屋内消火栓のポンプが水源より高い位置にあるとき、消防法施行規則は呼水装置を設けるよう定めています。
では、自分で水を吸い上げる「自吸式ポンプ」を使えば、呼水装置は省けるのでしょうか。
昭和の消防庁の通知には、この問いをはじめ、高架水槽での代用、樹脂製の水槽、減水警報装置の置き場所について答えた質疑が残っています。
この記事では、五つの質疑を、現行の条文に照らして読みます。自吸式ポンプでも呼水装置が要るとされた理由を順に確かめます。
自分で水を吸えるポンプなら、呼水装置はいらないんじゃないですか。
いいえ、質疑では自吸式でも必要と答えています。
それどころか、加圧送水装置としては認めないとも答えています。
理由は、水を揚げるまでの時間や、水量の確認のしにくさでした。
順に、質疑と条文を見比べます。
この記事の結論
- 自吸式ポンプであっても、水源の水位がポンプより低い位置にあるときは、呼水装置を設けることが必要と答えています
- 自吸式ポンプは揚水までに相当な時間を要することから、屋内消火栓設備の加圧送水装置としては認められないと答えています
- 呼水槽を設けず高架水槽を直接つなぐ方法は、ポンプ内部にかかる背圧の影響が考えられるため認められないと答えています
- 樹脂製の水槽は、強化プラスチック製の水槽なら地盤面下に埋設する場合に限り、呼水槽なら被害を受けるおそれの少ない場所に限って認められています
- 呼水装置の減水警報装置は、作動が容易に確認でき、かつ点検が可能な場所に設けるよう答えています
▼
自吸式ポンプを使えば、呼水装置は省いてよいのか
最初の質疑は、自吸式ポンプと呼水装置の関係です。消防法施行規則第12条第1項第3号の2は、水源の水位がポンプより低い位置にある加圧送水装置には、専用の呼水槽を設けるなどして呼水装置を設けるよう定めています。条文はポンプの種類で分けていません。そこで、水を自分で吸い上げる構造の自吸式ポンプについても、この規定が及ぶのかが問われました。昭和48年の通知では短く答え、翌年に、兵庫県あての回答で理由まで述べています。
問(要旨) 屋内消火栓設備で呼水装置の設置義務が課せられたが、自吸式のポンプ装置についてもその必要があるか。(昭和48年10月23日消防予第140号・消防安第42号)
別の照会では、昭和48年10月23日付の質疑応答中で、自吸式のポンプ装置についても呼水装置が必要であるとの回答があるが、その理由を示されたい。
答(要旨) (昭和48年の回答)お見込みのとおり。(昭和49年の回答)必要である。現在市販されている自吸式ポンプは、ケーシング内に少量の呼び水を確保し、起動と同時に吸水側の空気を排除して吸水する構造となっているが、①完全吸水(消火に必要な範囲の水量の揚水)までに時間を要すること、②ケーシング内の呼水に必要な水量の確認が容易でないこと、③長期間使用しない場合に呼水の確保が期待できないことなどの理由から、自吸式ポンプであっても呼水装置を設けることとしたものである。
(昭和48年10月23日消防予第140号・消防安第42号、昭和49年1月29日消防安第5号・兵庫県あての回答)
自吸式ポンプであっても、呼水装置が必要と答えています。
答えは、自吸式ポンプが少量の呼び水で空気を排除する構造であることを認めたうえで、
揚水までに時間を要すること、
呼水の量の確認が容易でないこと、長期間使わないと呼水の確保が期待できないことを理由に挙げています。
なお、答えは、呼水槽の水量の具体的な数値は、この質疑では述べていません。
自分で吸えても、時間や水量の確認がネックなんですね。
答えは、自吸式ポンプでも呼水装置が必要です。
呼水槽の水量の数値までは、ここでは述べていません。
自吸式ポンプは、屋内消火栓設備の加圧送水装置として認められるのか
二つ目は、自吸式ポンプそのものを加圧送水装置に使えるかという質疑です。問いには、自吸式のポンプにはフート弁がなく、ポンプの上部に逆止弁が取り付けられるので、呼水をポンプ内へ導くのが困難だという事情が添えられています。呼水装置を設けることを前提に、自吸式のポンプを加圧送水装置として使った場合でも呼水装置が必要かが問われましたが、答えは、そもそもの使用可否に踏み込んでいます。
問(要旨) 屋内消火栓設備の加圧送水装置で、水源の水位がポンプより低い位置にあるものについては、呼水装置を設けることと規定されているが、自吸式のポンプを加圧送水装置として使用した場合でも必要か。(自吸式のポンプの場合、フート弁もなく、ポンプ上部にチャッキバルブが取り付けられるので、呼水をポンプ内に導くのが困難である。)
答(要旨) 自吸式ポンプは、自動的に呼び水を行うことができる構造を有したポンプであるが、当該ポンプは、揚水、給水までに相当な時間を要することから、屋内消火栓設備の加圧送水装置としては、認められない。
