地震のあとに消防ポンプ室を確認したら、吐出側の止水弁が閉じている。
開けば元に戻せそうでも、誰が閉じたのか分からない状態で消防ポンプを起動してよいのか迷う場面です。
BCPでは弁をむやみに動かさず消防ポンプを使用保留にし、閉止理由と系統全体を専門点検してから復旧を判断します。
閉じた弁はすぐ開けますか。
閉止理由を先に確認します。
表示だけ閉になっている場合は。
表示と実際の位置を切り分けます。
- 吐出側止水弁の閉止を見つけたら消防ポンプを使用保留にします
- 施設担当者は理由が分からない弁を自己判断で開きません
- 弁だけでなくポンプと配管と圧力計を一系統で確認します
- 復旧までは巡回と火気制限などの代替措置を続けます
- 原因処置後の管理下試験と記録で復旧を決めます
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目次
吐出側止水弁が閉じていたら開けて起動してよいのか

閉止理由が分からない吐出側止水弁は、施設担当者が開けて試運転しません。
配管の破損や漏水を止めるために閉じられた可能性があり、開放すると被害を広げるおそれがあります。
総務省消防庁の屋内消火栓設備の点検基準は、バルブ類について漏れ、変形、損傷等がなく、開閉位置が正常で開閉操作が容易であることを確認事項にしています。
閉じた弁を開けるだけでは、なぜ正常位置から変わったのかを確認できません。
消防法第十七条は消防用設備等を技術上の基準に従って設置し維持することを定め、同法第十七条の三の三は定期点検と結果報告を定めています。
一度送水できても正常な維持状態とは判断できません。
漏水、配管の変形、異音、床の水たまりがある場合は近づく範囲を限定し、防火管理者と設備担当者へ連絡します。
火災時は確認作業より通報と避難を優先してください。
開けば元に戻ると思っていました。
位置より先に原因を確認します。
どの弁と配管系統を確認対象にするのか

確認対象は、閉じていた一個の止水弁だけではありません。
水源から吸込側、ポンプ、吐出側、逆止弁、圧力計、性能試験配管、防護区域までを一系統として確認します。
- 閉じていた弁の名称と設備番号
- ハンドルと開閉位置表示の状態
- 弁本体の漏れ、変形、損傷、腐食
- 吸込側と吐出側の配管と支持部
- 逆止弁と圧力計と性能試験装置
- 床面の漏水跡と周囲の移動物
- 弁が守る配管系統と防護区域
平常時の系統図と弁開閉表を使い、現在位置が本当に異常かを照合します。
配管方式や点検作業によって一時的に閉じる弁もあるため、見た目だけで操作しません。
開閉位置表示がずれている場合は、表示板だけの問題か、弁体が実際に閉じているかを専門業者が切り分けます。
ハンドル位置だけで内部の弁体位置を断定しないことが大切です。
複数の消防ポンプがある施設では、弁とポンプの組合せを取り違えないようにします。
系統ごとの使用可否と防護範囲を分けて記録してください。
閉じた弁だけ見ればええんですか。
水源から防護区域まで追います。
発見から専門点検と復旧確認までどう進めるのか

発見、操作禁止、記録、連絡、代替措置、専門点検、管理下試験の順で進めます。
- 弁を動かさずポンプを使用保留にする
- 弁名称、設備番号、発見時刻、位置表示を記録する
- 漏水、変形、異音、床面の状態を安全な位置から確認する
- 防火管理者と設備担当者と保守事業者へ連絡する
- 設備停止中の巡回と火気制限を始める
- 専門業者が弁と配管とポンプを点検する
- 原因処置後に管理下試験を行い復旧を承認する
専門業者へは、地震の時刻、直前の点検や工事、誰が最後に弁を操作したか、圧力計の値、漏水や異音の有無を伝えます。
発見時の状態を残すため弁の封印や表示札を外しません。
点検要領ではバルブ類を目視し、漏れ、変形、損傷、開閉位置、開閉操作を確認します。
操作は設備の構造に精通した者が安全を確保して実施します。
弁を正常位置へ戻したあとは、ポンプの起動、圧力、流量、異音、振動、配管の漏れなどを管理下で確認します。
開放操作だけで復旧完了にしません。
設備を長時間停止する場合は、消防計画に沿って巡回、火気作業の停止、可燃物管理などを行い、必要に応じて所轄消防署へ相談します。
写真を撮ってから弁を開けますか。
記録後も専門確認までは動かしません。
弁を開けば復旧したと思うと何を見落とすのか

