避難はしごや緩降機は建物の壁や床に金物で留められています。
その金物を取付け具といい留める相手の柱や床やはりを固定部といいます。
どんな材料でどんな工法で留めるのかは消防庁の告示にかなり細かく書かれています。
器具そのものが規格に適合していても留め方が基準を外れていれば設置したことになりません。
避難はしごを留めている金物にまで決まりがあるんですか。
器具の側だけの話だと思っていました。
取付方法という章が告示に立てられています。
材料も工法もアンカーの深さまで書かれていますよ。
アンカーの深さまで決まっているとは知りませんでした。
工事の立会いで見るところが分かりそうです。
数字が並ぶところは業者に任せて構いません。
まずどこで決まっているのかから順に見ていきましょう。
- 避難器具の取付方法は消防法施行規則第27条第2項の委任を受けた告示の第八で決められています
- 固定部は別表第一の荷重と付加荷重の合成力を加えたときに発生する応力に耐えるものでなければなりません
- 取付け具の材料は日本工業規格に適合するものなどとし耐食性を有しないものには耐食措置が要ります
- 固定する工法は直接取付けと固定ベースと補強措置とこれらと同等以上の四つに整理されています
- 金属拡張アンカーは呼び径ごとに埋込深さと穿孔深さの下限が表で定められています
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目次
避難器具の取付方法はどこで決められているのか

その入口が消防法施行規則第27条の最後の一項です。
この告示は平成8年4月16日消防庁告示第2号として出され平成18年5月19日消防庁告示第16号まで改正されてきたもので取付方法は第八に置かれています。
告示の第二では取付け具を避難器具を固定部に取り付けるための器具と定義し固定部を防火対象物の柱や床やはりその他構造上堅固な部分または堅固に補強された部分と定義しています。
別表第一のa欄の荷重は避難はしごなら有効長について2メートル又はその端数ごとに1.95キロニュートンを加えた値で滑り棒と避難ロープは3.9キロニュートンとされています。
b欄の付加荷重は自重で滑り台や避難橋や避難用タラップでは自重に加えて風圧力と地震力と積雪加重も見ますが地震力と風圧力はどちらか大きいほうだけでよいというただし書が付いています。
つまり自分の建物のどの部分に留めるかを決めた時点で構造の話が始まっているということです。
器具の重さだけを支えれば足りるわけではないんですね。
風や地震まで見るとは思いませんでした。
屋外に張り出す器具ほど風の影響が出ますからね。
設計の書類に別表第一の計算が付いているか見ておきましょう。
取付け具にはどんな材料を使わなければならないのか

使える材料の範囲が告示に列挙されています。
まず一般構造用圧延鋼材や一般構造用炭素鋼鋼管や一般構造用角形鋼管やワイヤロープの日本工業規格に適合するものか同等以上の強度と耐久性を有する材料であることが求められます。
そのうえで耐食性を有しない材料には有効な耐食措置を講じることとされています。
さらに雨水等のかかる場所で直接外気に接する部分に設けるものはステンレス鋼棒やステンレス鋼板の規格に適合するものなどにするよう上乗せされていますが格納箱が耐食性を有する場合はこの限りでないというただし書が付いています。
許容応力の側も定めがあり鋼材等の許容応力度は種類と品質ごとの表で示されワイヤロープの許容引張応力は切断荷重の三分の一とすることとされています。
屋外の器具で金物だけがさびているのを見つけたら材料の選び方まで戻って確かめる余地があるということです。
屋外にあるかどうかで求められるものが変わるんですね。
うちの器具は外廊下にあります。
直接外気に接する部分かどうかが分かれ目になります。
格納箱の中なのか外なのかを写真に撮っておくと話が早いですよ。
取付け具を固定する工法にはなにが認められているのか

告示は工法を四つの類型に分けています。
一つ目は主要構造部への直接取付けで鉄骨や鉄筋にボルト等を溶接するかフック掛けする工法と金属拡張アンカーによる工法があり後者はスリーブ打ち込み式に限られています。
二つ目の固定ベースは取付け具に作用する外力に対抗させる目的で設けるおもりのことで屋上など構造体に留めにくい場所で使われます。
三つ目の補強措置は柱やはりを鋼材等で挟み込んでボルトとナットで締めつける工法や柱やはり等の強度を低下させない工法や両面を鋼材等で補強してボルトを貫通する工法です。
四つ目はこれらと同等以上の強度を有する工法で個別の判断が要ります。
自分の建物で使われている工法がこの四つのどれなのかを設計書類で押さえておくと点検の指摘にも答えられます。
つまりおもりで支える留め方も正面から認められているんですね。
仮設のようなものかと思っていました。
告示に名前で書かれた工法のひとつです。
ただし重さの条件が付くので勝手に減らしてはいけません。
金属拡張アンカーで見落としやすいのはどこか

深さも間隔もへりからの寸法も表と倍率で決められています。
まず軽量コンクリートと気泡コンクリートで造られている部分はこの工法から除かれているので下地の種類の確認が先です。
埋込深さは仕上モルタル等の仕上げ部分の厚さを除いて数えることとされ呼び径M10なら埋込深さ40ミリメートルに対して穿孔深さの下限は60ミリメートルというように表で対応が決められています。
コンクリートの厚さに対する穿孔深さの限度も別の表にあり厚さ120ミリメートルなら穿孔深さは70ミリメートル以下といった形で上限側も押さえられています。
相互の間隔は埋込深さの3.5倍以上でへりあきの寸法は埋込深さの2倍以上とされ増し締めのできるおねじ式であることも求められます。
本数についてもコンクリート設計基準強度に応じた許容引抜荷重の表が示され引張力のかかるアンカーは2本以上とすることとされているのでアンカー1本だけの固定は基準の姿ではありません。
へりに近いところに打ってあるのを見た覚えがあります。
あれは寸法を測れば分かるということですね。
埋込深さが分からないと倍率も出せないので施工の記録が要ります。
竣工図書にアンカーの呼び径が残っているか探してみてください。
工事のときになにを確かめればよいのか

ここは立会いでも見て分かる部分が多いところです。
ボルトの呼び径はM10以上とされ引張り側のボルトの数で割った値が呼び径ごとの許容荷重の表の数値以下であることも求められます。
スプリングワッシャや割ピン等の緩み止めがあるか継ぎ目のないボルトか増し締めができる余裕のあるねじが切られているかは現場で目に見えます。
端部が飛び出していて使用者や器具に損傷を与えるおそれがあるものにキャップやカバーが付いているかも同じように確かめられます。
固定ベースを使う場合は重量が別表第一で求めた応力の1.5倍以上であることとされ補強措置で両面を鋼材等で補強する工法では厚さ3.2ミリメートル以上で0.1メートル角以上の平板を使い貫通ボルトは2本以上とすることとされています。
明日からできるのは竣工図書と点検票を出してきて工法と呼び径と緩み止めの三点が記録に残っているかを確かめることです。
専門の計算までは無理でも見える部分なら確かめられそうです。
まずは書類を探すところからやってみます。
その三点が分かれば業者との話がかみ合います。
記録が見つからない場合は次の点検のときに残してもらいましょう。
よくある質問
まとめ
まずは竣工図書から工法を探してみます。
見つからなければ点検の業者に聞いてみます。
その順番なら確実です。
判断に迷うところが出てきたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第27条(避難器具に関する基準の細目)第2項
- 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年4月16日消防庁告示第2号・最終改正 平成18年5月19日消防庁告示第16号)第二・第八・別表第一
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





