地震後に消防ポンプを確認すると、軸受部の油面計がいつもより低い、潤滑油が黒く濁っている、といった変化に気づくことがあります。
ポンプ本体に目立つ破損がなければ、油を足して起動してよいのか迷う場面です。
BCPでは潤滑油の汚れや不足を補給だけで済ませず、原因と軸系を専門点検してから復旧を決めます。
潤滑油が黒く見えます。
このまま起動できますか。
起動を保留して状態を記録します。
不足分だけ足せば戻りそうです。
先に汚れと減少の原因を確かめます。
- 潤滑油の著しい汚れや不足を見つけたら起動を保留します
- 操作前に油面と色と発見時刻を記録します
- 施設担当者の判断で補給や交換をしません
- 軸受部だけでなく軸継手と漏れの有無を確認します
- 原因処置と送水性能の確認後に復旧を決めます
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目次
軸受部の潤滑油が汚れていたら消防ポンプを起動してよいのか

潤滑油に著しい汚れや変質がある、または必要量を満たしていないときは起動を保留します。
総務省消防庁の点検要領は、軸受部について、潤滑油に著しい汚れや変質などがなく、必要量が満たされていることを確認対象としています。
潤滑油は軸受部の摩擦と発熱を抑える役割があります。
油が不足した状態で運転すると、異音や発熱、軸受の損傷につながるおそれがあります。
黒ずみ、白濁、金属粉のような異物が見える場合は、単なる経年変化と決めつけられません。
水分の混入や部品の摩耗など、汚れの原因を切り分ける必要があります。
地震後は、振動でシール部や配管周辺に変化が生じ、油漏れや軸系のずれが同時に起きている可能性があります。
油面計だけを見てポンプ全体が正常とは判断しません。
運転を保留したら、防火管理者へ消防設備が使えない可能性のある範囲を共有します。
巡回や火気制限などの代替措置を直ちに始めます。
少し濁っているだけでも止めますか。
平常時と違えば原因確認を優先します。
どの油の状態と周辺部を確認対象にするのか

確認するのは潤滑油の量だけではありません。
油面、色、濁り、異物、漏れ、軸受部の外観、軸継手を一つの系統として見ます。
- 油面計で分かる潤滑油の量
- 透明度と黒ずみや白濁の有無
- 金属粉や沈殿物のような異物
- 軸受部や床面への油漏れ
- 軸受部の変形や損傷
- 軸継手の緩みやずれ
- 運転履歴と直近の点検記録
確認結果はポンプ番号、発見時刻、油面、色、漏れの位置をセットで記録します。
油面計だけを大きく撮ると、どのポンプの記録か分からなくなります。
写真は、ポンプ室全体、ポンプと電動機、軸受部、油面計、軸継手、床面の順で残します。
操作前の状態が分かる距離と角度で撮影します。
油面が低い原因には、外部への漏れのほか、シール部の不具合や管理記録との差も考えられます。
不足分だけを見て原因を確定しません。
施設担当者は安全な位置から外観を確認し、給油口や軸受部を開けません。
採油、分解、軸調整は専門業者へ任せます。
油面計だけ撮れば足りますか。
ポンプと軸継手まで一緒に残しましょう。
潤滑油の異常を見つけたときはどう進めるのか

起動保留、状態記録、影響確認、専門点検、原因処置、性能確認、復旧承認の順で進めます。
- 著しい汚れや不足を見つけた時点で起動を保留する
- ポンプ番号、発見時刻、油面、色を記録する
- 軸受部、軸継手、床面の外観を写真に残す
- 防火管理者へ連絡して防護できない範囲を特定する
- 専門業者が採油と軸系の点検で原因を確認する
- 必要な整備後に試運転と性能確認を行う
- 記録をそろえて復旧を承認する
連絡時には、地震の発生時刻、平常時の油面、直近の交換時期、点検記録、運転履歴をまとめます。
いつから色や量が変わったのかを追える情報にします。
専門点検では、潤滑油の状態、軸受、シール部、軸継手、回転部の状態を確認します。
油だけでなく摩耗や水分混入の原因を切り分けます。
整備後は試運転を行い、異音、振動、温度、漏れ、回転状態を確認します。
きれいな油へ交換したことだけで復旧完了にしません。
消防ポンプが所定の機能を発揮できるか、起動と送水性能を確認します。
BCP側では確認結果を事業再開の条件へつなげます。
まず油を交換しますか。
交換前の状態を残して原因を調べます。
油を交換すれば復旧したと思うと何を見落とすのか

