スプリンクラー設備の質疑応答には、病室、区画を貫く配管、送水口、地階のある店舗、カラオケボックスの個室など、実務で迷う場面が並んでいます。
消防庁は昭和55年から平成3年にかけて、こうした場面について都道府県からの照会に回答を示しました。
当時の条番号や規則の号は改正で変わっていますが、考え方は今の条文にも通じています。
5つの質疑を現行の令と規則に照らして順に読みます。
スプリンクラー設備って、建物ごとに細かい取扱いがありますよね。
はい。
昭和55年から平成3年の質疑応答5問を、順に見ていきます。
昔の回答が、今も役に立つんでしょうか。
考え方は役に立ちます。
現行の条文で確かめながら読みます。
- 既存の病院の病室のヘッド免除は、可燃物と出火危険が比較的少なく、入院患者を移して工事することが極めて困難なことを考慮した特例でした
- 耐火構造の壁や床を貫く給排水管、ガス管や電気配線があっても、区画された部分と認められるとされました
- スプリンクラー設備の送水口は、床面積や警戒面積にかかわらず、双口形のものを1個設ければよいという答えでした
- 地上1階と地下1階からなる店舗は、平屋建以外の防火対象物に該当するとされました
- カラオケボックスの個室の中にも、スプリンクラーヘッドの設置を要するとされました
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目次
病院の病室にはスプリンクラーヘッドを省略できるのか

その理由や、新築の病院への当てはめ方が、千葉県から問われました。
1 既存の防火対象物の病室等にスプリンクラーヘッドの設置を免除した理由。
2 新築の防火対象物の病室等に対するスプリンクラー設備の設置について、区画面積を縮小(400平方メートル)することにより特例基準を適用してよいか。
3 新築の防火対象物において、外科疾患等の患者の病室及び避難経路部分の作動(誤作動を含む。)による被水防止のために、スプリンクラー設備を免除し、または手動開放弁等の設置を認めてよいか。
2 特例基準を適用することは適当でない。
3 当該病室等が、回復室、蘇生室、モニター室、ギブス室その他これらに類する室等で、スプリンクラーヘッドから放水により人命に危険を及ぼすおそれのある場合は、スプリンクラーヘッドを省略してさしつかえない。
1の答えは、可燃物と出火の危険が比較的少なく、入院患者を移しての工事が極めて困難なことを、免除の理由に挙げています。2は、新築の病院に区画面積を400平方メートルへ縮めて特例基準を当てはめる扱いを、適当でないとしました。理由までは書かれていませんが、特例基準が既存の病院や診療所を対象にしているためと読めます。
3は、回復室やギブス室のように、放水で人命に危険を及ぼすおそれのある室なら、ヘッドを省略してさしつかえないという答えです。現行の規則第13条第3項第7号は、手術室、分娩室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室を、ヘッドを設けなくてよい部分に挙げています。
室の名前が当時の回答と同じとは限りません。自分の病院の室が当てはまるかは、消防機関に確認して決めます。
病室でも、室の使い方で扱いが分かれるんですね。
そうです。
放水で人命に危険があるかどうかが、判断の軸になります。
耐火構造の壁や床を配管が貫いても区画と認められるのか

その壁や床を配管やダクトが貫いているとき、区画と認められるかが石川県から問われました。
1 第1号を適用する場合、「耐火構造の壁及び床で区画された部分」に次の配管が貫通しているときは、「区画された部分」と認められるか。(1) 鋼管の給排水管 (2) ガス管 (3) 金属管工事、金属ダクト工事による電気配線 (4) 硬質塩化ビニル管の排水管
2 第1号に規定する「開口部」について。(1) 当該開口部には、換気、排煙等のダクトも含まれるか。(2) (1)のダクトが開口部に含まれないとすれば、区画外との延煙危険が考えられるが、どのような措置をさせればよいか。
3 (1)のダクトが開口部に含まれるとすれば、ダンパーは煙感知器の作動と連動して閉鎖するものでなければならないか。
2 (1) お見込みのとおり。(2) (1)により承知されたい。
3 原則として消防法施行規則第13条第1項の規定に準じたものとするが、ダクトの種類、構造等によっては熱感知器と連動することができるものとして運用されたい。
答えで「お見込みのとおり」とされたのは、給排水の鋼管、ガス管、金属管工事や金属ダクト工事による電気配線の3つです。問に挙がっていた硬質塩化ビニル管の排水管は、この3つに入っていません。
換気や排煙のダクトは「開口部」に含まれ、そこにつけるダンパーは、原則として煙感知器の作動と連動して閉鎖させます。ダクトの種類や構造によっては、熱感知器との連動が認められる場合があるとされました。
現行の区画の定めは、規則第13条第2項第1号にあります。耐火構造の壁と床で区画された部分で、開口部の面積の合計が8平方メートル以下、1つの開口部は4平方メートル以下、開口部には特定防火設備である防火戸を設けるなどの条件です。地階と無窓階は対象から除かれています。
配管やダクトが区画を貫く建物は、貫通の材料を確かめ、迷う配管は消防機関に確認します。
配管とダクトで、扱いが違うんですね。
はい。
ダクトは開口部に数え、ダンパーの連動方式を確かめます。
スプリンクラー設備の送水口は床面積に応じて増やすのか

