自動火災報知設備の受信機は、点検のたびに全部の回線を一気に作動させているわけではありません。
常用電源のときと予備電源のときとで、実は試験に使う回線の数が違います。
感知器の側にも、全数ではなく一部だけを取り出して確かめる試験があります。
この記事では受信機の同時作動試験と非再用型感知器の抜取試験を条文と通知から読み解きます。
うちの点検報告書の同時作動試験のところに「任意の5回線」と書いてありました。
全部の回線を試験しているわけではないんでしょうか。
はい、受信機の同時作動試験は電源の種類によって確かめる回線の数が変わります。
順に見ていきましょう。
感知器のところにも「抜取個数」という欄がありました。
感知器も全部は試験しないということですか。
そのとおりで、定温式スポット型の非再用型という感知器だけ決まった個数を抜き取って試験します。
結論からまとめておきますね。
- 受信機の同時作動試験は常用電源と予備電源で確かめる回線数が違う
- 常用電源使用時は任意の5回線(5回線未満の受信機にあっては全回線)を火災作動状態にする
- 予備電源使用時は任意の2回線(1回線の受信機にあっては1回線)を火災作動状態にする
- 定温式スポット型(非再用型)の感知器は設置個数に応じた抜取個数だけ加熱試験器で作動させる
- 試験結果は消防長又は消防署長の検査に使われる
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目次
自動火災報知設備の機能試験はなぜ全部を一度に確かめないのか

受信機と感知器は決められた機能試験を受けます。
このうち同時作動試験は、受信機に複数の回線がある場合にまとめて火災作動状態にして機能を確かめる試験です。
大きな建物ほど警戒区域の数が増え、受信機につながる回線の数も増えていきます。
すべての回線を毎回同時に作動させることも制度上は考えられますが、実際の試験基準では確かめる回線の数を電源の種類ごとに絞る形になっています。
まずは常用電源を使うときの基準から見ていきましょう。
回線がたくさんある建物だと、試験も大変そうですね。
全部の回線を毎回試験しているんでしょうか。
いえ、確かめる回線の数は決まっています。
まずは常用電源のときの基準を見てみましょう。
常用電源のときはなぜ任意の五回線で足りるのか

同時作動試験には具体的な回線数が定められています。
警戒区域が数十を超える大きな建物でも、試験のたびに確かめるのは代表として選んだ5回線だけです。
ただし受信機の回線数がもともと5回線に満たない場合は、この限定が意味を持たないため全回線を対象にします。
合否判定基準は「受信機、主音響装置、地区音響装置、附属装置等の機能に異常がなく、適正に火災作動状態を継続すること」で、選んだ回線がきちんと連動して火災表示を続けられるかを見ます。
この基準があるおかげで、大規模な建物でも試験の手間を一定の範囲に収めることができます。
5回線という数字、何か特別な根拠があるんでしょうか。
単なる目安ではないんですね。
消防庁の通知で明確に定められた数字です。
今度は予備電源のときの基準を見てみましょう。
予備電源のときはなぜ回線数が二回線に減るのか

同時作動試験を行いますが回線数の基準は変わります。
常用電源が5回線だったのに対し、予備電源は2回線に絞られ、回線数が1つしかない受信機はその1回線だけを試験します。
予備電源は非常時に限られた容量で受信機や音響装置を動かし続けるためのもので、常用電源と同じ規模の負荷をかけて試験する必要性は薄いという考え方が背景にあります。
合否判定基準は常用電源のときと同じく「受信機、主音響装置、地区音響装置、附属装置等の機能に異常がなく、適正に火災作動状態を継続すること」です。
電源の種類が違っても、確かめたいことは変わらず「火災作動状態を保てるか」という一点に絞られています。
常用電源より予備電源のほうが試験の回線数が少ないんですね。
負荷を減らして確かめるという考え方は初めて知りました。
そのとおりです。
次は感知器の抜取試験を見てみましょう。
非再用型の定温式スポット型感知器はなぜ抜取試験になるのか

種類によっては例外の試験方法があります。
差動式スポット型や定温式スポット型(再用型)は加熱試験器で作動させても壊れないため全数を試験できますが、非再用型は一度作動すると壊れて使えなくなる構造です。
すべてを試験してしまうと設置してある感知器を全部交換することになるため、設置個数に応じた抜取個数だけを試験する方法が定められています。
抜取個数は設置個数が10以下なら1個、50以下なら2個、101以下なら4個、それを超えると7個というように段階的に増えていきます。
合否判定基準は「正常に作動すること」で、抜き取った感知器がすべて正常に作動すれば、残りの感知器も含めた設置全体が正常だとみなす仕組みです。
一度作動すると壊れてしまうから、全部は試験できないんですね。
だから代わりに抜き取って確かめるんですか。
そのとおりです。
最後にこの試験結果がどう扱われるか見ていきましょう。
試験結果は消防検査でどう扱われるのか

書いて終わりではなく消防機関の検査に使われます。
同時作動試験の回線数や抜取試験の個数がどれだけ絞られていても、報告書に記入する内容はあらかじめ定められた方法どおりに実施した結果でなければなりません。
消防法第17条の3の2は、この届出とあわせて検査を受けることを義務づけており、消防法施行規則第31条の3第2項は消防長又は消防署長がこの届出を受けて設備等技術基準に適合しているかどうかを検査しなければならないと定めています。
確かめる回線や感知器の数を絞る試験方法は、決して手を抜くための省略ではなく、消防機関が同じ基準で結果を照合できるようにあらかじめ決められた手順だということです。
明日からは、点検報告書の同時作動試験と抜取試験の欄が、この決められた回線数・個数どおりに記入されているかを確認してみてください。
絞って試験しているのは省略じゃなくて、ちゃんと決められた手順だったんですね。
報告書の見方が分かってきました。
そのとおりです。
数字の意味が分かると点検報告書もぐっと読みやすくなります。
よくある質問
まとめ
今度の点検では同時作動試験と抜取試験の欄をちゃんと確認します。
報告書の見方が分かって安心しました。
その一手間が検査のときの安心につながります。
試験基準のことで迷われたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防庁「消防用設備等の試験基準に係る運用について」(平成14年9月30日消防予第283号)記3第11 自動火災報知設備試験基準
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の3第1項・第2項・第5項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の2
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第35条
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





