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避難器具は建物のどこにどう留めるのか|取付け具の材料と金属拡張アンカーの深さの基準を解説

避難器具の取付け具がマンションのバルコニーのコンクリート壁にアンカーボルトで留められている様子

避難はしごや緩降機は建物の壁や床に金物で留められています。
その金物を取付け具といい留める相手の柱や床やはりを固定部といいます。
どんな材料でどんな工法で留めるのかは消防庁の告示にかなり細かく書かれています。
器具そのものが規格に適合していても留め方が基準を外れていれば設置したことになりません

避難はしごを留めている金物にまで決まりがあるんですか。
器具の側だけの話だと思っていました。

取付方法という章が告示に立てられています。
材料も工法もアンカーの深さまで書かれていますよ。

アンカーの深さまで決まっているとは知りませんでした。
工事の立会いで見るところが分かりそうです。

数字が並ぶところは業者に任せて構いません。
まずどこで決まっているのかから順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 避難器具の取付方法は消防法施行規則第27条第2項の委任を受けた告示の第八で決められています
  • 固定部は別表第一の荷重と付加荷重の合成力を加えたときに発生する応力に耐えるものでなければなりません
  • 取付け具の材料は日本工業規格に適合するものなどとし耐食性を有しないものには耐食措置が要ります
  • 固定する工法は直接取付けと固定ベースと補強措置とこれらと同等以上の四つに整理されています
  • 金属拡張アンカーは呼び径ごとに埋込深さと穿孔深さの下限が表で定められています

避難器具の取付け具を固定する直接取付けと金属拡張アンカーと固定ベースと補強措置の四つの工法を並べた図解

避難器具の取付方法はどこで決められているのか

建物の柱とはりに取付け具が留められその取付け具に避難器具が下がっている様子
器具の側の規格とは別に建物の側にかかる基準があります。
その入口が消防法施行規則第27条の最後の一項です。
消防法施行規則第27条第2項 前項に規定するもののほか、避難器具の設置及び維持に関し必要な事項は、消防庁長官が定める
避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目 第八 取付方法 避難器具の取付方法は、次によるものとする。 一 避難器具を取り付ける固定部は、避難器具の種類に応じ、別表第一のa欄に掲げる荷重及びb欄に掲げる荷重の合成力を、当該避難器具の取付位置に同表c欄に掲げる荷重方向で加えた場合、当該固定部に発生する応力に耐えるものでなければならない。ただし、b欄に掲げる荷重の合成力のうち、地震力又は風圧力にあっては、どちらか一方の大なる方のみとすることができる。
器具ではなく建物の側の基準です
この告示は平成8年4月16日消防庁告示第2号として出され平成18年5月19日消防庁告示第16号まで改正されてきたもので取付方法は第八に置かれています。
告示の第二では取付け具を避難器具を固定部に取り付けるための器具と定義し固定部を防火対象物の柱や床やはりその他構造上堅固な部分または堅固に補強された部分と定義しています。
別表第一のa欄の荷重は避難はしごなら有効長について2メートル又はその端数ごとに1.95キロニュートンを加えた値で滑り棒と避難ロープは3.9キロニュートンとされています。
b欄の付加荷重は自重で滑り台や避難橋や避難用タラップでは自重に加えて風圧力と地震力と積雪加重も見ますが地震力と風圧力はどちらか大きいほうだけでよいというただし書が付いています。
つまり自分の建物のどの部分に留めるかを決めた時点で構造の話が始まっているということです。

器具の重さだけを支えれば足りるわけではないんですね。
風や地震まで見るとは思いませんでした。

屋外に張り出す器具ほど風の影響が出ますからね。
設計の書類に別表第一の計算が付いているか見ておきましょう。

取付け具にはどんな材料を使わなければならないのか

作業台に鋼材の平板と角形の鋼管とワイヤロープが並べられ屋外の収納箱にも同じ金物が付いている様子
取付け具は現場で適当な金物を当てて作るものではありません。
使える材料の範囲が告示に列挙されています。
同告示 第八 二 避難器具を固定部に取り付けるための取付け具(避難器具用ハッチを除く。)の構造及び強度は、次によること。 (一) 取付け具の材料 イ 次のいずれかに適合するものであること。 (イ) 日本工業規格G三一〇一(一般構造用圧延鋼材)、日本工業規格G三四四四(一般構造用炭素鋼鋼管)、日本工業規格G三四六六(一般構造用角形鋼管)又は日本工業規格G三五二五(ワイヤロープ) (略) ロ 耐食性を有しない材料にあっては、有効な耐食措置が講じられていること。 ハ 雨水等のかかる場所(直接外気に接する部分に限る。)に設けるものにあっては、次のいずれかに適合するものであること。ただし、格納箱が耐食性を有するものである場合は、この限りでない。
材料と場所の二段構えで決まっています
まず一般構造用圧延鋼材や一般構造用炭素鋼鋼管や一般構造用角形鋼管やワイヤロープの日本工業規格に適合するものか同等以上の強度と耐久性を有する材料であることが求められます。
そのうえで耐食性を有しない材料には有効な耐食措置を講じることとされています。
さらに雨水等のかかる場所で直接外気に接する部分に設けるものはステンレス鋼棒やステンレス鋼板の規格に適合するものなどにするよう上乗せされていますが格納箱が耐食性を有する場合はこの限りでないというただし書が付いています。
許容応力の側も定めがあり鋼材等の許容応力度は種類と品質ごとの表で示されワイヤロープの許容引張応力は切断荷重の三分の一とすることとされています。
屋外の器具で金物だけがさびているのを見つけたら材料の選び方まで戻って確かめる余地があるということです。