新しい潤滑油へ交換すると見た目は正常に戻りますが、汚れや減少の原因がなくなったとは限りません。
軸受の摩耗や水分混入が残れば、再び油が汚れる可能性があります。
- 交換前の油の色や量を記録しない
- 油漏れの箇所を特定しない
- 軸受やシール部の摩耗を確認しない
- 軸継手の緩みやずれを見逃す
- 試運転時の異音や振動を確認しない
- ポンプの送水性能を確認しない
- 代替措置を先に解除してしまう
潤滑油の見た目の回復と消防ポンプの機能回復は同じではありません。
交換後も軸系の状態と運転時の変化を確認します。
運転直後に異音、振動、温度上昇が見られる場合は、軸受や軸継手に異常が残っている可能性があります。
試運転中の変化を測定値とともに記録します。
消防ポンプは消火のために必要な水量と圧力を確保する設備です。
軸受部の整備後は起動だけでなく送水性能を確認します。
復旧判断では、原因処置、油面、回転状態、異音と振動、送水性能、記録の完了をそろえます。
代替措置の解除は復旧承認の後に行います。
油がきれいなら完了ですか。
軸系と送水性能まで確認します。
明日からどの順番で潤滑油の確認手順を整えるのか

災害後に初めて平常時の油面や交換時期を調べると、復旧判断が遅れます。
平常時の油面、油種、交換履歴、完成図書、連絡先、代替措置、復旧承認者を先にそろえます。
- 消防ポンプごとに設備番号を付ける
- 平常時の油面と色を同じ角度から撮影する
- 起動を保留する変化と連絡先を決める
- 停止中の巡回と火気制限を消防計画へ反映する
- 指定油種と交換履歴と点検記録をまとめる
- 専門点検後の性能確認項目と復旧承認者を決める
- 訓練で発見から事業再開までを通して確認する
平常時の油面と色があれば、地震後の変化を比較できます。
同じ方向と距離で写真を残し、撮影日時も記載します。
消防法第17条の3の3に基づく消防用設備等の点検結果を、BCPの判断資料として利用します。
法定点検と災害後の臨時確認を一続きの履歴にします。
消防計画では、設備停止中の防火安全と関係者への連絡を定めます。
BCPでは事業の縮小、停止、再開の条件へつなげます。
訓練では、油面計の写真を起点に起動保留、連絡、代替措置、専門点検の手配まで進めます。
防火管理者と設備管理者が同じ復旧基準を共有します。
普段の油の色も残すんですね。
比較できる基準を写真で残しましょう。
よくある質問
まとめ
操作前の記録から始めます。
油だけでなく軸系と性能まで備えましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検の基準 別表第2 屋内消火栓設備
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検要領 第2 屋内消火栓設備
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。消防ポンプの軸受部で潤滑油の著しい汚れ、変質、不足を確認した場合や原因を判断できない場合は起動を保留し、施設担当者が自己判断で補給、交換、分解を行わず、設備仕様を確認できる専門業者へ相談してください。油漏れ、異音、発熱、著しい振動、部品のずれなどがある場合は近づかず、施設の緊急手順に従ってください。個別の点検、採油、整備、試運転、性能試験、代替措置、復旧判断は、設備の仕様と施設の運用状況に応じて所轄消防署や専門家へご確認ください。