警戒する床面積が広い建物でも、送水口の数を増やす必要があるのかが北海道から問われました。
(1) 設置個数について特段の定めがないので、当該床面積(警戒面積)にかかわらず1個設置すればよいと解してよいか。
(2) 床面積(警戒面積)に応じて設置個数の増設が必要か。
(3) (2)により警戒面積に応じて増設が必要とするならば、法令等の基準に取り入れることができないか。
2及び3 1により承知されたい。
現行の令第12条第2項第7号は、スプリンクラー設備に非常電源を附置し、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に双口形の送水口を附置すると定めています。条文に個数の定めは書かれておらず、答えはこの読み方を認めました。
2と3については、1の答えで承知するよう求めています。増設の要否を、面積に応じて基準へ取り入れる扱いにはなっていません。
送水口の細目は、規則第14条第1項第6号にあります。専用とすること、結合金具を地盤面から0.5メートル以上1メートル以下で送水に支障のない位置に設けること、加圧送水装置から流水検知装置などまでの配管に専用の配管で接続することなどです。
点検のときは、送水口が専用で、消防ポンプ自動車が近づけ、標識が見えることを確かめます。
広い建物でも、1個でいいんですね。
そうです。
個数より、専用の配管と位置の条件が大切です。
地下1階がある店舗は平屋建以外の防火対象物に当たるのか

地上1階に地下1階が付いた店舗が平屋建以外に当たるのかが、愛知県から問われました。
現行の令第12条第1項第4号は、(4)項などの防火対象物のうち平屋建以外のものについて、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、(4)項と(6)項イ(1)から(3)までは3,000平方メートル以上、その他は6,000平方メートル以上のものに、スプリンクラー設備を求めています。
質疑の店舗は、地上1階が2,500平方メートル、地下1階が500平方メートルで、合計は3,000平方メートルになります。答えは、この場合が平屋建以外に該当するとだけ述べています。
面積の数え方では、規則第13条第2項が定める耐火構造の壁と床で区画された部分などが、合計から除かれます。地下の階がある店舗は、平屋建以外として基準の面積を確かめます。
地下が少し付いても、平屋建以外になるんですね。
はい。
階数の数え方から、基準の面積を確かめます。
カラオケボックスの個室の中にもスプリンクラーヘッドは要るのか

それでも個室の中にヘッドが要るのかが、神奈川県から問われました。
質疑の個室は、不燃材料の認定を受けた鋼板で作られ、地階の天井には基準どおりヘッドがありました。それでも設置を要するとされ、理由までは書かれていません。
現行の令第12条第2項第2号イは、天井の各部分から1つのヘッドまでの水平距離を、耐火建築物では2.3メートル以下(高感度型ヘッドを除く)とするよう定めています。規則第13条第3項がヘッドを設けなくてよい部分を挙げていますが、カラオケボックスの個室はその中にありません。
個室が天井で仕切られているなら、その中にもヘッドが要ると見て、改装や増設の前に配置を消防機関へ確認します。
個室の中にも要るなら、改装のときは注意ですね。
はい。
個室を増やすときは、ヘッドの位置も設計に入れます。
よくある質問
まとめ
スプリンクラー設備の質疑が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!
昔の回答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条
- 消防法施行規則第13条・第14条
- スプリンクラー設備の設置について(昭和55年3月13日 消防予第38号 消防庁予防救急課長から千葉県総務部長あて回答)
- 予防業務上の疑義事項について(昭和55年3月19日 消防予第41号 消防庁予防救急課長から石川県総務部長あて回答)
- スプリンクラー設備に附置する送水口の設置個数について(昭和56年10月13日 消防予第245号 消防庁予防救急課長から北海道総務部長あて回答)
- 消防法施行令第12条第1項第3号に規定する「平屋建以外の防火対象物」の解釈について(平成2年11月22日 消防予第169号 消防庁予防課長から愛知県総務部長あて回答)
- スプリンクラーヘッドのカラオケボックス内の設置について(平成3年8月12日 消防予第164号 消防庁予防課長から神奈川県環境部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





