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サウナ施設の火災はなぜ衛生部局との連携を招いたのか|合同立入検査と緊急時の対応体制を解説

サウナ施設の安全対策はなぜ連携が必要か

令和7年12月、東京都港区の個室サウナで利用者が死亡する火災が起きました。
これを受けて消防庁は令和8年4月、旅館業と公衆浴場業のサウナ施設について厚生労働省と連携した通知を出しています。
個室サウナに限らず、扉の構造や従業員の連絡体制まで踏み込んだ内容になっているため、対象になる施設は少なくありません。
通知が求める中身と、明日から確認すべき手順を㈱防災屋が解説します

うちの施設にもサウナ室があるんですが、この通知は関係あるでしょうか。

個室サウナに限らず、旅館業や公衆浴場業のサウナ室が広く対象です。
扉の構造まで見直しの対象になっています。

扉を見直すというと、鍵をかけたらいけないという話でしょうか。

それは以前からある別の決まりで、今回はそれに加えて従業員の連絡体制も問われています。
中身を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和7年12月の個室サウナ火災を受け、消防庁が厚生労働省と連携した通知を発出した。
  • 対象は個室サウナに限らず、旅館業と公衆浴場業のサウナ施設全般である。
  • 衛生主管部局との情報共有・合同立入検査が求められている。
  • 緊急時の従業員との連絡・駆けつけ体制と、扉の構造が重点確認事項である。
  • 通知は消防組織法第37条に基づく助言だが、放置してよいものではない。

サウナ施設の安全対策の4ステップを示す図解

個室サウナの死亡火災はなぜ厚生労働省との連携通知を招いたのか

個室サウナの小屋と宿泊施設の建物、屋根から立つ一筋の煙
サウナ室で利用者が命を落とす火災は、なぜ厚生労働省との連携通知にまで発展したのか整理します。
発端は令和7年12月に起きた、東京都港区の個室サウナ火災でした。
消防予第164号「サウナ施設に係る衛生主管部局と連携した安全対策の徹底について」(令和8年4月21日 消防庁予防課長) 令和7年12月15日に発生した東京都港区の個室サウナ火災を踏まえ、「個室サウナの安全確認について」(令和8年1月13日付け消防予第10号)により衛生主管部局等と連携した個室サウナの避難経路等の安全確認をお願いしているところです。今般、旅館業及び公衆浴場業におけるサウナ施設の安全対策の徹底について、厚生労働省から通知が行われ、消防関係機関等と連携して対応することとされています
消防組織法第37条(消防庁長官の助言、勧告及び指導) 消防庁長官は、必要に応じ、消防に関する事項について都道府県又は市町村に対して助言を与え、勧告し、又は指導を行うことができる
事故をきっかけに、2つの省庁が足並みをそろえました。
消防庁は火災の直後、令和8年1月に個室サウナの避難経路確認を先に要請していました。
今回は厚生労働省が旅館業・公衆浴場業の衛生主管部局に向けて別の通知を発出し、消防庁と協議のうえで消防予第164号が発出されました。
法的な位置づけは消防組織法第37条に基づく助言であり、命令ではありません。
ただし助言であることは対応しなくてよい意味ではなく、次に見る対象・中身にそのままつながっています。

助言ということは、従わなくても罰則は無いということですか。

この通知自体に罰則はありません。
ただし別の規定に基づく義務は従来どおり存在します。

対象になるのは個室サウナだけなのか

宿泊施設と公衆浴場の建物、その間に置かれた個室サウナ
通知の見出しには「個室サウナ」とありませんが、対象範囲はそこにとどまりません。
旅館業と公衆浴場業のサウナ施設が、まとめて対象になっています。
消防予第164号 つきましては、サウナ施設(個室サウナ以外も含む。)について、衛生主管部局と連携し、安全対策に関する情報を共有するとともに、立入検査や指導等を合同で行う等して、利用者の安全確保の徹底を図るようお願いします。
旅館業法第3条の5 営業者は、旅館業が国民生活において果たしている役割の重要性に鑑み、旅館業の施設及び宿泊に関するサービスについて安全及び衛生の水準の維持及び向上に努めるとともに、旅館業の施設の整備及び宿泊に関するサービスの向上に努めなければならない。
共用のサウナ室も対象から外れません。
令和8年4月20日時点の調査では、サウナ施設のある旅館業は5,240施設、公衆浴場業は7,812施設にのぼります。
どちらも旅館業法公衆浴場法という別の法律の許可を受けた施設ですが、今回は消防組織法上の助言として一つの通知にまとめて対応が求められました。
個室型かどうかではなく、サウナ室という設備の有無で対象になるかどうかが決まると考えておくのが安全です。

うちは共用のサウナ室しかありませんが、それでも対象になるんですね。

はい、括弧書きで個室サウナ以外も含むと明記されています。

通知は具体的になにを求めているのか

防火管理者と衛生主管部局の担当者、開いたサウナ室の扉と壁掛け電話
通知が求めているのは、役所どうしの連携と、現場の2つの備えです。
中身を分けて見ていきましょう。
消防予第164号 衛生主管部局と連携し、安全対策に関する情報を共有するとともに、立入検査や指導等を合同で行う等して、緊急時の従業員との連絡・駆けつけ体制が確保されていることサウナ室の扉を緊急時の開閉に支障を来さない構造とすることなど、利用者の安全確保の徹底を図るようお願いします。
旅館業法施行規則第4条の3 旅館業法施行令第一条第一項第二号の基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。 一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること
求められているのは連絡体制と扉の構造の2点です。
厚生労働省が行った調査では、緊急時の従業員との連絡・駆けつけ体制がある施設は旅館業81.3%、公衆浴場業93.0%でした。
サウナ室の扉が内側から押すだけで開くなど支障のない構造になっている施設は、旅館業94.7%、公衆浴場業95.9%です。
数字だけを見ると高い水準ですが、裏を返せば約1割の施設でどちらかが未対応ということになります。
指導等を行う際は消防関係機関等と連携することも明記されており、消防の立入検査と衛生部局の指導が合流する場面が増えていきます。

