平成21年3月、群馬県渋川市の老人ホームで火災があり、10名が亡くなりました。
消防庁は同年6月4日の消防予第254号で、小規模な福祉施設や簡易宿泊所へ住宅用火災警報器を国費で配備する事業の調査を、各都道府県に依頼しました。
調査の対象は、当時自動火災報知設備の設置が義務とならない施設でした。
この記事では、通知の中身と、現行の条文で変わった点を解説します。
うちのような小さな施設にも、国が警報器を配る話があったのですか。
どんな経緯だったのでしょうか。
はい、平成21年に国費で配備する事業が計画されました。
まず、その調査の通知から確かめましょう。
当時の話が、今の私たちにも関わるのでしょうか。
対象の条件は、現行の条文で変わった部分があります。
順に見ていきます。
- 消防庁予防課長は、平成21年6月4日の消防予第254号で、小規模な福祉施設や簡易宿泊所に住宅用火災警報器を配備する事業の調査を依頼しました。
- 事業は、平成21年3月の渋川市の老人ホーム火災を受けたもので、全額国費(補正予算額50億円)で国が一括調達すると、執務資料は述べています。
- 対象は、令別表第一(5)項イ又は(6)項ハの用途で、当時自動火災報知設備の設置が義務とならない施設です。
- 現行の令第21条第1項は、(5)項イと、利用者を入居させ又は宿泊させる(6)項ハを義務の対象に挙げています。通知の対象の条件は、当時のものです。
- 譲与は強制ではなく、維持管理は基本的に施設側の負担と、執務資料は述べています。
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目次
小規模な福祉施設や簡易宿泊所へ住宅用火災警報器を国費で配備する事業はなぜ始まったのか

事業の背景は、後日の執務資料が述べています。
平成21年3月の群馬県渋川市老人ホーム火災(死者10名)の重大性に鑑み、自力避難困難な者が寝泊まりするなど火災危険性の高い全ての小規模な社会福祉施設や簡易宿泊所などに、火災が発生した際に無線で一斉連動し、全館に素早く報知できる住宅用火災警報器(略)を、各消防本部等が行う防火安全教育・指導の一環として譲与等するため、全額国費(平成21年度補正予算額50億円)により国が(略)一括調達し、各消防本部等に配備するものである。
執務資料は、この火災の重大性を挙げ、小規模な社会福祉施設や簡易宿泊所への配備を述べています。
配備する住宅用火災警報器は、火災を感知した機器に連動して、他の機器も警報を発するタイプです。
消防予第254号は、この一括調達に必要な個数を把握するための調査を、各消防本部等に依頼したものです。
次に、どの施設が対象だったのかを確かめましょう。
国が全額を出して、警報器を用意する事業だったのですね。
はい、全額国費で一括調達する計画でした。
次に、対象の施設を見ましょう。
調査の対象になったのはどのような施設だったのか

まず、通知の該当部分を確かめます。
消防法施行令(略)別表第一(5)項イ又は(6)項ハに掲げる用途に供される部分が存する防火対象物(注)で、自動火災報知設備の設置が義務とならないもの(以下「対象施設」という。)。
(5)項イは、旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するものです。
(6)項ハは、老人デイサービスセンターや保育所などの、福祉施設の一部です。
執務資料の質疑応答は、対象の範囲を、次のように述べています。
| 問い | 執務資料の答 |
|---|---|
| 旅館やホテル、民宿は対象か | (5)項イの用途に供されている場合は、該当する |
| 老人デイサービスセンターなどの通所施設や、保育所、助産施設は対象か | (6)項ハの用途に供される場合は、対象としている |
| 建築中や休業中の施設は対象か | 建築中は該当する。休業中は、営業再開の見込みの有無等、施設の実態に応じて判断する |
| 令第32条で自動火災報知設備の設置が免除されている施設は対象か | 対象としても差し支えない |
| (5)項イ、(6)項ハ以外の用途は対象か | 対象施設ではないが、消防本部等が対象とすべきと判断すれば、追加して差し支えない |
注の部分で、令第1条の2第2項後段と、昭和50年の消防予第41号・消防安第41号を挙げています。
令第1条の2第2項の現行の文は、次のとおりです。
(略)当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする。
そのため、他の用途の建物の一部に、対象の用途が従属している場合も、通知は対象として扱っています。
次に、配備する警報器と数え方を確かめましょう。
民宿のような小さな宿も、対象に入っていたのですね。
はい、(5)項イの用途なら、対象と執務資料は述べています。
次に、何をどう配備するのかを見ましょう。
配備する住宅用火災警報器は何個どこに付けると数えたのか

