ガス系消火設備の設計や更新で、避圧口の開口面積をどう出せばよいのかと迷ったことはありませんか。
平成23年12月28日、消防庁予防課は事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」で、FK―五―一―一二を使うハロゲン化物消火設備の避圧口の面積の算定式を示しました。
答えは「当面、以下によられたい」という短い一文と、記号が四つ並んだ式です。
この記事では、通知が出された理由、対象、式の読み方、見落としやすい点、実務の確認手順を、通知と現行の条文をもとに解説します。
避圧口の面積を、どうやって決めればよいのか分かりません。
通知に計算式があると聞きました。
式は、通知の問3の答えとして示されています。
まず、なぜ通知が出たのかから順に確かめましょう。
記号の意味や単位も、間違えないようにしたいです。
そこは次の章で表にします。
計算の練習用の例も添えます。
- 消防庁は平成23年12月28日の事務連絡の問3で、FK―五―一―一二を使うハロゲン化物消火設備の避圧口の開口部の面積は「当面、以下によられたい」として算定式を示しました。
- 式は、避圧口面積A(平方センチメートル)=580×Q÷√(P-ΔP)で、Qは噴射ヘッドからの最大流量(キログラム毎秒)です。
- Pは防護区画の許容圧力、ΔPはダクトの損失で、どちらもパスカルで表します。許容圧力からダクトの損失を引いた値の平方根が、割り算の分母に入ります。
- 避圧口を外部に面して設ける場合は、必要に応じて外気風圧等の影響を考慮した設計を行うことが望ましいと、通知は付け加えています。
- 根拠は、消防法施行規則第20条第4項第16号の2の防護区画内の圧力上昇を防止するための措置で、点検でも措置に変更がないことが確認項目です。
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目次
避圧口の面積の算定方法はなぜ消防庁の事務連絡で示されたのか

消防庁予防課は、その質疑応答をまとめて送りました。
消防法施行規則第20条第4項第16号の2に規定する「防護区画内の圧力上昇を防止するための措置」として避圧口を設ける場合の開口部の面積算定方法について、FK―五―一―一二を用いたハロゲン化物消火設備を設置する場合の当該算定方法をご教示願いたい。
全域放出方式のハロゲン化物消火設備(HFC―二三、HFC―二二七ea又はFK―五―一―一二を放射するものに限る。)を設置した防護区画には、当該防護区画内の圧力上昇を防止するための措置を講じること。
通知の問いは、その措置として避圧口を設ける場合の、開口部の面積の算定方法です。
通知はこの質問に答える形で、算定式を示しました。
通知の本文は、質疑応答を「とりまとめたので、執務上の参考としてください」と述べています。
宛先は、各都道府県消防防災主管課、東京消防庁、各指定都市消防本部で、法令そのものではなく運用の参考として送られた文書です。
| 文書・条文 | 日付など | 内容 |
|---|---|---|
| 事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」の問3 | 平成23年12月28日 消防庁予防課設備係 | 避圧口を設ける場合の開口部の面積の算定方法(FK―五―一―一二を用いる設備) |
| 消防法施行規則第20条第4項第16号の2 | 現行の条文 | 三つの薬剤を使う全域放出方式の防護区画に、圧力上昇を防止するための措置を講じること |
| 消防法施行規則第20条第4項第16号の3 | 現行の条文 | FK―五―一―一二を使う全域放出方式の防護区画に、過度の温度低下を防止するための措置を講じること |
規則には「措置を講じる」としか書いていないのですね。
そのとおりです。
面積の目安は、通知の算定式から得ます。
この算定式はどの設備と薬剤が対象なのか

規則の側の範囲とあわせて確かめます。
(略)避圧口を設ける場合の開口部の面積算定方法について、FK―五―一―一二を用いたハロゲン化物消火設備を設置する場合の当該算定方法をご教示願いたい。
第十三条に規定するもののほか、ハロゲン化物消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。(略)
規則第20条第4項第16号の2の対象は、全域放出方式で、HFC―二三・HFC―二二七ea・FK―五―一―一二の三つの薬剤に限られています。
ハロン2402・ハロン1211・ハロン1301を放射する設備は、この号の対象に入っていません。
通知は、HFC―二三やHFC―二二七eaの場合に同じ式を使ってよいかまでは書いていません。
他の薬剤に当てはめてよいかは、所轄の消防署に確かめてください。
| 区分 | 規則第20条第4項の圧力上昇防止措置(第16号の2) | 規則第20条第4項の温度低下防止措置(第16号の3) |
|---|---|---|
| 全域放出方式でHFC―二三を放射 | 対象 | 対象外 |
| 全域放出方式でHFC―二二七eaを放射 | 対象 | 対象外 |
| 全域放出方式でFK―五―一―一二を放射 | 対象 | 対象 |
| ハロン2402・1211・1301を放射する設備 | 対象外 | 対象外 |
うちの設備はHFC―二二七eaですが、この式は使えますか。
通知の問いはFK―五―一―一二の場合だけです。
他の薬剤は、設計者と所轄の消防署に確認しましょう。
算定式はどんな記号と単位で書かれているのか

