駐車場には、一定の広さを超えると、泡消火設備などの設置が求められます。
昭和40年代には、基準に載っていない新しい消火剤を使った駐車場の消火装置について、消防庁に願い出があり、その回答が通知として残っています。
この記事では、その質疑応答から五つを選び、消防法施行令第13条 と第32条 や、消防法施行規則第18条 などの現行の条文と照らして読みます。
特例の扱い、ヘッドの条件、感知の方法、試験、型式ごとの承認を、順に確かめます。
昔は、新しい消火剤を使うのにも特例が必要だったんですか。
駐車場の話なんですね。
はい。
五つの質疑応答で、何が答えられ、今の条文とどうつながるかを見ていきます。
今の条文とは、どうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 令第13条に載らない消火剤でも、固定式で開放弁と加圧送水装置が連動するなどの条件を満たせば、令第32条を適用して泡消火設備と同等以上と扱ってよいと答えられました
- ヘッドは、フォームヘッドで毎分8リットルの放射量など数字の条件を示され、同時放射区域は柱で囲まれた消火区画と前面の車路とされました
- 火災の感知にスプリンクラーヘッドを使う場合は、閉鎖型で標示温度を室温より高くするなどの条件が付けられました
- 消火用界面活性剤の消火性能は、当分の間、消火用乳化剤の試験で確かめればよいとされ、使えるヘッドは型式名で指定されました
- 別会社の新しい薬剤も、試験で承認済みと同等と確かめられた薬剤とヘッドの組み合わせに限って、同じ特例の扱いとされました
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目次
令第13条に載らない消火剤で駐車場の消火設備をつくってよいのか

願い出を受けた側は、実験などの資料もないため、実際の消火効力や配管、ヘッドの間隔にも疑問があるとして、消防庁に付ける条件を尋ねました。
1 消火用乳化剤による消火装置は、固定式とし、かつ、自動式開放弁と加圧送水装置の起動装置とが連動するものであること。
2 自動式開放弁は、同時放射区域ごとに設け、手動開放装置を付置し、自動火災感知装置と連動するものであること(以下、ヘッド・水源・排水設備・消火用乳化剤の性状などの基準が続く)。
(昭和40年7月26日 消防予第128号 消防庁予防課長から北海道総務部長あて)
答えは、十二の項目を挙げ、これに適合する場合に限り、令第32条を適用して泡消火設備と同等以上と扱ってよいとしています。
令第13条の表は、駐車の用に供される部分のうち、地階や二階以上の階で床面積が200平方メートル以上のものなどに、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設けるよう求めています。
令第32条は、消防長又は消防署長が、位置、構造又は設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止めることができると認めるときは、この節の規定を適用しないとしています。
現在は、泡消火薬剤は令第37条第3号で検定対象機械器具等に掲げられ(総務省令で定めるものを除く)、規格は「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令」が、たん白泡、合成界面活性剤泡、水成膜泡などに分けて定めています。
基準に載らない薬剤は、条件を全部守れば同等と扱われたんですね。
はい。
令第32条を使って、条件つきで同等と扱うという整理でした。
新しい消火剤のヘッドは、放射量や放射区域をどう決められたのか

ヘッドの放射圧力や放射量、同時に放射する区域が、どのように示されたかを確かめます。
(昭和40年7月26日 消防予第128号 消防庁予防課長から北海道総務部長あて)
現行の消防法施行規則第18条第1項第2号は、フォームヘッドを、天井又は小屋裏に床面積9平方メートルにつき1個以上、防護対象物のすべての表面が有効防護空間内に入るように設けるとしています。放射量は、駐車の用に供される部分では、たん白泡消火薬剤が毎分6.5リットル、合成界面活性剤泡消火薬剤が毎分8.0リットル、水成膜泡消火薬剤が毎分3.7リットルで、いずれも床面積1平方メートル当たりです。
昭和の答えの毎分8リットルは、いまの合成界面活性剤泡消火薬剤の数字と重なります。一方、水源は、現行の同条第2項では駐車の用に供される部分について10分間放射できる量で、昭和の15分間より短くなっています。
フォームヘッドの一の放射区域の面積は、道路の用に供される部分以外で50平方メートル以上100平方メートル以下です(同条第4項第5号)。
一方、放射圧力の数字は、現行の条文には並んでいません。泡放出口と泡消火薬剤混合装置は、消防庁長官の定める基準に適合したものとされています(同項第14号)。
同じ毎分8リットルでも、水源の時間は短くなったんですね。
はい。
数字は今の規則で確かめる必要があります。
火災の感知にスプリンクラーヘッドを使ってもよいのか

