自動火災報知設備の点検といえば、感知器に加熱試験器や加煙試験器を当てて、一つずつ作動を確かめる作業を思い浮かべます。
ところが自動試験機能を持つ設備では、その作動試験の代わりに記録装置の記録を確認するという点検になります。
この記事では、記録で確かめる項目と、手作業で残る項目を点検基準から整理します。
自動試験機能付きなら、感知器の点検は要らないのですか。
感知器の作動試験は、記録の確認に置き換わる項目です。
ただし、手作業で残る点検もあります。
何が記録で、何が手作業なのでしょうか。
点検基準の別表第11に書かれています。
順番に見ていきましょう。
- 自動試験機能を有する設備は、その試験機能に係る項目を記録装置の記録により確認します。
- 判定は、予備電源・受信機・感知器などの6事項に係る異常が記録されていないことです。
- 予備電源の端子電圧・切替装置・充電装置・結線接続と、感知器の作動試験は、自動試験機能付きでは対象から除かれます。
- 発信機・音響装置・同時作動・地区音響装置の音圧は、従来どおり手作業で確認します。
- 記録に異常が表示されていれば、点検要領は対策を講じることと定めています。
▼
目次
自動試験機能付きの点検はなぜ記録装置の確認になるのか

定義は、受信機や中継器の技術上の規格を定める省令に書かれています。
自動試験機能とは、火災報知設備に係る機能が適正に維持されていることを、自動的に確認することができる装置による火災報知設備に係る試験機能をいう。
(5) 自動試験機能を有するものは、当該試験機能に係る項目については記録装置の記録により確認する。
設備が自分で試験をして結果を残すため、点検ではその記録を見るという考え方です。
記録で見る項目の一覧は、点検基準の機器点検(8)に書かれています。
次の事項に係る異常が記録装置に記録されていないこと。
ア 予備電源及び非常電源 イ 受信機の火災表示 ウ 受信機の注意表示(アナログ式に限る。) エ 受信機及び中継器の制御機能及び電路 オ 感知器 カ 感知器回路及びベル回路(無線式のうち、無線によって信号を送受信する部分を除く。)
予備電源・受信機・中継器・感知器・配線という、設備の心臓部がまとめて記録の対象になっています。
この方式が認められた経緯は、試験結果報告書の簡素化の記事でも触れています。
記録装置は、紙に印字するものだけですか。
点検要領は「記録装置の記録等」と書くだけで、形式までは書いていません。
実際の確認方法は、受信機の取扱説明書やメーカーにご確認ください。
予備電源はなぜ記録で4事項を確かめるのか

通常の点検では、電圧を測ったり、停電状態にして切り替わりを見たりします。
ウ 端子電圧、エ 切替装置、オ 充電装置、カ 結線接続の各項目には、「(自動試験機能を有する自動火災報知設備を除く。)」と付されている。ア 外形、イ 表示には、この除外は付されていない。
記録装置の記録等を確認する。判定方法は、異常が記録又は保持表示されていないこと。
※(ア) 予備電源及び非常電源については、次の事項の記録を確認すること。 a 予備電源及び非常電源の容量 b 切替装置 c 結線接続 d ヒューズ、ブレーカー等の作動
※(イ) 異常が表示されている場合は、対策を講じること。
記録で見るのは、容量・切替装置・結線接続・ヒューズやブレーカー等の作動の4事項です。
外形と表示は除かれていないので、目視の確認は残ります。
受信機に自動試験機能を設けるものは、予備電源に異常が生じた場合、音響装置及び表示灯が自動的に作動すること。
異常があれば受信機が知らせ、その内容が残るという組み立てです。
予備電源の外形や表示も、記録で済むのですか。
外形と表示は除かれていません。
変形や腐食、表示の適否は、これまでどおり目視で見ます。
感知器の作動試験はなぜ省かれるのか

自動試験機能を有する設備では、この作動試験の扱いが変わります。
ウ 熱感知器、エ 煙感知器、オ 炎感知器はいずれも、「自動試験機能若しくは遠隔試験機能を有する自動火災報知設備に係る」ものを除くと定められている(炎感知器は「自動試験機能又は遠隔試験機能」)。
(2) 煙感知器、煙複合式感知器又は熱煙複合式感知器の感度、(4) 総合作動には、「(自動試験機能を有する自動火災報知設備を除く。)」と付されている。
感知器の機能は、記録装置の「感知器」の事項で確かめる形です。
煙感知器の感度試験の点検要領は、煙感知器の感度試験の記事で扱っています。
次に掲げる事項が生じたとき、百六十八時間以内に音響装置及び表示灯が自動的に作動すること。イ 自動試験機能等対応型感知器に係る機能の異常 ロ 地区音響装置を接続する回線に係る電路の断線又は短絡
感知器の機能の異常は、7日以内に受信機が知らせることが規格で求められています。
点検の時期を待たずに異常を拾える点が、記録での確認を支えていると読めます。
遠隔試験機能付きの感知器は、どう点検するのですか。
遠隔試験機能を有するものは、感知器の作動及び警戒区域の表示を別の項目で見ます。
外部試験器の扱いは、外部試験器の校正の記事でまとめています。
自動試験機能付きでも手作業で残る点検は何か

除外の付いていない項目を、点検基準から拾います。
(2) 受信機及び中継器のうち、周囲の状況・外形・表示・警戒区域の表示装置・電圧計・スイッチ類・ヒューズ類・表示灯・通話装置・接地・附属装置には除外の付記がない。(3) 感知器のア 外形・イ 警戒状況、(4) 発信機、(5) 音響装置も同様である。
記録の6事項に発信機と音響装置は入っていません。
地区音響装置がきちんと鳴るかどうかも、実際に鳴らして確かめます。
音響装置の取り付けられた位置の中心から前面1m離れた位置で騒音計(A特性)を使って測定する。判定は、音声により警報を発するもの以外は90dB以上、音声により警報を発するものは92dB以上であること。
同時作動試験の考え方は、同時作動試験の記事で扱っています。
発信機は、記録装置で確かめられますか。
記録の6事項に発信機は含まれていません。
押しボタンを実際に操作して確かめる項目が残ります。
記録装置に異常が残っていたらどうするのか

異常が記録されていたときの扱いは、点検要領の留意事項が定めています。
※(イ) 異常が表示されている場合は、対策を講じること。
前各号に定める作動を行ったとき、当該表示の状態に関係なく、その内容を記録又は保持すること。
そのため、点検では表示灯だけでなく記録を読むことが必要と読めます。
異常が残っていれば、点検要領のとおり対策を講じます。 表示の有無だけで済ませないことが、記録による点検の要点です。
対策の中身は、点検要領には書かれていません。
記録に異常があったら、その場で不良になるのですか。
判定は「異常が記録又は保持表示されていないこと」なので、異常があれば条件を満たしません。
点検要領は対策を講じることと定めています。
よくある質問
まとめ
自動試験機能の有無は、点検の前に確認しておきます!
有無で点検の進め方が変わるので、事前の仕分けが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第11
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日 消防予第172号)別添 第11 自動火災報知設備(令和6年9月10日 消防予第412号による改正後)
- 受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)第13条の3
- 中継器に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第18号)第2条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
※本記事は公表されている法令および消防庁の点検基準・点検要領に基づく一般的な解説です。点検基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





