BLOG

火災を出した建物には消防はどう動くのか|再発防止指導書の交付と火災直後の立入検査を解説

火災を出した建物に消防はどう動くか、再発防止指導書とは、と書いた記事アイキャッチ(火災後の建物と消防車の写真)

火災を出した建物には、消防が直ちに立入検査に入ります。
消防庁は令和4年11月21日、立入検査標準マニュアルと違反処理標準マニュアルの改正を通知しました(消防予第598号)。
改正では、火災が発生した防火対象物への対応が示され、関係者へ交付する「再発防止指導書」の交付を検討することも盛り込まれました。
この記事では、火災後の立入検査と再発防止指導書の中身、期限のある改修報告との違いを解説します。

うちの建物で火事を出したら、消防はその後どう動くのでしょうか。

消防は直ちに立入検査を行うとされています。

「再発防止指導書」という書類も出ると聞きました。

火災が違反に起因した場合や、違反を繰り返した悪質な場合などに、交付が検討されます。

この記事の結論
  • 消防予第598号は、令和4年11月21日に消防庁予防課長が出した通知で、立入検査標準マニュアルと違反処理標準マニュアルの改正を示しています。
  • 火災が発生した防火対象物には、直ちに立入検査を実施し、消防法令違反が認められたら時機を失することなく違反処理へ移行します。
  • 再発防止指導書は、消防法令違反等に起因して火災が発生した場合や繰り返し違反で悪質な場合等に、自主防火意識の向上を促し再発防止を図るために交付を検討するもので、原則として立入検査の後です。
  • マニュアルの様式例では、再発防止対策の提出と、それを踏まえた消防計画の見直しが指導事項になっています。
  • 改修(計画)報告書の報告期限はおおむね2週間程度で、期限を過ぎて未提出なら原則として違反処理へ移行することが適切とされ、再発防止指導書とは別の手続きです。

▼

火災後の立入検査と再発防止指導書を、直ちに立入検査、火気と消防設備を重点確認、必要なら再発防止指導書、対策の提出と計画の見直しの4つで整理した概要図解

大阪市北区ビル火災を受けて立入検査のマニュアルはなぜ改正されたのか

細長い雑居ビルの建物と2冊のマニュアルを並べたイラスト
通知は、大阪市北区のビル火災を受けた検討会の結果を踏まえた改正であることから書き始めています。
まず、通知の冒頭と、改正概要を確認します。
消防予第598号(令和4年11月21日)
令和3年12月17日に発生した大阪市北区ビル火災を受けて、国土交通省とともに開催した「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」の検討結果等を踏まえ、「立入検査標準マニュアル」及び「違反処理標準マニュアル」(平成26年3月4日最終改正)を、下記のとおり改正しましたので通知します。
同通知 1 立入検査標準マニュアル(主な改正概要から抜粋)
⑴ 「直通階段が一つの防火対象物」を火災予防上の対応の必要性が高い防火対象物に位置づけ、重点的な立入検査を計画することとしたこと。(略)
⑶ 「火災が発生した防火対象物」は、直ちに立入検査を実施し、消防法令違反が認められた場合は、時機を失することなく違反処理に移行し早期是正を図ることとしたこと。
⑷ 「火災が発生した防火対象物」で消防法令違反等に起因して火災が発生した場合や繰り返し違反で悪質な場合等に防火対象物の関係者に対し自主防火意識の向上を促し、火災及び消防法令違反の再発防止を図るために、「再発防止指導書」の交付を検討することとしたこと。
同通知 4 その他(通知の性格)
なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。
消防組織法第三十七条
消防庁長官は、必要に応じ、消防に関する事項について都道府県又は市町村に対して助言を与え、勧告し、又は指導を行うことができる。
改正のきっかけは、令和3年12月17日の大阪市北区のビル火災を受けた検討会です。
通知の記は、立入検査標準マニュアルの主な改正概要を7項目、違反処理標準マニュアルの主な改正概要を2項目で整理しています。
違反処理標準マニュアルでは、消防法第5条の3第1項の措置命令の対象になる物件の判断基準と、適用例となる争訟事例が追加されました。
通知は消防組織法第37条に基づく助言ですので、実際の運用は各消防本部の規程や取扱いで異なることがあります。