これを火災感知器に替えた場合に、付ける条件が変わるかどうかも尋ねられています。
イ スプリンクラーヘッドは閉鎖型とし、ヘッドの設置場所の室温より、ソルダー型にあっては30〜40度、ノンソルダー型にあっては15〜25度高い標示温度をもつものを設けること。
ロ 耐火建築物にあっては床面積20平方メートル、その他の建築物にあっては15平方メートルにつき1個を、偏在しないように設けること。
ハ ヘッドの作動により、自動的に音響による警報を発するよう、防火対象物内にある者が火災の発生を覚知することができる場所に自動警報設備を設けること。
(昭和40年7月26日 消防予第128号 消防庁予防課長から北海道総務部長あて)
答えは、感知装置を自動火災報知設備の設置の例によって設けることを原則とし、スプリンクラーヘッドを感知部にする場合の条件を三つ挙げています。標示温度、設置密度、警報の三点です。
現行の消防法施行規則第18条第4項第10号イは、泡消火設備の自動式の起動装置を、自動火災報知設備の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放又は火災感知用ヘッドの作動若しくは開放と連動して、加圧送水装置、一斉開放弁及び泡消火薬剤混合装置を起動できるものとしています。ただし、自動火災報知設備の受信機が防災センター等に設けられ、火災時に直ちに手動式の起動装置で起動できる場合は、この限りではありません。
音響による警報は、同項第12号が、自動警報装置を第14条第1項第4号の規定の例により設けるとしています。
スプリンクラーヘッドが感知にも使えるのは、今の規則にもあるんですね。
はい。
閉鎖型ヘッドの開放と連動する起動が、現行の規則に書かれています。
消火用界面活性剤の消火性能は、乳化剤の試験で確かめてよいのか

消火性能を確かめる試験の方法と、使うヘッドの指定が問われています。
(昭和41年3月29日 自消丙予発第39号 消防庁予防課長から東京消防庁予防部長あて)
答えは、薬剤ごとにヘッドの型式、取付けピッチ、放射圧力、放射量を示し、消火性能試験は特例基準12ハの方法でよいとしています。特例基準12ハは、直径1メートル、深さ0.15メートルの燃焼皿にガソリン4リットルを入れて点火し、点火後20秒でヘッドから放射を始め、1分以内に消火でき、消火後1分以内に再燃しないことを求めています。
現行の「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令」は、たん白泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤を定義し、比重、粘度、発泡性能、消火性能などの基準を定めています。消火性能は、水320リットルとガソリン200リットルを入れたB火災模型で試験する方法などで確かめます。
泡消火薬剤は、令第37条第3号で検定対象機械器具等にも掲げられています。
試験の方法も、条件の一つだったんですね。
はい。
試験の方法とヘッドの型式まで、あわせて決められていました。
別の会社の新しい薬剤は、承認済みの基準と同じに扱えるのか

先の特例基準で認められた設備と同じに扱えるかどうかが問われています。
(昭和46年5月17日 消防予第75号 消防庁予防課長から東京都あて)
申請では、薬剤の濃度、使うヘッドの型式、取付けピッチ、放射圧力、放射量が表にまとめられ、原液の比重、粘度、表面張力なども示されました。答えは短く、お見込みのとおり、としています。
扱われたのは、薬剤だけではなく、薬剤とヘッドの組み合わせでした。特例基準の条件を守るヘッドの型式や放射条件まで含めて、同等と確かめられています。
現行の消防法施行規則第18条第4項第14号も、泡放出口及び泡消火薬剤混合装置は、消防庁長官の定める基準に適合したものとしています。薬剤とヘッドは、それぞれの基準で確かめる構造になっています。
薬剤だけでなく、ヘッドも一緒に確かめられていたんですね。
はい。
薬剤とヘッドの組み合わせで、同等かどうかが確かめられました。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの駐車場の消火設備も、今の基準で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第13条・第32条・第37条
- 消防法施行規則第18条
- 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年自治省令第26号)
- 消火設備の特例承認願いについて(昭和40年7月26日 消防予第128号 消防庁予防課長から北海道総務部長あて回答)
- 消火設備の特例承認願いについて(昭和41年3月29日 自消丙予発第39号 消防庁予防課長から東京消防庁予防部長あて回答)
- 消火設備の特例承認願いについて(昭和46年5月17日 消防予第75号 消防庁予防課長から東京都あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





