平成25年10月25日、消防庁は消防予第414号で、緩降機の設置に係る留意事項を示しました。
きっかけは、緩降機の設置場所について疑義事項が生じたことです。
通知は、建物の計画に影響する内容だとして、消防同意時等の計画段階で種類や設置場所を確認するよう求めています。
この記事では、通知が出た経緯と対象、示された留意事項と見落としやすい点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
うちのビルのバルコニーにも緩降機があります。
設置場所で疑義が出たと聞いて、少し気になっています。
まず、消防庁が通知を出した理由と対象を見ていきましょう。
新しく付ける場合も、今ある器具を見直す場合も役立ちます。
壁面のないバルコニーだと、付けられないのでしょうか。
いいえ。
通知が示した壁面の考え方を、順にお伝えします。
- 消防庁は平成25年10月25日の消防予第414号で、緩降機の設置場所について疑義事項が生じたことから、その考え方と一般的な留意事項を示しました。
- 2号告示の壁面は、全く開口部を有しない壁面であることまで求めておらず、バルコニー等の壁面のない部分も、降下に支障を生じないと判断できる場合は壁面として取り扱って差し支えないとされました。
- 降下空間と避難空地は原則単独で設け、やむを得ず共用する場合だけ、器具相互の中心を0.5メートルまで近接させられます。
- 取付部は、開口部の下端を床面から1.2メートル以下とし、開口部の高さが0.5メートル以上ならステップ等を設け、窓や扉にはストッパー等を設けます。
- 通知は、消防同意時等の計画段階で緩降機の種類と設置場所等を確認するよう求めた助言です。
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目次
緩降機の設置場所について消防庁はなぜ通知で考え方を示したのか

通知の冒頭が挙げる理由は、緩降機の設置場所に疑義事項が生じたことです。
避難器具の設置方法については、「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年消防庁告示第2号。以下「2号告示」という。)に基準を示しているところですが、今般、緩降機の設置場所について疑義事項が生じたことから、その考え方について下記1⑴に示すとともに、緩降機を設置する場合の一般的な留意事項について下記のとおり取りまとめましたので、これらの事項に留意し、建物の設計者等に周知並びに設置指導されるようお願いします。なお、下記事項については、建物の計画に影響する内容であることから、消防同意時等の計画段階において、その種類、設置場所等を確認されるようお願いします。
通知は消防庁予防課長から、各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁、各指定都市消防長へ宛てて出されました。
通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出され、国土交通省や建築関係の団体にも情報提供したと述べています。
設置場所は建物の間取りや外観に響くので、完成してから直すのは大変です。
だから通知は、計画段階で確認するよう求めています。 通知の概要は、次の表のとおりです。
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 通知 | 平成25年10月25日 消防予第414号「緩降機の設置に係る留意事項について」 |
| 発出 | 消防庁予防課長 |
| 宛先 | 各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁、各指定都市消防長 |
| 理由 | 緩降機の設置場所について疑義事項が生じたため |
| 性格 | 消防組織法第37条の規定に基づく助言 |
| 情報提供先 | 国土交通省、日本建設業連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建築士会連合会 |
設計の段階で確認するように求められているのですね。
はい。
通知は建物の設計者等への周知と、設置の指導を消防機関に求めています。
この通知は緩降機のどんな場面と部分を対象にしているのか

内容は、設置場所・取付部・取付方法の3つに分かれています。
(略)
2 前項に規定するもののほか、避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
(略)
二 避難器具は、避難に際して容易に接近することができ、階段、避難口その他の避難施設から適当な距離にあり、かつ、当該器具を使用するについて安全な構造を有する開口部に設置すること。
緩降機は、次のイからハまでに定めるところにより設けること。
イ 緩降機は、降下の際、ロープが防火対象物と接触して損傷しないように設けること。
ロ 緩降機のロープの長さは、取付位置から地盤面その他の降着面までの長さとすること。
ハ 緩降機の取付け具は、次の(イ)から(ハ)までに定めるところによること。
(ロ) 取付け具は、ボルト締め、溶接その他の方法で堅固に取り付けること。
(略)
令第25条第2項は、避難器具を安全な構造の開口部に設置するよう求めています。
規則第27条第1項第6号は、緩降機のロープが建物に触れて傷まないことと、取付け具を堅固に取り付けることを定めています。
通知は、これらに基づく2号告示の寸法を、設置場所・取付部・取付方法の順に整理しました。
通知が挙げた内容を、2号告示の該当箇所と並べると、次の表のとおりです。
| 通知の項目 | 内容 | 2号告示の該当箇所 |
|---|---|---|
| 1⑴ | 壁面の取扱い | 第3第2号⑶ |
| 1⑵ | 降下空間・避難空地の共用と看板や樋 | 第3第2号⑶ |
| 1⑶ | 架空電線との間隔 | 第3第1号⑴ヌ |
| 1⑷ | 避難空地の面積と避難通路 | 第3第1号⑴ヘ及びト |
| 2⑴ | 開口部の大きさ・操作面積・下端の高さ | 第3第1号⑴イ及びニ、第3第2号⑴ |
| 2⑵ | ステップ等 | 第3第2号⑵ |
| 2⑶ | 窓や扉のストッパー等 | 第3第1号⑴ハ |
| 3 | 取付方法(固定部の強度・取付け具・工法) | 第8 |
通知は2号告示を読み替えているのではなく、整理しているのですね。
はい。
基準の中身は2号告示で、通知はその運用の考え方を示したものです。
緩降機を付ける壁面や降下空間について通知は何を求めているのか