検討会の結果を受けての改正なのですね。

はい。
通知は大阪市北区ビル火災を受けた改正だと書いています。

火災が発生した防火対象物には消防はどう動くのか

火災で壁が焦げた小さな店舗の建物と消防車を並べたイラスト
火災を出した建物への対応は、マニュアルの立入検査の実施計画の部分に書かれています。
まず、原文と根拠になる条文を確認します。
立入検査標準マニュアル(令和4年11月)第1 立入検査要領 1 立入検査の実施計画等
火災が発生した防火対象物は、直ちに立入検査を実施するとともに、再発防止を図るために、火気設備の管理や消防用設備等の維持管理など、防火対象物の実態に応じた重点的な立入検査を実施することが重要である。
同マニュアル(解説等)
火災が発生した防火対象物に対しては、直ちに立入検査を実施し、消防法令違反が認められた場合は、時機を失することなく違反処理へ移行し早期是正を図ることが重要である。
消防法第四条第一項(抜粋)
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、(略)当該消防職員(略)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。
火災が発生した防火対象物には、直ちに立入検査が実施されます。
検査の重点は、再発防止のための火気設備の管理と消防用設備等の維持管理など、建物の実態に応じたものです。
違反が認められれば、時機を失することなく違反処理へ移行して早期是正を図る、というのがマニュアルの考え方です。
立入検査の権限を定めているのは消防法第4条第1項です。
ただし個人の住居は、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大で特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入らせてはならない、と同項のただし書きが定めています。

火災のあとの立入検査は、何を重点に見るのでしょうか。

再発防止を図るための検査です。
火気設備の管理や消防用設備等の維持管理などを、建物の実態に応じて見ます。

再発防止指導書はどんな場合に交付され何が書かれるのか

書類皿の上の白紙の書類と印鑑、書類のフォルダを並べたイラスト
再発防止指導書は、今回の改正で新しく示された書類です。
交付の場面と記載事項を、マニュアルの解説で確認します。
立入検査標準マニュアル(参考13)再発防止指導書の交付
再発防止指導書は、消防法令違反等に起因して火災が発生した場合や繰り返し違反で悪質な場合等に、関係者に対し自主防火意識の向上を促し、火災及び消防法令違反の再発防止を図るために交付するものであり、原則として、立入検査を実施後に交付するものである。なお、再発防止指導書には、主に次の事項を記載することが考えられる。
・交付する要因となった消防法令違反
・消防法令違反に起因する危険性
・消防法令違反発生の責任の所在等
・消防法令違反等の事実に対する消防機関の評価又は認識
・事案の検討と問題点
・事案の問題に対する改善対策の基本的指針
・改善対策に関する具体的な計画又は関係者の意思表示を、文書をもって報告する旨
・その他事案に関する必要事項
再発防止指導書は、火災の後だけでなく繰り返し違反の場合にも交付が検討されます。
交付の場面は、消防法令違反等に起因して火災が発生した場合や、繰り返し違反で悪質な場合等です。
目的は、関係者の自主防火意識の向上を促し、火災と消防法令違反の再発を防ぐことです。
交付の時期は、原則として立入検査を実施した後です。
記載事項は、違反の内容とその危険性、責任の所在、消防機関の評価、事案の問題点、改善対策の基本的指針、具体的な計画等を文書で報告する旨など、主に8つの事項が挙げられています。

再発防止指導書は、違反した建物すべてに出るのですか。

いいえ。
通知は火災の場合や繰り返し違反で悪質な場合等に交付を検討するとしています。

実務で見落としやすいのはどこか

白紙の書類と印鑑、書類フォルダと数字のない卓上カレンダーを並べたイラスト
再発防止指導書と、立入検査で指摘された違反の改修報告は、別の手続きです。
様式例と条文、期限の定めを順に確認します。
立入検査標準マニュアル 第5 立入検査関係の様式例 8 再発防止指導書(様式例)
○○年○○月○○日にあなたが所有(管理、占有)する(所在地)の(防火対象物名)において、(違反内容)し、消防法第8条第1項違反を繰り返したことを確認しました。(略)よって、当該消防法令違反を繰り返すことのないよう、下記の事項について指導します。
1 再発防止に関する具体的な対策を策定し、○○年○○月○○日までに○○消防署へ提出すること。
2 消防法第8条、消防法施行令第3条の2及び消防法施行規則第3条に基づき、防火管理上必要な事項としての再発防止対策を踏まえて消防計画の見直しを行うこと。
消防法第八条第一項(抜粋)
(略)管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法施行規則第三条第一項(抜粋)
防火管理者は、令第三条の二第一項の規定により、(略)防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長(略)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
立入検査標準マニュアル 第1 8 改修(計画)報告の指導/★違反処理へ移行(関係通知:平成27年10月13日付け消防予第396号)
報告期限は、おおむね2週間程度とする。ただし、個々の事案により期限を延長する必要が認められる理由がある場合は、必要最低限の範囲で延長することができる。(略)次に該当する場合は、原則として、違反処理へ移行することが適切である。① 提出期限を過ぎても改修(計画)報告書が提出されない場合(行政指導に全く応じないなど、明らかに是正意思がない場合を含む。)
比べる点再発防止指導書改修(計画)報告書
どんな場面か消防法令違反等に起因して火災が発生した場合や繰り返し違反で悪質な場合等に、交付を検討する立入検査で指摘した不備事項について、改修や改修計画を関係者が報告する
期限様式例では、対策を提出する期日が空欄になっている報告期限はおおむね2週間程度(必要最低限の範囲で延長できる)
期限を過ぎたとき通知と参考13、様式例からは読み取れない提出期限を過ぎても未提出の場合は、原則として違反処理へ移行することが適切とされる
再発防止指導書は、立入検査の後の改修報告とは別の手続きです。
様式例の指導事項は、対策の提出と消防計画の見直しの2つで、具体的な日付は空欄になっています。
消防計画の根拠は消防法第8条第1項と令第3条の2で、変更するときは規則第3条により届出も同様に必要です。
一方、改修(計画)報告書の報告期限はおおむね2週間程度で、期限を過ぎて未提出なら原則として違反処理へ移行することが適切とされています。
再発防止指導書に従わなかったときの扱いは、通知と参考13、様式例からは読み取れません。