止水弁の閉止は原因ではなく、別の異常へ対応した結果かもしれません。
弁を開けるだけでは閉止につながった漏水や配管損傷が残るおそれがあります。
- 地震で配管や管継手が損傷している
- 漏水を止めるため誰かが弁を閉じている
- 逆止弁に異物や固着が残っている
- 開閉位置表示と実際の弁体位置がずれている
- 弁棒やハンドルが変形している
- 吸込側の水量や呼水が不足している
- 開放後の圧力と流量を確認していない
正常位置へ戻すことと消防ポンプの送水性能を回復させることは別の確認です。
弁の開放後に圧力が出ても、防護区域で必要な流量が確保できるとは限りません。
弁に「操作禁止」「点検中」などの札がある場合は、第三者が意図的に閉じた可能性があります。
札や封印を外さず管理者と作業責任者へ確認してください。
閉止系統が複数ある場合は、一個ずつ開ける試行を繰り返しません。
完成図書と弁開閉表を基準に専門業者が操作順序を決めます。
復旧記録には、閉止理由、点検範囲、補修内容、試験結果、復旧承認者を残します。
次の地震で同じ迷いを繰り返さない情報にします。
圧力が出れば終わりではないんですね。
流量と漏れと系統状態も確認します。
明日から止水弁の閉止にどう備えるのか

異常時に初めて弁の名称や正常位置を調べると、使用保留と復旧の判断が遅れます。
平常時に弁番号、正常位置、防護区域、操作権限、連絡先を一枚の弁開閉表へまとめます。
- 消防ポンプ室の弁へ設備番号を付ける
- 各弁の正常な開閉位置を系統図へ記す
- ハンドルと位置表示の平常時写真を残す
- 点検や工事で弁を閉じる記録様式を決める
- 使用保留中の代替措置を消防計画へ反映する
- 専門点検と復旧承認の担当者を決める
- 訓練で連絡と記録と復旧判断を確かめる
正常位置の写真があれば、地震後の変化と表示ずれを早く共有できます。
点検や改修で弁を閉じる場合は、日時、対象系統、理由、作業責任者、復旧予定を記録します。
口頭だけの引継ぎにせず閉止札と記録を一致させます。
消防法第十七条の三の三に基づく点検結果と、地震後のBCP記録を関連付けます。
法定点検の履歴を原因確認と再発防止へつなげます。
訓練では、弁を動かさずに確認する範囲、連絡先、設備停止中の代替措置を確認します。
担当者が不在でも同じ手順で使用保留を判断できる状態を目指します。
弁ごとの正常位置を写真で残します。
系統図と同じ番号で管理しましょう。
よくある質問
まとめ
弁開閉表と平常時写真をそろえます。
閉止は系統全体を確認する合図です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第十七条・第十七条の三の三
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検基準・点検要領・点検票
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検の基準 別表第二 屋内消火栓設備
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検要領 第二 屋内消火栓設備
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和五年三月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。消防ポンプ系統の止水弁が閉じていた場合は、施設担当者が自己判断で開閉したり試運転したりせず、弁を閉じた理由と配管系統の異常を専門業者へ確認してください。漏水、配管の変形、異音、床面の水たまりなどがある場合は安全な距離を取り、施設の緊急手順に従ってください。個別の点検、代替措置、試運転、復旧判断は、設備の仕様と施設の運用状況に応じて所轄消防署や専門家へご確認ください。





