロ 踊場の踏幅は、1.2メートル以上であること
一(九) 手すり等は、次により設けること。イ 手すり及び手すり子は、避難用タラップの踏板等の両側に設けること。ただし、避難用タラップの有効幅が60センチメートルを超える場合には、その中間部にも設けることができる。ロ 手すりの高さは70センチメートル以上とし、手すり子の間隔は18センチメートル以下とすること
踊場の踏幅は1.2メートル以上と決められています。
高さ4メートルごとに設ける踊場は、踏幅1.2メートル以上を確保しなければならず、一息つける足場としての広さが求められます。
手すりと手すり子は踏板等の両側に設けるのが原則ですが、有効幅が60センチメートルを超える広いタラップでは中間部にも追加できます。
手すりの高さは70センチメートル以上、手すり子の間隔は18センチメートル以下という数値も決まっています。
これらの寸法が守られていないと、昇降中につまずいたり手を滑らせたりする危険が高まります。

踊場があると一息つけて安心ですね。
手すりの高さもきちんと決まっているんですね。

そうです。
最後に材質と強度、表示事項を確認しましょう。

避難用タラップの強度と表示事項はどう決まっているのか

避難用タラップの積載荷重と表示事項を示すイラスト
最後に、避難用タラップがどれだけの重さに耐える設計になっているかと、確認すべき表示事項を見ていきます。
材質の条件もあわせて確認しておきましょう。
避難器具の基準 第七
二 避難用タラップの材質は、次に定めるところによる。(一)踏板、手すり、手すり子及び支持部は、鋼材、アルミニウム材又はこれと同等以上の耐久性を有するものであること。(略)
三 避難用タラップの強度は、次に定めるところによる。(一)避難用タラップは、踏板及び支持部に作用する自重、積載荷重、風圧、地震力等に対して、構造耐力上安全なものであること。(二)積載荷重は、手すり間の各踏板の部分につき、0.65キロニュートンとし、踊場の床面1平方メートルにつき、3.3キロニュートンとすること
四 避難用タラップには、次に定める事項を、その見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。(一)種類(二)製造者名又は商標(三)製造年月(四)勾配
踏板と踊場では、積載荷重の数値が異なります。
踏板、手すり、手すり子、支持部は鋼材やアルミニウム材、またはこれと同等以上の耐久性を持つ材料を用います。
積載荷重は各踏板の部分につき0.65キロニュートン、踊場の床面1平方メートルにつき3.3キロニュートンと、場所によって基準が分かれています。
自重や積載荷重に加え、風圧や地震力にも構造耐力上安全であることが求められます。
表示事項は種類・製造者名又は商標・製造年月・勾配の4項目で、見やすい箇所に消えないように示されているかを確認します。

踏板と踊場で積載荷重の数値が違うのは意外でした。
表示事項も一度チェックしてみます。

はい、ぜひ確認してみてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q避難用タラップには設置基準と構造基準の両方があるのですか?
Aあります。施行規則第27条第1項第9号が「取り付け方」を、同項第11号が委任する避難器具の基準第七が「タラップそのものの強さ」を別々に定めています。
Q半固定式の避難用タラップはどのように架設しますか?
A使用時以外は下端を持ち上げておき、使うときは1動作で容易に架設できる構造であることが条件です。有効幅も50センチメートル以上60センチメートル以下と決まっています。
Q避難用タラップの踏面とけあげの寸法はどのくらいですか?
A踏面の寸法は20センチメートル以上、けあげの寸法は30センチメートル以下です。高さが4メートルを超えるものは、4メートルごとに踏幅1.2メートル以上の踊場を設けます。
Q避難用タラップの積載荷重はどのくらいですか?
A手すり間の各踏板の部分につき0.65キロニュートン、踊場の床面1平方メートルにつき3.3キロニュートンの荷重に耐える設計が求められます。

まとめ

避難用タラップは施行規則第27条第1項第9号(設置)と第11号(構造への委任)の二重の基準で成り立つ
タラップの中身は避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第七が定めている
半固定式は1動作で容易に架設できる構造であることが条件
手すり間の有効幅は50センチメートル以上60センチメートル以下
踏面は20センチメートル以上、けあげは30センチメートル以下
高さ4メートルごとに踏幅1.2メートル以上の踊場を設ける
積載荷重は踏板部分0.65キロニュートン、踊場は1平方メートルにつき3.3キロニュートン

取り付け方だけでなく、タラップ本体の寸法まで見る必要があるとよく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第27条第1項第9号・第11号(e-Gov法令検索)
  • 避難器具の基準(昭和53年3月13日消防庁告示第1号、最終改正令和元年6月28日消防庁告示第2号)第七 避難用タラップの構造、材質及び強度

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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