平成18年3月10日、消防庁予防課長が消防予第103号を出しました。
スプリンクラー設備などの配管を輪の形に結ぶループ配管が現れ、既存の基準だけでは摩擦損失を算出できなくなったためです。
通知は、計算の考え方と計算例を示し、都道府県に周知を求めています。
この記事では、通知の中身と、現行の規則で確かめられる点を解説します。
ループ配管の水の流れは、どう計算するのでしょうか。
配管を輪にすると、水が二手に分かれて流れます。
まず、通知が示した考え方を確かめましょう。
通知は、どんな計算を示しているのですか。
摩擦損失計算の取扱いを示したものです。
順に見ていきます。
- 消防予第103号(平成18年3月10日、消防庁予防課長)は、ループ配管の摩擦損失計算の取扱いを示した通知です。
- ループ配管では、分岐点から合流点までのそれぞれの配管内の摩擦損失水頭が等しくなるように流量を配分します。
- 計算の一例として、仮想流量から修正流量を求め、合計が0.05メートル未満になるまで繰り返す手法が示されています。
- 流入部に最も近いヘッドの放水圧力が1.0MPaを超えていないかも、計算の例で確かめます。
- 通知の計算例は、単純なループ配管に限られ、複雑なループやグリッド配管は対象外とされています。
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目次
ループ配管の摩擦損失はなぜ通知で取扱いが示されたのか

まず、通知の本文と、現行の条文を確かめます。
一方、最近、配管をリング状に結合する(以下「ループ配管」という。)など、摩擦損失基準をそのまま適用するだけでは配管の摩擦損失を算出できないものが現れてきていることから、今般、ループ配管の摩擦損失計算については下記のとおり取り扱うこととしたので、執務上の参考としてください。
配管の摩擦損失計算は、消防庁長官が定める基準によること。
通知の前文は、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、屋外消火栓設備などの配管を対象に挙げています。
摩擦損失計算は、昭和51年消防庁告示第3号「配管の摩擦損失計算の基準」で算出することとされています。
現行の規則でも、スプリンクラー設備は第14条第1項第11号ホで、消防庁長官が定める基準によるとされています。
通知は、そのままでは算出できないループ配管について、取扱いを示したものです。
| 設備 | 通知が挙げる規則の条文(配管の摩擦損失計算) |
|---|---|
| 屋内消火栓設備 | 第12条第1項第7号チ |
| スプリンクラー設備 | 第14条第1項第11号ホ |
| 水噴霧消火設備 | 第16条第3項第3号ヘ |
配管を輪にすると、従来の基準では足りなくなるのですね。
はい、通知はループ配管の取扱いを新たに示しました。
次に、計算の基本の考え方を確かめましょう。
ループ配管の流量はどう配分して計算するのか

まず、通知の本文を確かめます。
ループ配管の摩擦損失計算では、分岐点から合流点までにおけるそれぞれの配管内の摩擦損失水頭が等しくなるように流量を配分すること。なお、摩擦損失計算には複数の手法が考えられるが、その一つとして次のような手法も考えられること。
水は輪の両側に分かれて流れ、合流点で再び一つになります。
そのため、分岐点から合流点までの損失水頭は、どちらの経路でも同じでなければなりません。
通知は、その条件を満たすよう流量を配分することを求めています。
計算の手法は複数考えられるとされ、通知は一つの例を示しています。
| 手順 | 通知が示す手法の内容 |
|---|---|
| (1) | ループ配管の流入部側の分岐点と、そこから最遠となる流出部側の合流点を設定する |
| (2) | ループ配管に流れる流量を仮想値で設定し、仮想の摩擦損失水頭を計算する |
| (3) | 圧力の不均衡が生じたときの修正流量を、通知の式で求める |
| (4) | 仮想流量と修正流量から流量を設定し直し、合流点での損失水頭の合計(絶対値)が0.05メートル未満になるまで(3)を繰り返す |
流量を二手に分けて、損失が釣り合う点を探すのですね。
はい、通知の一例は仮想流量から出発します。
次に、計算例の数字を追いましょう。
修正流量はどんな式で求め、いつ計算を終えるのか

