共同住宅用自動火災報知設備は、住戸の中と共用部分とで求められる感知器の種類がまったく違います。
廊下や階段、エレベーターの昇降路といった場所ごとに、告示が細かく設置基準を定めているためです。
住戸内だけに限っては、外から機能の確認ができる特別な感知器まで指定されています。
今回は共同住宅用自動火災報知設備の感知器がなぜ場所ごとに種類や間隔まで違うのかを、告示の根拠とあわせて解説します。
うちのマンションの共同住宅用自動火災報知設備なんですが、感知器の種類がバラバラで戸惑っています。
はい、場所によって求められる感知器の種類が細かく決まっているんです。
住戸の中と共用の廊下でも違うんですか。
はい、順番に確認していきましょう。
- 共同住宅用自動火災報知設備の感知器は、住戸・共用室・廊下・階段・エレベーターの昇降路等・天井が高い部屋など場所ごとに定められた種類を設けることとされている
- 住戸内は自動試験機能等対応型感知器に限定され、住戸の外部から機能の異常を確認できる措置が定められている
- 共用部分の廊下及び通路は、熱感知器なら歩行距離十五メートル、煙感知器なら歩行距離三十メートル(三種は二十メートル)につき一個以上設けることとされている
- 階段及び傾斜路、エレベーターの昇降路等、パイプダクトその他これらに類するものには煙感知器を設けることとされている
- 感知区域の天井等の高さが十五メートル以上二十メートル未満では煙感知器又は炎感知器、二十メートル以上では炎感知器を設けることとされている
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目次
住戸に設ける感知器はなぜ共用室と種類が違うのか

その違いが何なのかを、告示の条文から確認します。
感知器の種別(差動式・補償式・定温式・煙式のどれを使えるか)自体は住戸も共用室も同じ組み合わせです。
違うのは、住戸に設ける感知器だけ自動試験機能等対応型という条件が上乗せされている点です。
同じ告示は、住戸の外部から自動試験機能又は遠隔試験機能を用いて共同住宅用受信機や感知器の異常を確認する場合の措置も定めており、住戸に管理者が日常的に立ち入れないことを前提にした設計だとわかります。
点検のたびに一戸ずつ室内へ入らなくても、機能の異常だけは外から確かめられる仕組みになっているということです。
住戸だけ機械の性能が違うんですね。
はい、外から確認できることが条件になっているんです。
共用部分の廊下や通路はなぜ感知器の種類で歩行距離の基準が違うのか

歩行距離という物差しで、その差を確認します。
同じ廊下でも、熱感知器を選ぶか煙感知器を選ぶかで必要な個数がおよそ倍も変わることになります。
熱感知器は熱がその場にとどまってから作動する性質上、感知できる範囲が狭くなりやすいのに対し、煙感知器は煙が拡散する分だけ広い範囲を一つで受け持てると考えられます。
廊下の設計図を見るときは、感知器の種類と歩行距離の数値をセットで確認するとよいでしょう。
倍近くも違うのは、正直知りませんでした。
はい、感知器の種類とあわせて確認するのが確実です。
階段や傾斜路になぜ必ず煙感知器が使われるのか

なぜ煙感知器しか使えないのか、条文から確認します。
階段は縦につながった空間なので、煙は熱よりも先に上の階まで一気に流れ込みます。
熱感知器では上の階まで熱が届く前に感知が遅れかねないため、煙をとらえる感知器に一本化されていると考えられます。
六階を超える階段では感知器が複数の区画に分けて設けられている、という見方もできます。
階段だけ選べないのは、そういう理由があったんですね。
はい、煙の伝わる速さが関係しています。
エレベーターの昇降路やパイプダクトになぜ必ず煙感知器が使われるのか

エレベーターの昇降路やパイプダクトがどう扱われているかを見ていきます。
これらはどれも階段と同じく建物を縦に貫く竪穴区画で、火災時には煙の通り道になりやすい部分です。
階段・傾斜路とあわせて考えると、共同住宅用自動火災報知設備は縦方向の空間をひとまとめに煙感知器で押さえる考え方だとわかります。
竪穴区画に感知器の記号があるかどうかは、平面図や断面図で確認しておくとよいでしょう。
縦につながっているところは、まとめて考えればいいんですね。
はい、竪穴区画という一つの考え方でまとまります。
天井が高い部屋ではなぜ感知器の種類がさらに変わるのか

高さの区切りによって、必要な感知器がもう一段階変わります。
天井が高い空間では、煙や熱が上まで届くころには薄く広がってしまい、天井付近の感知器では検知が遅れることがあります。
炎感知器は炎そのものが出す光を直接とらえる方式のため、天井までの距離が長くても感知の速さが落ちにくいと考えられます。
吹き抜けのある共用施設を持つ建物では、消防検査でも天井の高さと感知器の組み合わせが確認のポイントになります。
吹き抜けのあるロビーとかは、また別扱いになるんですね。
はい、高さの区切りごとに確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
場所ごとに感知器の種類と間隔が違う理由がよくわかりました。
図面と現地を突き合わせて確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成十八年五月三十日消防庁告示第十八号)第二第二号
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十七年総務省令第四十号)
- 感知器等に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十七号)第二条第十九号の三
※本記事は公表されている法令および告示に基づく一般的な解説です。設計・施工に関する個別の判断は、所轄消防署または消防設備士にご確認ください。