屋外にあるかどうかで求められるものが変わるんですね。
うちの器具は外廊下にあります。

直接外気に接する部分かどうかが分かれ目になります。
格納箱の中なのか外なのかを写真に撮っておくと話が早いですよ。

取付け具を固定する工法にはなにが認められているのか

鉄筋への溶接とアンカーとおもりの上と柱をはさみ込む金物の四つの留め方を並べた様子
留める先は建物の構造体だけではありません。
告示は工法を四つの類型に分けています。
同告示 第八 三 取付け具を固定する場合の工法は、次によること。 (一) 建築物の主要構造部(柱、床、はり等構造耐力上、十分な強度を有する部分に限る。以下同じ。)に直接取り付ける場合 イ 鉄骨又は鉄筋にボルト等を溶接し又はフック掛け(略)する工法 ロ 金属拡張アンカーによる工法(スリーブ打ち込み式に限る。以下同じ。) (二) 固定ベース(取付け具に作用する外力に対抗させる目的で設けるおもりをいう。以下同じ。)に取り付ける場合 (三) 補強措置を講じた部分に取り付ける場合(略) (四) その他前(一)から(三)までに掲げる工法と同等以上の強度を有する工法の場合
建物に穴をあける工法だけではありません
一つ目は主要構造部への直接取付けで鉄骨や鉄筋にボルト等を溶接するかフック掛けする工法と金属拡張アンカーによる工法があり後者はスリーブ打ち込み式に限られています。
二つ目の固定ベースは取付け具に作用する外力に対抗させる目的で設けるおもりのことで屋上など構造体に留めにくい場所で使われます。
三つ目の補強措置は柱やはりを鋼材等で挟み込んでボルトとナットで締めつける工法や柱やはり等の強度を低下させない工法や両面を鋼材等で補強してボルトを貫通する工法です。
四つ目はこれらと同等以上の強度を有する工法で個別の判断が要ります。
自分の建物で使われている工法がこの四つのどれなのかを設計書類で押さえておくと点検の指摘にも答えられます。

つまりおもりで支える留め方も正面から認められているんですね。
仮設のようなものかと思っていました。

告示に名前で書かれた工法のひとつです。
ただし重さの条件が付くので勝手に減らしてはいけません。

金属拡張アンカーで見落としやすいのはどこか

コンクリートに深く離して打たれたアンカーと浅くへりに寄せて打たれたアンカーを見比べる様子
いちばん数字が細かいのがこの工法です。
深さも間隔もへりからの寸法も表と倍率で決められています。
同告示 第八 四 (二) ロ 金属拡張アンカーによる工法(軽量コンクリート及び気泡コンクリートで造られている部分を除く。) (イ) 埋込深さ等と間隔 a 埋込深さ(スリーブの長さをいう。以下同じ。)は、仕上げ部分(略)の厚さを除き、次の表の上欄に掲げる金属拡張アンカーの呼び径に応じ、同表の中欄に掲げる埋込深さに対し、同表の下欄に掲げる穿孔深さの下限の値となるように施工すること。(略) (ロ) 金属拡張アンカーの相互の間隔は、金属拡張アンカーの埋込深さの三・五倍以上の長さとすること。 (ハ) 金属拡張アンカーのへりあきの寸法は、金属拡張アンカーの埋込深さの二倍以上の長さとすること。 (ニ) 金属拡張アンカーは、増し締めのできるおねじ式とすること。
打てないコンクリートがあります
まず軽量コンクリートと気泡コンクリートで造られている部分はこの工法から除かれているので下地の種類の確認が先です。
埋込深さは仕上モルタル等の仕上げ部分の厚さを除いて数えることとされ呼び径M10なら埋込深さ40ミリメートルに対して穿孔深さの下限は60ミリメートルというように表で対応が決められています。
コンクリートの厚さに対する穿孔深さの限度も別の表にあり厚さ120ミリメートルなら穿孔深さは70ミリメートル以下といった形で上限側も押さえられています。
相互の間隔は埋込深さの3.5倍以上でへりあきの寸法は埋込深さの2倍以上とされ増し締めのできるおねじ式であることも求められます。
本数についてもコンクリート設計基準強度に応じた許容引抜荷重の表が示され引張力のかかるアンカーは2本以上とすることとされているのでアンカー1本だけの固定は基準の姿ではありません。