まず、通知の本文を確かめます。
流水の摩擦損失は、配管長さに比例し、流量の1.85乗に正比例することから、ループ配管で圧力の不均衡が生じた場合の修正流量(q)は次式で表せることが分かっている。
ループ配管の流出部側合流点における摩擦損失水頭の数値の合計(絶対値)が0.05m未満となるまで(3)の計算を繰り返す。
通知の式は、q≒ΣP÷Σ(1.85P/Q)です。
Pは配管の摩擦損失水頭、Qは+または-方向の仮想流量、qは修正流量です。
+側と-側の損失水頭の合計がゼロに近づくよう、流量を少しずつ動かします。
合計が0.05メートル未満になったところで、計算を終えます。
ループ配管はSGP(配管用炭素鋼管)50Aを用いるもの、流入部の総水量は1,000L/min、①の配管は直管200mに相当する圧力損失があり、②の配管は直管150mに相当する圧力損失がある。
仮想流量は、①と②に500L/minずつと想定して出発します。
第一次計算では、+側と-側の損失水頭の合計が+17.702メートルで、修正流量は38.650L/minです。
第二次計算では合計が+0.067メートルで、まだ0.05メートル以上のため、計算を続けます。
第三次計算で合計が0.001メートルとなり、A~B間の摩擦損失水頭は約61.0メートルとされています。
| 計算 | ①(+側)の流量 | ②(-側)の流量 | ①の損失水頭 | ②の損失水頭 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第一次 | 500L/min | 500L/min | +70.807m | -53.105m | +17.702m |
| 第二次 | 461.350L/min | 538.650L/min | +61.015m | -60.948m | +0.067m |
| 第三次 | 461.203L/min | 538.797L/min | +60.979m | -60.978m | 0.001m(0.05m未満) |
長い配管ほど流量が少なくなって、釣り合うのですね。
はい、計算例では長い①の配管に流れる流量が461.203L/minへ落ち着きます。
次に、ヘッドの放水圧力の確かめ方を見ましょう。
流入部に最も近いヘッドの放水圧力はどう確かめるのか

まず、通知の本文と、現行の条文を確かめます。
D点のスプリンクラーヘッドにおいて1.0MPaを超えていなければ可とし、超えている場合は不可となり減圧措置を講じる必要がある。
加圧送水装置には、スプリンクラーヘッドにおける放水圧力が一メガパスカルを超えないための措置を講じること。
通知は、流入部に最も近いヘッドをD点として、そこの放水圧力が規定圧力を超えないかを確かめる手順を示しています。
ヘッドが1個作動し、放水圧力が1.0MPaのときの放水量は、放水量80L/minで0.1MPaという条件から253L/minと求められています。
その流量での加圧送水装置の揚程から、各区間の摩擦損失水頭と落差を差し引いて、D点の圧力を求めます。
| 手順 | 通知が示す内容 |
|---|---|
| a | ヘッド1個が作動し、放水圧力が1.0MPaのときの放水量を求める(例は253L/min) |
| b | 加圧送水装置の揚程曲線から、253L/minのときの揚程を求める |
| c~d | 加圧送水装置からA点まで、およびループ配管部の摩擦損失水頭を求める |
| e | 揚程から、A点まで・ループ配管部・CからDまでの摩擦損失水頭とその他落差等を差し引き、Dのヘッドの放水圧力を求める |
| f | 1.0MPaを超えていなければ可、超えていれば不可で、減圧措置を講じる |
損失を計算して終わりではなく、圧力の上限も見るのですね。
はい、通知の例は放水圧力の確認まで含んでいます。
最後に、確認する手順をまとめます。
明日からループ配管の計算書で何を確認すればよいのか

次に挙げる確認は、通知が利用者に求めたものではなく、この記事の整理です。
- 計算の対象が、通知の例に当たる単純なループ配管か、複雑なループやグリッド配管かを確かめる
- 分岐点と最遠の合流点が設定され、両側の損失水頭の合計が0.05メートル未満になっているかを確かめる
- 流入部に最も近いヘッドの放水圧力が、1.0MPaを超えていないかを確かめる
- ループ配管から末端の放出口までを含めた合計の摩擦損失が最大となる経路で、ポンプの全揚程を確かめる
- 判断に迷ったときは、所轄の消防機関に確かめる
通知は、ループ配管から末端の放出口までを含めた合計の摩擦損失が最大となる部分が、最大値になると述べています。
ループ部分の損失だけを見て、全揚程を判断してはなりません。
また、将来ループ部から配管を増設する可能性がある場合は、ループ配管部の口径に余裕をもたせる指導が示されています。
個々の建物にどこまで当てはまるかは、通知には書かれていません。
末端までの合計と、ヘッドの圧力を、確かめておきます。
まず、計算書が末端まで含んでいるかを確かめましょう。
迷ったときは、所轄の消防機関に確かめます。
よくある質問
まとめ
末端までの損失を、確かめてから進めます!
スプリンクラー設備の配管の確認は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第103号「スプリンクラー設備等におけるループ配管の取扱いについて」(平成18年3月10日 消防庁予防課長)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第7号チ、第14条第1項第11号ホ・ニ、第16条第3項第3号ヘ e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