連絡体制というのは、電話を置いておけばよいのでしょうか。

設備を備えるだけでなく、実際にすぐ駆けつけられる体制かどうかが問われています。

実務で見落としやすいのはどこか

壁の非常用ブザーと、チェック項目が1つ空欄のチェックリスト
連絡体制と扉の構造ばかりに気を取られると、もう一つの設備を見落とします。
それが非常用ブザーです。
健生衛発0421第1号 非常用ブザーについては「旅館業における衛生等管理要領」に明記されていないが、当該設備が緊急時の安全対策の一環として活用しうることを周知の上、必要に応じて指導すること
規定が無いことは、免除を意味しません。
調査結果では、サウナ施設内に非常用ブザーが設置されている割合は旅館業63.5%、公衆浴場業85.8%にとどまり、連絡体制や扉の構造より低い水準でした。
「衛生等管理要領に書いていないから設置しなくてよい」と読むのは早計で、通知は必要に応じて指導する対象として名指ししています。
また、避難口の扉に施錠しないという別の決まりは従来から存在しており、今回の通知はそれに置き換わるものではなく上乗せです。
助言だから急がなくてよいという受け止め方も見落としやすい点で、消防と衛生の両方から指導が入る前提で準備しておくべきです。

ブザーが無くても違反にはならないと思っていました。

違反ではありませんが、指導の対象にはなり得ると明記されています。

明日からなにを確認すればよいか

チェックリストを持ちサウナ室の扉を確認する担当者と施設の建物
通知が示す確認事項は、特別な工事をしなくても点検できるものばかりです。
サウナ室があるなら、まず次の順番で見てください。
  • サウナ室の扉が、内側から鍵等を使わずに容易に開く構造になっているか確認する。
  • 緊急時に従業員へ連絡し、すぐ駆けつけられる体制(電話・インターホン等)があるか確認する。
  • 非常用ブザー等の設置を、義務ではなくても安全対策として検討する。
  • サウナ室の室内を見通せる窓があるか、衛生等管理要領の基準もあわせて確認する。
  • 衛生主管部局か消防機関のどちらかから連絡があれば、合同点検に協力する。
今日中にできることから始めれば十分です。
扉を実際に内側から開けてみる、連絡先の一覧を最新の状態にする、といった確認は工事を伴いません。
非常用ブザーの設置は義務ではありませんが、今回の調査で最も普及が遅れている項目であることは覚えておいてください。
気になる点があれば、衛生主管部局まかせにせず消防機関にも相談しておくと、合同点検が来たときに慌てずに済みます。

まずは扉と連絡先の確認からやってみます。

それだけでも、いざというときの被害はかなり変わってきます。

よくある質問

Q個室サウナを設置していない施設は対象外ですか?
Aいいえ、通知は個室サウナに限らず旅館業と公衆浴場業のサウナ施設全般を対象としています。共用のサウナ室でも確認が必要です。
Q非常用ブザーを設置していないと違反になりますか?
A「旅館業における衛生等管理要領」に設置義務は明記されていません。ただし通知は必要に応じて指導するとしており、無いこと自体が安心材料にはなりません。
Qこの通知に従わないと罰則がありますか?
A本通知は消防組織法第37条に基づく助言であり、通知そのものに罰則はありません。ただし避難施設の管理義務など、別の規定に基づく義務は従来どおり存在します。
Q消防機関から連絡がなければ何もしなくてよいですか?
Aいいえ、通知は衛生主管部局が先に指導する場合も想定しています。連絡の有無にかかわらず、扉の構造や連絡体制は自主的に点検しておくべきです。

まとめ

令和7年12月、東京都港区の個室サウナ火災で利用者が死亡した。
消防庁は先に個室サウナの避難経路等の安全確認を依頼していた。
今回は厚生労働省と協議した通知として、対象をサウナ施設全般に広げた
求められているのは衛生主管部局との情報共有と合同立入検査である。
重点は緊急時の従業員との連絡体制と、扉の構造の2点である。
非常用ブザーは必置義務ではないが、指導の対象になり得る。
助言だからといって、対応を先送りしてよいわけではない。

うちも扉と連絡体制を明日確認してみます!

ぜひ衛生主管部局とも連携して進めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第164号「サウナ施設に係る衛生主管部局と連携した安全対策の徹底について」(令和8年4月21日 消防庁予防課長)
  • 消防予第10号「個室サウナの安全確認について」(令和8年1月13日 消防庁予防課長)
  • 健生衛発0421第1号「旅館業及び公衆浴場業におけるサウナ施設への安全対策の徹底について」(令和8年4月21日 厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課長)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条の5
  • 旅館業法施行規則(昭和23年厚生省令第28号)第4条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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