建物を耐火構造の壁で区画したとき、その壁に排水管や給水管を通してもよいのでしょうか。
壁式鉄筋コンクリート造の壁は区画に使えるのか、貫通する配管の近くに洗面器のような衛生機器をつないでよいのか、ステンレス鋼管はどこまで認められるのかなど、実務で迷う場面は少なくありません。
消防庁は平成10年と平成14年に、そうした疑問への答えを執務資料として都道府県に送っており、五つの問いと答えが残っています。
この記事では、その質疑を、現行の条文に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
その質疑には、どんな問いが載っているんですか。
令第8条の区画の壁と、それを貫く配管、そして消火設備の配管についての、五つの問いです。
順に、現行の条文と見比べます。
答えは、どれも認めているんですか。
はい。
五つとも、「お見込みのとおり」か「さしつかえない」という答えです。
ただし、条件が付いたものもあります。
- 壁式鉄筋コンクリート造の壁(壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造を含む)とプレキャストコンクリートカーテンウォールは、令8区画の要件にある堅牢で容易に変更できない耐火構造に該当するものとして扱ってよいと答えています
- 貫通部から1メートル以内の排水管に衛生機器をつなぐことは、衛生機器が不燃材料で、接続部の樹脂製ソケットとゴムパッキンが衛生機器と床材で覆われているならさしつかえないと答えています
- JIS G3448とJIS G3459に適合するステンレス鋼管は、貫通してよい鋼管等の通知の2に該当するものとして扱ってよいと答えています
- 水道用ステンレス鋼管(JWWA G115)も、通知の別添2に該当するものとして扱ってよいと答えています
- 不活性ガス消火設備とハロゲン化物消火設備の配管は、継目無鋼管と電気抵抗溶接鋼管のどちらを用いてもよいと答えています
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目次
壁式鉄筋コンクリート造の壁は、令8区画に使える耐火構造なのか

照会は、令8区画の構造を示した平成7年3月31日付けの消防予第53号が、区画の壁を「鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又はこれらと同等に堅牢かつ容易に変更できない耐火構造」としていることを引いて、次の二つが「これに該当する」ものとして扱えるかを尋ねています。
(消防庁の質疑応答・平成10年5月1日・消防予第67号)
壁式鉄筋コンクリート造は、柱とはりで支える形ではなく、壁そのもので建物を支える構造です。プレキャストコンクリートカーテンウォールは、工場で作ったコンクリートの外壁板を取り付けたものです。どちらも、質疑は該当するものとして取り扱ってよいと答えています。
なお、現行の令第8条には、第2号も加わっています。第2号は、床、壁その他の建築物の部分又は防火設備のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものを、令8区画に含めています。この質疑が扱っているのは、第1号の「開口部のない耐火構造」の壁です。
壁式の造りでも、堅牢な耐火構造として区画に使えるんですね。
はい。
質疑は、壁式鉄筋コンクリート造とカーテンウォールを区画の壁に該当すると答えています。
令8区画を貫く排水管の近くに、衛生機器をつないでよいのか

照会は、貫通部から1メートル以内となる部分の排水管に、衛生機器をつないでよいかを尋ねています。
(1)衛生機器の材質は、不燃材料である。
(2)排水管と衛生機器の接続部には、塩化ビニール製の排水ソケット及びゴムパッキンが用いられているが、これらは不燃材料の衛生機器と床材で覆われている。
(消防庁の質疑応答・平成10年5月1日・消防予第67号)
一つ目は、衛生機器が不燃材料であることです。二つ目は、排水管との接続部にある樹脂製のソケットとゴムパッキンが、不燃材料の衛生機器と床材で覆われていることです。質疑には理由が書かれていませんが、可燃性の部品がむき出しになっていない点が、条件に入っています。
衛生機器をつなぐ位置が、貫通部から1メートル以内であっても、この条件で認められる、というのがこの答えです。条件が違う場合は、答えの対象になりません。
接続部が覆われていることが、ポイントなんですね。
はい。
不燃材料の衛生機器と、接続部が覆われていることの二つが条件です。
一般配管用ステンレス鋼鋼管などは、貫通してよい鋼管等に入るのか

(消防庁の質疑応答・平成10年5月1日・消防予第67号)
質疑の文面には、47号通知の2の中身は載っていません。この記事では、通知そのものの本文までは確かめていません。質疑が示しているのは、一般配管用ステンレス鋼鋼管と配管用ステンレス鋼鋼管が、その2の対象として扱われる、という点です。
規格の番号や名称は当時のものです。いま使う配管がどの規格に適合するかは、製品の仕様と、所轄の消防署の運用で確かめてください。
ステンレス鋼管なら何でもいいわけではなく、規格で決まっているんですね。
はい。
質疑が挙げているのは、JIS G3448とJIS G3459の二つです。
水道用ステンレス鋼管も、貫通してよい鋼管等として扱えるのか

(消防庁の質疑応答・平成14年9月30日・消防予第281号)
前の質疑は47号通知の「2」、この質疑は「別添2」と、参照先が違います。質疑の文面からは、二つの中身の違いまでは分かりません。ここでも、通知本文を確かめていない点はお断りしておきます。
水道用ステンレス鋼管は、名前のとおり水道に使う配管です。質疑は、JWWA G115に適合するものを、貫通してよい鋼管等の扱いにする、と答えています。
水道用の管でも、規格に合っていれば同じ扱いになるんですね。
はい。
質疑は、JWWA G115に適合するものを、別添2に該当すると答えています。
消火設備の配管には、継目無鋼管と電気抵抗溶接鋼管のどちらを使うのか

(消防庁の質疑応答・平成14年9月30日・消防予第281号)
配管の材料は、規則が定めています。不活性ガス消火設備は規則第19条第5項第7号ロで、二酸化炭素を放射するものは、日本産業規格G3454のSTPG370のうち、高圧式は呼び厚さでスケジュール80以上、低圧式はスケジュール40以上に適合するものなどと定めています。窒素、IG-55又はIG-541を放射するものは、スケジュール80以上です。
ハロゲン化物消火設備は規則第20条第4項第7号ロで、ハロン2402はG3452、ハロン1211、ハロン1301などはG3454のSTPG370のスケジュール40以上、HFC-23はスケジュール80以上と定めています。
私が確かめたこれらの条文には、鋼管の製造方法(継目無か電気抵抗溶接か)を指定した部分は出てきません。規格の名前と呼び厚さ(スケジュール)で強度を求めている、と読めます。質疑の答えは、その読み方を確かめたものです。
条文が求めているのは、規格と厚さなんですね。
はい。
製造方法ではなく、規格と呼び厚さで強度を求めています。
よくある質問
まとめ
区画を貫く配管にも、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの建物の図面と配管を確かめてみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第8条、第32条、消防法施行規則第5条の3、第19条、第20条
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