通知は、この考え方を1⑴に示しています。
降下者の身体的安定等を考慮し、2号告示では、「緩降機は、使用の際、壁面からロープの中心までの距離が0.15メートル以上0.3メートル以下となるように設ける」こととされているが、この「壁面」は、全く開口部を有しない壁面であることまで求めているものではないことから、バルコニー等の部分についても、壁面のない部分の状況が緩降機での降下に支障を生じないものと判断できる場合にあっては、壁面として取り扱って差し支えないものであること(2号告示第3第2号⑶関係)。
降下空間(緩降機を中心とした半径0.5メートルの円柱形に包含される範囲以上の空間をいう。以下同じ。)及び避難空地については、原則他の緩降機と共用することなく単独で設けるものであるが、やむを得ない理由により共用する場合にあっては、器具相互の中心を0.5メートルまで近接させることができること。
2号告示は、壁面からロープの中心までを0.15メートル以上0.3メートル以下にするよう求めています。
通知は、バルコニー等で壁面のない部分があっても、降下に支障を生じないと判断できれば壁面として扱えるとしています。
降下空間は、緩降機を中心とした半径0.5メートルの円柱形以上の空間で、原則は単独です。
共用できるのは、やむを得ない理由がある場合に限られます。 通知の1⑴から⑷を、数字で整理すると、次の表のとおりです。
| 項目 | 通知が示した内容 |
|---|---|
| 壁面(1⑴) | ロープの中心まで0.15メートル以上0.3メートル以下。開口部のない壁面までは求めず、支障がないと判断できる壁面のない部分も壁面として扱える |
| 降下空間の共用(1⑵) | 原則は単独。やむを得ず共用する場合は、器具相互の中心を0.5メートルまで近接できる |
| 架空電線(1⑶) | 降下空間との間隔は1.2メートル以上、緩降機の上端との間隔は2メートル以上 |
| 避難空地(1⑷) | 降下空間の水平投影面積以上の面積。最大幅員以上(1メートルを超えるものは1メートル)で、避難上安全な避難通路を設ける |
つまり、壁のない部分があっても、降下に支障がなければ壁面として扱えるのですね。
そのとおりです。
ただし判断は降下に支障を生じないかで行うので、所轄消防署に確かめてください。
緩降機の設置計画で見落としやすいのはどんな点か

開口部の高さ、窓や扉、取付方法の3つです。
なお、降下空間については、建築確認申請書等には、建物の外部に設置される看板や樋等までは記載されないことも想定されることから留意されること(2号告示第3第2号⑶関係)。
⑴ 緩降機を取り付ける部分の開口部の大きさ及び操作面積については、一定の大きさを確保し、さらに当該開口部の下端については、床面から1.2メートル以下とすること(2号告示第3第1号⑴イ及びニ並びに第2号⑴関係)。
⑵ 緩降機を取り付ける部分の開口部の床面からの高さが0.5メートル以上の場合は、有効に避難できるように固定又は半固定のステップ等を設けること(2号告示第3第2号⑵関係)。
⑶ 緩降機を取り付ける部分の開口部に窓、扉等が設けられる場合にあっては、ストッパー等を設け、窓及び扉等が緩降機の使用中に閉鎖しない措置を講ずること(2号告示第3第1号⑴ハ関係)。
避難器具を取り付ける固定部には、一定の強度が求められることから木造部分への取り付けを避けたり、取付け具を固定するには、一定の強度を有する金属拡張アンカーで施工する必要がある等、避難器具を取り付ける固定部の強度、取付け具の構造及び強度、取付け具を固定する場合の工法等については、一定の基準が定められていることから留意されること(2号告示第8関係)。
第1に、建築確認申請書等には、降下空間の中にある看板や樋までは載らないことがあると、通知は述べています。
第2に、開口部の下端は床面から1.2メートル以下で、床面からの高さが0.5メートル以上ならステップ等が要ります。
第3に、窓や扉が使用中に閉まらないよう、ストッパー等を設けます。
第4に、固定部は木造部分を避け、一定の強度の金属拡張アンカーで施工するなど、2号告示第8の基準に従います。
外から見えるものは、図面に載らないことがあるのですね。
はい。
現地の降下空間を、実際に目で見て確かめておきましょう。
明日から緩降機の設置場所をどう確かめればよいのか

次の5点を、自分の建物に当てはめてみてください。
緩降機は、一(一)イ、ハ、ニ、ヘ、ト及びヌによるほか、次によること。
(一) 壁の部分に設ける取付部の開口部の下端は、床から一・二メートル以下とすること。
(二) 床からの高さが〇・五メートル以上の場合は、有効に避難できるように固定又は半固定のステップ等を設けること。
(略)
通知は消防機関への助言ですが、内容は建物の関係者が自分で見回るときの手がかりになります。
次の5点を、自分の建物に当てはめて確認してみてください。
- 緩降機のある場所の壁面と、壁面のない部分の状況を見て、降下に支障がないかを確かめる
- 降下空間(半径0.5メートルの円柱形以上)に、看板や樋などが入っていないかを地面まで確かめる
- 架空電線との間隔が、降下空間で1.2メートル以上、緩降機の上端で2メートル以上あるかを確かめる
- 開口部の下端の高さ、ステップ等の有無、窓や扉のストッパーを確かめる
- 取付け具の固定部が木造部分でないか、金属拡張アンカーの施工かを、図面や施工記録で確かめ、迷う点は所轄消防署に相談する
まず、降下空間に何か張り出していないか、外から見てみます。
お願いします。
図面だけで判断せず、所轄消防署にも相談してください。
よくある質問
まとめ
緩降機の設置場所を確かめてみます!
避難器具の設置や見直しの相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「緩降機の設置に係る留意事項について(通知)」(平成25年10月25日 消防予第414号 消防庁予防課長通知)
- 「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年4月16日 消防庁告示第2号)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第25条、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第27条、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