(昭和50年6月16日消防安第65号・各都道府県消防主管部長あての回答)
自吸式ポンプは、揚水までに時間を要するので、加圧送水装置としては認められないと答えています。
答えは、自吸式ポンプが自動的に呼び水を行える構造であることは認めています。そのうえで、
揚水、給水までに相当な時間を要することを理由に、屋内消火栓設備の加圧送水装置としては認められないとしています。
なお、答えは、他の消火設備の加圧送水装置については、述べていません。また、現行の条文では、規則第12条第1項第3号の2が「水源の水位がポンプより低い位置にある加圧送水装置」と書くだけで、自吸式かどうかには触れていません。
呼水があっても、時間がかかること自体が問題なんですね。
答えは、揚水までに時間を要するので、加圧送水装置としては認められないです。
他の消火設備の扱いまでは、述べていません。
高架水槽を直接つなげば、呼水槽の代わりになるのか
三つ目は、呼水槽の代わりに高架水槽を使えるかという茨城県からの質疑です。規則第12条第1項第3号の2は、呼水装置に「専用の呼水槽」を設けることを求めています。問いは、高架水槽から直接、加圧送水装置に接続する方法や、吐出側の逆止弁にバイパスを付けて常時補水する方法でも、呼水の目的は達せられるのではないか、というものです。高さ約6メートルの高架水槽なら背圧が少ないのではないか、という追加の問いもありました。
問(要旨) 1 呼水槽を設けることなく、高架水槽から直接加圧送水装置に接続した場合、呼水の目的は達せられると思われるが、ポンプ内部に背圧が加わり、ポンプ起動時に急速負荷などにより駆動装置に支障をきたすものとして、当該方法は不適当と解すべきか。2 加圧送水装置の吐出側直近部分に設けるチャッキバルブをバイパス付スイングチャッキバルブとした場合も、1の背圧の関係で不適当と解すべきか。3 1及び2の方法で、高架水槽(高さ約6メートル)で背圧が少ないときは、高架水槽をもって呼水槽にかえることはできないか。
答(要旨) 1及び2 お見込みのとおり。3 設問の高架水槽は、ポンプ内部にかかる背圧の影響が考えられるため、認められない。なお、呼水槽の容量は、加圧送水装置を有効に作動できるものとされており、その具体的な量は、ポンプの容量、吸水管の配管の大きさ及び長さにより異なるが、おおむね100リットルから150リットルのものとされている。
(昭和49年12月28日消防安第136号・茨城県あての回答)
高架水槽の直結も、バイパス付き逆止弁も、背圧の影響が考えられるため認められないと答えています。
答えは、1と2の方法を不適当とする見方を「お見込みのとおり」とし、高さ約6メートルでも、高架水槽をもって呼水槽にかえることは
認められないとしています。あわせて、呼水槽の容量が、ポンプの容量や吸水管の口径・長さで変わるとし、おおむね100リットルから150リットルの目安を示しています。
なお、呼水槽の容量の現在の数値は、この目安とは分けて確かめてください。
高いところから水が来ても、呼水槽の代わりにはならないんですね。
答えは、高架水槽の直結では、背圧の影響が考えられるため認められないです。
容量の現在の数値は、別に確かめましょう。
樹脂製の水槽は、どこに置けば認められるのか
四つ目は、樹脂製の水槽の扱いです。広島県あての質疑では、水源として使う水槽に強化プラスチック(FRP)製の水槽を使ってよいかが問われました。照会の別添は、この水槽は熱に対して弱く好ましくないと考えるが、認めるならどのような場合かと尋ね、参考として耐熱温度が60度であることなどを載せています。別の質疑では、呼水装置の水タンクを合成樹脂製にしてよいかが問われました。令第11条第3項第1号ホは、水源に連結する加圧送水装置を、点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けるよう定めています。
問(要旨) 1 令第7条第2項の消火設備のうち、水源を用いる屋内消火栓設備等の水槽にFRP製の水槽を使用することの可否について。(照会の別添:この種の水槽は熱に対する弱点があるため好ましくないと思われるが、認めるとすればどのような場合か。) 2 呼水装置の水タンクの材質は、合成樹脂製のタンクでもよいか。
答(要旨) 1 設備のFRP製水槽は、耐熱性がほとんど無いことを考慮し、地盤面下に埋設して設ける場合に限り、その設置を認めてさしつかえない。(昭和49年2月22日消防安第18号・広島県あての回答) 2 火災等の災害により被害を受けるおそれの少ない場所に設けるものに限りさしつかえない。(昭和48年10月23日消防予第140号・消防安第42号)
樹脂製の水槽は、置き場所を限って認めると答えています。
答えは、強化プラスチック製の水槽については、耐熱性がほとんど無いことを理由に、
地盤面下に埋設して設ける場合に限り認めています。呼水装置の水タンクについては、合成樹脂製でも、
災害により被害を受けるおそれの少ない場所に設けるものに限って認めています。
なお、答えは、水槽の材質そのものの規格については、述べていません。また、現行の規則第12条第1項の該当箇所は、水槽の材質を直接は定めていないため、この質疑の答えが運用の目安になっていた点に注意してください。
答えは、強化プラスチック製の水槽は地盤面下に埋設する場合に限り認めるです。
呼水槽は、被害を受けるおそれの少ない場所に限ります。
呼水装置の減水警報装置は、どこに設ければよいのか
最後は、減水警報装置の置き場所です。規則第12条第1項第3号の2のハは、呼水槽に減水警報装置と、水を自動的に補給するための装置が設けられていることを求めています。これは、呼水槽の水が減ったことを知らせるための装置です。質疑では、この減水警報装置をどこに設けるべきかが問われました。
問(要旨) 消防法施行規則第12条第1項第3号の2に規定する呼水装置の減水警報装置は、どこに設けるべきか。
答(要旨) 呼水装置の減水警報装置の作動が容易に確認でき、かつ、点検が可能な場所に設置するよう指導されたい。
(昭和50年6月16日消防安第65号・各都道府県消防主管部長あての回答)
作動が容易に確認でき、かつ点検が可能な場所に設けると答えています。
答えは、設ける場所を、
作動が容易に確認でき、かつ
点検が可能な場所と示しています。
なお、答えは、具体的な階や部屋の名前までは、述べていません。
見えない場所や、点検できない場所ではだめなんですね。
答えは、作動が容易に確認でき、点検が可能な場所です。
具体的な部屋の名前までは、述べていません。
よくある質問
Q呼水装置は、どんな場合に設ける決まりですか?
A規則第12条第1項第3号の2は、水源の水位がポンプより低い位置にある加圧送水装置には、専用の呼水槽を設けるなどして呼水装置を設けるよう定めています。呼水槽の容量は加圧送水装置を有効に作動できるものとし、減水警報装置と自動補給の装置も設けるとしています。
Q自吸式ポンプなら、呼水槽なしでよいのですか?
A質疑の答えは、自吸式ポンプであっても呼水装置が必要としたうえで、揚水までに時間を要することから、加圧送水装置としては認められないとしています。個別の設備の扱いは、所轄の消防署に確かめてください。
Q高架水槽があれば、呼水槽は要りませんか?
A質疑の答えは、高架水槽をもって呼水槽にかえることは、ポンプ内部にかかる背圧の影響が考えられるため認められないとしています。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和48年から50年のものです。その後の改正で変わっている条文や運用があります。現行の令、規則、告示と、所轄の消防署の運用に確かめてください。
まとめ
✔自吸式ポンプでも、水源の水位がポンプより低いときは呼水装置が必要とされた
✔自吸式ポンプは、揚水までに時間を要するため、屋内消火栓設備の加圧送水装置としては認められないとされた
✔高架水槽の直結やバイパス付き逆止弁は、背圧の影響が考えられるため呼水槽の代わりに認められないとされた
✔強化プラスチック製の水槽は地盤面下に埋設する場合に限り認められた
✔減水警報装置は、作動が容易に確認でき、かつ点検が可能な場所に設けるとされた
✔質疑は昭和48年から50年のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物の設備の扱いは、所轄の消防署に確かめる
呼水装置は、ポンプの種類を問わず必要なんですね。
まずは、うちの呼水槽と減水警報装置の場所を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
防火管理はプロにお任せ下さい
まずはWebで無料お見積りを!
お問い合わせ
この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 消防法施行令第7条第2項・第11条第3項、消防法施行規則第12条第1項第3号の2
- 消防庁の通知・回答(昭和48年10月23日消防予第140号・消防安第42号、昭和49年1月29日消防安第5号、昭和49年2月22日消防安第18号、昭和49年12月28日消防安第136号、昭和50年6月16日消防安第65号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。