まず、該当部分を確かめます。
火災が発生した際に無線で一斉に連動(最大15個程度連動)して、全館に素早く報知できるタイプの住宅用火災警報器(煙式(光電式・1種又は2種))。
対象施設に係る以下の場所の全てとする。(略)・建築基準法(略)第2条第四号に規定する居室・床面積が2㎡以上の収納室・倉庫、機械室その他これらに類する室
執務資料は、取付工事が不要な電池式で、熱式ではなく煙式のものを調達すると述べています。
設置する場所は、居室、床面積が2平方メートル以上の収納室、倉庫や機械室などです。
階段や廊下は、別紙の考え方では対象外ですが、特に必要と判断される場合は、必要個数に計上して差し支えないと、執務資料は述べています。
次に、この場所を、現行の条文で確かめます。
特定小規模施設用自動火災報知設備の感知器は、次のイからハまでに掲げる場所の天井(略)の屋内に面する部分に、有効に火災の発生を感知することができるように設けること。
イ 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室及び床面積が二平方メートル以上の収納室
ロ 倉庫、機械室その他これらに類する室
通知は、この場所を、同省令の第3条第2項第2号のイとロと引いています。
現行の条文では、同じ内容が、第3条第2項第3号のイとロに並んでいます。
個数は、規則第23条第4項第7号ホに準じて設置した場合の必要個数と、別紙は述べています。
次に、警報器の渡し方を確かめます。
| 段階 | 通知が述べる内容 |
|---|---|
| 消防庁から市町村へ | 総務省の物品の譲与に関する省令の第10条第3号に基づき、消防庁が市町村へ譲与する予定 |
| 市町村から対象施設へ | 地方自治法第237条第2項に基づき、条例又は議会の議決によることが必要 |
| 施設側の意向 | 施設側の意向に反している場合は、譲与等を行わないことが適切と、執務資料は述べている |
(略)普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、(略)適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。
執務資料は、この事業の公益性が、条例準則の定める公益上の必要に当たると認めています。
消防庁から市町村への譲与の省令は、現在の名称が異なります。
現行の名称は、総務省所管に属する物品の無償貸付及び譲与に関する省令です。
設置する場所は、居室や収納室が中心なのですね。
はい、居室と、2平方メートル以上の収納室などが基本でした。
次に、読むときに見落としやすい点を見ましょう。
この通知を読むときに見落としやすい点はどこにあるのか

まず、現行の条文を確かめます。
次に掲げる防火対象物
イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)
通知は、(5)項イと(6)項ハのうち、自動火災報知設備の設置が義務とならないものを、対象にしていました。
現行の条文では、(5)項イは、延べ面積の条件なしに、令第21条第1項第1号に挙がっています。
利用者を入居させ、又は宿泊させる(6)項ハも、同じ号に挙がっています。
当時の対象の条件は、そのまま今の建物に当てはまるとは限りません。
| 読み違えやすい点 | 通知・執務資料から言えること |
|---|---|
| 今も国が配備してくれる事業なのか | 通知は、平成21年度補正予算の事業について述べたものです。現在の実施は、この通知だけでは分かりません |
| 施設に設置を強制する事業なのか | 執務資料は、法令による規制のような強制力を持って、施設側に一律の対応を求めるものではないと述べています |
| 維持管理の費用は誰が負担するのか | 執務資料は、基本的に施設側の負担と想定していると述べています |
| 自動火災報知設備が既にある施設も、補助を受けられるのか | 執務資料は、補助等は予定していないと述べています |
| 警報器を付ければ、自動火災報知設備は要らなくなるのか | 通知は、そう述べていません。義務の有無は、令第21条などの条文で決まります |
設置は、原則として施設側で行うことを想定していると、執務資料は述べています。
配備された警報器の設置と確認のために、説明書を作成する予定とも述べています。
個別の施設の義務の有無は、令第21条と、所轄の消防本部で確かめる必要があります。
- 譲与を受けるかどうかは、施設側の意向が前提とされている
- 必要個数は、調査の時点で把握できた分の回答をもとにしている
- 自動火災報知設備の義務は、令第21条などの条文で決まる
対象の条件は、今の条文と違うのですね。
はい、令第21条の現行の文で確かめてください。
最後に、確認する手順をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

用途と面積を押さえてから、警報の機器の状況を見ます。
- 自分の施設の用途(令別表第一の(5)項イか(6)項ハか)を、届出や書類で確かめる
- 令第21条第1項で、自動火災報知設備の設置が必要な施設かを確かめる
- 設置が義務でない場合も、施設に火災を知らせる機器があるかを、現場で確かめる
- 電池式の警報器を使っている場合は、電池と作動を定期的に確かめる
- 判断に迷う点は、所轄の消防本部に相談し、確認した内容を記録に残す
通知が挙げた(5)項イと(6)項ハは、今も令別表第一に残っています。
ここで挙げた確認は、通知が求めたものではなく、この記事の整理です。
自動火災報知設備が必要かで迷ったときは、所轄の消防本部に確認してください。
うちの施設の用途と面積を、書類で確かめます。
まず、用途と延べ面積を確認しましょう。
迷ったときは、所轄の消防本部に相談します。
よくある質問
まとめ
用途と義務の有無を、書類で確かめます!
自動火災報知設備や警報器の相談は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第254号「「防火安全教育・指導のための住宅用火災警報器の配備」に係る調査について」(平成21年6月4日 消防庁予防課長)
- 「「防火安全教育・指導のための住宅用火災警報器の配備」に係る調査について」(平成21年6月4日付け消防予第254号)に係る執務資料の送付について(平成21年7月9日 消防庁予防課事務連絡)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2、第21条、別表第一 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条 e-Gov法令検索
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)第3条 e-Gov法令検索
- 総務省所管に属する物品の無償貸付及び譲与に関する省令(平成12年総理府・郵政省・自治省令第8号)第10条 e-Gov法令検索
- 地方自治法(昭和22年法律第67号)第237条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