単位を取り違えないことが、いちばん大切です。
当面、以下によられたい。
A=580・Q/√(P-ΔP)
A:避圧口面積(平方センチメートル)
Q:噴射ヘッドからの最大流量(kg/秒)
P:防護区画の許容圧力(パスカル)
ΔP:ダクトの損失(パスカル)
※避圧口を外部に面して設ける場合にあっては、必要に応じて外気風圧等の影響を考慮した設計を行うことが望ましい。
流量Qが2倍になれば、面積Aも2倍です。
許容圧力Pからダクトの損失ΔPを引いた値が4分の1になれば、平方根は2分の1になるので、面積は2倍です。
下の表は、式の使い方を確かめるための仮の数字で、実際の設計値ではありません。
通知は、許容圧力の求め方やダクトの損失の見積り方までは書いていません。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| A | 避圧口面積 | 平方センチメートル |
| Q | 噴射ヘッドからの最大流量 | キログラム毎秒(kg/秒) |
| P | 防護区画の許容圧力 | パスカル |
| ΔP | ダクトの損失 | パスカル |
| 計算の練習用の仮の数字 | P-ΔPの平方根 | 避圧口面積A |
|---|---|---|
| Q=10、P-ΔP=400 | 20 | 580×10÷20=290平方センチメートル |
| Q=10、P-ΔP=1600 | 40 | 580×10÷40=145平方センチメートル |
| Q=10、P-ΔP=100 | 10 | 580×10÷10=580平方センチメートル |
| Q=20、P-ΔP=400 | 20 | 580×20÷20=580平方センチメートル |
流量が2倍なら面積も2倍なのですね。
はい。
単位をそろえたうえで、QとPとΔPの根拠を設計者に確認してください。
算定式を使うときに見落としやすいのはどこか

通知の性格、記号の中身、外気風圧、そして温度低下対策との関係です。
全域放出方式のハロゲン化物消火設備(FK―五―一―一二を放射するものに限る。)を設置した防護区画には、放射された消火剤が有効に拡散することができるように、過度の温度低下を防止するための措置を講じること。
防護区画内の圧力上昇を防止するための措置及び過度の温度低下を防止するための措置を講じているものにあっては、当該措置に変更がないこと。
答えの書き出しは「当面、以下によられたい」で、期限や見直しの時期は書かれていません。
二つ目は記号で、通知はΔPを「ダクトの損失」とだけ書き、どのダクトを指すかまでは説明していません。
三つ目は、避圧口を外部に面して設けるときの外気風圧で、通知は「必要に応じて」考慮するよう求めています。
四つ目は、FK―五―一―一二には圧力上昇の措置とは別に、温度低下の措置が規則で定められている点です。
両方の措置は、点検でも変更がないことを確かめる項目です。
| 項目 | 通知や条文の書き方 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 適用の範囲 | 問いはFK―五―一―一二を用いる設備。「当面」の扱い | 設計者と所轄の消防署に確認する |
| ΔP(ダクトの損失) | 「ダクトの損失(パスカル)」とだけ記載 | 設計図書で、どのダクトの損失を見込んだかを確かめる |
| 外部に面する避圧口 | 必要に応じて外気風圧等の影響を考慮した設計が望ましい | 設置位置と向きを設計図書で確かめる |
| 温度低下の措置 | 規則第20条第4項第16号の3 | 圧力上昇の措置とは別に、措置が講じられているかを確かめる |
ΔPがどのダクトの損失なのか、私には分かりません。
通知にも詳しい説明はありません。
設計図書の計算書で確かめ、迷うときは所轄に相談しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文から、確認したい点を五つに整理します。
※避圧口を外部に面して設ける場合にあっては、必要に応じて外気風圧等の影響を考慮した設計を行うことが望ましい。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
個別の設計の適否は、設計者と所轄の消防署で確かめてください。
- 設置している設備が、全域放出方式でFK―五―一―一二を使うものか、薬剤名を銘板や設計図書で確かめる
- 避圧口の面積の計算書に、A・Q・P・ΔPの数値と単位が書かれているかを確かめる
- Qがキログラム毎秒、Aが平方センチメートル、PとΔPがパスカルで統一されているかを見る
- 避圧口を外部に面して設けている場合は、外気風圧をどう見込んだかを設計者に確認する
- 増築や区画の変更があったときは、圧力上昇と温度低下の措置に変更がないかを点検で確かめる
まず計算書を出してもらって、単位を確かめます。
それが入り口です。
薬剤名と単位の確認から、始めてください。
よくある質問
まとめ
計算書の単位の確認から、始めます!
ガス系消火設備の見直しは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成23年12月28日 消防庁予防課設備係)問3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第17条 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第20条第4項第16号の2・第16号の3 e-Gov法令検索
- 消防庁「消防用設備等の点検要領」第7 ハロゲン化物消火設備(機器点検・防護区画)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





