ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備は、同じ消火剤でも設置する建物の用途によって認められる条件が大きく変わります。
厨房のある部屋、飛行機を格納する大きな建物、屋根のない駐車施設など、現場ごとに事情が違うためです。
昭和50年代に消防庁が示した質疑応答は、こうした用途ごとの判断の分かれ目を具体的に整理しました。
当時の回答と今の条文を並べて読むと、どこまでが今も通用する考え方かが分かります。
事務所にハロン1301の消火装置を置きたいと言われました。
どんな部屋でも置けるのでしょうか。
ハロゲン化物消火設備や粉末消火設備は、部屋の用途や建物の種類によって細かい条件があります。
飛行機の格納庫や駐車場のような特殊な建物だと、また違う基準になるのですか。
はい、昭和50年代の質疑応答が今も参考になる考え方を示しています。
順番に見ていきましょう。
- 厨房設備のある室は、早期避難と有効な消火ができれば面積制限のある区画と同じに扱えます
- 大型飛行機の格納庫に粉末モニターノズルを併設するには、消火剤の貯蔵量や放射距離など細かい条件を満たす必要があります
- 大規模な地下駐車場のハロゲン化物消火設備は、ひとつの区画を大きくしすぎると水系の消火設備への変更を指導されます
- 屋根のない駐車施設でも、消火足場とホース接続口の設置基準は建物の中の駐車場と同じ考え方で判断されます
- 自衛隊の飛行機格納庫にハロゲン化物消火設備を設けるには、消防法施行令第32条の特例を適用する必要があります
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目次
厨房設備のある室にハロン1301を置くときの面積制限はどこまでか

では、厨房設備のある室はどう扱われるのでしょうか。
面積制限が課されているのは、設備が作動したときに素早く逃げられ、短時間で部屋全体を消火剤で満たせるようにするためです。
厨房設備のある室も、配膳のための設備や棚があるだけなら、この2つの条件を満たせれば一般の区画と同じに扱われます。
現行の消防法施行規則第20条はハロゲン化物消火設備の技術基準を定めていますが、この面積区分そのものは条文ではなく6号通達という通達レベルの運用基準に置かれたままです。
パッケージ型の消火設備を事務室や厨房へ計画するときは、区画の不燃化と避難経路の両方を図面で確認してください。
厨房だから特別なのかと思っていました。
考え方は同じなのですね。
はい、部屋の呼び方ではなく避難と消火のしやすさで判断されます。
工事前に区画の仕様を確認しましょう。
大型の飛行機を格納する防火対象物に粉末モニターノズルは併設できるのか

大量の消火剤を遠くまで飛ばす専用の装置を付け加えてよいか、という質疑です。
令別表第一(13)項ロの航空機の格納庫は、現行の消防法施行令第13条の表でも泡消火設備又は粉末消火設備としか定められておらず、モニターノズルという付加装置そのものを想定した条文はありません。
そこで当時の回答は、貯蔵量・ノズルの配置・放射距離・放射時間という4つの技術条件をそろえたうえで、令第32条の特例として個別に認める形をとりました。
現行の規則第21条も第三種粉末消火剤の定義を維持しており、貯蔵容器等の規定は第19条(不活性ガス消火設備)の号を準用する構成に整理されています。
大型機の格納庫で増設を検討するときは、主翼・尾翼を包含する貯蔵量の算定根拠を設計者に出してもらいましょう。
モニターノズルも個別に申請して認めてもらう装置だったのですね。
法令そのものには出てこないのですね。
はい、条件をそろえて特例を使う装置です。
導入するときは設計者に条件を確認してもらいましょう。
大規模な地下駐車場のハロゲン化物消火設備はひとつの区画をどこまで広くできるのか

区画を大きくしすぎると、避難のしやすさに関わってくるためです。
現行の消防法施行令第13条や規則第20条にも、ハロゲン化物消火設備の防護区画の面積そのものに上限を定めた条文はありません。
当時の回答も具体的な平方メートルの基準を示さず、退避の混乱と二次災害のおそれという実質面から、水噴霧消火設備又は泡消火設備への変更を指導する形をとりました。
約2,000平方メートルという大きさそのものではなく、車両と人がどれだけスムーズに退避できるかが判断基準になっています。
大規模な地下駐車場を計画するときは、区画面積の数値だけでなく、退避経路の幅と時間も合わせて消防署に相談してください。
区画を小さくしろと言われると思っていました。
設備を変える指導だったのですね。
はい、混乱を避けられるなら設備を変えるという判断もあります。
設計段階で相談しましょう。
屋根のない駐車施設に移動式粉末消火設備を設けるとき消火足場はどこに要るのか

移動式の粉末消火設備を使うなら、ホースの届く範囲と足場の位置が問題になります。
現行の消防法施行令第18条第2号は、移動式の粉末消火設備のホース接続口について「防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が15メートル以下」と定めており、この号番号と内容は昭和の当時から変わっていません。
屋根のない駐車施設でも、各段ごとに機械的にホース接続口を増やすのではなく、下段・中段のように有効範囲が重なる配置で足りると判断されました。
消火足場についても、四面すべてに設けるのではなく、異なった2つ以上の方向から消火活動ができれば消防法第17条第1項の設置義務を満たすという考え方です。
立体駐車施設を計画するときは、ホースの水平距離15メートルの範囲と、足場からの消火活動方向の両方を図面で確認してください。
屋根がないのに消防法の対象になるとは思いませんでした。
見た目だけでは判断できないのですね。
はい、建築物かどうかではなく用途区分で判断されます。
見た目だけで判断しないようにしましょう。
自衛隊の飛行機格納庫にハロゲン化物消火設備を設置してよいのか

それでもハロゲン化物消火設備を使いたい、という申請への回答です。
現行の消防法施行令第13条の表でも、令別表第一(13)項ロの航空機の格納庫に対応する消火設備は泡消火設備又は粉末消火設備としか書かれておらず、ハロゲン化物消火設備は含まれていません。
そのため、電子機器への薬剤の影響を避ける目的でハロゲン化物消火設備を使うには、今も令第32条の特例を適用する構成になります。
当時の回答が条件とした密閉性の確保・避難口2箇所以上・濃度差を生じさせない措置は、いずれも特例を認めるための個別審査事項であり、条文に数値基準として明文化されたものではありません。
自衛隊基地のような特殊な格納庫で代替設備を検討するときは、電子機器への影響を示す資料とあわせて、避難口の数と密閉性の確保策を所轄消防署に提出してください。
泡や粉末だと機器が壊れるから、という理由でも認められるのですね。
意外でした。
はい、理由が具体的で条件を満たせば特例として認められます。
資料をそろえて申請しましょう。
よくある質問
まとめ
用途によってこんなに条件が違うとは思いませんでした。
特例の考え方がよく分かりました。
迷ったときは特例が使える理由を整理することが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条・第18条第2号・第32条・別表第一(13)項イ・ロ
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第19条・第20条・第21条
- ハロン1301を使用するハロゲン化物消火設備の取扱いについて(昭和51年5月22日消防予第6号)
- 消防法消防用設備等(ハロゲン化物・粉末消火設備に関する基準)に関する執務資料(昭和53年9月6日消防予第165号)
- 消防用設備等の設置に係る疑義について(昭和56年12月18日消防予第299号)
- 消防用設備等の規制に関する疑義について(昭和58年3月1日消防予第32号)
- 自衛隊の飛行機格納庫に設置する消火設備について(昭和59年1月26日消防予第19号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