指導書の提出期限も、改修報告書と同じ2週間ですか。

2週間の目安は改修(計画)報告書のものです。
指導書の期日は様式例では空欄なので、交付された書面で確認します。

明日からなにを確認すればよいのか

コンロと消火器、画面が空白のノートパソコンと封筒を並べたイラスト
火災を出さない備えは、再発防止指導書が扱う項目と重なります。
建物の側で確認したいことを、法令の根拠と合わせて整理します。
消防法施行令第三条の二第二項
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
同通知 3 立入検査及び違反処理関係の届出のデジタル化について
立入検査標準マニュアル「第1 立入検査要領」に、防火対象物の関係者が届出する改修(計画)報告書について、従来の窓口報告に加え、電子メールや電子申請システム等のデジタル技術を活用する方法を追記したこと。
  • 火気の使用又は取扱いの監督が、消防計画どおりに行われているか
  • 消防用設備等の点検及び整備が、実施されているか
  • 防火管理者の選任届と消防計画の届出が、建物の現況に合っているか
  • 立入検査で指摘があれば、報告期限(おおむね2週間程度)を確認する
  • 電子メールなどで報告できるかどうかを、所轄消防署へ確認する
再発防止の柱は、火気の取扱いと消防用設備等の維持管理を、消防計画どおりに続けることです。
これは消防法第8条第1項と令第3条の2第2項が、防火管理者の業務として定めている内容です。
重点的な立入検査を実施すべき消防法令違反の例として、マニュアルは防火管理者の未選任や、避難の支障になる物件の存置などを挙げています。
また、改修(計画)報告書は、窓口報告に加えてデジタル技術を活用する方法が追記されました。
実際にどの方法を受け付けているかは、消防本部ごとに異なる場合があります。

明日から、まず何を確認すればよいでしょうか。

まず火気の取扱いと消防用設備等の点検が、計画どおりか確認します。

よくある質問

Q再発防止指導書は、火災を出した建物にだけ交付されるのですか?
A通知は、消防法令違反等に起因して火災が発生した場合のほか、繰り返し違反で悪質な場合等にも交付を検討するとしています。
Q再発防止指導書は、いつ交付されるのですか?
Aマニュアルは、原則として立入検査を実施した後に交付するものとしています。
Q再発防止指導書には、何が書かれるのですか?
A交付の要因となった違反、その危険性、責任の所在、改善対策の基本的指針など、主に8つの事項を記載することが考えられるとされています。様式例では、対策の提出と消防計画の見直しが指導されています。
Q改修(計画)報告書は、電子メールで出せますか?
Aマニュアルは、従来の窓口報告に加え、電子メールや電子申請システム等を活用する方法を追記しました。実際に使える方法は、所轄消防署にご確認ください。

まとめ

✔消防予第598号は、大阪市北区ビル火災を受けた検討会の結果を踏まえ、立入検査標準マニュアルと違反処理標準マニュアルの改正を示した通知
✔火災が発生した防火対象物には、直ちに立入検査を実施する
✔検査は再発防止のため、火気設備の管理や消防用設備等の維持管理など建物の実態に応じて重点的に行う
✔違反が認められたら、時機を失することなく違反処理へ移行して早期是正を図る
✔再発防止指導書は、違反に起因した火災や繰り返しの悪質な違反等で、原則として立入検査の後に交付を検討する
✔様式例の指導事項は、再発防止対策の提出と消防計画の見直し
✔改修(計画)報告書の報告期限はおおむね2週間程度で、再発防止指導書とは別の手続き

火災を出さない備えと、指摘への期限内の報告を、日頃から整えておきます!

火災後の再発防止も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「立入検査標準マニュアル」及び「違反処理標準マニュアル」の改正について(令和4年11月21日 消防予第598号 消防庁予防課長)
  • 立入検査標準マニュアル・違反処理標準マニュアル(令和4年11月改正 総務省消防庁予防課、上記通知の別添)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第4条・第5条の3・第8条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は消防本部ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
火災を出した建物に消防はどう動くか、再発防止指導書とは、と書いた記事アイキャッチ(火災後の建物と消防車の写真)
火災を出した建物には、消防が直ちに立入検査に入ります。 消防庁は令和4年11月21日、立入検査標準マニュアルと違反処理標準マニュアルの改正を通知しました(消防予第598号)。 改正では、火災が発生した防火対象物への対応が...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →