加圧式の粉末消火設備には、起動後に薬剤がいきなり噴き出さないよう、圧力で放出弁を開くタイミングを決める定圧作動装置が付いています。
この装置には封板・スプリング・圧力スイッチ・機械的・時限リレーという5つの方式があり、点検要領は方式ごとに別々の確かめ方を定めています。
同じ「定圧作動装置」という名前でも、試験用ガスで圧力を上げて見る方式と、タイマーの時間を測るだけの方式が混在しているため、点検者が方式を見誤ると手順そのものを誤ります。
この記事では、消防用設備等の点検要領に基づき、5つの方式それぞれの点検方法と判定基準を整理します。
うちの粉末消火設備にも定圧作動装置が付いていると言われましたが、点検ではなにを見るのですか。
5つの方式があり、それぞれ点検の仕方が違います。
順番に見ていきましょう。
方式によって点検の仕方まで変わるとは思いませんでした。
試験用ガスで圧力を測る方式と、タイマーの時間を測るだけの方式があります。
まず装置の役目から確認します。
- 定圧作動装置は、起動後に貯蔵容器の圧力が設定圧力になるまで放出弁を閉じておく安全機構です。
- 封板方式は目視のみ、スプリング方式は試験用ガスで徐々に加圧して遊動子の作動を確認します。
- 圧力スイッチ方式は接点が閉じる圧力値、機械的方式はバルブロックが解除する圧力値を読み取ります。
- 時限リレー方式だけは圧力を測らず、手動でタイマーを作動させて設定時間どおり作動するかを確認します。
- 点検の前に自分の建物の方式を確認し、試験用ガスや圧力調整器など必要な器材をそろえておく必要があります。
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目次
定圧作動装置はどんな役目を持つ装置なのか

規則の条文は、次のとおりです。
イ 起動装置の作動後貯蔵容器等の圧力が設定圧力になつたとき放出弁を開放させるものであること。
ロ 定圧作動装置は、貯蔵容器等ごとに設けること。
ハ 定圧作動装置は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
加圧用のガス容器を開いた直後は、貯蔵容器の圧力がまだ十分に上がっていません。
この状態で放出弁が開くと、薬剤とガスが均一に混ざらず、うまく放射できないおそれがあります。
そこで、貯蔵容器等ごとに定圧作動装置を設け、圧力が設定値に達してから放出弁を開く仕組みにしています。
この装置自体も、消防庁長官が定める基準に適合したものを使う必要があります。
圧力が上がるのを待たずに開いてしまうと、どうなるのですか。
薬剤とガスが均一に混ざらないおそれがあります。
だから圧力で開くタイミングを決めているのです。
封板方式とスプリング方式はどうやって確かめるのか

点検要領は、次のように定めています。
(1) 封板方式 封板の変形等を目視により確認する。
(2) スプリング方式 試験用ガス容器に圧力調整器を接続したものと定圧作動弁を銅管で接続し、試験用ガス容器のバルブを開き、圧力調整器の調整ハンドルを回して調整圧力0MPaから少しずつ上昇させて遊動子を作動させる。
判定方法 スプリング方式にあっては、設定圧力値どおり遊動子が作動すること。
封板方式は、圧力が上がると薄い板そのものが破れて開く仕組みなので、板に変形や損傷が無いかを目で見るだけで足ります。
スプリング方式は、試験用ガス容器と圧力調整器を銅管でつなぎ、調整圧力を0MPaから少しずつ上げていきます。
バネで止められた遊動子が動く瞬間を確かめ、それが設定圧力値どおりであれば合格です。
どちらも貯蔵容器そのものを使わず、試験用の器材だけで確認できるのが共通点です。
封板方式は、見るだけでいいのですか。
はい、目視のみです。
構造そのものが壊れて開く方式だからです。
圧力スイッチ方式と機械的方式はどうやって確かめるのか

点検要領の該当部分は、次のとおりです。
(3) 圧力スイッチ方式 試験用ガス容器に圧力調整器を接続したものと定圧操作弁を銅管で接続し、調整圧力0MPaから少しずつ上昇させて接点が閉じたときの圧力値を読み取る。
(4) 機械的方式 同様に調整圧力0MPaから少しずつ上昇させてバルブロックが解除する圧力値を読み取る。
判定方法 圧力スイッチ方式にあっては設定圧力値どおり接点が閉じること、機械的方式にあっては設定圧力値どおりバルブロックが解除すること。
どちらも試験用ガス容器と圧力調整器を銅管でつなぎ、圧力を0MPaから少しずつ上げていく手順は共通です。
圧力スイッチ方式では、電気の接点が閉じる瞬間の圧力値を読み取ります。
機械的方式では、バルブロックが解除する瞬間の圧力値を読み取ります。
いずれも、読み取った圧力値が設定圧力値どおりであることが判定の基準になります。
手順はほぼ同じなのに、見る場所だけ違うのですね。
そのとおりです。
装置の中身がスイッチかバルブかで読む場所が変わります。
時限リレー方式はどうやって確かめるのか

点検要領の記載は、次のとおりです。
(5) 時限リレー方式 手動によりタイマーを作動させてその時間を測定する。
判定方法 時限リレー方式にあっては、設定時間どおり作動すること。
封板・スプリング・圧力スイッチ・機械的の4方式は、いずれも試験用ガスで圧力をかけて確かめる方式でした。
時限リレー方式は、試験用ガスも銅管も使わず、手動でタイマーを作動させて、その時間を測定するだけです。
測った時間が設定時間どおりであれば、作動は正常と判定されます。
5方式の中で、唯一「時間」で合否を決める方式だと覚えておくと、現場で見分けやすくなります。
試験用ガスがいらない方式もあるのですね。
はい、時限リレー方式はタイマーだけで確認できます。
最後に5方式を点検前に確認する理由をまとめます。
5つの方式を点検の前になぜ確認しておくべきなのか

判定基準をもう一度、並べて見ます。
ア 変形、損傷等がないこと。
イ 封板方式にあつては、変形、損傷等がないこと。
ウ スプリング方式にあつては、設定圧力値どおり遊動子が作動すること。
エ 圧力スイッチ方式にあつては、設定圧力値どおり接点が閉じること。
オ 機械的方式にあつては、設定圧力値どおりバルブロックが解除すること。
カ 時限リレー方式にあつては、設定時間どおり作動すること。
封板方式は目視だけで足りますが、スプリング・圧力スイッチ・機械的の3方式は試験用ガス容器と圧力調整器と銅管が要ります。
時限リレー方式だけは、これらの器材が不要な代わりにタイマーを手動で動かします。
点検の前に、設計図書や銘板で自分の建物の定圧作動装置がどの方式かを確認しておかないと、現場に着いてから器材が足りないことに気づきます。
方式を確認したうえで、その方式に必要な器材をそろえてから点検に向かいましょう。
うちの建物がどの方式か、まず確認しないといけませんね。
そのとおりです。
設計図書や銘板で方式を確認してから器材をそろえましょう。
よくある質問
まとめ
5方式の違いが、ようやく分かりました!
方式を見極めるところが最初の一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第21条第1項第9号(粉末消火設備に関する基準)
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日消防予第172号) 第8 粉末消火設備 定圧作動装置
※本記事は公表されている法令・告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。定圧作動装置の方式は設備ごとに異なり、実際の点検方法や判定の詳細は設置されている機器の仕様によります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