へりに近いところに打ってあるのを見た覚えがあります。
あれは寸法を測れば分かるということですね。

埋込深さが分からないと倍率も出せないので施工の記録が要ります。
竣工図書にアンカーの呼び径が残っているか探してみてください。

工事のときになにを確かめればよいのか

作業員がボルトを増し締めしもう一人が記録を取り端部のキャップを用意している様子
工法が違ってもボルトまわりの決まりは共通です。
ここは立会いでも見て分かる部分が多いところです。
同告示 第八 四 (一) 各工法に共通する施行基準 (略) ハ ボルトは、呼び径がM十以上のものを使用すること。(略) ヘ ボルト及びナットには、スプリングワッシャ、割ピン等の緩み止めの措置が講じられていること。 ト ボルトは、途中に継ぎ目のないものであること。 チ ボルトは、増し締めができる余裕のあるねじが切られているものであること。 リ ボルト及びナット等の端部で、使用に際して使用者及び器具等に損傷を与えるおそれのあるものには、当該部分をキャップ、カバー等で有効に防護すること。
見て分かる項目から確かめれば足ります
ボルトの呼び径はM10以上とされ引張り側のボルトの数で割った値が呼び径ごとの許容荷重の表の数値以下であることも求められます。
スプリングワッシャや割ピン等の緩み止めがあるか継ぎ目のないボルトか増し締めができる余裕のあるねじが切られているかは現場で目に見えます。
端部が飛び出していて使用者や器具に損傷を与えるおそれがあるものにキャップやカバーが付いているかも同じように確かめられます。
固定ベースを使う場合は重量が別表第一で求めた応力の1.5倍以上であることとされ補強措置で両面を鋼材等で補強する工法では厚さ3.2ミリメートル以上で0.1メートル角以上の平板を使い貫通ボルトは2本以上とすることとされています。
明日からできるのは竣工図書と点検票を出してきて工法と呼び径と緩み止めの三点が記録に残っているかを確かめることです。

専門の計算までは無理でも見える部分なら確かめられそうです。
まずは書類を探すところからやってみます。

その三点が分かれば業者との話がかみ合います。
記録が見つからない場合は次の点検のときに残してもらいましょう。

よくある質問

Q避難器具用ハッチにも第八の取付方法がかかりますか?
Aかかります。第八の五は避難器具用ハッチを設ける場合について一と三と四(一)ロから(四)までの例によるほか固有の構造の基準によるとしています。取付け具の材料を定める二は避難器具用ハッチを除くとされているので同じではありません。
Q仕上モルタルの厚みは埋込深さに数えてよいですか?
A数えません。告示は埋込深さについて仕上げ部分の厚さを除き表の値となるように施工することとしています。仕上げ部分とは仕上モルタル等の部分をいうと定義されています。
Q溶接やフック掛けをするボルトは1本でもよいですか?
A引張り力のかかるものは2本以上とすることとされています。溶接しまたはフック掛けする鉄筋はそれぞれ別のものとされていますが相互の間隔を0.2メートル以上とする場合は同一の鉄筋でもよいとされています。
Qこの告示の数値は自分で計算しなければいけませんか?
A計算そのものは設計や施工の側の仕事です。防火管理者に必要なのはどの工法で留められているかを書類で押さえておくことで個別の適合判断は所轄消防署に確認してください。

まとめ

避難器具の取付方法は消防法施行規則第27条第2項の委任を受けた告示の第八に置かれています
固定部は別表第一の荷重と付加荷重の合成力で発生する応力に耐えるものでなければなりません
地震力と風圧力はどちらか大きいほうだけを見ればよいというただし書があります
取付け具の材料は規格に適合するものとし耐食性を有しないものには耐食措置が要ります
工法は直接取付けと固定ベースと補強措置とこれらと同等以上の四つに整理されています
金属拡張アンカーは軽量コンクリートと気泡コンクリートの部分では使えません
ボルトの呼び径はM10以上とし緩み止めの措置が講じられていることとされています

まずは竣工図書から工法を探してみます。
見つからなければ点検の業者に聞いてみます。

その順番なら確実です。
判断に迷うところが出てきたら㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第27条(避難器具に関する基準の細目)第2項
  • 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年4月16日消防庁告示第2号・最終改正 平成18年5月19日消防庁告示第16号)第二・第八・別表第一

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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